第九十話 第四回ガチャ
俺たちは【天変の指輪】で変装してからガチャゾーンの中へと入る。すると、いつもは誰もいないのに先にガチャを回している人がいた。
「やりましたわお嬢様!」
「ええ、やったわアンナ! あなた大したものよ!」
その二人を見間違うはずもなかった。三階層でゴブリン集落から助けた奇妙なほど上品な女の子たちだった。確かクリスティーナさんとアンナさん。綺麗な銀髪とブラウンの髪。
「あっ」
向こうもこちらに気づいた。ちらっと金色に光るカプセルが見えて、ガチャ結果が良かったようだ。
「こんにちは」
俺の方から挨拶した。
「あ、ええ、すみません。すぐに出て行きますので」
俺たちは変装している。だから知らない探索者に見られて、慌てて向こうは出て行こうとした。床に落ちていたカプセルを二人で慌てて拾っていた。元気に探索者を続けているようだ。
あんなことがあって、まだ一週間も経っていないというのに、精神的な病にかかることもなく、本当にタフな子たちである。上品そうに見えるが、かなり心が強い子達なんだなと思った。そんなことを考えていたら彼女達がガチャゾーンから出て行ってしまった。
「あれ? 声かけるんじゃなかったの?」
美鈴が不思議そうに聞いてきた。当然、俺が声をかけると思っていたようだ。美鈴は外に出て行ったクリスティーナさんたちが気になるのか、その後ろ姿をガチャゾーンの窓から見ていた。
「いや、うん……」
俺も一階層のサバンナを元気そうに走っていく二人を見る。そのまま外に出るわけではなく、再び三階層に降りていくのかサバンナをかなりのスピードで走っていた。
「俺も声かけようかなってちょっとは思ったけど……」
美鈴とエヴィーを見る。ここに明日から伊万里が加わる。伊万里のレベル上げが終わるまで少し時間がかかるけど、美鈴とエヴィーと伊万里とそして俺。この四人で探索者をやっていくのだ。そこに誰かを入れる隙間はない。
もちろんあの二人がそんなことを望んでいるわけじゃない。でも、南雲さんも、俺の魅力80の容姿でモンスターから女の子を助けたりすると、まず間違いなく好かれると言っていた。
そして俺は南雲さんほど割り切って女の子と付き合うことはできそうにない。自惚れかもしれないが、余計な声をかけて、必要のない争いの種をパーティー内に持ち込むのが怖い。女同士がもめると怖いのは美鈴とエヴィーでよくわかったのだ。
「困っていそうならともかく元気そうだったしね」
「ふーん」
ごまかした俺の言葉には特に反応せず、美鈴もあの二人を助けた当事者だったからか、走っていく後ろ姿が消えるまでずっと見ていた。
「あの人、背中に……」
美鈴が何かを言いかける。
「ミスズ、ユウタ。それより早くガチャを回しましょうよ」
エヴィーはクリスティーナさんたちと話したこともない。なんの興味もわかなかったらしい。それよりもガチャに集中したいようだ。
「わかった。じゃあ回すか」
冷たい対応にも思えたが、ゴブリン集落に捕まっているわけでもなく、元気にしているようだ。エヴィーの言うことも尤もで、俺も気分を切り替えることにした。美鈴は二人が一階層を走って行った後も外を気にしていた。
「ま、いっか」
クリスティーナさん達はさすがに探索者と言うべきか、すぐに姿が見えなくなった。そうすると美鈴も自分たちのガチャのほうが気になりだした。
「祐太。1000回分だよ」
「ああ、1000回分だもんな。頑張るぞ」
俺も気合を入れる。今回は大量に回すからさっそく回そうと思って、ガチャに手をかけた。
「ストップ。まず私からよ」
だがエヴィーに止められた。
「エヴィー、順番なんてどっちでも一緒じゃん。ガチャは確率論なんでしょ?」
美鈴は自分が回さないためか、今回は気楽そうだ。いつもなら『ガチャは確率論』なんて絶対に言わないくせに。
「ミスズ。あなた私にユウタのあとでガチャを回せと言うの?」
「嫌なの?」
「い・や」
エヴィーがハッキリそう言うと俺は腕をつかまれて後ろに下がらされた。そして、美鈴の影響なのか、エヴィーが何かに真剣に祈りを捧げだした。ガチャ神様がうんたらかんたらとか言い出して、両手を合わせて天を仰いでいた。
「ガチャは確率論だって自分が言ってたのにね」
「だね」
美鈴が耳打ちしてきて俺もうなずいた。
「そこ、うるさい。気が散る!」
「はーい」
美鈴は今回のガチャを回さないので、エヴィーで遊んでいる。エヴィーは祈りが終わったのか、ガチャコインを投入していく。ガチャのダイヤルに手をかけた。そしてゆっくり回した。
「お願い! 金カプセル、一つでいいから出て!」
そして見慣れた光景が広がる。ガチャの排出口から大量に白カプセルが出てくるのだ。その中に幸い銀カプセルが1個出てきた。銅カプセルが6個。まあまあの結果だ。
「エヴィー、ガンバ」
美鈴が応援する。ガチャが始まると熱が入ってくるようだ。
エヴィーはガチャ運2である。ガチャ運2の金カプセルが出る確率は4D5と言われている。625分の1で金カプセルが出てくる計算になる。今回エヴィーが回すガチャコインは60枚であり、100回用のガチャが6回分。
つまり確率的には金カプセルが出てもおかしくないはずだった。
エヴィーがさらに回した。ガチャの排出口からコロコロ、コロコロ大量に白カプセルが出てきて、その中に銅カプセルが3個出てくる。銀色は1個もなかった。ガチャ運は美鈴よりもいいはずなのだが、あんまり結果が美鈴と変わらない。
「嘘でしょ? まさか金がこれから一つも出ないなんてことはないでしょうね?」
エヴィーの顔が青ざめる。美鈴に一枚も回させずに自分は回すことに、本人は結構プレッシャーを感じているようだった。美鈴もだんだんと、エヴィーの運のなさに心配になってきたようだ。
「私よりガチャ運いいはずだよ! 頑張れエヴィー!」
と応援する。ガチャで何を頑張るのかよくわからないが、俺も、
「頑張れエヴィー!」
と応援して、そしてエヴィーが三度目のガチャを回した。銅カプセルが4個出てくる。またもや銀カプセルが1個も出てこない。本当にいつも通りのエヴィーだった。
「じょ、冗談よね? まさかあなた一つも出ないなんて言わないわよね? あなたそんなに悪い子じゃないわよね?」
エヴィーが過呼吸になってくる。ガチャには人格などないのだが、なぜか話しかけだした。このままだとエヴィーこそ虹も出ないんだし、金も出ないんだし、ガチャを回さない方がいいんじゃない? という結果になってしまいかねない。
でもエヴィーは果敢にももう一度回した。
その中に、
「……」
燦然と輝くものがいた。
「ミスズ!」
「エヴィー!」
なんか急に二人で抱き合い出した。
「金色よ! 金カプセルに間違いないわ!」
そう。それは確かに金色だった。
「エヴィー信じてたよ!」
「良かった。これでもうユウタに私の分のコインも渡せるわ。そうしたらあなたに少しでもコインを残せる」
「エヴィー……。私のことをそこまで」
「当然じゃない。あなたとお別れなんて私絶対に嫌なんだから」
二人は専用装備が出たと思って喜んでいるようだ。
しかし、あまりにも金カプセルが出なさすぎて忘れているのではないだろうか? 金カプセルは、金カプセルが出たらそれで終わりではない。そこからさらに専用装備が出てくる確率は1/6ぐらいなのだ。
つまり実質、エヴィーが専用装備を出せる確率は本来のガチャの確率×6になり、3750分の1なのだ。ぶっちゃけ美鈴のガチャとあまり確率が変わらない。むしろ虹が出ないエヴィーの方がガチャ運が悪い。とすら言える。
とはいえ既に一つ出たから今回はここから1/6である。
「落ち着いて、落ち着くのよ」
「ええ、ゆっくり見ましょう」
美鈴は自分が回せないことなど忘れたみたいに、早くエヴィーの専用装備を見たいみたいだった。
「エヴィーの金は祐太の金とは意味が違うもんね」
「そう、ユウタの白カプセルみたいに出てくる金と私の金は価値が違うの」
なんか色々言われてる。しかし全部本当なので何も言わなかった。
「ミスズ。これ、後でゆっくり開けてもいい?」
「うん、いいよエヴィー。あとでゆっくり開けよう」
と、俺はこんなに喜んでいるところに水を差すようで悪かったが、エヴィーにここからさらに専用装備が出る確率は1/6だと話しておく。がっくりしたエヴィーが、
「自分こそガチャをやめるべきだわ……」
落ち込んだエヴィーに、「いいからエヴィー回しちゃえ」と美鈴が励まし、エヴィーは、「じゃあ私も今回だけにしておくわ。5、6階層ではイマリに譲るわ」と宣言して、さらに二度ガチャを回した。そして、
「ミスズ、これは夢?」
またもやガチャの排出口から一つだけ金色に光るものが出ていたのだ。
「夢じゃない。夢じゃないよエヴィー」
「なんだかさらに金カプセルが一つ出た気がするのだけど夢じゃないの?」
エヴィーはさらに金カプセルを一つ出した。合計で二つ。これで専用装備が出る確率は1/3になった。
「……ユウタ。これってすごいわよね?」
「うん。少なくとも金カプセル二つはもう一つ上のガチャ運の人ぐらい出てるんじゃないかな。もしかしたら専用装備が二つ入ってるかもしれないよ」
ゾンビの時とは違う意味で、エヴィーは立ち眩みがしたようで、床に手をついた。俺はエヴィーの相手は美鈴にしてもらうことにした。何しろ俺たちはあまりガチャゾーンで長居をしたくない。さっさとガチャを回そうと、俺もガチャの前に立った。
「じゃあ回させてもらうよ」
あんまり緊張はしてなかった。あまりにもガチャ運が良すぎて、必ず当たりを引くことが分かり切っている。緊張感など出るはずもない。だから、さくっとガチャを回した。
ガチャの排出口から一気にコロコロコロコロ大量にカプセルが出てくる。そして約束された勝利。というものだった。いきなり最初のガチャから金カプセルが9個。銀カプセルが6個。銅カプセルが17個出てくる。
それを衝撃から立ち直ったエヴィーと美鈴が数える役割をしてくれた。
「まあまあいい感じね。さすが神の右手を持つユウタだわ」
「祐太、頑張ってー」
「ミスズ。違うわ。ガチャ長者はそんなに頑張らなくていいの。ライトな感じでサラッと回せば勝手に金カプセルが生まれてくるのよ」
「そっかー。ガチャ長者はすごいねー」
どうやら二人とも俺が金カプセルを出すことにはなんの衝撃も受けないらしい。それはそれでちょっと寂しい。それでも俺はガチャを回し続けた。次は金カプセルが10個出てきた。銀カプセルが4個。さらに、銅が9個出た。
「おかしいなエヴィー。私の目がおかしくなったのかな? 金カプセルより、銅カプセルの方が少ないよ」
「大丈夫よ。これがガチャ長者の日常。格差社会の縮図がそこにあるのよ」
「祐太って『ダンジョンは平等だ』とかよく言うよね」
「本当だわ。絶対にダンジョンは依怙贔屓をしてる。きっとユウタの後ろにガチャ神様はいるのよ」
「うん。今度から祐太に向かって祈ろう」
なんか言われてるが、次を回した。次は金カプセルが5個出てきて、銀が6個出てきて、銅が18個出てきた。
「はい。めっちゃ順当な結果が出ましたね。エヴィーさん」
「全くユウタは自分のガチャ運を過信しすぎよ。もっとしっかりガチャ神様に祈らないと。だからこんな体たらくな結果になってしまうのだわ」
「祐太ー。もうちょっと金カプセル出してもいいんだよ」
「ユウタ。あなたのガチャにうちのパーティの明日がかかってるのよ。しっかりしてもらわなきゃ困るわ」
なんかまた色々言われてる。さらにガチャを回すと金カプセルが5個。銀が5個。銅が13個出てきた。
「なんかもう全然驚かなくなってきたよエヴィー」
「きっとユウタはガチャで当たりしか出せない病気なのよ。外れる悔しさを知らないなんて悲しい人だわ」
またガチャを回した。金が5個。銀が4個。銅色が24個出てきた。そしてもうそのまま次を回した。
結果は金が6個。銀が3個。銅が11個。
次が金が5個。銀が8個。銅が11個。
次が金が11個。銀が8個。銅が10個。
次が金が6個。銀が7個。銅が14個。
次が金が8個。銀が9個。銅が8個。
合計金カプセルが70個。銀カプセルが60個。銅カプセルが135個出てきた。
「金カプセルが70個……」
「はは」
俺のガチャ結果だけは誰にも見られるわけにはいかない。見られたら絶対面倒なことになる。それだけは間違いなかった。エヴィーと美鈴は馬鹿なことを言いながらも、俺がガチャを回してカプセルが出てくるたびに、マジックバッグにさっさとガチャカプセルを収納してくれていた。
二人とも俺のガチャ結果が誰にも見せられないことをよく理解してくれていた。
「専用装備が金カプセルから出てくる可能性って1/6だよね?」
美鈴が確認してきた。
「ああ」
「専用装備はダブって出てきたりはしないんだよね?」
「そう言われてるね。いや、ダブって出てきたなんて話は聞いたこともないから絶対そうだと思う」
「じゃあ祐太の専用装備はこれでほぼ100%揃ったってこと?」
「俺が相当、運の悪い奴じゃない限りね」
俺の残りの専用装備は6個である。確率的に言えば、金カプセルが36個あれば全て揃うわけだから、70個もあれば、よほどのことがない限りすべて揃う。そしてこれだけ金カプセルがあれば資金としても相当回せる。
これでエヴィーに杖の専用装備が出ていれば、五、六階層でイマリのガチャを優先して、八階層で美鈴の虹カプセルへのギャンブルが出来る事になる。
「カプセル落としたりしてないよね?」
「大丈夫。ちゃんとチェックしたわ」
「それじゃあ外に」
「ね、祐太。ちょっとトップランキング見て行かない?」
さっさと外に出ようと思ったら、美鈴が提案してきた。
【トップランキング】
それは探索者のトップ1000人が乗っているランキングである。ダンジョンが公開しているもので、ガチャゾーンにある石碑にレベル順に並んで、名前が刻まれているのだ。
ここで公開されている名前は二つ名で、本名が公開されているわけではない。その二つ名はレベル100の時にダンジョンから与えられ、以降、500と1000で更新されるそうだ。
「ミスズ。そんなのここで見なくても、後でいくらでもネットで見れるじゃない」
当然、すべてのガチャゾーンの分かりやすい所にあるから、あとでネットで確認することは容易だった。何しろ誰かしらが写真に撮ってネットに公開するのだ。まあネットを見なくても新聞に毎日乗っているぐらいである。俺がよく確認しているトップランキング1000もここから得ている情報だった。
「でも、いつも慌てて出て行くからちゃんと見たことないんだよね。一度は実際に見たくない? ね、祐太」
「まあそれは……」
ちらっとこういうときに一番冷静なエヴィーに許可を求めるように二人で見た。
「そんな目で見ないでよ。そりゃ、私だって直接ちゃんと見たいわよ。アメリカではガチャゾーンでゆっくりなんて絶対できなかった」
さらにじっと見つめた。それにしても綺麗な顔してるなと思った。
「ま……まあいいんじゃないの? トップに憧れる新人探索者ってことなら、もし、誰かに見られても問題ないでしょう。こんな姿だしね」
美鈴とエヴィーは中年夫婦の姿。俺はレベルが上がる前の姿である。この姿でショップで買い物をしたこともあるが、問題になったことはなかった。
カプセルもちゃんとマジックバッグに収納している。俺たちはトップランキングを見に行くことにした。といってもそれはすぐ近くにあるものだった。
ガチャの横にかなり大きな白い石碑が立っていた。
「いつも気になってたけど、結構でかいよね」
「うん」
3mほどの高さがある石碑で、横幅は5mほどある。ダンジョンが現れて三年目に急に全てのガチャゾーンに現われたのだ。そのせいで隠れて探索者をしていたものの存在も明るみに出てしまい、目立ちたくない者にとっては非常に迷惑なことだった。
でも、日本の立場が国際的に上がるきっかけにもなったのだ。特に日本の英傑はフォーリン以外、ほとんど表に出てこなかった者たちばかりだ。龍炎竜美も鬼の田中も万年樹の木森も、これが現れるまでは全く知られていない探索者だった。
まあ、だからって人気のスポーツ選手を相手にするみたいに、好き放題に騒ぎまくれるわけではない。そんなことをすると探索者に殺されかねない。とはいえ、その存在が徐々に表に出てくることになるきっかけになったのは確かだった。
「私たちもここに名前乗りたいね」
「いつのことやら」
俺たちは石碑を見上げた。レベル1000を超えた者達だけは、一際大きく表示されていた。
1位 レベル1044 弓神ロロン ニューヨーク
2位 レベル1042 天使フォーリン 大阪
3位 レベル1040 不死者コシチェイ モスクワ
4位 レベル1035 円卓の軍勢カイン ロンドン
5位 レベル1033 瞬神ゲイル ニューヨーク
6位 レベル1031 龍炎竜美 池袋
6位 レベル1031 万年樹の木森 池袋
8位 レベル1030 魔喰い饕餮 ベルリン
9位 レベル1030 麒麟の王 ベルリン
10位 レベル1027 鬼の田中 大阪
11位 レベル1024 月神ナディア デリー
12位 レベル1023 太陽神メト デリー
13位 レベル987 忍神千代女 池袋
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1000位レベル412 流星王レッド 浅草寺
一番右の表示がホームにしているダンジョンがある場所だった。上位には日本人がかなり名前を連ねていて、その中でも一番レベルが高いのがフォーリンだ。ただ、だからといって、フォーリンが龍炎竜美より強いかというとそうではないらしい。
『レベル1000以上が戦って必ずどちらかが勝つってことはねえよ。ロロンとメトが戦っても結構いい勝負になると思うぞ』
南雲さんはそう言っていた。レベル1000以上になってくると、天変地異かと思えるようなスキルや魔法を何かしら必ず持っているそうだ。特に太陽神メトは核融合魔法を持っているらしく、それが恐ろしく強力らしい。
「それにしても……」
12英傑の中で、鬼の田中の平凡な二つ名っぷりがすごい。昭和の不良とかに居そうな二つ名だ。名前が書いてあるだけなのに、田中だけ肩身が狭そうに見える。せめて鬼神とかならよかったのに、ただの鬼。でも、田中のそういうところも好きだ。
「上は変わらずだな」
「なんだか雲の上って感じがするね」
「ユウタ。日本の四人はパーティーだって言われてるでしょ? どうしてホームが違うの?」
エヴィーは純粋に疑問を持っていたようでたずねてきた。その質問を俺に聞いてくるところをみると、エヴィーは南雲さんの正体に気づいているのかもなと思った。
「それは知らないよ」
南雲さんは教えてくれることと教えてくれないことがあって、教えてくれないことは全然教えてくれない。その基準がどこにあるのかは俺にはよく分からなかった。
「まあ、南雲さんはあんまり距離とか関係なさそうだし」
「ああ、それはそうみたいね」
そんなことを考えていると、また南雲さんに会いたくなってきた。ダンジョンから出てまず会いに行くのは伊万里で、その次は南雲さん。最後が米崎で良いだろう。
「出よっか?」
「ああ」
美鈴がトップランキングが見れて納得がいったようで言ってきた。
俺たちは外に出ると少し歩いた。そしてダンジョンの入り口から離れた人気のない駐車場で、いつもどおりリムジンが止まっていた。デビットとマーク。黒服マッチョの二人にエスコートされて、俺たちはリムジンに乗り込んだ。





