(15)真相確認
アンフィデールが何を言おうとしているのか、一瞬レイナートはわからなかった。
(…………ああ、そういうことか)
ケチがつけられないかたちで子どもをもうけたとするなら、『他国の王族の姫君』か、『国内の王族の女性』と、『正式な結婚』をしたことになる。
だが、
「さすがに、他の国からすれば、孫から王位を奪った高齢の王に自分のところの娘を送るのは、敬遠するんじゃないかしら?
だっていつ死ぬかわからないおじいちゃんなんだし、孫が大きくなれば王位は普通そっちにいくと考えるわよね?」
アンフィデールの言葉に、レイナートはうなずく。
ブルグルが口を挟んだ。
「王族の家が十三家もあるわけですし、その中から娘を王家に迎えたのでは?」
「普通に考えればそうだよな。
ただ、ここまでの同時期の日記で、自分の家の娘を王家に嫁がせたという記述はない」
「となると、日記の残っていない家?
まさか、バシレウス家から迎えたとか?」
「日記は残してないが家系図はある。この時期から今に至るまで、バシレウス家は王家と血を交えていない」
「そうなんですか?
じゃあ、本当にどこから」
「アントニウス一世がガイウス十五世の子どもで、もし年齢が王家に残るものが正しいのなら……ガイウス十五世が王位に返り咲いてから20年も子どもができなかったことになる。
――――早世したのか、それだけ待つ必要があったのか。
そして何故、貴族たちは皆、それを日記に残すことを避けたのか?」
しゃべりながら、無意識にメモ書きを拾い上げて手元で束ねていたレイナートは、自分が偶然手にした走り書きに再び目を留めた。
思いついた残酷な可能性に、思わず口を覆った。そうでない、ことを祈るが、確かめざるを得ないだろう。
「…………もし、アントニウス一世の母親がこの人物なら」
「陛下?」
「もし、いま俺の頭に浮かんだ最悪の想像が正しければ。
肝心なことがたまたま記録されていないんじゃなくて、この時代の人間たちは、後世の子孫たちに向けて事実を隠蔽したんだ。
……この事実は歴史に残してはならない。そう考えたんだろう。そして」
レイナートはペンを手に取り、何者かに手紙を書き始めた。
「――――この想像が当たっていたら、これをこの国の聖職者たちが肯定したのなら……ウルティオがこの国を死ぬほど憎む理由になる」
◇ ◇ ◇
――――翌日。
『お疲れ様です、レイナートさま』
「…………ベルセルカか。無事についたか?」
『はい。いま、イクソドイデアの大聖堂です』
レイナートの手紙を持ち、馬と転移魔法でイクソドイデアまで飛ばしていったベルセルカ。
夜になって彼女から、レイナートの持つ魔道具の鏡あてに通信が入った。
『ご想像、的中……です』
いつになく沈痛なベルセルカの声に、レイナートは息を飲む。
『レイナートさまのお手紙を国教会の中枢に突きつけましたところ、そこまで国王陛下はご存じなのかとようやく彼らは折れ、極秘資料を開示しました。
それを確認すると確かに、ガイウス十六世の死後、本来の継承者である王子から、ガイウス十五世が王位を奪取。
孫にあたる王子を国教会に入れ、自分が王位に就きました。
ガイウス十五世は悪魔祓いを得意としていたようですが、王位を追われ幽閉されたのち、悪魔の身体の一部を身体に取り込み強化し始めたと。
……どうやって幽閉された人物がそんなことをできたか、誰でもわかりますよね。悪魔を召喚して仲間となった、それを国教会は気づかないふりをした』
そして、と、ベルセルカは続ける。
『ウルティオ一世と見られる、ガイウス十五世に地位を追われ教会に入れられた10歳の王子……彼には、産まれたばかりの妹がいました。
王位を奪い返したとはいえ、このままでは結局孫に王位を返さねばならないことを悟ったガイウス十五世は、自ら『王家の血筋として文句のつけようのない』跡継ぎをもうけることを考え……赤ん坊だった自分の孫娘、王女に目をつけた。
そして、子を産むことができる年齢を待って、結婚したんです』
ぞわりと、背が冷える。
レイナートは思わず自分の肩をつかんだ。
……直系2親等。他国でも例をみないであろう、祖父と孫娘での近親婚。その孫娘の心中はいかばかりだっただろう。
そして、妹の人生を蹂躙された兄の怒りは。
『…………ガイウス十五世が懐柔するつもりだったのか、それとも魔力がずば抜けていたのか…………王子は若くして大司教の地位についていました。
しかしガイウス十五世の結婚に怒り、暗殺を企て、失敗し、追放されたのだそうです』
◇ ◇ ◇




