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第二百七十四話 Sideカイン 傲慢②

「なんだあの大きい鳥は……」

「おいおい嘘だろう。ドラゴン?」

「ドラゴンが出たぞ!」

「ダンジョンから出てきたの?」

「閉鎖してるんじゃなかったの!?」


 現代兵器が役に立たないドラゴン。ヨーロッパはダンジョン閉鎖をしたから今まで探索者の明確な脅威はなかった。ダンジョン閉鎖をしたおかげで平和だったのだ。しかしバハムートは対戦車ライフルが痛くもなんともないのだ。


 戦車の砲弾ですら意味がない。でもそれがまだ理解できないだろう。外から入ってくる情報は、どれもこれも夢物語で信じられなかっただろう。だから私が教育してあげよう。


「お前は誰だ?」


 国会議事堂となっているウェストミンスター宮殿の上部に穴を開け、そこから国会に無理やり入り込んだ。私を出迎える言葉の第一声がイギリス首相のそれだった。


「私はカイン」


 堂々と宣言する。もはや臆することは何もなかった。


「あの精神病院に放り込まれたというロッキンガム侯爵家の子か?」


 ここ数日、私の美貌と共に、かつての侯爵家の天才児の凋落は面白おかしく、テレビで毎日のように報道され、ネットを賑わし知らないものはいないそうだ。


「あのサイコパスか?」

「おい、やめてくれ、化け物が感染したりしないのか?」

「早く軍隊を呼べ!」


 議場にいる老人たちが騒がしくなる。10mを超えるドラゴンに乗る私を誰もが化け物としか見ていない。私はゆっくりと歩いて、議事堂の中心に立った。


「私はサイコパスではない。いたってまともな精神を持った上でこの場に来たのだ。それともお前たちには私がサイコパスに見えるのか?」

「あ、いや、見えない。君はいたって理性的だとも」

《軍隊がくるまでは時間を稼がなければいけない。来たら速やかにサイコパスは処理してもらおう。と思っているようです》


 サイギスという【心眼】をアフロディーテから与えられた私の召喚獣。【自然化】で見えなくなっており、【意思疎通】で私に相手のことを教えてくれる。


「首相。お前が私を分かっているのならいい。では一度チャンスを与える」


 私はこの場では彼の嘘を許した。今の時点ではこの反応も理解しよう。まだお前たちにも無理がない部分はある。だが急いでいることには違いがない。慈悲を与えるのは最小限だ。


「私が祖国の議会に要求することは一つだ。ダンジョンを開放せよ。でなければもうすぐダンジョンは崩壊する。崩壊したダンジョンの修復は不可能。一度崩壊したダンジョンはモンスターを吐き出し続ける穴となる。そうなりたくなければダンジョンを開放せよ」

「はっ、君に何の権利があるんだ!?」


 誰か他の議員が叫んだ。


「そうだ! サイコパス! 君は選挙によって選ばれた政治家でも何でもない!」

「ここに立つ資格などないぞ!」

「お前はただの頭がおかしくなってしまった子供だ!」

「大人しく家に帰って寝ていなさい!」


 外を軍隊が取り囲んでいるのは分かった。それでも実力行使は難しくない。このまま最後までしてしまうことも考えた。自分たちが口にした言葉が面白かったのか議場は笑いに包まれている。笑えてくるほどバカにされている。


 それでも強さとは素晴らしい。これほど馬鹿にされても腹が立ちもしない。私はこの場にいる全員を殺せる力がある。外の軍隊もまとめて一掃できてしまう。だから余裕があった。やはり弱さとは罪だ。行動に選択の自由がなくなってしまう。


「いいだろう。お前たちが私をバカにし続けるというのなら私はそれを受け入れよう。だが1週間だ。1週間後にまだ寝言を言うなら、お前たちはもう必要ない。その時はお前たちには死んでもらう。私にそれが出来ないなどと思わないでくれ。一人一人上のものから必ず君たちを殺していこう」


 早いな。もう武装ヘリが飛んできた。戦闘機も編成を組んでやってきている。戦車の配置も終わりそうだ。外国から入ってくる探索者の物騒な噂に無策でいたわけではないということか。ただその方法が昔に囚われすぎているというだけだ。


「もう無駄なのだ……そんな時代ではないのだ」


「そんな脅しに屈する我々ではない!」

「そうだ!」

「殺せるものなら殺してみろ! それよりも先に君が死んでいるぞ!」


《狙撃兵がヘリから狙っております。撃ちました。一応防御しておきました》

《会話の邪魔だ。眠らせておけ》

《殺さなくて良いのですか?》

《構わない。操縦士まで眠らせるなよ》

「できれば乱暴なことをしたくない。ちゃんと一週間後に考えて返答しろよ。私はもうかなり待った。これ以上待てる自信はない」


 その言葉を残し、結局実力行使になりそうなことに無力感を抱き、飛び立ち、自分の侯爵家の館に帰った。私がこんなことをすれば家族が心配だった。今日から1週間、家族がどんな非難を受けることになるかもしれない。


「お兄ちゃんどうしてこんなことするの! お願いだからやめてよ! 私、もう外に出ることもできない!」

「カイン。お前何ということ……」

「お母さんは?」

「ふさぎ込んでる。お前があのバカなことを言い出してからずっとだ。もう何日も起きてきていないぞ」


 外は腹を立てた市民が取り囲んでいた。侯爵家の敷地の中にまで入り込んでいるようだ。探索者相手にそんなことをして危ないと思わないのだろうか。それとも大人数で囲めば、攻撃されないと信じているのだろうか。


《屋敷内に侵入しようとしているものがいます》

《眷属召喚を使え。市民は誰一人として殺すな》

《かしこまりました》


 サイギスの眷属、狼人間が10名召喚され、他の召喚獣にも眷属を召喚させた。シルバー級になった時に身につけた召喚獣の眷属をさらに召喚できるという能力だ。レベルは私のレベル依存で、そこから1つ下のクラスのレベルになる。


 私が今ゴールド級だから、眷属召喚はシルバー級の召喚獣になる。サイギス達本体ほどではないがかなり強い。守らせておけばこの家の心配もないだろう。


「父上、ここまで来ればあなたはもう私に乗るしかない。違いますか?」

「お前正気か?」

「外のドラゴンを見たでしょう。私はあれよりも強い召喚獣をまだ抱えている。全てで12体。本当にそれを軍隊が殺せると思いますか? そしてダンジョンではそんな力が普通に手に入るのです。イギリスはもう出遅れすぎているぐらいです。先に進む国はもうかなり先に行ってしまっている。だが今ならまだ間に合う。今ならばイギリスが再びヨーロッパの覇権国家となれるのです」

「……」

「父上! 理性で理解するのです! もはやこの流れは止められない! そしてこの家が名誉を回復するにはあなたは私に乗るしかない!」

「カイン……やはりお前はおかしくなったのだ」


 結局父上は私の言葉を理解できなかった。この日私は家から勘当され、期日の日が来た。ただ妹だけは1週間の間に私の話を聞いてくれて、ダンジョンに入ってくれた。それだけが救いだった。その当時ダンジョンに入れば化け物になる。


 イギリスではそんなことが本当に信じられていた。だから妹がそういう行動をしてくれたことが私は本当に嬉しかった。私は1週間の間に妹のレベルを25にまで上げ、妹がこれで地球上で不意に死ぬことはないと安心した。


「カイン。その、ごめんなさい。私今まで……」

「オリビア。お前のその言葉だけで私はもう十分満たされた」


 元々可愛い妹だったが、ダンジョンに入りそれが一層開花した。今でも私はアフロディーテとオリビア。この2人といる時だけが心の癒しだ。


 1週間後、一緒について行きたいという妹を置いて家を出る。軍隊がウェストミンスター宮殿を取り囲んでいた。あらゆる現代兵器を駆使して、私を排除しようとしていた。戦車の大砲の照準が私の方を向いているのがおかしかった。


「誰よりも国のことを思っているのだがな」


 こんなもので殺せると本当に信じているのだから幸せだ。ダンジョンを開放している国から情報は来ているだろう。それが嘘だとでも思うのか。


【"侵略者"カイン! 国家反逆罪により逮捕状が出ている! 大人しく捕まるならよし! 抵抗するというのなら全力で排除する!】


 テレビではついにイギリスでも大規模な探索者の事件が起きたとして、余計に報道は加熱しているようだ。私のこのあまりにも美しい顔もテレビ映えするようだ。そしてこんな男前が国家に弓引いたとして、世間は大騒ぎだ。


 各局で報道合戦が勃発し、『入ってくるな』と言われているだろうに、報道のヘリコプターが空を飛んでいた。こいつらが何一つ私にとって有利なことを口にしていないのはよく知っている。それもまあすぐに変わる。


 そこでよく見ておけ。


「愚かだな。自分が見えないというのは情けないこと。撃ちたければ撃て。安心しろ。軍人は命令されて動くだけだ。お前たちに罪があるなどと私は思っていないよ。殺すならば国王陛下から殺すべきであろう。いや、さすがにそれをすると後々の反感が強いか。国防大臣からにしておこう。そうだな。それが良い。どこにいるのか、サイギス探せ」

《はっ》


 しゃべりながらも歩いていた。バハムートとまだこの頃はヨルムンガンドにはなれていない300mほどの蛇と、頭が牛の普通の人間より2倍の身長のあるミノタウロスと共に、無人の野をゆくが如くだった。


【撃て!】


 こんな街中で戦車の砲弾をぶっ放すとは、周りに被害が出たらどうするのだ。仕方がないので全てかわさずに受け止めてあげた。現代兵器はとても優秀で、銃弾はどれ一つとして私を外れなかった。


「可哀想に。お前たちも私などと戦いたくはあるまい。下がれ。無意味だ」

《国防大臣が見つかりました。地下シェルターに隠れていたようです。どうやらこの男は探索者を理解しているようです》

「ならば全力で止めるべきだったな」

《止めようとはしたようです。しかし他の人間から理解は得られなかったようです》

「首を落として持ってこい」


 止めようとしたのは賢い。だが国防大臣として、国の有事に隠れているなど許されざることだ。そんな人間は死んでも構わない。だから殺させて頭と体を両方持ってきた。そして晒した。


 驚いたことにそのまま修正もせずに報道されているようだ。何という非常識。子供に悪影響だと思わないのか。いや、まあ、これからの時代、死体の1つや2つにはなれておくべきか。


《宮殿の中に人がいないようです。周囲10㎞に渡って避難命令が出ております。軍人以外は誰一人としてこの戦闘区域に指定された圏内に人がいません》

「その命令を出したのは誰だ?」

《イギリス国会すべての総意です》

「なるほど、では全員連れてこい」

《はっ》


 さすがにそこから全員を探すのは3時間ほどの時間を要した。私は議会の中央で3時間暇を持て余した。その間になんとか軍隊は私を排除しようと努力したが、戦車の砲弾が効かない。その時点で彼らはかなり詰んでいた。


 やむを得ずこんな場所だというのにミサイルが発射されたが、さすがに景観を損なうので、着弾前に迎撃した。そこからは軍隊も何をしていいのかわからない状態になっていた。何をしても効果がない。そして私は反撃もしてこない。


 自分たちが見逃されているということに気づくと軍隊の指揮は著しく下がった。もはや彼らはそこにいるだけのオブジェと化した。探し求めていた議員はかなり正確に探索者の情報を知り、国外逃亡を仕掛けていた男もいたようだ。


 しかしそれらも全て回収した。例外はない。上から順に死ぬべきだ。他にも黒幕はいるようだが、そこは見逃した。全員殺すと後でイギリスが立ち行かなくなる。イギリスを停滞させたいわけではないのだ。


 ただ前に進めたいだけだ。私は召喚獣たちによって集められた国会議員全員を議事堂に集めた。ちゃんと着替えをする時間も与えた。その間に自殺しようとする輩もいたがそれは全部未然に防がせた。そして着席させると問いかけた。


「さて。私をサイコパスだとまだ言うものはいるかな?」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 誰も声を出さなかった。サイギスに心を読ませたところ声を出せば殺されると思っているらしい。


「お前たちは【意思疎通】を使えないだろう。喋らなければ何もわからんぞ。もう一度問おう。私をサイコパスだと思っているものはまだいるのか? 首相、聡明なあなたならば分かるだろう。答えてくれ」

「あ、ああ、そんなことはもう思っていない。以前の言葉は私が口にしたわけではない。私は君のことを本当にサイコパスなどと思っていない」

「よかった。これで仲良くしゃべれそうだ。では私からの要求は非常にシンプルだ。たった一つ。これさえ飲めば何も望まん。それどころか国防を手伝ってやろう」

「国防を?」

「そうだ。これから先、イギリスに他国の探索者が攻め込む時もあるだろう。探索者の実力はもう私のことで分かっただろう。軍隊では勝てない。スピードが違うパワーが違う何もかもが足りない。日本は軍隊に探索者の技術を取り入れようとしているらしい」

「日本がそんなことまで?」

「何も知らないとは愚かだ。遅すぎる。あまりにも遅すぎる。私はとても理性的だろう。これほどの実力を持ちながら、侮辱を受けても殺したのは1人だ。いや、まああの看護師には悪いことをしたが」


 国防大臣の首と体を国会議事堂の真ん中にさらしていた。こんなに酷い死体を見るのも嫌だろうが、無駄に人を殺す趣味はない。できればこれ以上の犠牲者は出さないようにしたかった。


「これをしっかり見ろ。これよりもさらにひどい事態になるのがこの国の未来だ。お前たちが頷けばそれもなくなる。それどころか私がいざという時は国を守ってやる。安心しろ。私と同等の探索者はいても、私以上の探索者はいない。その上で望むものは一つ。別に私は支配者を気取る気もない」

「望みとは何だね?」

「何度も言ってることだ。ダンジョンを開放しろ。要求が呑まれるまで上のものから殺していく」

「野蛮な! 何という野蛮な男だ! お前のような化け物を大量生産しろと言うのか!」

「殺せ」


 他の議員が叫んだ瞬間、首相の首が落ちた。そのまま首相の席で、首相の首が机の上に転がる。全員が恐慌した。逃げ出そうとするものがいたので脅しをかけた。


「誰が動いていいと言った?」


 今までレベル差による威圧は最小限にとどめていた。しかしそれを解き放つ。途端に全員が息もできないほど震えだした。そして私はすぐにまたレベル差による威圧を抑えた。


「真剣に考えろ。お前たちがいなくなれば国が混乱すると思い生かしているだけだ。だがあまりにも役に立たないというのなら、全て殺してしまってもいいかと思っている。お前たちは役に立つのか?」

「だ、ダンジョンを開放しよう」


 答えた男はどうも野党の党首のようだった。


《一時的に頷いておいて、何らかの方法で主を殺そうとしています。その方法はまだ思いついていないようです》

「ふむ。殺せ」

「う、頷いたではないか!」


 その言葉が最後で野党の党首は死んだ。


「嘘は嫌いだ。心から言え。全てわかる。それが探索者というものだ。どうだ。怖いだろう? 私よりももっと容赦のないやつは山ほどいるぞ。私はまだこの国のことが好きだ。だから守りたいと思ってる。最後のチャンスだ。どうする?」

「ぜ、全力でそれに向けて努力します。今すぐはできない。ですができる限り早く、ダンジョンを開放します」

「誰だ?」

「私はニコラスです。カイン閣下、外務大臣を務めております」

《嘘をついておりません。本気で命がけでやろうとしております》

「そこそこの有力者だな。よし、では一時的にお前が中心になって国をまとめろ。そして、ダンジョンの開放は1週間以内にしろ。できなければその時はお前が死ね」

「か、畏まりました」

「それと1つだと言っておいた要求をいくつか増やす。文句はないな?」

「何なりとお申し付けください」

「ダンジョンを開放してから1年で国政選挙を行い、新たに首相を決めろ。今すぐはやるな。ダンジョンの閉鎖主義者がまたのさばりかねない。開放して1年も経てばそんなバカもいなくなるだろう」

「畏まりました」

「邪魔者があれば言え。全員殺してやる。後、私の力を私利私欲に利用しようとするなよ。私はそういうのが嫌いだ。したと私が判断した瞬間お前は死ぬと思え」


 それだけを言い残して議事堂から去った。一応家族には召喚獣の眷属から護衛をつけておいて、ニコラスにも、できるだけ速やかに終わるように脅しの利くオーガ三体の護衛をつけ、再び家で返事を待った。


 そして1週間後ダンジョンは無事に開放された。いくつかのマスコミがまだ分かってなかったようなので、潰さねば仕方がなかったが、上から順番に殺していけば1人目で大抵はギブアップした。イギリスを掌握するのに殺した人数は13人だ。


 改めて一番犠牲の少ない方法だと我ながら感心した。


 それも終わればもう文句を言うものもいなくなった。しばらくは悪の帝王のように扱われたが、ダンジョン崩壊をヨーロッパ中が起こすまでだった。ヨーロッパ中にゴブリンが溢れ、混乱する中、海で隔てられたイギリスは平和だった。


 途端に私は救国の英雄扱いだ。勝手なものだと思ったが悪い気はしなかった。しかしそれでも他国には優秀な探索者が山ほどいた。1年と少しほどはイギリスもダンジョンで先んじた国よりも遅れているのだ。急がねばいけなかった。



「4人か……多すぎる」


 ダンジョン崩壊から2年半後、私は何とか英傑の枠に入ることができた。しかし、日本があまりにも先を行き過ぎていた。この上まだレベル900台にも化け物女がいる。あまりにもイギリスは出遅れた。


 ヨーロッパではまだましとはいえ、それはヨーロッパの中だけだ。


「アフロディーテ。どうして日本だけが、これほど成功しているのだ? 他にもダンジョンを開放している国はあったぞ」

「わらわが聞いている限りでは原因はルルティエラ様だ。どうもルルティエラ様は日本が好きらしい」

「しかし機械神は公平ではないのか?」

「確かにそうだな。だが、平等な機械神も女神の言葉にはかなり融通を利かせるようだ。女神は常に日本を気にしている。これまでもその傾向はあったが、今回、本格的に地球にダンジョンの入り口を表してからは、やたらとそれが露骨だ」


 どうにもならないのかと悩む中、お婆に対する恩もある。12英傑会議でもお婆の発言力は群を抜いていた。ほとんどの英傑が多少はお婆の世話になっている。窮地の時に何度かアイテムを融通してもらったのだ。


 お婆は世界の混乱を望んではいない。それもあって、もうこのまましかないのかと半ば諦めていた時、アフロディーテが教えてくれた。


「カイン。どうも最近ルルティエラ様が一番気にしている男がいるらしい」


 そんな情報も持ってきてくれた。(ワン)が老婆を殺す案を持ってきたことに私は難色を示していた。それをしたところで、ヨーロッパから12英傑を出すのはかなり難しい。そう考えていたからだ。


 王はヨーロッパから出すと言ってくれていたが、私はどうにもあの女が信じられなかった。


「六条祐太。この子供を殺さなきゃ日本が英傑の半分以上を占めることになりかねない。わらわはそう思っておる」

「しかし、ルルティエラのお気に入りならば、殺してはだめではないのか?」

「今までもルルティエラ様のお気に入りはいたぞ。でもそれを他の何者かが殺したからとて、ルルティエラ様はその人間を咎めることは一度もしなかった。今回もその原則は守られてるそうだ。実際に何度か彼は死にかけてるみたいだし」

「そうか……しかし、急にどうした?」


 今まで探索に関わることで、アフロディーテが一度でも私を助けてくれたことはなかった。強さは与えてくれたが、直接的な内容に手出しは一度もしてこなかった。


「どうもしないよ。わらわはただ自分が生きる意味を知りたいだけさ」


 そんなことを言って彼女は笑った。

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― 新着の感想 ―
カインのやつサイコパスだったな こいつはダメだわ
先駆者なだけで相応しくはないんだな
一生の恩としたり、やっぱないわとしたり、やっぱ恩あるわとか カイン元から割と終わってる側の思考なのでは
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