第五十三話 お小遣い
デビットさんたちの運転するリムジンに乗るとエヴィーも美鈴もそして俺も、指輪で変化していた姿を戻す。装備は邪魔なので、さっさと脱いだ。
普段着に着替え、エヴィーは体にフィットした長袖とタイトなスカートを履いて、ジュースに口をつけた。彼女たちがそばで着替えることにもすっかり慣れてしまった。向こうもそれは同じで、俺の着替えが目に入ったとしても、特に反応はなかった。
そしてエヴィーがリラックスした様子で座席に体を預け、ネットを検索しながら、今回のガチャの結果を金額換算していた。美鈴がちゃんと借金を返しておきたいと言ったためである。
「私たちのガチャ結果は計算してもむなしいだけだし、ユウタのガチャの結果をちゃんとまとめてみたわ。まずは金カプセルからね」
金カプセル
美火丸の額当て 売却不可
美火丸の籠手 売却不可
1000万円のポーション 売却不可
合成素材の宝石 売却不可
溶岩の魔法陣 売却不可
防御の果実 売却不可
SPの果実 売却不可
力の果実 売却不可
素早さの果実 売却不可
「うわー。見事に金カプセルは全部売却できないものばっかね」
美鈴が呆れ顔で言った。
「もったいなくて売れないものばかりよ。全部売っちゃえばどれぐらいの価値になるのかも分からないわ。まあ、金カプセルを売る人がほとんどいないから市場価値がよくわからないんだけど」
「探索者にはお金よりも自分達のステータスの方が重要か」
「金カプセルから出てくるものは、後で買い直せないようなものばっかりだから、たいていの探索者はここで我慢して、ステータスや自分たちの強化を優先させるわ。そうして我慢してブロンズガチャまで行けばガチャ運3のパーティ構成でも、かなり裕福な生活ができるようになるって話よ。私とミスズだけなら、下に行くほど破産だけど」
美鈴は虹カプセルが出る可能性があるし、エヴィーには召喚獣がいる。
しかし、それはお金には全く直結しない。そういう意味でガチャ運1もだが、2も嫌われる。しかし、ガチャ運2の人は大抵レアジョブが出ると言われていて、それ次第では、むしろ歓迎される。エヴィーの召喚士はかなり歓迎されるレアジョブと言えた。
ガチャ運で一番パーティーメンバーとして嫌われるのはやはり1の人で、虹カプセルは結果が出るのが遅い。その間、1人のガチャ結果が全く期待できないというのは、探索者としてかなり嫌がられる。
「ま、まあその分、うちは祐太だけが金カプセル、バグるもんね。普通だと今回みたいに800回回してもパーティー全体で3つか4つぐらいでしょ。それが祐太は340回で20個だもん」
ただ、俺たちのパーティーの場合は、かなり余裕を持って美鈴が虹を出すまで耐えることが出来る。俺のガチャ運が5だからだ。何気に俺は美鈴が田中のようになってくれないかとかなり期待している。
「それでもやっぱり金カプセルから出たものは売りたくないわね。ユウタの専用装備は言うに及ばず、ポーションだっていざという時のために取っておきたい。合成素材は6階層以降で使える装備強化に絶対必要だからこれも取っておきたい。溶岩の魔法陣も取っておきたい。永続的に自分のステータスが上がる果実も売るわけ無い」
「普通の探索者って1~10階層は相当しんどいでしょうね」
「ええ、ほとんどの探索者の収益は銀と銅カプセルからよ。それでも足りないときは泣く泣く金を売るって感じね。続けるわよ。ユウタの銀と銅の内訳は」
銀カプセル
【石爆】の魔法陣4枚 売値120万円 買値96万円。
無銘の刀 売却不可
100万円のポーション 売却不可
無銘の装備品7個 売却不可
精力増強剤10個入り7つ 売値2億1000万円 買値1億6800万円
銅カプセル
【石弾】の魔法陣10枚 売値100万円 買値80万円
10万円のポーション 売却不可。
MPポーション 売却不可。
SPポーション 売却不可。
「売れるものの合計で1億6976万円の収入と考えていいわ。まあ、さすがユウタのガチャという感じね。正直、一個ぐらいは金カプセルを売らなきゃいけないかと思ったけど、かなりの収益だわ」
「俺のガチャ結果って収益1億円超えたの?」
俺が目を瞬いた。何しろ金色はほとんど売れない。銀カプセルから出てきた無銘の刀なども予備として置いておきたいので売れない。銅カプセルから出てきたものもポーションなどは結局ほとんど置いておかなければならない。
だから実際のお金で言えば1000万にもならないと思ったのだ。
「精力増強剤1億6800万?何で精力増強剤はこんなにするんだ?へ、変な意味じゃなくて使えるのは一回だけだよね?」
「意外だけど理由を調べたら納得いったわ。これ、一粒300万円するのよ。10粒入りだから一箱で3000万円の価値があるわ」
「な、なんでそんなに?」
いくらなんでも果実のように効果が持続するわけじゃないだろう。一回飲んだら終わりなのにそこまでのお金を払うものか?それとも300万も払う価値があるぐらい幸せな気持ちになれるのか?
精力増強剤を箱から取り出してみる。錠剤のようなものだ。いや、よく見るとちょっと違う。一つ一つは不定形の白い卵のようだった。
「あ!ヤバいドラッグのようなもので、それでいて副作用がないとか?」
「いいえ、そんな変なものじゃないわ。男専用のものなんだけど、飲むと女の妊娠率が格段に上がるのよ」
全然違う理由だった。いけない想像していた自分が恥ずかしい。
「不妊治療をしている人たちにとっては、救世主みたいなものだそうよ。高い買い物ではあるけど、薬を飲むだけでいいから心理的負担も少ないし、健康な子が生まれる確率も高いんだって」
「でも銀色だと祐太じゃなくても結構出るよね。そんなに高く売れるの?」
「ミスズ、大人の女の妊娠したいっていう気持ちをバカにしないことね。今だからこの程度だけど2、3年前だと一粒1000万ぐらいで売れたらしいわよ。それにこれ、ハーレムパーティーの主にしか出ないんだって。だから結構希少性は高いそうよ」
「そ、そうなんだ」
ハーレムパーティー。ダンジョンはこのパーティーのことをハーレムパーティーと認識しているのか?つまりさっさと全員相手にしろと言ってるのか?
「ま、とは言え、これのおかげで、思ってた以上の収入になったわ。ミスズはコインを10枚ユウタに渡したから取り分は正確に計算すると私への借金には少し足りない。でも、もうこの話はここで終わりにしたいから、私はここから5000万を自分の財布に入れる。それでいいでしょ?」
「俺はそれで問題ないよ」
「私も良い」
「OK。じゃあ、これで私とミスズは貸し借りなしね」
エヴィーと美鈴のお金の問題はこれで決着がついた。
ミスズもだけど、エヴィーもほっとしているようだった。同じパーティ内でもお金の事ではもめやすいのだ。貸した方もだけど、借りた方もお金のことは気にする。ちゃんと解決しておくに越したことはない。
「あと私がユウタに渡した5000万についてはもういいわ。正直返してもらったところで、このガチャ結果から得られる私の利益のほうがはるかに大きいし、ユウタが私をパーティーメンバーとして、ずっと一緒にいてくれるっていうならユウタの金カプセルから出てくるアイテムが正直、欲しいもの。そうじゃないと私はユウタについていけなくなる」
「エヴィーは召喚獣がいるから多分大丈夫だよ。カインなんて、一人で12英傑入りしてるんだよ」
「ミスズ。カインは最初からひとりよ。私もカインについては同じジョブだと思ったから結構調べた。それによるとカインはパーティメンバーを最初から募らずにダンジョンに挑んだって話よ。そういう意味で私もユウタのいう常識に囚われてるの。その時点で多分カインほど一人で何でもできるようにはならないと思ってる。そして私はそれを選んだ」
「そっか……」
それを聞いて俺は考えた。エヴィーは2階層のクエストをA判定でしかクリアできなかった。おそらくカインなら2階層のクエストは楽勝だったのではないか。そういう意味でこのパーティーはもうこのメンバーで探索するための力を与えられているような気がした。
「なら2人とも。俺は約束通り果実は良いよ」
「本当にいいのね?」
俺が改めて前にも言ったことを言うと、エヴィーもだが、美鈴も確認の目を向けてきた。
「うん。俺のステータスは専用装備でいくらでも補えるし、ある程度ダンジョン側から規制がかかるとしたら、俺だけのステータスアップはこれ以上は必要ないと思ってる。何より2人にはちゃんと俺に付いて来てほしいし」
「そう……。じゃあそれについてはもうごちゃごちゃは言わない。ミスズと私で果実を分配しましょう。防御の果実が2つ。SPの果実が1つ。力の果実が1つ。素早さの果実が2つ」
「エヴィー、私は遠距離戦がほとんどだから防御はいいよ。でもSPは欲しい」
「じゃあ私は力と防御をリーンにあげるわ。あの子が私の力と防御の要だから。素早さは一つずつってことでいい?」
「うん。それ、ラーイに上げるの?」
「そういうこと。よく考えたら、私、果実を自分で食べる必要無いのよね」
移動特化のラーイは素早さを、リーンはSP以外はほとんど俺と同じものが必要になる。そう考えたらエヴィーはほとんどの果実が役に立つのか。
「ミスズ。私の方で4つももらっていいの?」
「私が一番欲しい果実って器用なんだよね。これが上がらないで他が上がりすぎると弓の命中精度が悪くなるの」
「でも、防御なら良いんじゃない?」
「遠距離の私が防御を少し上げたからって、あんまり変わらない気がするな」
「そう……」
エヴィーは考え込みだした。防御の果実が一つ余ることになる。俺は本当に要らない。専用装備の強化が、かなり強力だからだ。リーンに防御の果実を2つとも渡す。それでも良かったが、
「なら、防御は一つ売るってことでどうかしら?」
「売っちゃうの?」
「ええ、リーンはガチガチに装備を固めさせてるし、お金を優先してもいいと思うわ。正直、今回の探索は赤字もいいところなの。それを私が全部補おうかと思ってたけど出費が1億近くになってるのよ」
「1億……」
「正確には1000万のポーションを7本使ったわ。100万も7本。疲労回復とかHP、MP回復とか考えたら10万円のものも全部で126本使ってる。すべて合わせて8960万円。私たちは湯水のようにポーションを飲みまくってるからね。その他の諸経費で100万円。9060万円が今回の出費よ」
「も、ものすごいね」
そういえばジュース感覚でポーションを飲みまくっていた。
「きっと新人探索者としては超リッチな探索の仕方でしょうね。まあ、これぐらいのお金は私が何とでもできるけど、下の階層に行けば行くほど、私の資金でもどうにもならなくなってくる。今のうちに黒字にすることも覚えておいたほうがいいわ。ユウタ、それでもいい?」
俺が肯いたので、それで話が決まった。防御の果実に関してはデビットさんたちに高く売れるところをちゃんと探してもらうそうで、最低2億円にはなるとのことだった。そしてエヴィー以外が、それぞれに果実を食べた。
そうしてから確認としてエヴィーも含めてステータス画面を開いた。
名前:エヴィー・ノヴァ・ティンバーレイク
種族:人間
レベル:6→7
職業:探索者
称号:新人
HP:30→33
MP:46→54
SP:25→29
力:25→29
素早さ:26→30
防御:25→28
器用:36→39
魔力:43→51
知能:28→32
魅力:75→76
ガチャ運:2
装備:ストーン級【下着】
ストーン級【魔法衣】
ストーン級【マント】
ストーン級【グローブ】
ストーン級【髪飾り】
ストーン級【アミュレット】×2
ストーン級【魔力杖】
ストーン級【指輪】
ストーン級【ブーツ】
ブロンズ級【アリスト】(バリア値100)
魔法:ストーン級【リーン召喚】(MP15)
ストーン級【ラーイ召喚】(MP25)
ストーン級【火弾】(MP4)
ストーン級【火矢陣】(MP6)
スキル:ストーン級【召喚獣強化】(SP5)
クエスト:2階層A判定
名前:リーン
種族:ブルーゴブリン
レベル:6→7
職業:近接戦闘型召喚モンスター
称号:エヴィー・ノヴァ・ティンバーレイクの召喚獣長女
HP:41→50
力:40→47→50
素早さ:35→42
防御:37→44→50
器用:22→24
知能:4
魅力:40→42
特殊能力:【咆哮】
【二重咆哮】(次女との合体能力)
装備:ストーン級【兜】
ストーン級【胴鎧】
ストーン級【脛当て】
ストーン級【小手】
ストーン級【肌着】
ストーン級【護符】×2
ストーン級【ハルバード】
ストーン級【短剣】
ストーン級【靴】
ブロンズ級【アリスト】(バリア値100)
名前:ラーイ
種族:ホワイトライオン
レベル:6→7
職業:陸上騎乗型召喚モンスター
称号:エヴィー・ノヴァ・ティンバーレイクの召喚獣次女
HP:50→57(人型29)
力:40→46(人型32)
素早さ:71→78→80(人型33)
防御:41→47(人型32)
器用:11→14(人型17)
知能:14→16
魅力:61→62
特殊能力:【擬人化】
【咆哮】
【二重咆哮】(長女との合体能力)
装備:ブロンズ級【アリスト】(バリア値100)
エヴィーはいったん2人を召喚し直して果実を食べさせるとすぐにまた還した。リーンだけなら召喚しっぱなしでも良かったのだが、とにかくラーイが大きすぎる。いくらリムジンでもライオンには窮屈だ。
「結局またフル装備状態でもラーイに素早さ抜かれたな」
「そりゃまあ移動特化だからね。ラーイはステータスの上がり方が素早さだけやたら早いし」
そして最後に美鈴のステータスも確認した。
名前:桐山美鈴
種族:人間
レベル:6→7
職業:探索者
称号:新人
HP:38→45
MP:27→30
SP:41→48→51
力:33→38
素早さ:35→42→47
防御:28→32
器用:41→49
魔力:26→30
知能:22→25
魅力:55→58
ガチャ運:1
装備:ストーン級【髪飾り】
ストーン級【胴鎧】
ストーン級【脛当て】
ストーン級【小手】
ストーン級【肌着】
ストーン級【護符】×2
ストーン級【弓】
ストーン級【短刀】
ストーン級【履き物】
ブロンズ級【アリスト】(バリア値100)
魔法:ストーン級【レベルダウン】(MP3)
スキル:ストーン級【精緻二射】(SP4)
ストーン級【剛弓】(SP3)
ストーン級【探索】(SP2)
クエスト:2階層A判定
「やっぱり果実はじわじわと違いが出て来るね。果実を食べてなかったら2回ぐらい主要スキルを唱えられる回数が違うかも」
ステータスを見ていても、できることがじわじわと増えてきている。そしてクエストや果実などによるステータスの変化がじわじわ大きくなって行く。これが大きくなれば、相当得られるものが大きくなるはずだ。
「じゃあもう一つ提案なのだけど」
そんな成長の実感をしていると、エヴィーが再び口を開いた。
「今回の探索でプールする資金もできたわ。私が5000万財布に入れたとしても防御の果実を売れば最低2億2737万円残る。果実の買値次第ではもっといくでしょうね。ここから次の探索のために1000万円のポーションを10本。100万円のポーションを20本。10万円のポーション100本。MP、SPも100本ずつ。その他もろもろの装備品を1000万円分買い足すわ。問題ないわね?」
「うん、いいよ」
俺はあっさり頷いた。なんか1億円以上いるようなことを言われた気がするが、金銭感覚が崩壊しかけていた。
「これで資金は6737万円残る」
「2億以上はあったのにあっという間に、お金が減ったね」
「探索者の金銭感覚……」
「で、それぞれにお小遣いは必要でしょ?いざというときは、私が資金を出すから問題ないし、6737万は3人で分けるというのはどうかしら?私とミスズで1000万円ずつ。残りの4737万円はユウタ。これでどう?」
「お、俺だけ多いのは?」
「理由を言う必要がある?」
「ま、まあ……そうだね。バカな質問だった」
どう考えてもこの資金の潤沢さに一番貢献しているのは俺のガチャ運だ。その分、俺の取り分を一番大きくしてくれてる。言わなくてもそうするのが当たり前だと、エヴィーが言ってる。
「え?い……1000万円、わ、私もお小遣いってこと?」
「そういうこと。まあ、収入といってもいいかもしれないけど」
それはそれとして、俺も美鈴もそんなお金を自由に使ったことがない。今まで余計なことにお金を使う余裕などなかったから全然目を向けてこなかったことだが、今回のガチャ結果を受けて結構金持ちになったようだ。
「私とミスズだけなら大赤字もいいところ。でも、私は召喚獣の貢献分。ミスズはガチャコインをやたら見つけた貢献分と考えれば妥当じゃないかしら?」
「本当に1000万も私もらっていいの?お小遣い?収入?」
「変なことに使っちゃだめよ」
「使わないけどさ。お母さんみたいなこと言わないでよ」
俺も美鈴の金額の大きさに完全にビビった。完全に中学生のお小遣いを超えている。こんなにお小遣いをもらっている中学生が日本に居るだろうか?
「とにかく2人ともOK?」
「お、OKです」
「OKに決まってるけど、なんだかそんなに持つのって怖いな」
エヴィーは元々そのつもりだったのか、用意が良いと言うべきか、すでにお金を用意していて、俺と美鈴はそれぞれに現金で、札束を手渡された。しばらくそれを見て感動していたが、エヴィーが更にもう一つ言ってきた。
「この後はどうする?また私のホテルで3人で打ち上げでもいいわよ」
「それなんだけどさ。わ、私、今日は祐太とホテルに2人で泊まりたい」
「は?」
「み、ミスズそれって」
「ち、違うから。本当にしてって言ってるんじゃなくて、2階層に入る前、祐太、エヴィーのホテルでお泊りしたんでしょ?」
「それは……」
「もう私の中でその問題が解決しているからいいの。ただ私も祐太とゆっくり2人で寝れる場所で泊まってみたいなって思っただけ。うちの家だとお父さん絶対許してくれそうにないし、祐太の話だと15歳を超えてレベル3以上なら成人だと認められるんだよね?じゃあホテルとか泊まるのも問題ないだろうし」
「それはそうだね……」
「ダメかな。祐太のしたいようにしてくれていいから。私祐太に迷惑ばかりかけてるから全部言うこと聞く。やってほしいこと全部やってあげる」
「お、おう……」
が、我慢できる自信がない。むしろ我慢しなきゃいけないのか?向こうは完全にウエルカムだぞ。やっちゃうか。ついにやっちゃうか。
いや、しかし、俺がずっと伊万里に迫られても手を出さなかったのは何も倫理観だけの話じゃない。俺は探索者について昔から結構よく調べていた。そして探索者には若くして子どもを作ってしまう人が多かった。
というのも探索者は非常に健康体になってしまうため子供ができやすい。避妊対策をしてもそれを突き破って出来てしまうほどだ。その結果がどうなるかは言うまでもない。
若いがゆえにうまく育てられず、俺の親父みたいなめちゃくちゃな育て方をしている探索者の女性がたくさんいた。子供を施設に預けて、自分は探索者をして、ダンジョンで死んでしまうなんて話もよくあった。
それを見て俺は若くして子供を作るのって怖いなと思ってた。だから俺は伊万里をそんなことにしてはいけないと思ってた。美鈴やエヴィーも同じだ。
「じゃあ、私からはここまでよ。これから2人でお泊まりというなら、どうぞ降りてください」
エヴィーが言った。とにかく俺と美鈴は天変の指輪で冬服を着て、車を降りた。少し雪がちらついていた。





