第六十二話 代償
どうやらこの人は俺の意図が全部分かっているようだった。俺がなぜこんなに落ち着いているのか。レベルが倍以上も違えば、普通、勝ち目は無い。ましてや3対1になるのなら余計である。それでも落ち着ける理由。
「言ってる意味がよくわからないけど、後のことを頼んだのは南雲っていう人です」
南雲さんがいることで、落ち着いている自分がどうにも情けない。
中級ダンジョンの浅草寺。ダンジョンにいるのは中レベル探索者。その人たちなら南雲さんの名前がわかると思った。池本は俺があまりにも怯えた様子がないので、ひょっとすると自分たちと同じく誰か強い知り合いがいるかもしれないと疑った。
それなら下手に動けない。
池本もいざとなれば逃げることだって考えたはずだ。でも、それだと俺はいつ池本に狙われるかわからない。俺ならともかく美鈴が狙われたら最悪だ。だから俺は池本たちを逃がさない必要があった。
小野田の目立つ茶髪が、同じ電車に乗っているのに、俺はすぐに気づいた。帽子をかぶってわからないようにしてたが、俺は、中学3年間お前たちがクラスにいるかどうかをまず確認するのが日課だったから、すぐに見つけられたよ。
「死んだら終わりなんだから、いくらムカついてる相手にでも、命を惜しまずに戦うわけないよな。ふひ」
俺はあまりにもうまく池本たちが嵌まってくれたから、変な笑いが漏れた。必ずいつも自分たちが優位な条件で俺を虐めてきた池本たち。最後の最後。一番肝心なところで、俺がそれを逆にやってやれたことがたまらなく楽しかった。
「なるほど。虐めって楽しいんだな」
「ね、ねえ。手を打ちましょう」
京香さんの顔から血の気が失せていく。一人だけイライラしていたのが 、全員が急に落ち着かなくなりだした。
「どう手を打つんですか?」
「知ってるでしょ? あっちだってこの間のことがあったばかりよ。揉め事は嫌なはずだわ。ペットの躾はこれからちゃんとするから、南雲に話をとおしてもらえないかしら? なんなら、お詫びにあなたと5人で相手をしてあげようか? 大丈夫、変な薬とか使ったりしないし、好きにしてくれていいわ」
「京香! お前何わけ分からないこと言って」「黙れこの犬! 殺すぞ!」
京香さんが完全にブチ切れて叫んだ。
「ああ?」
しかし、池本は本当に馬鹿なのか、それにムカついたと言いたげに睨み返した。
「誰が犬だ! お前が俺の犬だろうが!」
「もういい。私が喋るからあんたは黙ってなさい。ねえ君。六条君。そっちの条件でいいから聞かせて」
「こいつは本気で俺を殺しにきた。事前に情報がなかったら、本当に俺はここで死んでた」
榊さんが美鈴に池本のレベルアップを教えてなかったらやばかった。あれがなかったら、きっと想像もしたくないような事態になっていたはずだ。
「それはそうよね……」
「それは絶対私たちがさせなかったよ! 私たちだって死にたくないもの!」
後ろに控えていた女の人が思わず口を開いていた。かなり取り乱しているようだった。
「六条の君! 事前の情報ってなんだ!?」
「でも俺は幸いそうならなかった。無事に池本を追いつめられた」
「本当、首の皮一枚だったわ。あなたが利口で助かった。で、条件は?」
「池本との1対1。他は何もない。負けても文句はない。俺の条件はそれだけです。あなたたちは魅力的ですけど、体なんて求めません」
というか、ほかの女に手を出したら、美鈴たちが怖すぎる。今でも怖いのにさらに怖くなるのはごめんだ。
「で、でも、和也はレベル7に負ける程弱く育てて無いわよ?」
「でしょうね。それも承知してます」
「いやいや」
京香さんが首を振った。
「承知されても困るのよ。あなたが負けたら南雲が出てくるんでしょ? 私たち絶対殺されるわ。南雲は一度気に入った相手を異常なほど大事にするのよ」
「そんなの知ったこっちゃない」
「それじゃ困る。私たちはそこまで君に悪いことしてないでしょ?」
「じゃあせいぜい俺が勝つことを願っておいてください」
俺はそれ以上の交渉は打ち切った。正々堂々する気は毛頭なくても、池本に関することだけは自分で決着をつけたいと口にした思いは本当だった。
「ね、ねえ、どうする? あの子言うこと聞きそうにないよ」
別の女の人が、落ち着かない様子で口を開いた。
「南雲はヤバイのよ。大阪だって滅ぼしかけたし、穂積みたいなアホのことでも気に入ったら可愛がる。そのために雷神だって殺した。私たち蘇生薬なんて持ってないわよ」
「でも戦わせないと……」
京香さん達がかなり落ち着かない様子だった。しばらく5人で話し合っていると何かが決まったのか顔を上げた。そして京香さんが口を開いた。
「和也。あなた一人で戦いなさい。話の流れでちょっとはわかったでしょ。彼にも後ろに控えているおっかないのがいるのよ。私たちはそいつに勝てない。機嫌も損ねたくない。だから、あんたも正々堂々とやりなさい。まさかそのレベル差で、怖いなんて言わないでしょうね?」
「こいつが嘘ついてる可能性は?」
「それはない。私の危険感知が鳴りっ放しよ。私のこのスキルがどれぐらい優秀かは今日まで一緒にいて、よく分かってるでしょ?」
「ちっ。ビビりやがってクソビッチが」
心底忌々しそうに、池本が表情を歪めた。
「はいはい、ビビりまくりで悪いわね。和也。あんたも殺されたくなかったら、あんまり、その子に大きい怪我を負わさないようにしなさい。勝ってもちゃんと後で今までのこと謝るのよ」
「そうね」
「和也。悪いこと言わないから、もう土下座しなさい」
「うんうん。和也、それで命が助かったら安いものでしょ?」
女の人たちが次々に言った。
「馬鹿か? なんで俺が謝るんだよ」
「和也!」
「うっせえ! クソが汚いやつだ。誰かの助けがなかったら男の戦いもできないのかよ」
「お前が言うな」
池本はさすがに状況が把握できたようだった。それでも口にする言葉は、自分の姿がまったく見えていないようだ。
「あーあ、つまらねえ。3人がかりでボコボコにして、初めて人殺しをしてみようって思ってたのによ。お前が身の程もわきまえずに人の助けを借りるから、俺が苦労しなきゃいけなくなるじゃねーかよ! わかってんのか! ああ!?」
思いっきりすごんでくる。肥大化したプライドはどうあっても俺に負けることを許さないようだ。
「悪かったな。とりあえず顔を一発思いっきり殴らせてくれ。そしたら俺はすっきりするから」
池本これが最後だ。死にたくなければここで折れろ。
「ぷ! お前、俺に勝つ気かよ?」
「負ける気はない」
「虐め過ぎて頭がイカれたのか? 小野田、後藤。しゃーねえから下がってろ。俺が、一人で殺してくる」
「なあ池本、これってどういうことだ? よくわからないんだが?」
「馬鹿。いいからこっち来いって。どっちみち結果は変わらないからよ」
まだ意味が分かっていない様子の後藤を小野田が引っ張っていく。俺はそれを見てから、 天変の指輪で自分の姿を偽ったまま、マジックバッグから、6個のポーションをとりだした。
ブロンズガチャから出てくるアイテムで、ストーンエリアのレベルアップの時に使えば間違いなくステータスに悪い影響が出る。それぞれに力、素早さ、防御、器用、魔力、知能を+30引き上げてくれるものだ。10分しか効果がないのだが、1本1000万円もする。
合計6000万円は痛いが、万が一を考えて以前のエヴィーとのデートで資金を借りて、購入していたものだ。あたりまえの話だが負けるつもりはなかった。俺は自分が死ぬのも嫌だし、できれば南雲さんに自分が死んだ後のことを頼むのも嫌だ。
だからこれでもかというほど勝てるようにことを運んだ。
そのために榊さんと行動を一緒にできたのはラッキーだった。天変の指輪はとても便利で、その姿を偽ったまま別の行動をとることができる。
あまり大きな行動は無理だが、榊さんと連絡するためにスマホを打つぐらいの動きをしたところで、小野田は全く気づくことができなかったはずだ。そうして得られた榊さんからの情報は本当に助かるものだった。
『ひとつだけ教えてほしい』
『スマホを手に持ってないよね? どうやって私に連絡してるの?』
『今は秘密。後でちゃんと教える』
『わかった。じゃあ何でも聞いてくれたら教えるよ』
『池本のステータスをスキルも含めて全部教えてくれ』
『了解』
レベル:15
職業:探索者
称号:ダンジョンペット
HP:82
MP:34
SP:66
力:67
素早さ:67
防御:68
器用:37
魔力:35
知能:25
魅力:25
ガチャ運:3
装備は無銘シリーズ
魔法:風刃
スキル:豪力、毒斬り
『毒斬りってどんなの?』
『ちょっとでも和也の攻撃がかすったら毒状態にしてスリップダメージを与える。和也の攻撃に当たったら終わりだと思っていいよ。どう? 六条のステータスの方が下でしょ。やっぱり逃げる? どこまでも付き合ってあげるよ』
『それはいい。一応聞くけど、池本たちはレベル上げを全部、中レベル探索者に手伝ってもらっているよね?』
『ご明察。私はそんなことしたらステータスの上がりが悪いから、和也達と一緒の時は、できるだけモンスターと戦わず、こっそり学校休んでレベル上げしたけどね』
『榊さん、まさか一人でレベル上げしたの?』
『まさか。そんな危ないことするわけないじゃん。中レベルの女の人たち、私まで縛り付ける気はないみたいで、和也達がちゃんとペットになるのを手伝ったら、いろいろ融通してくれたの。あの人たち、ああ見えて、男がいないことを死ぬほど気にしてるの。だから、とにかく和也のレベルを上げることだけ手伝ったら、私の方は自由にさせてくれた。私が良いステータスになるのもアドバイスしてくれた。だから今はレベル7だけど結構良いステータスよ。5日前にも学校休んで2階層のクエスト終わらせたの』
『判定は?』
『S。ちなみにジョブは呪師』
『呪師でS……』
想像以上の子だ。榊さんが俺と敵対していたら間違いなく負けてた。俺は考えながらも6本のポーションの瓶を全て飲み干した。
「なあ池本。とことんまで自分の行動が裏目に出てるって、どんな気分だ?」
「何がだ!?」
「俺はとことん最悪の気分だったぞ。何をしても。どんなに頑張ろうとしても。お前が俺の邪魔をする。そりゃ俺だってちょっとは頑張った時もあるさ。でも全部裏目に出た。お前はいつも上手に俺の邪魔をした。俺は泳ぎが得意でな、本当は水泳部に入って練習だって一生懸命頑張りたかった。でも俺が努力しようとすると努力しないようにって、からかってきた」
「だからなんだ? 何もしなかったのはお前だろ? 俺が全部悪いとでも言いたいのか?」
「ああ、そうだよ。俺は、お前が全部悪いと思ってる」
俺は天変の指輪の効果を解いた。それまでの冬の学生服から美火丸を完全武装した俺の姿があらわになった。
「専用装備を……お、お前、いくつ揃えてるんだ? ガチャ運いくつだ?」
池本が警戒心を露わに剣に手をかけた。無銘の剣だ。
「答える義理はない。じゃあ行くぞ【加速】」
自分の認識が追い付かないほどのスピードが出た。ポーションで+30になった動きに、体がついて行かずに動きが甘くなる。それでも器用のポーションも飲んでいたのが効いた。何とか制御して、一気に池本まで近づくと向こうも剣を抜こうとしていた。
しかし、間に合っていない。俺はそのまま振り抜く。池本の腹を鎧ごと切り裂いた。血しぶきがまう。 初めて人を斬った。思った以上に気持ちが良い。相手が池本だから罪悪感はわかなかった。
「え? 血?」
痛みとはすぐにやってくるものではなく、自覚して初めて強く感じる。池本は斬られた部分を見た。結構な血が出ていた。
「い、痛え!!! なんだ!? 血!? こんなに出てる?」
「いちいち騒ぐなよ。お前だって仮にもダンジョンでレベル15になったんだ。血を流すのが初めてなわけじゃないだろ?」
俺はさらに【加速】して動いた。そうすると今度は池本の"腕"が地面にボトリと落ちていた。
「い、いて!!! いてええええええええ!!」
「はは、なんだお前? 本当にレベル15か? ちょっと甘やかして育てられすぎたんじゃないのか? もうちょっと頑張ってくれないと拍子抜けすぎるぞ」
「おい、ちょっと待てよ! お前レベルいくつだ? 嘘ついたな!?」
「いや、本当のことしか言ってないよ。俺はレベル7だ。お前にも見せただろ。ステータス画面はごまかせない。お前も知ってるだろ?」
そして【加速】を唱えると、今度は反対の"腕"を斬り落とした。人の腕が地面に2本落ちている。それなのにどこか現実感がない気がした。
「ちょ、ちょっと待って! ちょっと待ってって! お前、"人になんてことするんだよ"!」
「本当だな。でもゴブリンをぶった斬った時よりも悪いって思わないな。お前は俺にとってゴブリン以下らしいぞ」
「お、俺が悪かった! 謝る!」
「はあ? お前、俺を『殺す』って言ったじゃないか。謝るとかよく分からないな。俺も後顧の憂いはなくしたいから、お前はここで死んでくれ」
「殺すなんて冗談だって! わかるだろう!? このままじゃ死んじまう! か、勘弁してくれよ!」
「お前さ。学校で俺が『もう虐めるのは止めてくれ』って何度言っても、ただの一度も止めなかったよな?」
「いや、止めたときもあるだろ!」
「先生がもうすぐ教室に来るときだけな。それに、その場でやめても、また先生がいなくなったら殴るんだ。それって止めたって言うのか? 毎日毎日スリップダメージみたいによ。お前のスキルはお前にそっくりだ」
少し余計なことを言ってしまった。池本のステータスを榊さんが教えてくれたことがバレてしまう。でも本当にピッタリだと思ったのだ。
腕力に物を言わせる【豪力】
毒物でじわじわじわじわダメージを与えてくる【毒斬り】
「なんで俺のスキルを?」
「か、鑑定を持ってる人に頼んでお前を調べてもらったんだよ」
榊さんのことは黙っていたが、ちらっと見たら別に言ってもよかったのに、みたいな顔をしていた。本当、いい性格してるな。
「ぐう、汚いぞ! 俺はお前と1対1の決闘を受けてやっただろうが! それなのに、お前は妙なアイテムとか! 強い人に守ってもらったりとか! ふざけんなよ! 勝って当たり前だろうが!」
「そうだよ。勝って当たり前だよ。それの何が悪い? お前もそう言ったじゃないか。一方的に人を殴るのが一番楽しいって。たしかにその通りだよ。今、俺は最高に楽しい」
「……なあ。死んじまうよ。もういいだろう。もう俺はお前にやったこと以上に苦しんだ! 京香! 1000万のポーション出してくれ! 前に飲ませてくれたやつだ! 今なら腕がくっつくだろ!」
「……」
「おい! 京香! 聞いてんのか!?」
「……」
「これで大丈夫だよね?」
「はあ、よかった。彼が負けるのが一番最悪だったから、和也もう死んでくれていいわよ」
しかし、女の人たちは全く動く様子がなかった。
「おい! 京香! ゆかり! ひなた! 澪! 渚!」
そんな名前だったんだな。女の人達はそれぞれに名前を呼ばれて迷惑そうだった。
「こんなバカになるなんて、どこで育て方間違えたかな?」「甘やかすだけじゃなくて、しつけも必要だったのよ」
「聞いてんのか! 早くしないと、お前等の相手もできなくなるんだぞ!」
「本当、残念だわ。ここまで育てるのに4人で3億ぐらいかかってるのよ。大損もいいところ。本当厄ネタを引いたものだわ。六条君で良い?」
「ええ」
「和也は殺したいなら自由にして。でもあとの2人は見逃してくれない? もちろん、小野田と後藤はあなたの前にはもう二度と姿を見せないようにするから。学校だって転校させるわ。2人ともいいわよね?」
「小野ちゃん、ごっちん。安心して。私たちが守ってあげるから」
「次はもう怖い目に遭わせないから、その方が良いよね?」
女の人達はもう池本のことを見てもいなかった。池本の顔がどんどん白くなってきていた。血が失せてきている。いくらレベル15になって生命力が上がったとは言え、両腕をなくして長く生きていられるとも思えなかった。
「も、もちろんです! わ、 悪かった六条! お前ももちろん、もう二度と誰も虐めないって誓うよ! 後藤はバカだけど、後でちゃんと理解させるから!」
「な、なあ、小野田。池本の腕くっついてないぞ? 俺の見間違いか?」
小野田が今の状況が正確にわかったのか、必死に謝ってくる。仲間意識があったのか、後藤のことはかばっていた。それでも池本は見捨てたみたいだ。俺の知る限りでは池本と仲がよさそうだった榊さんが気になって目を向けた。
なぜかうっとりした顔でこっちを見ている。見なかったことにした。
「はあ」
しかし、ここまでやっておいて、なんだか哀れになってきた。刀の特性上、両腕を落としてしまったが、両腕をなくした状態でこれからの人生を生きて行けと言うほど残酷じゃない。だからといって、生かしておけば、後で復讐して来そうだ。
俺は歩き出すと、池本の首に刀の刃を当てた。池本は地面に座り込んでいて血を失いすぎたためか動く気力もないようだ。
「お、おい、冗談だろ?」
池本を殺しておく方が、後々の面倒がない。池本はものすごく執拗でプライドが高い。あの時、池本のへたくそなプロレス技が逆に決まって、俺がそこで力を入れると相当痛かったらしい。
あの日、池本は俺を相手に泣いてしまった。人目のない廊下でやったことだから見ているのは俺だけだった。でも見下していた俺の前で泣いた。かなりプライドに傷がついたのだろう。以来、虐められて今日である。
刀を池本の首に食い込ませた。俺が負けていたら、こいつは間違いなく俺を殺していたと思う。きっと小野田達とともに虐めの復讐に怯えなくて良いためだけに俺を殺してた。
『お願いです。誰でもいいから、探索者の人、和也を助けてください』
池本が行方不明になった時、テレビに出て泣いていた母親の顔が思い出された。
「な、なあ、冗談だよ。俺がお前を殺すなんて冗談なんだよ。本当はそんな気、全然なかったぞ! それなのに、お前は俺を殺すっていうのか!? や、やめろって!」
俺はさらに刀を食い込ませた。池本は本当に殺されると思って涙を流して鼻水までたれていた。しょんべんも漏らしていたが美鈴と違って汚いだけだった。
「俺が死んだら俺の母ちゃんが泣くに決まってる! 一日行方不明になっただけでも号泣してたんだぞ! なあ頼むよ! 俺の家は母子家庭で、俺が死んだら母ちゃん、一人だけになっ!」
俺は刀を振り抜いた。池本の首が地面に転がった。何度か地面をバウンドして、ちょうど上を向き、俺の方をにらんでいるように見えた。





