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(6)大陸聖王会議は敵だらけ




   ◇ ◇ ◇




 バルバロスの霊は、ベルセルカに説明する。




『大陸聖王会議といっても、要は大陸の首脳会議じゃ。

 “聖王”とは、一神教においては神に継ぐ力を持ち、神の理想の実現を助ける、地上に顕現した天使や聖霊に匹敵する存在とされる。

 ……というのは今の宗教にもとづく説明であって、この大陸で一神教が多神教を駆逐する前は、人でありながら神と並ぶ力を得た首脳を、そのように呼んだのであろうな』



「へー……すごいですね、そんな“聖王”が、ゲア大陸にはたくさんいるんですか?」



『そんなにおるか、阿呆が。

 (わし)の知る限り、ゲア大陸におる存命の“聖王”は、たった2人じゃ。まぁ、まだ生きておるかはわからんがな。

 その他に、魔族を率いる者の中に“魔王”なる、こちらの“聖王”に匹敵する者がおるとも聞くが、まぁそれはおいておこう。

 要は、“聖王会議”と箔をつけた名を掲げ、各国の首脳を集め、大陸全体の発展を目指そうという会議を毎年おこなっとる、ということじゃ』



「わかりました。

 でも、大陸もあちこちで戦争をやってますよね?

 平和的な会議とそれは両立するんですか?」 


『そうなると、戦っておるどちらかが会議を抜けたりするのう。あるいは会議と会議の間に国を滅ぼしたりもあるな』


「うーん。。。

 正義というよりは、やっぱりパワーゲームなんですね。

 で、さっきの、“聖王級魔法使い”とか、ペルセウスの“聖王級冒険者”とかは……」



『大陸聖王会議の最中、認定試験がおこなわれる。

 それぞれの職や技能のなかで、“聖王”に匹敵すると見られた者が推薦され、皆の前でその力を見せ、認定を受けるんじゃ。

 ペルセウスは、自身が開発した魔法を見せ10件が新たな聖王級魔法と認められた。

 それに、おびただしい数のダンジョンを潰した功績が認められ、史上五人目の“聖王級冒険者”になったそうじゃ』


「……将軍、よくそんな逸材を酒場でスカウトできましたね」



『フフン、レイナートには真似できぬじゃろう。

 まぁ、(わし)も己の腕が聖王級と呼ばれるにふさわしいのか、存命の間に、剣と魔法で腕を試してみたかったんじゃが、いかんせん、会議の場に行く暇がなくてな。

 まぁ、うちの息子ならば、剣と魔法両方とも余裕で聖王級の称号を取れるであろうがな』



 さらりと息子自慢を突っ込んでくるあたりは、生前と変わらない。ホッとする。



「そんな、すごい人たちが来るかも知れない会議が毎年……

 ん?

 ちょっと待ってください?

 その会議、大陸じゅうの人が集まるなら、真ん中あたりで実施してもものすごく遠いですよね?

 すっごく速い馬車で移動しても、国によっては、片道2か月とかかかりません?」


『うむ。

 言ってみればその移動手段も含めて、その王の力の誇示でもあったのう』


「…………なるほど。

 ノールトとの戦争をきっかけに、レグヌムが欠席し始めたっていうのも、長距離移動疲れというのはあるのでしょうか?」


『レグヌムは元々、王は出席せなんだ。

 宰相が出たり……そうじゃ、最後に出たのはまだ13歳の王女殿下であったかな』



「へぇ………。

 で、その会議って、いったい、どんなことを決めるんです?」



   ◇ ◇ ◇



 再び、カバルス城バルコニー。



「……知っておるか?

 ノールトは8年前の戦争直後の“大陸聖王会議”で、戦争と占領の正当性を主張し、会議はそれを認めた」



 皇帝の言葉に、レイナートはうなずく。

 自分用に準備した桃の果水を、こくりと飲む。



「え、ええ……。

 ですから、4月の戦いでレグヌムが領土を取り戻したことと、テセウスを降したこと、こちらの支援でノールト女王を元の地位につけたことは、ゲア大陸の他の国々からはきっと警戒をもって受け止められていることでしょう」


「それもこれも、征魔大王国レグヌムがこの8年“大陸聖王会議”に出ていないため。

 『なにをするかわからない、ならず者国家』と見なされているのだ。

 ノールトが信頼できる国と思われているのと対照的にな」


「……心外な話ですが。

 その、警戒されてしまうということが、レグヌムの安全を脅かすと、懸念してらっしゃるということですか?」


「ああ。

 しかも、大陸聖王会議には、一神教の最大勢力である大陸聖教会、そして他宗派も出席している」



 ぴく、と思わず自分の眉がひきつるのをレイナートは感じた。


 レグヌム国教会に限らず、唯一神を奉じる一神教は、どの分派(セクト)においても、転生者を異端であるとし、そのなかでも特に異世界人は危険であるという考え方を採用している。



「わかったであろう? レイナート。

 つまり、すでに貴様の敵だらけだ。

 かわいそうにな?」



 ふふっ、と皇帝は笑う。



「……ええ。

 今の時点で敵だらけ。

 しかし、次の会議を欠席すれば、もっと敵だらけになる可能性が高い」


「そういうことだ」



 ノールトの王配テセウスを降した一連の件だけではない。

 レイナート自身が『異世界人』の母を持つこと、転生者を保護し重用し、いま、転生者裁判を禁止したり奴隷制度の廃止に動いていること。


 危険視される材料だらけだ。


 権力者たちが集まる会議のなかで、レイナートを止めるためのレグヌムへの武力行使、進攻などが決定する可能性だってある。それを阻止するための、大陸聖王会議への出席。

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