表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
191/262

(13)レグヌム帰還翌日



   ◇ ◇ ◇



 ノールトから帰還した日の翌日。

 王城の中庭に、国王と、ヴィス、ヴェーラのきょうだいがいた。



「ヴェーラ、はじめ!」



 ヴェーラが、グッと手のひらを前につきだす。


 彼女からだいたい10馬身ほど離れた位置にいるレイナートは、それで自分の魔力が吸収されたのを感じた。



「いいぞ、ヴェーラ。

 それを、後ろのヴィスに渡せるか?」


「できます!!」



 歯切れ良く返事をしたヴェーラは、後方にいたヴィス側に向いた。

 先ほどレイナートから吸いとった魔力を、ヴィスに渡す。



「あ……はい、受けとりました!!」



 と、言った瞬間、ヴィスががくんと膝をつく。



「どうした、ヴィス?」



 レイナートが転移魔法で近くまでとぶ。遅れてヴェーラが駆け寄ってきた。



「………陛下の魔力が、ちょっと…強……」



 あぶら汗を浮かべ、喘ぐように言ったヴィスだったが、いきなり大きな魔力を受け取ったのが身体への負担が大きかったのだろう。



「悪い。終わりにしようか」

「だいじょうぶ?おにいさま?」



 コク、とヴィスはうなずき、レイナートの手にしがみついて立ち上がった。



「……以前ヴェーラにとりついていた転生者も、この遠距離からの魔力吸引と魔力補充を駆使して、私にほとんど魔力がないように見せかけていたということでしょうか」


「たぶんな。まぁ、とりあえずヴェーラの場合は戦うわけじゃないし、“加護”が与える力のコントロールができれば……どうした、ヴィス」


「あ、いいえ、その」うつむいていた顔を、ヴィスは上げた。


「私も、もっと、ヴェーラのように役に立つ“加護”だったら良かったなと。私はただ、自分の怪我がすぐなおるというだけなので……」


「? 役に立つだろ?

 自分にとって」


「え? ええ。

 そう……ですね」



 戦闘力がほしかったということなのだろうか?

 レイナートとしては、このきょうだい2人を戦力にしようとは思っていない。国王として彼らの身の振り方を決めようというだけなのだが。



「この後、おまえたち2時から午後の家庭教師の時間だ。

 2人で部屋に戻れるか?」


「は、はい。大丈夫です」



 少し呼吸を整え、ヴィスは、ヴェーラと手をつないだ。



「さぁ、ヴェーラ、行こう」



 ヴェーラは、素直にうなずき、ヴィスについていった。

 褒められることが多かったからなのか、それとも魔力操作のコツをつかんだからか、ヴェーラは前ほど駄々をこねていない。

 相変わらずレイナートには抱きつきたがりだが。



(そういえばこどもの頃も、ベルセルカにはあまり抱きつかれたことないな……)



 ベルセルカの“加護”が“加護”だけに。しいていえば、国王就任前の、夕方の王城で組み手してた日のことぐらい。

 自分のことを、嫌いではないと思う(思いたい)が、そう言えば今日は彼女と顔を合わせていない。



 執務室に戻ろうと建物の中に入ると、「あ、若ー」とお気楽な声をかけてきた男がいた。



「おかえんなさい。お菓子、ちゃんと食べました?」



 ファランクスだ。

 レイナートがいない間にまたサボり気味だったのか、何だか眠そうだ。



「また二日酔いの寝不足か?」

「すいません。

 昨日、友達が王都に来て、つい明け方まで……」


 ちなみにこの男、酒が強いくせにそれ以上に鯨飲(げいいん)するので、結構しょっちゅうつぶれるし、その身体を素面(しらふ)のレイナートがかついで運んだことも、一度や二度ではなかったりする。



「菓子は旨かったけど……なんでおまえがエレナの手伝いを?

 というかおまえ、菓子なんかつくれたっけか?」


「ああ。えっとね、前世にね、ある記念日に女の子からお菓子をもらって、その1か月後にくれた子にお返しをするって風習があったんス。

 さすがに買ってたらすげぇ金かかっちゃうし、オレ毎回、みんなの分、自分でつくってお返ししてたの」


「ふーん…?」



 ……なんだろう、聞いたこともない意味も良くわからない異世界の風習なのに、ほんのり味わうこの敗北感。



「ああ、ところでベルセルカ見なかったか?」


「へ? ベルセルカ様?

 今日は見てないッスけど、用っスか?」


「いや。贈り物で思い出した。

 次の誕生日に新しい甲冑をプレゼントするということで、職人と話はしてるんだが……。

 さすがに色は変えたほうがいいんじゃないかと思って、改めて話をしようかと」


「えと、ベルセルカ様、若とおんなじ黒にしたいんでしたっけ?

 いいじゃないっスか。理由わかりやすくて」


「わかりやすいから、嫌なんだろうが!!」



 なんてこと言うんだ、この二日酔い人魚は。

 大将と同じ色の甲冑を着たい、なんて、明らかに、いざというとき、身代わりになりたいという意思表示なのに。



「えー?

 だって、かわいいじゃないッスか。。。」


「かわいい!?

 おまえ、頭働いてないだろ、今日!」


「だって。

 好きな人とおそろいの鎧がいいってことでしょ?」


「いや、戦場で、好きな人とか……









 ………………は?」


「へ?」


「………ファラン、おまえ、いま何つった?」


「………………あ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★スピンオフ作品の書籍化決定・コミカライズ連載開始しました★
『王子、婚約破棄したのはそちらなので、恐い顔でこっちにらまないでください。』

気に入ってくださったら、ブクマ、評価など頂けると嬉しいです。
また、もし何か思うところあれば、感想などもぜひ。

小説家になろう 勝手にランキング

↓新作はじめました。

◆NEW!!◆ 『冷遇王女の脱出婚~敵国将軍に同情されて『政略結婚』しました~』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ