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第二百九十五話 Sideジャック 一年

「まさかこんなに出てこないとはな」

「君は敵を作りすぎだよ。尻拭いしている僕の身にもなってほしいね」

「マジすまん」

「まあその素直に謝る姿勢だけは評価するよ」


 六条屋敷からそれぞれの道を決めて自分たちの世界へ旅立つこと一年。俺と土岐はようやくシルバーエリアの中から出てきた。安心して支配地域を任せられる相手ができて、何よりもシルバーエリアをクリアすることができたのだ。


 そのことによって俺は国家の王様となり、【風王ジャック】と呼ばれることになり、土岐は【名宰相土岐】とあっちでは呼ばれている。地球のことではないとはいえ、この俺が王様である。


 それは何ともむず痒い話で、まだなったばかりだがどうも慣れない。しかしここから世界の支配者とならなきゃいけない。でなければ世界は滅びへと向かっている。シルバー、ゴールドエリアは探索者が支配しなければ滅ぶ世界だ。


 だからこそ探索者が支配するしかない。そのことも一年シルバーエリアにいてよくわかった。エネルギーバランスの均衡が崩れ、悪魔が次々と誕生し、それらを殺して人心を安定させる。そして安定した治世を開く。


 それがシルバーからゴールドへと行くために求められる支配者としての資質であった。


「まあジャックのおかげで僕までゴールドになれたんだから文句はないけどさ」


 世界によってエネルギーの量は全く違う。俺の支配した国では十人ならゴールドにすることができる。それを俺と土岐が独占し、二人のみがゴールドとなったのだ。そしてエネルギーを独占することで更に上のゴールドを目指せる。


 これがシルバーだと200人養えるほどエネルギーがある。一年間で100人いたシルバー級は今や半分以下だ。44人が逃げ出し、19人が死んだ。そして残った俺たちを覗く35人は俺の支配を受け入れた。


 シルバー級で納得し、地方領主に収まるもの。商売を始めるものといろいろだったが、そういう探索者たちも俺がゴールドエリアの支配に成功すれば、国の支配を任せる可能性もあると分かっているので、それを見込んで協力的だ。


 まあそうなるように土岐が仕向けてくれてるのだ。殴る専門の俺の緩衝材に本当になってくれてた。


「いや、俺は結構お前のおかげだって思ってるぞ」


 こいつは自分のことを控えめに評価するが、俺より土岐の方がすごい。土岐は支配に向けてしっかりとプランを立てて情報を収集する。その能力が非常に高く、これにもかなり助けられた。だから、俺は結果を出せたのだ。


「そう言ってくれて嬉しいよ。レベル362。たった一年でゴールドなんて話したら、嫁たちはびっくりするだろうな」

「ああ、間違いなくびっくりだ。いつの間にやら、マジで強くなったからな」

「きっかけをくれた六条君には感謝だね。彼が五郎座衆のクエストに僕たちを入れてくれたから、今があると言っても過言じゃないよ」


 正直、俺は五郎座衆の時ほとんど役に立ってない。それでシルバーになることができたのだから、六条にはでかい借りができてる。


「そういえば君のところの"大戦"も気になるね」


 土岐の言葉で、嫌なことを思い出した。どうもこれはかなりよろしくない方に行ってる。ちゃんと情報は調べていないが、シルバーエリアにいる探索者で、日本に帰ったことがあるやつが話していた。


 日本としての状況は"そこそこ"らしいが、世界的にはかなり混乱してる。そいつが出て行った時には死者数は5000万人を超えたとか言ってた。ほとんどの死者は探索者の戦いに巻き込まれた一般人で、どうにもやりきれん。


 それでいて日本人の死者は一万人ほどらしい。最も世界から狙われやすい日本がそれだけ小数ということは驚くべきことだが、それによって日本へのヘイトはかなり高いという話だ。どうしてそんな状況になってるのか?


 何がどうなってるのか? そいつも自分の領地が気になるのですぐに帰ってきたらしく、詳しくは知らなかった。


「最初の悪神も誕生したとか言ってたよな」


 悪神。神からなるパターンもあれば、元から悪神として生まれるパターンもある。悪神は様々な方法で生まれるが、たいていの世界は12の神の枠が埋まり、その後100年程かけてゆっくりと増えていく傾向があるらしい。


「悪神は地球には出ないんだって思ったら普通に出たね」

「そうだな。しかし、まあこんな規模の戦争が起きると悪神は出るもんなんだろ」


 直感的なものだがそう思った。破壊を是とする存在である。間違いなく大規模な破壊が起きているのだ。この機会に現れないのなら、いつ現れるのだという話だ。


「うん。まあ普通はそうだね。悪神が現れる条件はいろいろあるけど、大戦時に現れることが多いってのは聞いたことあるよ。ちなみに大八洲国で悪神が最後に誕生したのは、僕が生まれる前のことでね。100年前に外国で起きた大戦から逃げてきた神がなったそうだよ」

「ほおん。まあこの国で逃げた神なんて相手にされねえよな。なんて名前なんだ?」

「知らないよ。だって誰にも名乗らずに悪神になったんだ。よっぽど酷い目にあったのか、そのまま大八洲国の小さい島に引きこもって、怯えて、島が地震みたいに震え続けてるってさ。震え神なんて呼ばれてるよ」


 よっぽど嫌な思いをした神だったのだろうか。しかし、12の悪神の枠に入ろうと思えば、前の悪神は殺す必要があるんじゃ? 考えながら、六条屋敷に到着するとからくり族が出迎えてくれた。他に人はいるかと聞くと、


「六条様のパーティーメンバーはいませんが、他の人はおられますよ」


 と言葉が返ってくる。


「ちょっと残念だが、他って誰がいるんだ?」

「ええ、田中——」

「おや、六条君のパーティーメンバーかい?」


 聞かれてそっちを見て、


 そして、


 心臓が止まりかけた。


 比喩抜きでマジだ。


 声をかけてきた相手は猫背で以前より痩せて見えた。サラリーマンにしか見えない背広を着て、般若の面をしている。俺はあまりの神々しい姿に一歩引いた。なんてイケてる男がいるんだ。心からそう思った。


「た、たた田中様!!?」


 思わずフロア中に広がる大声が出た。


「え、はい?」


 俺が見間違うわけもない。絶対にこの男だけは見間違わない。それは田中太郎様だった。どうやら俺は寝ぼけてたらしい。六条屋敷に帰るのが楽しみすぎてシルバーエリアにある俺が住んでいるとは思えないほど豪華な城で夢を見ているのだ。


 田中太郎様が出てくるとは、何という幸せな夢だ。正直嬉しい。


「般若の面にサラリーマンのスーツ姿。これってあれじゃないの? ジャック。田中とかいう人じゃないの?」

「お、おう。そうだな」


 声が震える。心臓が高鳴る。童貞を捨てた時でもこんなに緊張しなかった。間違いない。俺は今感動している。夢でもいい。田中に一度でも会えたなら夢でもいい。でも夢じゃなかったら嬉しい。俺は自分の頬を殴った。


 ズドンッという衝撃音が響いた。


「え!?」

「痛え……夢じゃないのか?」

「よかったね。君、大ファンなんだろう。でも何でいるんですか?」


 田中様は俺の行動に驚いたが、土岐は通常運転だ。たまに俺が変なことをすることには慣れてる。それにしても土岐。田中様によく普通に話しかけられるな。それだけで尊敬に値するぜ。


「俺はもう今日死んでも後悔がない」

「死んだら困るよ。ほら君も握手してもらったら」


 土岐の奴、いつの間にか田中様と握手してやがる。すげえ。こんな神々しい人に普通に握手するなんて、


「土岐、お前ってすごいやつだったんだな」

「はいはい。それよりジャックも握手してもらったら?」

「ジャック……ああ、えっと、六条君から聞いたんだけど、君も僕なんかのファンだったりする?」

「へ、へい! そうです!」

「六条君といい、ここは変わった子が多いな。僕なんかでよければいくらでも握手するよ」

「お、おお! ちょ、ちょっと待ってくれ! 手を洗ってくる!」


 そして俺はトイレに行き、小便をして、手をきっちりと何回も洗い。それだけでは足りないと思い温泉に入り、髪を洗い、体を清め、歯を磨き、握手してもらって感動した。


「この手を切り落として保存して【仙桃】を使って復活させて」

「握手ぐらいいくらでもするから、怖いこと考えないでね」

「そうか……。ところで何でいるんだ?」


 長年誰にも媚びずに喋ってきた。こんな時ぐらい丁寧語を喋ってもいいのだが、どうにもそれは俺のポリシーが許さなかった。


「ああ、六条君にはかなりお世話になってしまったからね。南雲君と鈴の三人交代で、誰かはここにいようって決めてたんだ。常駐はできないんだけど、君たちの誰かが帰ってくると僕たち三英傑の誰かがここに来る。今回はたまたま僕がいたんだけどね。いない時でも1時間以内には帰ってくるようにしてるよ」

「ほほお」


 ただの連絡役を三英傑でしてくれている。どうしてかと考えると、田中様は現在の状況を色々と教えてくれた。その話を聞いている限り、三英傑側は六英傑や悪神が六条屋敷に介入してくることを恐れてるんだと思った。


 六条屋敷に入り込まれて、かき乱されたら、かなり面倒なことが起きてしまう。田中様達にそう考えさせるほどに六条屋敷の地位をあげたのなら、やはり六条は俺たちのパーティーリーダーだ。


「田中様。じゃあ六条は今はもうルビー級か?」

「いや、そのことなんだけどね——」


 田中様は俺達にその辺の事情も詳しく教えてくれた。俺はそれを聞いて、六条が素直にすごいやつだって思った。勝ったとか負けたじゃない。あいつは自分が生きるためにも、日本が助かるためにも頑張ってたんだなと思った。


「悔しいとか思うのがアホらしい。そうか、六条、呆れるぐらい頑張ってやがるな。しかし10年後かよ。それしか生きる方法がなかったとはいえ、あいつも大変だな」

「うちのパーティーリーダーは相変わらず波乱万丈だ。でもそれだと10年後はさすがに僕たちの方が強いね」

「だな。ルビー級と言わず、12英傑の枠もずいぶん開いてるみたいだ。狙って狙えなくもないぜ」

「僕がレベル1000超えるか……」

「はは、君たちが言うと冗談に聞こえないな」

「聞いてばっかりで悪いんだけどよ。今の日本はどんな感じなんだ?」


 それが気になっていた。そうすると田中様は、六条達が手に入れた【千年郷】にほとんどの日本国民が避難していることをまず詳しく教えてくれた。


「——まあやりすぎて日本人だけ誰も死なないから、世界中から『ズルい』ってヘイトがかなり溜まってるけどさ」

「ズルいってのはお門違いだろう。こっちの努力の賜物だ」

「それでもね。こっちはほとんど死んでないようなもので、こっちは殺してるからね。おまけに八英傑はカインが中立を宣言して戦力ダウン。さらに最近、ナディアが悪神に堕ちたせいでメトもやる気をなくしている。こっちはそれを見逃さず大攻勢を二月ほど前にかけた。残念ながら決定打にはならなかったけど、六英傑は自分たちの国土も守らなきゃいけない関係上、かなりこっちが有利になってる」


 だがこっちも森神が死にポーションの供給体制に不安が出ているそうだ。そして日本の国土に人がいないせいで、逆に国土を守ってないから、【千年郷】に何かあれば大変なことになる。分かっていても人手不足で国土防衛に手を回せない。


「実際のところ余裕なんてあるようでないね。このまま行けば間違いなく日本は世界の支配者になれるさ。でも、【千年郷】と月城様。どちらかがかけたら」

「終わりか。月城様が桃源郷の神の座の争いをしてる以上、意外とその可能性は高いよな」

「だからこっちもただでさえ少ない戦力を月城様の支援に回さなきゃいけない。なかなか大変だよ」

「そっか……」


 六条が居れば何とかした。なぜかそう思ってしまった。あいつがいなくなって1年、ダンジョンが現れて7年だ。なぜかあいつがいるとどうにかなりそうな気がするんだが、10年もいないか。まだ9年もあるんだな。


 あいつがいない9年をどうにも不安を感じてしまうのは、俺の過大評価だろうか。


「田中様。うちのメンバーのことって知ってますか?」


 俺が考え込んでいると土岐が聞いた。


「それもちゃんと教えてあげたいと思ってここにいるのもあるんだ」

「誰か死んだか?」


 その可能性は普通にでかい。それだけ俺たちは危ないことをしてる。だから一番不吉なことから聞く。


「いやいや、死んでないよ。大丈夫。シルバーエリアって普通これだけ人数がいると誰か死ぬものだけど、僕が知る限り死亡情報はない」

「それでも全員順調ではないんだろう?」


 そんなうまい話はない。田中様の顔も曇ってる。


「はは、僕って顔に出るんだよな。まず順調な子たちから話そう。美鈴君と小春君は君たちと同じくそろそろシルバーエリアが終わるってこの間帰ってきて言ってたな。そして米崎博士も順調らしいよ。君たちと同じくシルバーエリアの支配を完了させたそうだ。今はゴールドエリアに取りかかりながら、日本の自衛隊の装備強化に口を出すぐらい余裕があるようだ」

「米崎のおっさんそんなに順調なのかよ」

「ああ、結構よく帰ってきて、日本の状況だけ聞いたらすぐに月城様のところに行ってるね。迷惑じゃないのかって思うけど意外と博士は月城様と気が合うらしい。大八洲国の知恵をずいぶんともらってるようだ」

「その辺俺たちは頭の性能が上がってもいまいちわからねえからな」

「おっしゃる通りだ。どうも処理能力が上がっただけではあっちの分野は分からないみたいだ。理解できるようになるにはちゃんと勉強しなきゃと思うけど時間ないしね」

「博士がまあ頑張ってくれてるならいいか」

「だね。まあ美鈴君と小春君と博士。この三人と君たちが一番順調だ。後は全員何かしら問題を抱えてる」

「助けがいるか?」


 いるならすぐに駆けつける。その思いで聞いた。


「助けが欲しいと言ってる子たちは僕か南雲君の方でなんとかしてるよ。鈴がそういうのには向いてないのにやりたがるからちょっと困ってるけどね。いや、これは余計な話だな。とにかく君は自分のことに専念しなさい」

「わかった」


 そこは素直に甘えた。実際もっと強くならなきゃ話にならん。今にもゴールドエリアの方に取り掛かりたくてうずうずしだしていた。


「まず、摩莉佳君とマーク君が三ヶ月ほど前に帰ってきたんだ。この二人はシルバーエリアの支配自体は順調なんだけど、マーク君の中にある鬼の魂が、強くなればなるほど反発が強くなってるらしい。それで南雲君がシルバーエリアにいる米崎博士を呼びに行ってあげたんだけど、彼の見解では、


『残念だがマーク君。これ以上強くなろうとすると完全に鬼の方の魂が、エネルギーを持ちすぎて君を飲み込んでしまうね』

『博士。俺がここまでなんて言わないよな?』

『それは君次第だ。鬼に飲み込まれない方法は三つあるよ。一つは鬼の力を使うことをやめること。二つ目は探索者をやめること。三つ目が鬼の力を使うのをやめた上で自分の魂のエネルギーを鬼のエネルギーよりも上に持ってくることだ。そしてその上で鬼の力も利用する。そうすれば君は君のままでいられる』


 と言われてたな」


 田中様はその情報を【意思疎通】で実際の映像として見せてくれた。映像にはマークがかなり自分の鬼の部分を抑えるのに苦労している姿があった。


「それでマークはどうしたんだ?」

「鬼の力を一旦封印して探索者を続けることを選んでる。ただ、今まで鬼の力にかなり頼ってレベル上げをしてたみたいでね。自分のスキルがちゃんと育ってない。あれは相当ブレーキがかかるだろうな」

「そうか……」


 マークは摩莉佳がベタ惚れだ。鬼の件でマークは摩莉佳から離れようとしたらしいが、逆に摩莉佳に結婚を申し込まれて、正式に結婚してしまったらしい。式も上げて田中様に摩莉佳が『絶対に夫を支える』と誓っていたそうだ。


「へえ、まあ大八洲国の女は鬼ぐらいで怯えたりしないからな」


 土岐は既婚者がうちのパーティーで2人目になったことを喜んでいた。それにしても女から男に結婚を申し込んでも全く変じゃないのがこの国か。摩莉佳に結婚を申し込まれた時のマークの顔をぜひ見てみたかった。


「玲香はどうなってるんだ?」


 六条と同じエリアの玲香は、六条が10年後にしか帰ってこないと聞いて、一番困ってるのではないかと思えた。


「玲香君は自分の地域にどういうわけか伊万里君が居合わせてしまったらしい」


 それを聞いて一瞬意味がわからなくて、考えてしまった。伊万里ってあの伊万里だよな? 六条の妹で胸のでかい可愛い女の子。それが玲香と一緒に探索するなんて話は聞いたことがない。


「伊万里は1人じゃなかったのか?」

「そのはずらしいね。通常では起きないことなんだけど、パーティー内で別の世界を選んだのにどうしてか一緒になってしまったんだ」

「じゃあ玲香は伊万里とシルバーエリアを攻略してるのか?」

「それがね。全くしてない」

「あの二人、仲が悪いのか?」

「いや、伊万里君は本人曰く『どういうわけか最初からゴールドエリアにいた』らしいよ。おまけに伊万里君はゴールドエリアの世界支配はすでに終わらせてしまった」

「どうやって?」

「それは僕もわからない。玲香君は気づけば負けの状況に追い込まれていた。というよりあの世界にいたシルバー級の探索者全員がルビー級の伊万里君に勝てるわけなどなかった。玲香君もシャルティー君と切江君と共に完全に手詰まり状態になったんだ」

「……何をどうしたらそんな面倒な状態になるんだ?」

「それが、どうも本人に聞いても要領を得ない。あと、僕はよくわからなかったんだけど美鈴君曰く一番伊万里君の異常な点が——」


 あの伊万里が六条の話題を一度も出したことがないという。六条について尋ねても反応がないそうだ。極めつけが白蓮様にも会いに行ったはずなのに、途中で伊万里は行方不明になり、帰ってきたらそのことを覚えてなかった。


 おかげで一緒に行ったはずの美鈴も小春も千代女様も白蓮様に会えなかった。


「そこまで来ると悪神の仕業か?」

「それならまだいいんだけど……」


 田中様はそれ以上言わなかった。悪神以外の仕業だとでも思っているのか。それとも伊万里自身が全てわかった上で隠してるのか。強くなると自分の心を隠すのが上手になる。伊万里のレベルによっては不可能ではない。


 そしてそこからの続報はないらしい。最後にエヴィーのことも聞いた。だがこれが一番どうなってるかわからなかった。家族を助けるために、アメリカに行ったままその後は消息不明だという。


「そうか……。一年会わないだけでみんな見事なほどいろいろあるな」

「改めて六条君によって纏まっていたパーティーなんだと思うね」


 心配事が胸を締め付ける。それでも気持ちを切り替える。探索者になってそれもずいぶん得意になった。だから立ち上がった。俺は俺のやるべきことをやる。それだけだった。

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田中様キター! 神回 12英傑はお子ちゃまばっかのうちに戦争なんて始めたから悪神堕ちのリスク相当高いんだろうね 死神っちは何してるんだろうか 普通なら恥ずかしくて自害ものの体たらく晒してる訳だが
海老はお松様頼りか 強くなっても意思をねじ曲げられてたらモブ以下になっちゃうな〜
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