第八十四話 ダンジョンの夜
「大丈夫ですか?」
と尋ねると「やっと来てくれた」と泣きつかれた。ゴブリン集落にさらわれた女性はゴブリンとの生活に馴染んでいる場合もあるという話だったから、もしそうだったらと懸念した。だが、そんな訳がなかった。
自分と違う種族との生活。言葉も通じない。馴染めるわけがなかった。
「ちゃんと助けられたんだね」
と美鈴が、ほかのゴブリン達の処理が終わって、走り寄ってきた。
「よかった。特に外傷は無いみたいね」
精神的にまいって廃人同然になっているケースもあるそうだから、その様子もなくて、俺たちは取り合えずほっとした。
「この人たちを外へ送り届けなきゃいけないよね?」
美鈴が言ってきた。
「ああ、そうだね。──あの、外まで送ろうと思うんですけど……えっと、名前は?」
「私がクリスティーナで、この子がアンナです」
外国人のその二人は、妙に様になった礼をした。二人の所作は上品だった。今までゴブリン集落で無理やり住まされて、かなり薄汚れているのに、それでも上品に見えた。
ひょっとすると育ちのいい人たちなのかもしれない。しかし、思わず鼻をつまみたくなるような臭いが二人からした。ゴブリン集落では、自分たちの体を綺麗にする事もままならなかったと見てわかった。
ひとまず美鈴に世話を頼んで、ガチャから出た石鹸とシャンプーとトリートメントも使い、体を綺麗にしてもらうことにする。その間、俺は見ているわけにはいかないので後ろを向いた。
しばらくして振り向くと汚かった二人が見違えるほど綺麗になっていた。クリスティーナさんは銀色の綺麗な髪で、アンナさんはブラウン。
「本当に助けていただいてありがとうございます」
「ありがとうございます」
クリスティーナさんに続いてアンナさんも頭を下げてくる。二人とも日本式のお辞儀が分かっているようで、ちゃんとお辞儀をしていた。服も着ているのかどうか分からないような傷み具合だったが、美鈴の替えの服に着替えていた。
美鈴の服がアンナさんは小柄でダボついている。クリスティーナさんは、胸のあたりが苦しそうだ。とにかく汚い環境での生活がほとほと嫌だったのか、二人とも綺麗になれたことに一番ホッとしているように見えた。
「本当にお待たせしてしまいました」
二人を綺麗にするのに美鈴が3時間ぐらいかかっていた。
「服まで頂いて申し訳ありません」
「感謝を」
「いえいえ、綺麗になったみたいで良かったです」
と声をかけたら、
「あの、先程は本当に不敬な行為を働いてしまいすみません」
「うん?」
「いえ、その……とても汚い体で取り縋ったりして」
「あ、いやいや、そんなの全然気にしてませんから」
「ですが、私などに触れて汚れてしまったことが申し訳なくて……。二度と触れないようにするのでお許しください」
「いや……」
これはなんとフォローするべきだ。うまく言葉が見つからなかった。おまけに、
「あの、あとは自分達でなんとかなると思います」
と言ってきた。スマホの充電が切れているので、充電器だけ貸して欲しいとのことだった。
「ちゃんと上まで送り届けようと思ったんだけど、いいの?」
「はい。一生懸命探索者をしている方たちは1分1秒を探索に使うと聞いています。私たち程度に割く時間がもったいない。それだけしていただければ充分です。私たちも地上に戻って少し休憩したら、またここで探索を開始するつもりですから」
そう言ってきた。こんな目に遭っても探索者を続けるというのか? 驚きだった。二度とダンジョンになど入りたくないだろうと思ったが、その点に関してアンナさんも口を挟んでこなかった。
「いや、さすがにここで放置するぐらいなら最初から助けてないよ」
俺は慈善家ではない。ただこの二人は危なっかしすぎる。
「ですが、私たちに使う時間など無駄だと思うのです」
「無駄って……」
「祐太。デビットさんたちに頼んだら?」
「あの二人……そういえば二階層にいるんだっけ?」
「うん。祐太に刺激されて、二階層でガチャコイン集めしてるんでしょ。それでガチャから金カプセルを出して、果実を30個ぐらい集めるんだって」
デビットさん達は果実で自分達に足りないステータスをアップさせて、探索者として再起しようとしてるらしい。でもあの二人のガチャ運は、美鈴ほど悪くはないが、普通だと聞いていた。
ダンジョンはガチャコイン集めに規制をかけている。ガチャコインだけを目的にしてダンジョンに入ると、途端にモンスターからガチャコインが出にくくなる。それを考えると、果実は一年に一個か二個が限界のはずだ。
「邪魔したら悪いんじゃ?」
「あの二人の仕事はあくまでエヴィーのサポート。甲府の二階層にいたほうが、エヴィーの助けになりやすいってことでそうしてるんだよ。だから、そこは頼っていいんじゃない? もちろんエヴィーに聞いてからだけど」
「わかった。じゃあクリスティーナさん、アンナさん」
「「はい」」
「デビットさんという人達は黒服マッチョで一見怖い人達なんですけど、ものすごくいい人達なんです。俺たちが二階層まで送り届けて、その人達に二階層から上までの案内をしてもらおうと思うんですが、それならいいですか?」
おそらくこの二人よりデビットさんたちの方が弱い。それでもあんな場所から解放されて、すぐにまた三階層に挑戦するなんて言い出す二人よりは危なっかしくない。
「大丈夫です。あなた方が信じておられる方なら、私たちも信じます。それと先ほどの発言は取り消します。あなた様が私たちを気にして探索に身が入らない等ということになってはいけません。あなた様のやりやすいようにしてくださればいいです」
クリスティーナさんはとても物分りが良くて、聡りの良い人のようだ。
「じゃあ案内します」
「はい、頑張ります」
そうして二階層まで送り届けると、エリアのゴブリンライダー達の殲滅をクリスティーナさんが『自分達でやる』と言って、アンナさんと二人で殲滅した。
動きを見ている限り、特にクリスティーナさんがかなり強かった。銀髪がなびくたびにゴブリン達が殺されていく。専用装備らしき西洋の剣を見事に使いこなしている。俺と似ているジョブの持ち主みたいだ。
「それ、専用装備ですか?」
「はい。ゴブリン集落の隅で、ずっと埃をかぶっていたのですけど、おかげで取り戻すことができました。名を【スノーラの氷剣】といいます。まだ全然使いこなせていないのですが、氷系の武器です」
「へえ」
すごく興味を引かれたし、似たようなジョブの人と語り合いたいこともある。とはいえ、これ以上は深入りになってくる。
「じゃあ俺たちはこれで」
「ここまで本当にありがとうございました。あとはデビットという方達をこのエリアで待っておきます。どうかロクジョウ様達はもうわたくしたちを気に留めないでください」
と言われた。それで二人とはお別れになったが、俺たちの姿が見えなくなるまで、ずっとこちらに向かってお辞儀をしていた。
「──祐太。私ね」
三階層に戻ってから、美鈴と話し始めた。妙に気になる二人だったが今はそれどころでもない問題があった。
「ああ」
「祐太に言われてからずっと反省してた。祐太に言われて当然だと思ったし、私があまりにもふがいないから、もう嫌われたって思った。それなら、もう諦めようかなとも思った」
「いや、その、言い過ぎた」
自分は人付き合いが苦手だとつくづく思う。ずっとそばにいたいと思っている相手が、悩んでいる時に、もっと上手に言葉をかけることができなかったのか。
「違う。私は言われて当然だよ。普通に学生やってるような気分がまだまだ抜けてなかった。苦手なことを他人任せでいいように思っていた。でも、私」
「うん」
「これからはちゃんと自分でも考えるようにする。モンスターのことが怖いなって思ってもすぐに諦めたりしない。だから……祐太、もうちょっとだけ一緒に居させてよ」
「美鈴……」
美鈴がそう言ってくれた。
『ユウタ。ミスズ』
しかし、そこで頭に声が響いた。エヴィーからの【意思疎通】だった。
『え、エヴィーどうかした?』
美鈴の方にも声が聞こえているようで、微妙な顔になっていた。
『四階層への階段、見つけたわ』
なぜかエヴィーも本来なら嬉しいはずの報告を微妙な声色だ。
『エヴィー。ラーイの種族進化はどうだった?』
美鈴はそれでも、特に不満な顔をせずに聞いていた。
『1000キロ超えてもなんの変化もなーし。はあ、これじゃあないみたいね』
『そんなに簡単じゃないか』
『まあね。またいろいろ考えてみるわ。それよりも、1000キロ走ってる途中で、階段が見つかったのよ。これからどうする? いったん、ガチャを回しに一階層に戻る? それともこのまま四階層に行く?』
ラーイのことは残念だったが、エヴィーがそこまで気にしていないようだ。まあこの程度で落ち込むなら、世界を股にかけるトップモデルなんてやってないだろう。
『このまま四階層でもいいんじゃない?』
美鈴が口を開いた。美鈴のこういう時の発言は珍しかった。何気ない言葉だけど、今後の方針を決めるときなどは、俺とエヴィー任せで、あまり発言しなかったのだ。
『どうしたのミスズ?』
すぐにエヴィーは妙に思ったようだ。
『だってゴブリン大帝を倒せるってことは、エヴィーと祐太はゴブリン大帝をスルーする人たちよりも実力が上ってことだよね?』
『そうね。あなたも含めてね』
『う、うん。ましてやS判定クリアのステータスアップが二人にはあるし、エヴィーの召喚獣もステータスアップしたわけじゃない。私はまあ不甲斐なかったけど【変色体】は生えたしね』
美鈴に続いて俺もそのまま【意思疎通】で喋り出した。
『うん。俺もそれでいいと思う。伊万里の誕生日までに四階層を終わらせようと思ったらギリギリだしね。いちいちガチャで入り口まで戻るよりは、早く探索した方がいい』
『……』
エヴィーは、らしくない美鈴に何か物言いたげに黙った。
『エヴィー。ゆ、祐太と二人で大事な話してたの。お願い。この事には触れないで』
『ふーん、了解』
美鈴が空気に耐えきれなくて言うと、エヴィーが空気を読んで頷いた。
『そうね。私もこのまま四階層でいいと思うわ。ゴブリン大帝と戦ってみて、私も思ったわ。ゴブリン大帝が強すぎるのよ。おかげで四階層にはゴブリン大帝より強いモンスターがいないって噂だもの。まあだからって四階層が簡単って訳ではないらしいけど』
『カプセルの食べ物は腐らないし、物資はマジックバッグの中に買い込みすぎなぐらい買い込んでるしね』
『三人の意見が一致してるね。じゃあ今から急いで、エヴィーの所まで行ってそのまま下に降りよう』
『『OK』』
そうして俺たちはエヴィーと合流するとそのまま四階層への階段を下へと降りた。
「――ここが四階層?」
「聞いてはいたけど、本当にこれは……」
「今までは階層ごとの環境はほとんど一緒だったのに、ここまで違うんだ」
四階層へ降りてまず気付くことは二つだ。まず一つ目が、あのカンカン照りだった三階層のすべてを覆すような“寒さ”だ。何しろ気温が零度に固定されているそうだ。そして二つ目はカンカン照りの昼間ではなく寒い“夜”だということだ。
夜空に星と、あまり明るいとは言えない三日月が輝いていた。その月は確かに日本でも見えるお月様そのもので、それが逆に違和感を感じさせた。
「く、暗い寒い!」
「よし。とにかく一旦戻ろう」
今までとのあまりの違いに驚く。それでも、いつも通りまずクエストを確認しようと上の階層へと戻った。そして、一気に暗さと寒さ、それらと全く縁のないカンカン照りの太陽と、気温40度の凄まじい暑さが襲ってきた。
「寒暖差40度。極端だー」
「まあ、気温はこの体だと耐えられるけど、問題はあの光のなさよね。だからってライトを使ってあたりを照らすと一気にナイトウォーカーが襲ってくるって話よね」
「二人とも話し合いは後だ」
「ああ、そっか。四階層は時間制限付きのクエストである可能性が大きいんだったね。よし!」
美鈴はかなり気合を入れていた。絶対に次こそは自分もS判定をもらうんだっという気合だと思った。
クエスト:5階層への階段を7日以内に発見せよ。
使用武器:刀剣類。自身の魔法とスキル。
使用禁止:拳銃や現代兵器。
成功報酬:ストーン級【飛燕斬】
A判定で力、素早さ、防御、器用+10。
S判定で力、素早さ、防御、器用+20。
今回は美火丸の規制が入ってなかった。おそらく俺が美火丸装備を四つしか持ってないからだろう。今までの例に倣えば、本来なら四階層では五個まで許可されるはずが、四個しか持っていないから、制限するまでもない。そういうことだ。
まあそれでも専用装備のバフが+24ある。これだけで二人とは主要ステータスがレベル4ほど上になるし、S判定を二度逃した美鈴とは、7ぐらい同じレベルでも強さが違うことになっていた。
「クエスト達成の報酬【飛燕斬】か。これは!」
思わず俺の声が昂ぶってしまった。
「【飛燕斬】って、斬撃が飛ぶ奴だよね」
「ああ」
「かなり格好いいスキルだって聞いたことあるわ」
「ああ、そうなんだよ」
俺はこれで何度、クラスの虐めっ子達に斬られたことか。
「小学校の頃、男子がこれの真似して、雑巾飛ばして遊んでたのなんか覚えてる」
そうなのだ。あれはとても汚いのだ。小学生時代の俺のトラウマの一つだ。しかし、美鈴の言葉通り【飛燕斬】は男子の憧れのスキル、ナンバーワンでもある。斬撃が飛ぶとか、かなり格好良い。
俺もこれが使えるようになりたいとずっと思っていたのだ。それに【鬼の田中】は【飛燕斬】の進化スキル【絶空】で、海を両断してしまうという噂だった。
「美鈴は?」
「【レベルアップ+2】」
「ああ」
美鈴が使えるレベルダウンと対をなす魔法で、この魔法を受けたものの、レベルが二つ上がる。遠距離がメインになる美鈴としては、遠くにいる敵にはかけられない【レベルダウン】より、自分や仲間にバフをかけれる【レベルアップ】の方が利便性が高い。クエスト報酬だけあってかなりいいスキルだ。
「私は【視界共有】だわ」
「どんな魔法?」
あまり聞いたことのない魔法だった。やはり召喚士ジョブは珍しい魔法が多いように思った。
「……言葉通り視界を共有するんじゃないかしら?」
「ふーん、共有だから、エヴィーの見ている景色が俺にも見えるってことかな?」
「空が飛べる召喚獣とか出てきたらかなり強力そうだね」
美鈴が言う。その様子をエヴィーは少し可笑しそうに見ている。
「ふふ」
「何よー」
「いえ、美鈴。一緒にレベル1000になりましょうね」
「……ふん」
エヴィーは美鈴がかなりやる気になっていることに気づいたようだ。
「じゃあ、再び下に降りる前に色々決めておこう。まずクエストのS判定条件だね」
「はーい。単純に二日早くの五日で、五階層への階段発見じゃない?」
美鈴が言った。今までのクエストの傾向からして、それはまず間違いないと思えた。
「私もそう思うわ」
エヴィーも賛成のようだ。ネットにそれぐらいの情報は載っていないのかという話になってくるが、これが載ってないのだ。ダンジョンは四階層ぐらいから情報が少なくなる。何しろ、ゴブリン大帝のクエストでS判定をとれる人が殆どいない。
自ずとそこから先のクエストもS判定を取るのが難しくなる。そして探索者が軍事力と捉えられる世の中である。Dランの生徒が探索している範囲はまだ情報が出やすいが、それ以降になってくると、各国ともにダンジョンの情報を外に出すのを嫌うようになっていた。
「でもそうなると、悠長に全員で回ってるってわけにはいかないね」
「ええ、これが昼間なら今の身体能力を駆使すれば、それほど難しいことではないわ。でも、夜は極端に視界が悪くなるわ。探索範囲が狭まるのは言うまでもないし、敵に不意打ちもされやすい」
「夜の階層になった途端に、こういうクエストか、嫌になる……。いや、うん、マイナス思考はダメダメ。ふん、頑張るぞ」
美鈴はまた何か一人でつぶやいて気合いを入れていた。
「まあとはいえ、S判定を取るならせめて二組に別れた方がいいわね。私とミスズとラーイ。ユウタとリーン。速度重視で行くなら、この組み合わせが一番いいと思うわ。ミスズは【探索】があるから、夜でもかなり見えるでしょ?」
「うん。さっきちょっと降りた時に試してみたんだけど、さすがに昼間ほどではないけど、結構見えたよ」
「そのミスズの【探索】と、ラーイのスピード。この3人がいればこっちは十分。ユウタはリーンと【人獣一体】で探索すれば、OKよね?」
「う、うん? えっと、俺とリーンの二人?」
正直、それはきついと思う。身体能力的にはきつくないけど、精神的にはかなりきついと思う。
「問題ある?」
「い、いや、そりゃ」
「リーンはユウタと五日間二人で合体!」
リーンがすぐにそう言って背中に抱きついてくる。と、【人獣一体】を唱えた。リーンの体が溶けてしまって広がっていくのはグロテスクだった。俺の体がリーンに包み込まれていく。そして文字通り完全にひとつになった。
「ユウタ。これで探索しましょう。問題ないわね?」
エヴィーは平気そうに聞いてきた。
「ああ。いや、えっと、問題ないよ」
問題はない。問題はないのだ。ただ一つ問題があるとすれば、リーンとの合体はリビドーに直撃してくるほど気持ちいい。今も正直、かなり気持ちいい。
くっそ、リーンのくせになんでこんなに気持ちいいんだ。しっかりしろ俺。美鈴とエヴィーに、
『リーンと合体すると気持ちいい』
なんて言ったらドン引きされるぞ。
俺は何とか雑念を振り払い、気持ちよさに耐えながら、3人でスマホのタイマーを同時にスタートさせた。四階層に降りた時間はちゃんと確認していたので、S判定をとるための残り時間は、
【119時間47分11秒】
それから、俺たちはそれぞれ半分ずつ四階層を探索することや暗闇対策などを確認し合って、再び下へと降りた。
「寒っ」
「じゃあ行きますか」
「がう」
『リーン』
『はーい』
リーンと合体すると喋りにくいので、俺はテレパシーを使った。
『やってくれ』
『了』
あらかじめ話し合っていた暗闇対策を試してみる。四階層ではナイトスコープを使うことも考えたが、【暗視】というスキルが、四階層ではとても生えやすい。
ナイトスコープを使うとそれが生えなくなるという噂だった。【暗視】のスキルはこれからもっと必要になるだろうから、ナイトスコープの使用は下策だろう。その代わりに、リーンのブルーバーが変化して、俺の目にレンズを当てた。
かなり奇妙な見た目のレンズだ。ブルーバーで末広がりの筒を作り、その広がった部分にブルーバーでレンズを作る。そうすると暗闇でも多くの光を俺の目に集めることができる。まあ要はリーンがブルーバーで集光器を自作したのだ。
『ユウタ。見える?』
『ああ見えるよ』
レンズの部分もブルーバーを薄くした物体だから、かなり青みがかった世界にはなってしまうが、完全な闇が、薄闇ぐらいの世界にはなった。そして、
『あれがナイトウォーカーか……』
俺の目に夜の怪物の姿が初めて映ったのだった。
ガチャは各章に一度ぐらいかな。





