第三十話 ダンジョン宿泊
朝早くに泊まり込みの荷物のリストアップしたデータが、俺のスマホに届いた。それから程なくしてエヴィーから電話がかかってきた。俺が電話を手に取ると、エヴィーの声はなんだか冴えないように思えたが会話自体は普通にしてくれた。
「2階層への階段、早めに見つかるといいね」
『そうね』
エヴィーから提案してくれたことだが、2週間ぶんの泊まり込みの食料を全部任せてしまったのは、やはり頼りすぎたのか。悪いことしたなと後悔したが今更仕方なかった。
『ユウタ、こんな感じで荷物はいいかしら? 食料とかも問題ない?』
「あ、うん。ごめん。全部任せちゃって」
『いいわよ。私から言い出したことだし、やったのはデビットたちだしね』
昨日のエヴィーの様子から、ダンジョンでの戦闘は何の問題もなさそうだったので、俺たちは早速今日からダンジョンに泊まり込むことにした。
それぞれ家族にダンジョンで泊まり込むことを連絡したり準備を調え、エヴィーからもう一度準備が終わったと電話があったのが、正午のことだ。
「じゃあね祐太。ちゃんと無事に帰ってきてね」
「わかってる」
家に帰っていた俺は、これから最長で2週間会えないため、伊万里が学校を休んで、一緒に過ごした。そして玄関でキスをする。美鈴としているのと同じキスだった。
「祐太。私がいなくて夜眠れるの?」
ここのところ伊万里との境界線が曖昧だった。一緒に寝るのが当たり前のようになってきて、抱きしめられることも多かった。俺はそれに逆らうことがなくなってきた。と言うか伊万里の巨乳に精神力がガリガリと削られて、抵抗する気力がどんどんと無くなっていく。
「大丈夫だよ」
「でも最後にもう1回だけギュッてしておこうか?」
「いや、いいよ」
「なんで?」
「み、美鈴とうまくいってるんだよ。今はまだいいけどやっぱり伊万里はちゃんと好きな人を探すべきだと思うんだ」
この間あんな事を言ってしまったがために、伊万里が最近俺とのスキンシップを必要以上に求めてくる。前まではここまでひどくはなかったはずなのだが、そのことに俺は若干疲れ気味だった。
「そんな相手いないってば」
「それでも探した方がいい。じゃあもういくよ」
「ちょっと待って。もうちょっと一緒にいようよ。今日はちゃんとお母さんに学校休むことも言ってあるから」
「みんなに悪いし、伊万里……じゃあ」
「ゆ、祐太!」
言葉を残して家を出た。待ち合わせの時間より遅れて甲府ダンジョンについた。デビットさんたちから荷物を受け取ると、ダンジョンの入り口をくぐり、エヴィーと美鈴が40代の夫婦に変化した姿を戻した。その頃にはもう15時になっていた。
時間は遅くなったが早速探索を始めることにして、それぞれ地図アプリが表示する方向へと走り出した。それ自体は問題がなくて、英気を養っていたこともあり夜の12時まで探索は続いた。そして3人で合流して、いよいよダンジョンで初めての宿泊となった。
「ずっと日が照ってるから感覚が狂うね」
「そうね。これで夜中の12時だって言われてもね」
「こんな暑いところにずっといて、よく平気だよな」
ダンジョン内の天気は固定されている。時間もずっと日中のままだし、気温は30度で固定され、蒸し暑い。初めての夜、寝る時間になり、交代で睡眠をとることになっていた。低木の陰で上に日陰になる天幕を張り、二人が見張りについて、もう2人が寝る。
「じゃあお先に」
「ええ、一応言っておくけど本格的に愛し合うなら、私たちに見られるのはやむを得ないと思ってね」
かなり露骨にエヴィーが言った。この辺は文化の違いなのか、エヴィーは性的な事を全く隠さない。
「し、しないよ」
「あら、そうなの?」
当たり前のことを言ったつもりなのか、エヴィーが意外そうに目を瞬いた。
「遠慮しなくても、ちゃんと見張りはしてあげるわよ」
「いやそういう問題じゃなくて、俺たちは」
「祐太、いいから早く寝ましょう」
俺が美鈴とはそういう関係ではないと説明しようとしたが、美鈴に引っ張られて天幕の日陰の中に入った。通常のテントだと日中は熱気がこもってしまうので、天幕を張っているだけだった。俺は引っ張られて美鈴の横で寝る。美鈴が目の前にいた。
「祐太、やっぱりしたいの?」
「何が?」
「正直まだ決心がつかないけど、どうしてもって言うならいいよ?」
「え? あ、い、いいよ! そんなつもり全然ないから」
「ふうん、それって好きな人いるから?」
「いや、それは……」
そういえば美鈴のその誤解は解けていない。しかし今朝の伊万里の様子を見る限りほかの男を作りそうな様子はなかった。今、美鈴が好きだと告白すれば伊万里は見捨てることになる。見捨てるのか?今までずっと一緒に生きてきた伊万里を?
「祐太の好きな人が誰なのか教えてほしいんだけどダメ?」
「いや、それは……」
「どうして私じゃないかな」
美鈴の顔が近づいてきて唇が合わさる。体を密着させたまま美鈴が目を閉じた。そしてそのまま離してくれなかった。今日もずっと走り続けていたからかなり疲れていた。美鈴と唇を合わせたままなのにウトウトしてきてしまう。
それぐらいずっとキスしたままだった。美鈴とはもう恋人同士の関係なのだろうか。好きだとちゃんと伝えていない。伊万里との関係が頭に引っかかり続けてる。俺の中で誰が一番なんだ。一人に絞るべきだ。考えてる間に俺は疲れていたこともあり寝ていた。
「ちょっとダメだって」
「ぎゃ」
「疲れて完璧に寝てるって? そういうことじゃなくて」
だからそれは夢の中のことだったと思う。なぜか下半身がもぞもぞとした。しかし体が疲れすぎていて、覚醒には至らなかった。
「ぎゃ」
「きっと物足りないと思ってるって? 男だとそうなのかしら……」
「ぎゃ」
「かわいそうだ? それはまあ確かにそうよね。レベル3の男なんてかなりタフだって言うのにキスなんかじゃ治らないわ。ミスズもちゃんと最後までしてあげないと」
「ぎゃぎゃ」
「寝てる間ならわからない? んん、ミスズがね。いくらなんでも起きない?」
「ぎゃ」
「完璧に寝てる……」
「ぎゃ」
「ちょっと待ってベルトを外そうとしない。ダメ。それはダメよ」
「二人とも何してるのかな?」
夢の中で俺は女3人が、俺を巡って取り合いをしている光景を見た。あまりに現実感のない夢だった。夢とは突拍子のないものだが、ここまで突拍子がないと笑えてくる。それでもあまりにも眠たかった。だから俺は心地よく眠りにつけた。
「あ、もう、ミスズが起きたじゃない」
「何が『起きた』よ! 警戒しといてよかった! エヴィー、人の男に手を出さないでよ!」
「でも、あなたたち付き合ってるの?」
「付き合ってるわよ!」
「じゃあユウタに好きな相手が別にいるとか言ってたのは何の話?」
「それは……。エヴィーには関係ないでしょ!」
「関係あるわ。ユウタに本命が別にいるのにミスズが手を出してるなら、私だっていいじゃない。寝る時にユウタを使わせてよ。別に本当にしようってわけじゃないわ。男とキスしたまま寝てみたいの」
「祐太を物みたいに言わないで!」
「でも、あなただってユウタに他に好きな人がいるのに手を出してるんでしょ?」
「そんなこと……」
俺が夢を見ていたのもそれまでだった。それ以降は完全に眠ってしまい。結果がどうなろうとも恐ろしいことにしかならない気がして、知ることを拒絶するように眠っていた。
「ふう、やっぱり見つからないものだな」
探索も8日目に突入していた。ポーションがあるとはいえ精神的にだいぶ疲れてきた。2週間経っても見つからなかったら一旦ダンジョンから出るという話になっていた。俺は目の前にゴブリンを見つけた。6体の群れである。2体は弓を持っていた。
「行けるかな」
ゴブリンを倒すことにもかなり慣れた。1階層でゴブリンが徒党を組む最大人数は6体で、それを目にしても、怯える気持ちがなくなっていた。逆にゴブリンに向かって一気に加速する。
距離が50mほどまで近づいたとき、ゴブリンが気づいてこちらに向かって矢を放ってきた。それをステップでかわす。次々と矢が放たれるが全てかわすか日本刀で叩き落とした。
「全く自分でも感心するよ」
自分がこんなことをできるようになるとは本当レベルアップはすごいなと思う。思いながらもゴブリンとの距離がゼロになった。ゴブリン4体が一斉に飛びかかってくる。最初はビビったこの攻撃にもすっかり慣れてしまった。
俺は慌てずにポリカーボネートの盾で一体を吹き飛ばし、もう一体は攻撃が来る前に斬り殺し、さらにもう一体の攻撃が当たる寸前で蹴りを放った。そうすればゴブリンの体がサッカーボールみたいに吹っ飛ぶ。
それでもゴブリンは相手が強いからと言って怯まない。きっと恐怖心がない、ただただ人を殺そうとする殺意の塊。俺に向かってさらに矢が向かってくる。日本刀で叩き落とす。蹴りで吹き飛ばしたゴブリンを返す刀で斬り殺す。
6体いたのが4体まで減った。ゴブリンアーチャーは後ろに控えているので目の前にいるのは2体だ。こうなるともう楽勝だった。素早く2体を斬り殺す。一気に後ろに控えていたゴブリンアーチャーに肉薄する。
「終わり!と」
近づいてしまえばゴブリンアーチャーは敵でも何でもなかった。首を素早く斬り落とした。ちょっと自分で悦に入ってしまうぐらいうまく倒せた。
「体が思い通りに動くんだよな。ゴブリンを目の前にしても怖いって感覚もなくなってきた。この積極性が美鈴にも向けられたらいいんだけど」
特に考えてしまうのは寝る時のことだ。未だに自分からは美鈴に何もしたことがなかった。自分でも意気地なしだとは思うが、エヴィーとリーンからどうやっても見られることになる。そう思って踏み切れないのもあるし、
「好きかどうかも確かめてないのにな」
そこも問題だ。お互いまだ恋人でもない。告白もしてない。伊万里はどうする。ダンジョンでは心よりも体の方が先に進んでしまっていた。ふと視界にまたゴブリンが目に入った。俺は面倒になってM17を構えた。放つとゴブリンは簡単に全滅した。
パチパチパチパチ
と、拍手の音がした。音がした方を見るとエヴィーがいた。青い肌をした綺麗な少女。リーンも後ろからちょろちょろとついてきている。
「どうしたの?」
聞きながらも内容はだいたいわかっていた。休憩の時以外にエヴィーがこうやって接触してきたのは初めてじゃないからだ。
「トイレ」
「だろうね。わかったよ」
美鈴とも何度かこういう接触はあった。人間なのでみんなで昼食をとる12時ばかりにトイレへ行きたくなるわけじゃない。不意打ちがどうしてもある。そういう時はお互いに声をかけた。
いくら楽勝になったとはいえ、一人でトイレをしないようにとは3人で話し合っていた。そしてそういう時に声をかけられるのは、美鈴もエヴィーも俺のようだった。同性の方がいいと思うのだが、何故か俺に頼んでくる。
エヴィーは相変わらず見惚れるほどスタイルが良くて、それでいて大胆で、俺が見ているのに暑いからとボディアーマーまで外して、濡れると嫌だからと靴も脱いでしまうと、ズボンを下ろし始めた。
「ユウタ、こっち見て」
視線をそらしていたらそう言われた。服は着てないはずだと疑問に思いながらそちらを見ると、ズボンを脱いでしまった状態だった。下半身に短いレギンスを履いていたが、エヴィーがこちらをしゃがんだ姿勢でこちらを見ていて、いたずらが成功したみたいな顔をしている。
「だからそういうのやめてくれって」
「別に見てもいいって言ってるでしょ」
「エヴィーは綺麗なんだから、もうちょっと節度を持とうよ」
「節度を持つね」
エヴィーは幻想的なほど綺麗だった。その点に関して美鈴でも太刀打ちできないほど綺麗で、これ以上綺麗になる余地があるのかと思う。俺が慌てて視線をそらすと用を足す音が聞こえてきた。
アメリカでトップモデルをしている少女が自分の近くでトイレを済ませるというのはかなり思うところがある。やっぱり人間だから出るものは出る。そしてそういう時が一番危ない。それが分かってるから合流してるだけだ。
「ごめんなさいね」
「いいよ。エヴィーがいくら綺麗でも、こういうことは当たり前だから」
「そうじゃなくて、寝る時のこと」
「あ、ああ」
俺はそう言われて改めて、寝る時になると勃発する美鈴とエヴィーの言い合いを思い出した。最初は夢かと思っていたが、3日目ぐらいに夢じゃないと気づいた。美鈴との関係。それがエヴィーはかなり気に入らないようだ。
「やっぱりユウタは起きてた?」
「そりゃまあ、あれだけ言い合いをしてたら起きないわけないよ」
「日本人はよく理解できないわ。自分だって割り込んでいるくせに、私には割り込むなとか。それに、ダンジョンの中なのよ。少しぐらい私にもユウタを貸してくれてもいいじゃない。ユウタは一番が別にいるんでしょ?」
「ああ、う、ううん……」
誰が一番かと言われたら、曖昧で自分でもよくわからなくなってきていた。美鈴のはずなのだがどうしても伊万里のことを思い出してしまうのだ。何よりも伊万里との関係性を美鈴にもエヴィーにもはっきり言えずにいることで、話がややこしくなった。
「私はあなたとミスズの仲を邪魔しようってわけじゃないのに、挨拶のハグならいいけど思いっきり抱きしめたらダメとか。自分だってユウタの本命じゃないくせに、キスするのはダメとか。ユウタは私とするのが嫌? ミスズが彼女面で管理してくるのも嫌じゃない?」
「あ、うん……嫌なわけじゃないんだけど」
曖昧な返事をする。
俺の目の前にくる女子達はどういうわけか、みんな肉食系でとにかく体の関係を求めてくる。俺はそれを消化しきれずにオロオロしてしまう。以前は彼女ができても全然積極的にならない日本の草食系男子というものを馬鹿にしていた。
でも実際そういう相手ができて、女子の方から積極的にガンガン接触されると、男としてただただ戸惑う日々だった。特に伊万里も美鈴もエヴィーも全員超美少女だった。それなのに俺みたいな男相手に何がどうなって今みたいな状況になるのか? 俺が一番よくわからなかった。
「私だって外じゃこんなことしないわ。何股もする男は嫌いだし、私ってこう見えて処女なのよ。彼氏だって本当はいないもの。それにミスズとユウタが私を受け入れてくれたことにも感謝してる。だから最初はユウタに手を出さないでおこうって思った」
そうなのか? 思いっきり誘われてるように思ったのだが。今もズボンも穿かずに立ち上がって近づいてきてるし。
「でも、私はダンジョンに異性がいるって事を舐めてたわ。この状況は無理よ。我慢してたら発狂しそう」
「まあ気持ちはわかる」
もし逆のことをやられたら俺だって発狂する。
例えば美鈴ともう一人の男が一緒にダンジョンに入って、美鈴とキスをし始めて、毎日それを見せつけられる。そして自分は美鈴に指一本触らせてもらえない。そんなことになったら間違いなく俺はパーティーを抜ける。
「じゃあミスズもいないんだし、いいでしょう?」
俺の言い方が肯定したと受け止められたようだった。エヴィーの腕が首に回された。まだズボンすらも履いていないまま、目の前にエヴィーの顔があった。そして更に求めてくる声が聞こえた。
「ぎゃ」
リーンの方を見た。肌が青色で耳がとがっていること以外はリーンは見た目が完全に人間だ。しかも結構可愛い。身長は低くて幼女チックで、出るところが出てない少女。召喚した姿がそうなのか黒いレオタードのようなものを着ていた。
こちらも装備を取ってしまっている。基本的にリーンはエヴィーと同じ行動をとるようだ。
「リーン。あなたはダメ」
「ぎゃ」
「0歳児が生意気なこと言わない。ね、ユウタ」
「でも、美鈴にバレたら……」
「大丈夫。私も1番になろうなんて思ってるわけじゃないわ。ミスズだって2番手なんでしょう? じゃあ私が3番手、問題ないでしょ?」
「それは……」
「ぎゃ」
「ミスズとの邪魔は絶対しないと約束する。ダンジョンの中では相手の位置がスマホでわかるんだから、ばれる心配もないでしょう」
「ぎゃ」
「リーン煩い」
そう言ってエヴィーは地図アプリを見せてきた。
地図アプリは仲間の現在地も示してくれる。美鈴の場所はここから5kmも離れていた。さらに離れていっているようだ。向こうにもこちらの位置は分かるのだが、トイレのために接触することはよくあり、エヴィーのこの行動までは把握できていないらしい。
「いいでしょう?」
「どうして俺にこだわるんだよ? 正直俺は普通の日本の中学生だぞ。別にこれと言って冴えたところがあるわけでもない。それに男が欲しいだけならデビットやマークもいるだろう」
「意外だわ。あなた自分の魅力に気付いてないのね。それに私がデビット達と寝たら、あなた私とする?」
「しない」
「でしょ。私も同時に複数と関係持つのは嫌よ。だからユウタ一人でいいの」
「俺一人がいい? でも俺は美鈴と……付き合ってるようなものだ。それに、もう一人大事な女の人がいて、その子ともキスしている。そんな男なんだ。エヴィーが嫌だって言ってる複数の女と関係を持とうとしてる最低野郎だ」
顔の距離はほとんどゼロに近かった。お互い汗をかいているからとても臭うはずなのに気にならなかった。
「あなたにもう一人女がいることは知ってるわ。その人がもうすぐ仲間になることもね。でもね。私はそれでいいって最初から思ってここに来たの。メイからも男1人で女が3人になるパーティーだって聞いてたわ。ハーレムパーティーになるって分かっててここに来たの。だから問題ないの」
「いや、むしろ問題しかないだろ」
「どうして? 探索者のパーティーにはハーレムが多いわ。女が多い場合もあれば、男が多い場合もある。そういう場合は、一人を複数で共有し合う。世間的にも認めることよ。祐太が恥じるべきことじゃないわ」
「……エヴィー」
エヴィーの言葉は本当だった。中学のダンジョン授業ではハーレムパーティーについても教えられる。倫理的にはまだ大っぴらには認められてはいないのだが、そういう場合は喧嘩をせずに仲良くしましょうと曖昧なことを教えられる。
それぐらいハーレム構成のパーティーになってしまうことは多いのだ。しかしそれは男でも女でも、その人間がとても貴重なレアジョブを持っていたり、見た目がとても良いとかいう理由がある。俺みたいに劣っている人間がハーレム状態になることはなかった。
何よりも半数以上がもめて崩壊すると言われていた。
「俺なんかを君まで好きだとでも言うのか?」
顔が迫ってきた。鼻先が触れ合ってしゃべっていると唇まで触れ合いそうだった。
「ダンジョンはとても不思議な場所。私はあなたのことを聞いた瞬間に不思議な運命を感じた。あなたはそうじゃないの?」
「それは……。感じたよ。よくわからないけどこれからともに生きる人だって」
「それならもう言葉はいいでしょ?」
唇が合わさる。しばらくそうしてるとリーンが不満の声を上げた。俺はエヴィーにキスされて頭がどうにかなりそうで、抵抗することも出来ずにいた。
ダンジョンはどうして俺とこんなに綺麗な少女たちを引き寄せたのだろう。その行為はゴブリンから襲撃されるまで続いた。





