第九十二話 ステータス
「おお!」
「格好いいわね」
美鈴とエヴィーに注目されて、なんだか居心地が悪い。赤を基本色にしているのは、今までと変わらず、なんというか、格好良いのだ。和風ファンタジーに出てきそうな鎧。そしてそれに見合うだけの特別な刀。
何よりも内側から力が湧き起こってくる。専用装備を全てつけただけで、間違いなくパワーもスピードもはるかに上がっていることがわかった。そして完全に守られているという安心感が今までよりも桁違いにある。
「ね。ステータス。ステータス! めったに全部揃えられる人がいないんでしょ? どんなステータスになるのか見たい。というか、美火丸装備についてのストーリーとかも出てくるって話だよね? どう?」
美鈴はそれが一番気になるんだと言ってきて、当然、俺も気になったからとにかくステータスを開いた。
名前:六条祐太
種族:人間
レベル:22→23
職業:探索者
称号:新人
HP:214→225
MP:80→84
SP:153→160
力:185→205(+130)
素早さ:192→212(+130)
防御:188→208(+130)
器用:154→174(+130)
魔力:78→81
知能:58→60
魅力:80
ガチャ運:5
装備:ストーン級【美火丸の額当て】六条祐太専用装備
ストーン級【美火丸の胴鎧】六条祐太専用装備
ストーン級【美火丸の脛当て】六条祐太専用装備
ストーン級【美火丸の籠手】六条祐太専用装備
ストーン級【美火丸の陣羽織】六条祐太専用装備
ストーン級【美火丸の魔法護符】六条祐太専用装備
ストーン級【美火丸の物理護符】六条祐太専用装備
ストーン級【美火丸の炎刀】六条祐太専用装備
ストーン級【美火丸の短刀】六条祐太専用装備
ストーン級【美火丸の履き物】六条祐太専用装備
ブロンズ級【アリスト】(バリア値100)
シルバー級【マジックバッグ】(200kg)
サファイア級【天変の指輪】
魔法:ストーン級【石弾】(MP4)
ストーン級【石爆】(MP7)
ストーン級【鉄壁】(MP12)
スキル:ストーン級【蛇行四連撃】(SP10)
ストーン級【韋駄天】(SP18)
ストーン級【剛力】(SP4)
ストーン級【暗視】(常時発動可)
ストーン級【睡眠耐性】(常時発動可)
ストーン級【意思疎通】(常時発動可)
ストーン級【飛燕斬】(SP8)
装備スキル:ストーン級【炎流惨】(SP18)
シルバー級【炎無効】(常時発動)
未承諾ブロンズ級【灰燼】(SP52)
未承諾シルバー級【炎華鏖殺陣】(SP113)
クエスト:2階層S判定 3階層S判定 4階層S判定
「うわー。最近見てなかったけど、魔法もスキルもかなり成長してる」
「そうね。見たことがない魔法とスキルが多いわ。使ってるとこ見なかったけど、今の階層だと使う必要がないの?」
「まあ、ゾンビ相手に【蛇行四連撃】とか使ってももったいないだけだしね」
ゾンビを相手にする難しさは強い敵と戦うのとまた種類が違う。
押し寄せる津波のような物量。
あれを継続的に捌くことが重要だ。継戦能力が必要な状況で、SPを無駄に消費するようなスキルを使うわけにはいかなかった。
幸い魔法もスキルも、成長したからといって、前の魔法とスキルが使えなくなるわけじゃない。特に【韋駄天】などというスキルは普段使いするにはあまりにも疲れる。普段は【加速】で十分なのだ。
「というか、装備スキルに死ぬほど危なそうなのがあるよね? 何この【灰燼】とか【えんばな……】」
「本当ね。未承諾だからまだ使えない?」
「そもそもこれなんて読むの?」
「えんりゅうざん、かいじん、えんかおうさつじん、だね」
自分が唱えることになるスキルだからだろうか。どうやって読むのかがすぐに頭に浮かんだ。
「この【炎華鏖殺陣】って、シルバー級になってるけど唱えたら何が起きるの? 花でも咲くの?」
「唱えられないスキルはまだ効果が分からないけど、このストーン級の【炎流惨】は殲滅スキルだね。周囲の敵を炎で焼き尽くすみたいな感じ」
「ゾンビ相手に使ったの?」
美鈴の目がキラキラしている。是非ともその使っているところを見てみたいという感じだった。
「使わないよ。他のゾンビが寄ってきて仕方ないし、必要も感じなかったんだ」
「まあ、そりゃそっか」
「こうやって見ると、やっぱり専用装備が全部揃うのって凄いのね。シルバー級ってレベル200~300でしょ? レベル100で開放されたとしても、相当強いわよ」
「まあ、正直、使いこなせる気がしないけど」
自分のクラスよりも遥かに強いスキルは、極稀に生えることがあるらしいが、攻撃系はまず間違いなく使いこなすことができないらしい。ましてや二つも上のスキルなんて使った日には逆に自分の体が燃えかねない。下手をすると使った瞬間死ぬかもしれない。そういうレベルだった。
「祐太、絶対に使っちゃダメだからね」
美鈴は俺の話を聞いて心配しながらも、
「そういえば美火丸のストーリーは?」と尋ねてきた。
しかし、それは俺が一番聞きたいところだった。専用装備にはそれぞれ由来のようなものがあるらしい。そしてそれが分かると、専用装備がまた別の効果を発揮する。という噂があった。
それに一番必要なのが、専用装備を全て装備して、その専用装備のストーリーが聞けるようになることらしい。まあ、例のごとくネットの噂なので、どこまで当てになるのかわからないが、今のところ、それらしいものが頭に浮かんでくることはなかった。全ての装備を揃えるだけではダメなのだろうか?
「何かもう一つ条件があるのかもしれないわね」
「一度南雲さんにも聞いてみるよ。まあ今回、外で会えたらだけど」
南雲さんには出てきてすぐに連絡を入れていた。それでも連絡がない。連絡さえつけばノータイムで現れる人だから、今回は会う事が出来ないのかと思った。俺たちはもうすぐ一年間ダンジョンにこもる。今回会えなければ一年会えなくなる。
俺はその事に一抹の不安を感じる。南雲さんだって探索者だ。絶対死なないなんてことはない。何よりももともと雲の上の人である。あの人から見たらまだまだ新米のペーペーである俺と友達なんて、気まぐれで言っただけなのかもしれない。
「じゃあ次は私のね」
美鈴はそう言うと自分のステータスを表示させた。
名前:桐山美鈴
種族:人間
レベル:24→25
職業:探索者
称号:新人
HP:182→189
MP:81→84
SP:199→219
力:145→165
素早さ:176→196
防御:156→160
器用:185→205
魔力:114→118
知能:54→56
魅力:67
ガチャ運:1
装備:ストーン級【髪飾り】
ストーン級【胴鎧】
ストーン級【脛当て】
ストーン級【小手】
ストーン級【肌着】
ストーン級【護符】×2
ストーン級【弓】
ストーン級【短刀】
ストーン級【履き物】
ブロンズ級【アリスト】(バリア値100)
シルバー級【マジックバッグ】(200kg)
サファイア級【天変の指輪】
魔法:ストーン級【レベルダウン(-2)】(MP5)
ストーン級【レベルアップ】(MP6)
スキル:ストーン級【精緻四射】(SP10)
ストーン級【剛弓】(SP3)
ストーン級【二連槍】(SP3)
ストーン級【変色体】(SP6)
ストーン級【探索網】(常時発動可)
ストーン級【暗視】(常時発動可)
ストーン級【睡眠耐性】(常時発動可)
ストーン級【意思疎通】(常時発動可)
クエスト:2階層A判定 3階層C判定 4階層S判定
「美鈴はSPと器用が凄いね」
「まあ弓兵はSPと器用頼りだから……。というか祐太、次の階層で許可される専用装備つけたらバフはどうなるの?」
「7個許可されるだろうから……+52だね」
俺は自分の装備を7個まで減らしてステータスを確認した。
「それなら器用228だよ。私より祐太の方が上じゃない?」
「う、うん?」
確かにそうだった。俺のステータスと比べると美鈴のステータスはかなり見劣りした。
「はあ、祐太ってナチュラルに私をディスるよね。自信なくすなー」
「いや、美鈴。自信を持とう。少なくとも虹カプセルは専用装備が全部揃うくらいの価値はあるはずだよ」
「そうだと信じてはいるんだけどさ……。いやいや、祐太の言う通りだね。自信をなくしたからっていいことが起きるわけでもないし、うん、頑張る」
美鈴なりに覚悟は決めてるようだった。以前ならこのままマイナス思考に陥るところが自分で頬を叩いて気合いを入れていた。
「じゃあ最後は私ね」
最後にエヴィーも自分のステータスを開いた。同時にラーイとリーンも召喚した。
名前:エヴィー・ノヴァ・ティンバーレイク
種族:人間
レベル:24→25
職業:探索者
称号:新人
HP:123→127
MP:221→241(+5)
SP:78→80
力:85→88
素早さ:89→92
防御:82→85
器用:153→173(+5)
魔力:209→229(+5)
知能:85→105(+5)
魅力:79
ガチャ運:2
装備:ストーン級【下着】
ストーン級【魔法衣】
ストーン級【マント】
ストーン級【グローブ】
ストーン級【髪飾り】
ストーン級【アミュレット】×2
ストーン級【コーリエの召喚杖】エヴィー・ノヴァ・ティンバーレイク専用装備
ストーン級【指輪】
ストーン級【ブーツ】
ブロンズ級【アリスト】(バリア値100)
シルバー級【マジックバッグ】(200kg)
ゴールド級【翻訳機】
サファイア級【天変の指輪】
魔法:ストーン級【リーン召喚】(MP55)
ストーン級【ラーイ召喚】(MP25)
ストーン級【火炎弾】(MP8)
ストーン級【火矢陣】(MP6)
ストーン級【水壁】(MP8)
スキル:ストーン級【召喚獣強化】(SP12)
ストーン級【召喚獣転移】(SP10)
ストーン級【召喚獣視界共有】(常時発動可)
ストーン級【暗視】(常時発動可)
ストーン級【睡眠耐性】(常時発動可)
ストーン級【意思疎通】(常時発動可)
装備スキル:ストーン級【召喚獣能力使用】(SP18)
クエスト:2階層A判定 3階層S判定 4階層S判定
名前:リーン
種族:ハイブルー
レベル:22→23
職業:戦闘融合型召喚モンスター
称号:エヴィー・ノヴァ・ティンバーレイクの召喚獣長女
青の者
HP:185→205
力:178→198
素早さ:180→200
防御:177→197
器用:143→149
知能:23→25
魅力:55
特殊能力:【咆哮】
【剛力】
【二重咆哮】(次女との合体能力)
【人獣合体】(常時発動可)
【認識加速】
【暗視】(常時発動可)
【睡眠耐性】(常時発動可)
装備スキル:【ブルーノヴァ】
装備:ストーン級【ブルーバー】リーン専用装備
ブロンズ級【アリスト】(バリア値100)
名前:ラーイ
種族:ホワイトライオン
レベル:24→25
職業:陸上騎乗型召喚モンスター
称号:エヴィー・ノヴァ・ティンバーレイクの召喚獣次女
HP:168→188(人型82)
力:166→186(人型81)
素早さ:230→250(人型83)
防御:167→187(人型91)
器用:68→72(人型41)
知能:36→38
魅力:65
特殊能力:【擬人化】
【咆哮】
【加速】
【暗視】(常時発動可)
【睡眠耐性】(常時発動可)
【二重咆哮】(長女との合体能力)
装備:ブロンズ級【アリスト】(バリア値100)
「リーンの【ブルーノヴァ】が解放されてるよ」
俺はそれを見て驚いた。何しろ四階層でずっと一緒にいたからだ。それなのに今まで【ブルーノヴァ】が解放されたことを俺は知らなかった。
「リーン。ひょっとしてこの能力ダンジョンの中で使えたの?」
「うん。なんか、体、全てのブルーバーを使ってリーンが自分で大砲になる。【人獣一体】の時でも合体している人間の左腕を大砲にできるよ」
リーンは寝起きで、眠そうな目をこすりながら説明してくれた。
「めちゃくちゃ強力じゃないか。教えておいてくれよ」
若干リーンを責めてしまうと、リーンは目線をエヴィーに向けた。その目線は、自分は悪くないと言いたげだった。
「それは私が悪いのよ。リーンに教えないように私が言ったから」
「なんで?」
「あんな寝る寸前の状態で、そんな能力使ったらどうなるかわかったもんじゃないわ。だから教えなかったの」
確かにあの状況では無理することはできなかったか。
「知ってたら使いたくなっただろうしな。それにしても、リーンはどこまでも便利になっていくな。左腕が大砲って……」
「左腕が大砲になるとか、ロマンがあるよね。ラーイも種族進化してなくても十分移動の役に立つ。やっぱり召喚士はすごいな」
美鈴が感心した。でも召喚士で上に行けたのはカインぐらいだという。種族進化をリーンができた時は、そこまで難しく見えなかったのだが? でも、南雲さんは種族進化は難しいと言っていた。
まあ南雲さんは強すぎて弱い人たちのことをガバガバにしかわかってなかったりするけど、何か南雲さんの言っている意味と、リーンの種族進化は違うのだろうか? 南雲さんレベル1031だもんな。レベル14でできたリーンの進化なんて、まだまだもいいところなのか?
「ねえ、この【召喚獣能力使用】って何? エヴィーって召喚獣の能力使えるの?」
次に目が引くのがその能力だった。専用装備が出たことで、エヴィーにも装備スキルが生えたみたいだった。
「使ったことがないから詳細は分からないけど、名前からするとそうみたいね」
「リーンみたいに手がぐにゃぐにゃになるとか?」
「えっと」
美鈴に聞かれてエヴィーは自分の腕がぐにゃぐにゃになるのか【召喚獣能力使用】を使い確かめてみた。そうすると左腕だけが青く変色して、本当に左腕が剣の形になった。
「おおお!」
思わず俺も声が漏れた。盾の形にしようとすると盾に変化する。左腕以外は変化しないようだが、左腕限定ならばリーンと同じように使うことができるようだった。さらにエヴィーは検証してみたが、そのほかの召喚獣の能力は使えないようだ。
「ラーイの能力は何も使えないの?」
「ええ、無理みたい」
「ラーイが種族進化してないことと関係あるのかな?」
「おそらくね。それ以外原因は考えられない。やっぱり私はラーイを進化させることが一番大事みたいね」
よほど疲れているようでラーイは召喚されても獣の姿で眠ったままだった。リーンもその上に乗っかって眠っている。巨大な3mほどもあるライオン。改めて見ると眠っているだけでもなかなか迫力がある。
ラーイは今でも十分に役に立つが、完全に青色のリーンを見ると、それでもやはり種族進化させることが何よりも大事なのだということがわかった。
「それにしてもエヴィー。その能力、相当便利だよ。エヴィーだってこれで近接戦になっても少しは戦えるんじゃないか?」
「どうかしら、近接戦に必要なステータスが私にはないから……。まあ、それでも、いざって時にはかなり使えるけど」
「二人とも私を置いていかないでよー」
美鈴はエヴィーに抱きついた。
「大丈夫よミスズ。私とユウタがあなたに虹カプセルが出るまで守ってみせる。だから、あなたもそれまで死なないように努力するのよ」
エヴィーが美鈴をしっかりぎゅって抱きしめ返した。そうされると美鈴は照れてしまうようで、顔が真っ赤になっていた。俺たちは本当に良いパーティーになってきている。二人の仲が良くなるように俺はなんの協力もできなかった。
むしろ俺のせいで二人の仲が悪くなっているようなものだった。それでも、美鈴とエヴィーが努力して仲良くなってくれた。そのことに俺はとても感謝していた。次は伊万里である。きっと俺が帰ってくるのを待ってくれているだろう女の子のことを思い出した。
もともと探索者になることに積極的ではなかった伊万里。
でも俺が一緒じゃないときっと伊万里は生きていけない。
伊万里は俺よりもずっと頭がいい。
俺が探索の合間に家に帰った時は、探索者についての質問をよくしてきた。
『結局さ。探索者になるのに一番必要なものってなんなの?』
『ううん、まず一番最初に大事なのはモンスターを見てビビらないことかな』
そんな話をしたことを思い出し、伊万里が今どうしているのか気になった。





