第八十五話 夜の怪物(ナイトウォーカー)
そいつはまるで夜の闇から溶け出すようにあらわれた。夜の怪物。それは腐乱した赤黒い体だった。毛皮が剥げ、頬もこそげ、肉が露出している。通称ゾンビ。ナイトウォーカーはどう見てもゾンビだった。
どういうゾンビかといえば、サバンナの肉食獣が全てゾンビ化しているのだ。その強さはゾンビ化した動物が何かによる。
目の前にいるゾンビはチーターだった。ただ、テレビで観た流麗でしなやかに動くチーターではなく、こちらに気づくと恨みがこもったような目で見つめてきて、緩慢に動き出す。
『ユウタ。こいつのレベルいくつ?』
『言っただろ。この階層ぐらいから細かい情報はないんだ。でも普通に考えてチーターのレベルが上がれば、速いに決まってる』
まだ距離は10mほど離れている。緩慢に動いているように見えたチーターが一瞬強く地面を踏みしめた瞬間。その姿がブレた。1秒もしないうちに接敵する。夜の怪物であるゾンビの爪と美火丸が激突して火花が散った。
向こうはすぐに離れ、回転して喉元へと喰らいつこうとしてくる。それをリーンの盾が守ってくれた。俺はリーンに防御を任せてゾンビの腹を刺す。三階層までのライオンならこれで殺せる。しかし腹を刺したところで、ゾンビは違う。
だからどうしたという感じだった。腹を刺されたまま前足を振り下ろしてきた。俺は籠手で受け止め、腹に刺した美火丸を抜いた。ジュゥッと肉が焼ける音とともに、ドロッとした粘液のようなものがゾンビの腹から溢れ出てくる。
『ユウタ、こいつ気持ち悪っ』
合体しているせいか、リーンが本能で怯えていることが分かった。
『俺もそう思う。ゾンビだけあって生半可なダメージじゃ死なないようだ。でも、腹が焦げてる』
美火丸の炎属性が効くようで腹が焼け爛れていた。ゾンビは太陽が苦手であり、炎も苦手という話だ。そして、このゾンビを殺す方法は一つだ。
『リーン。心臓が弱点だ。そこを正確に攻撃するんだ。心臓を破壊しない限りは、たとえ心臓をくり抜いても、時間をかけて復活してしまうらしい』
元がチーターなだけあり、地面を踏みしめる度に凄まじい速度で向かってくる。通り過ぎざまに前足の爪と牙が、ほぼ同時に襲い掛かってくる。俺はそれを蹴り飛ばすことで受け止めた。
ゾンビが地面に着地すると、腐った体で速く動きすぎたのだろう。着地した足が折れて骨が飛び出す。それなのにまた平気で向かってきた。俺は受け止めるために身構えるが、リーンが間に入ってブルーバーが伸びた。
『リーン。いけるか?』
『うん。頑張る!』
リーンが我慢してブルーバーを伸ばす。ブルーバーはゾンビの四方から不規則に動き、体に巻き付く。そのまま伸びてゾンビを動けない状態にして胸を切り裂く。心臓が露出した。
『うええっ』
紫色の人間と似た心臓。ドクドクと脈動している。リーンは気持ち悪さを我慢して、チーターの心臓をブルーバーでしっかりと突き刺した。
するとゾンビは体が動かなくなる。サバンナの暗い地面にパタリと糸が切れた人形みたいに横たわった。
『ああ、気持ち悪かった。でも、こいつちょっと弱かった?』
リーンが俺との結びつきを強くするように締め付けを強くする。
『そうだな。ラストの方がはるかに強い』
『ゾンビって強さは大したことない?』
気持ち悪い事以外は意外と余裕のある戦いだった。まだ四階層でレベルが上がっていない初戦であることを考えると、かなり弱いと言えた。
『まあ、この階層で一番面倒なのは、ゾンビ一体って訳じゃないからな』
『ゾンビより、もっと強いやついるの?』
『いや、違う。そうじゃなくて、どんなゾンビが来ても単体だと、ゾンビは敵じゃないらしい。それよりも、こいつらには面倒な習性がある。その習性の方がはるかに怖いって言われてる』
『心臓刺さないと死なないこととか?』
『いや、こいつらはすぐに数が増えるんだ。もっと正確に言うと、生命の匂いに集まってくる習性と言われている。ゾンビは生者が同じ場所にとどまっていると、すぐにそこに集まってくるそうだ』
それこそゴブリン集落の比ではない。
1000とか2000とか3000とか、そういう単位で集まってくる。数の多さと普通に殺しても死なないタフさ。これが四階層の難しさで、そこまでの情報はネットにも載っていた。
地獄の底から響いてくるような奇妙な声が周りから常にする。暗闇の中でゾンビが生者を呪い殺そうとしているような声だった。
『すぐに場所を変えよう。同じ場所に居ると集まってきて手に負えなくなるらしい。複数体同時に相手にするのは、もう少しレベルが上がってからだ』
『賛成』
俺は強く地面を踏みしめた。かなり急いで駆け出していた。スマホの地図アプリで方向を確認して、階段探索ルートに沿っていく。この階層は、眠れないし、止まれない。常にゾンビに襲われる危険がある。
長時間同じ場所で停まっていることができず、排泄することですら命がけである。だから美鈴達とは『ポーションだけを飲んで、五日間排泄しなくていいようにしよう』と話し合っていた。
しかし、これに加えて俺にはもう一つ重大な問題があった。
モンスターと戦っているときはまだいいが、単調に走り出すと、どうしてもリーンに包まれている気持ち良さに意識が向いてしまう。アホみたいな事だが、俺にとっては深刻な問題だ。
『リーン。しっかり見逃さないようにするんだぞ。こちらが疲れてきた時に、夜の怪物は襲いかかってくるんだ』
内心をひた隠しにして、俺は言った。
『うん。わかった』
『俺は絶対に前を見逃さないようにするから、リーンは後ろの方を頼む』
『大丈夫。ユウタの頭の後ろに、リーンの目がある』
リーンの言葉が全てエロく聞こえる。これは本気で気をつけていないと色々大変なことになってしまう。大変なことになったら精神的に立ち直れない一生のトラウマを抱えてしまうことになるのだ。
『ミスズ。そっちはどう?』
俺は美鈴たちに連絡を取った。こうすることで精神の健康を保つのだ。
『祐太、ごめん戦闘中!』
『す、すまない』
俺は慌てて美鈴への【意思疎通】を切った。
『大丈夫かな?』
リーンは向こうが心配なようだ。俺がアホな理由で美鈴と連絡を取ったことは、リーンにだけは悟られてはいけない。
『まあ二人とラーイを信じるしかないよ。それに何も考えずに、二手に別れたわけじゃない。リーンの主の魔法はゾンビ特効だろ』
『ああ、火魔法?』
『そうだ。南雲さん情報なんだけど、ゾンビは火魔法をかなり嫌がるんだ。俺たちよりはきっと楽に戦えているはずだ』
俺たちが二手に分かれることができた理由はエヴィーの火魔法にもある。ゾンビは火に弱い。太陽と火が苦手なのだ。そしてゾンビは防御力もあまり高くない。そもそも攻撃を避けるという行動をしない。
だから、エヴィーの火魔法と美鈴の弓が十分に効果を発揮するはずだ。
『そっか』
これ以上ないというぐらい繋がっているせいか、本当にリーンがホッとしていることが伝わってきた。闇の中、リーンが僅かな星灯りを集めて俺の目に届けてくれるおかげで、何とか視界は確保できた。
灯りはつけない。つければナイトウォーカーが一斉に襲い掛かってくる。こいつらは火が苦手な割に、人工の光にはすごく寄ってくるのだ。太陽と火は苦手で、生命の匂いと人工の光が好き。そういう特性のあるモンスターだった。
『リーン。エヴィーと離れるのは寂しいか?』
俺たちはしゃべりながらも常に走った。
『少しだけ。でも、ユウタと一緒だからそんなに寂しくないよ』
リーンは上手くそれをサポートしてくれた。
奇妙なうめき声ばかりが聞こえる闇の中にいると気分が滅入る。それでも、二人で励まし合った。駆ける速度はリーンと合体しているおかげで、時速100キロぐらいを継続的に出すことができた。
夜の闇がすごい勢いで後ろに流れていく。
周りを見渡すと徘徊しているゾンビの姿がたくさん見えた。一階層のゴブリン以上にあちこちに居る。生殖活動をしないゾンビである。その数はゴブリンのように増えたりはしない。
しかし、三年ほど探索者が入ってこないと、命を求めるように苦手なはずの三階層のカンカン照りの太陽のもとに出てきてしまうのだ。ゾンビが三階層に出ると、この四階層からゾンビの数が減る。
そうすると自動的にダンジョンが四階層のゾンビをリポップさせる。そうして無限湧き状態になったゾンビが人の世界に出てくる。これがダンジョン崩壊の第二陣。第一陣のゴブリンよりも、かなり厄介なことになるらしい。
ゾンビに人間が殺されてしまうと、人間もゾンビ化してしまうのだ。そして生者を殺して回るようになる。南雲さんが、
『国の生き物全て丸ごとゾンビ化した笑えない話も既にある』
と言っていた。南雲さんは仕方がないので、その国を丸ごと灰にしたらしい。そんな情報ですら知らなかった俺は、どうやら世界はどんどんとダンジョン的になっているようだと改めて知った。
俺は腐乱した体で苦しそうに動いている雄のライオンの首を迷いなく落とした。
『ユウタ。何体倒せばレベルが一つあがるの?』
『まあ相手のレベルによるだろうけど、10体ぐらいじゃないかな』
『それじゃあユウタはリーンと合体してる状態だから20体?』
『そうだ』
リーンは本当に賢くなった。ハイブルーになってかなり察しも良くなった気がする。
『まあ、この階層はレベル上げが難しいというより、眠れないことと、止まれないことが大変なんだよ。リーン、眠くなったりしてないか?』
『大丈夫。ユウタと一緒だし、眠らずに朝までやれるよ』
今の言葉もなんかエロく聞こえてしまった。俺は自分に悟りを開くのだ。涅槃へと至るのだ。と、言い聞かせていた。五日間ずっとこのリーンとほとんど密着した状態で生活しなきゃいけないからだ。
『リーン』
『何?』
『……』
もうちょっとくっついている感じを離すことはできないかと口にしようとして、やめておく。そんなことを口にすればリーンを意識していることがバレてしまう。決してこの気持ち良さを手放したくないわけではない。
それより早く探索しなければいけない。五日間、眠らない。眠りたいところではあるが眠らない。眠ったが最後、クエストをクリアするのは不可能になる。
暗闇の中、五日間で階段を探すのはギリギリだ。たとえ眠らなかったとしても、五日間での探索は運の要素も絡んでくる。
俺とリーンは合体したまま走り続けて三時間ほどが経過していく。そこで一度リーンとの合体を解いて、走った状態だけは保ちつつ、体力回復用の10万円ポーションを飲んだ。
「これでまだまだ頑張れるね」
真横で一緒に走ったままのリーンは落ち着かないみたいだ。左手のブルーバーが俺に巻き付いてきた。
「はは、まあ、そうだな。しかし、リーンが俺とずっとくっついたままなのが嫌じゃなくてよかったよ」
「リーンはユウタとずっと合体したままなの嬉しいよ」
「そ、そうか」
「うん。それとユウタ。リーンはユウタなら、リーンの中で何をしても大丈夫だからね」
「……」
再びリーンと合体し直す。リーンが何の話をしているのかは知らない。その意味を聞き直したら、なんだか取り返しのつかないことになってしまいそうな気がした。それに命の危険も常にある状態であった。
『うおっ』
思わずビビってしまう。四階層のゾンビは隠れる習性があるようだ。草むらから急に飛び出してきて、俺がビビって反応が遅れると決まってリーンが守ってくれた。ブルーバーが触手のように伸びて、ゾンビの牙を防ぐのだ。
『すまん。リーン』
『いいよ。ユウタはリーンが守る』
学校へ行っていた頃のビビり癖が再び蘇っている。草むらの中に忍んでいたゾンビが急にあらわれたりすると、どうしても怖くて一瞬行動が遅れてしまうのだ。
『それにユウタが怯えるのは最初だけ。あとは冷静に対処してくれてる』
『そう言ってもらえると助かる』
リーンはいつのまにか大人になってしまった。頼ってしまっている自分がいる。そして俺が、最初に、とある限界を迎えたのは走り出して24時間経った頃だった。
『あっ』
『あっ』
リーンと【人獣一体】をした状態だった。
一瞬後にすごく情けない気分になる。
小学生の頃、お漏らしをしてしまった体験があって以来の大失敗を俺はしてしまう。伊万里に隠れて自分の布団を洗ったのを思い出す。今ものすごくそういう気分を味わっていた。
『リーン。年上として俺は自分を恥じる。切腹したい』
『ユウタ。気にしなくていい。男なら当たり前』
そしてリーンがどんまいという感じで励ましてくれた。
『う、うむ。あの、ちょっといいでしょうかリーンさん』
『何?』
そのあと少し話し合って、リーンが今の出来事を全く気にしないこと。そしてリーンから俺が変に我慢して、怪我するほうが大変と注意された。なんかもう色々だめだめだった。
年上の尊厳は砂上の楼閣でしかなく、涅槃に至らなくても精神を開放してもいいと言うリーンさんの優しさに触れ、崩れ去った。そして、もう自分でも制御できない部分だから、リーンさんの寛大な御心に甘えることにした。
「ウゴゴッ!」
『うひょへっ』
傷ついた心を癒そうと川辺でちょっとだけ休憩しようとしたら、川の中からワニのゾンビが現れて変な声が漏れた。リーンが『ユウタ変な声』と笑ってる。ワニは殺せたが悔しい。その少し後、
「「「「「「「「「「「ニャゴアァッ」」」」」」」」」」」
『ちょ、おまっ土の中から現われるなよ! それは反則だろ!?』
『うきゃっ』
見たこともない猫みたいなゾンビが土の中から一気に50匹ぐらい現れた。リーンが変な声を出したので俺も笑ってやった。
『ユウタ酷い。リーン傷ついた』
『いや、すまん』
完全にアメリカのゾンビ映画だった。サバンナの夜はゾンビ映画だった。俺とリーンのライフをガリガリと削っていた。
でも、おかげですぐにレベルが一つ上がり、二つ上がり、そうすると狙い通りに【暗視】も生えてくれた。でも、ゾンビの顔が余計にくっきりと見える。余計に怖いじゃないか。
『リーン。こいつらマジめっちゃ気持ち悪いぞ』
もうこの階層には、それぐらいしか感想がない。
『リーンも同じだよ』
リーンだって気持ち悪いものは気持ち悪いみたいだ。俺にくっついてくる力が余計に強くなる。これはかなりきつい。別の意味でも精神がガリガリ削れていく。でも、レベル20ぐらいになると、かなり余裕で戦えるようになった。
リーンの気持ち良さもかなり長時間の合体をしているのだから、いい加減に慣れ……ない。 全然慣れることができなかった。相変わらずかなり意識してしまう。
『ユウタ。あのアカシアの木の陰とか怪しくない?』
リーンが言ってくる。
『俺もそう思う』
そしてゾンビについてはかなり慣れてきた。隠れるパターンだってわかってくる。隠れてる場所さえわかれば怖くはないんだ。俺は今度こそ、リーンにみっともない姿は見せないと誓いを立て、ちょっとゆっくりアカシアの木に近づいていく。
ビビってゆっくり近づいているわけではない。慎重になっているだけだ。密着しているリーンからの心臓の音が伝わってくる。この形態でもちゃんと心臓が動くようで、リーンの心臓は、俺の心臓と同じ位置にちゃんとあるようだ。
それが今までにないぐらい動いている。かなり怖いんだなと思った。
リーンだって怖いのだから、俺がしっかりしなきゃいけない。そしてゆっくりと近づいてアカシアの木の裏を見た。誰もいない。二人でほっとした。そして、ガサリと音が聞こえた。
『どこから?』
周囲には居なかった。嫌な予感がして、二人でゆっくり上を見る。そこに狐っぽいジャッカルのゾンビがいた。アカシアの木が折れそうなぐらいたくさんいた。ジャッカルの腐った目玉が俺の頭の上にポトリと落ちてきた。
腐乱した体を持つジャッカルが、こちらを恨みがましい目で見つめている。その大量にいる腐った生物。リーンと二人で、
『『ギャーッ!!!』』
と叫んだ。その声を合図に一気にジャッカルが飛びかかってくる。そのまま戦闘になる。ジャッカルはこの階層では最弱種である。しかし、数が多かった。一気に10体以上群がられた。
いくら弱くても囲まれたら不利になる。
ここでは情けない姿ばかり見せてしまっている俺が、ギリギリで【蛇行三連撃】を三連続で放って止めた。それでも数の力というのは強い。体が吹き飛ばされる。
『リーン! 落ち着くんだ! 心臓の音がうるさすぎてこっちが落ち着かなくなる!』
『ごめん、慌てて落ち着けなくて、どうしよう!?』
『攻撃くるぞ! 大丈夫、落ち着くんだ! 俺がいるだろ!』
自分に言い聞かせているのか、リーンに言い聞かせているのか、わからない言葉だった。それぐらいかなり冷静で居るのが難しい敵だった。心臓以外には弱点がないので、ゾンビは自分の仲間ごと無茶苦茶攻撃してくる。
なんとか首を落とした。
違う。
それじゃあこいつらは死なない。
慌てるとついゴブリンの時の癖が出てしまった。ゾンビは首が落とされてもそのまま平気な顔で、足の爪を立ててこようとする。後ろにバックステップしてかわす。落ち着け。
ゾンビに驚いたこともリーンの体に動揺したことも何度目のことか。相手にはラストほどのスピードはない。
怖がらずによく見る。
『リーン、ごめん。俺はだいぶ落ち着いた。行けるか?』
『う、うん。リーンも大丈夫』
『とにかく心臓だ』
群がることもあるが、ゾンビたちはゴブリンのような仲間意識はない。仲間が攻撃されたからといって怒らず、それぞれにバラバラに攻撃してくる。それを一体一体慌てずに処理していく。
心臓を狙わなければ、死なない。足を斬り飛ばしてやるが、それでも平気で動ける。でもだからって足がなくなったら攻撃は出来ない。戦っていて攻撃を心臓にしぼる必要がないということも分かってきた。
『すまんリーン。さっきは、ああ言ったけど、心臓以外でもいい気がする』
『了解。大丈夫。ユウタの思うことドンドン教えてほしい』
斬られることを怖がらないヤツらを、場所を問わず次々と撫で斬りにしていく。
『すぐに復活できるからって、お前ら避けることを疎かにし過ぎだ』
斬り落とした足が、ミミズみたいに蠢いて、自分の体に戻ろうとしている。でも、美火丸で斬ると焼けるおかげで、その復活もかなり遅かった。
『もう死んでおけ!』
動けないように俺が胴体を突き刺した。そのすぐ後にリーンが胴体の心臓を突き刺した。ジャッカルのゾンビを処理し終わると休憩する間もなく、そのまま走り出した。怖さから逃げるように走った。
『ユウタ』
『なんだ?』
『ユウタと一緒は嬉しいけど、リーン、この階層早く出たい』
『俺も一緒の意見だ』
走りながら俺たちは、二人でうなずきあう。そして、美鈴やエヴィーはこんな気味の悪い奴ら相手に大丈夫だろうかと心配になった。





