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第二百七十三話 Sideカイン 傲慢

【傲慢なるカイン】

【カインは人間を原始時代に戻そうとしている】

【カイン! イギリスの代表気取り!】

【裸の王様カイン! 誰もがお前を笑っている!】


『人間が少しばかり強くなるからと言って、これほど横暴なことが許されるだろうか? 皆さんよく考えてください。カインは日本と同じようにダンジョンを開くべきだと言ってるんだ。つまりイギリスを未開の地にしようとしているのです』

『あんなものを開けば人類は原始時代に巻き戻しになる。力でイギリスを征服しようとするカインを決して許してはいけない』

『こういう時こそ軍隊がその全力を持ってカインを止めるべきだ』

『しかし日本では軍隊が負けたらしいぞ』

『銃弾を撃たれてから撃つからですよ。殺されてから殺し返せというようなものだ』

『探索者なんてものはイギリス軍にかかれば泣いて逃げ出すことでしょう』


 ダンジョンが世界中に出現し、ヨーロッパのほとんどの国はダンジョンの閉鎖を選んだ。EUから離脱していたイギリスでもそれは変わらなかった。人が考えられないほどの力を有するようになる。


 人外のパワー、人外の魔法、そして人外のモンスター、ダンジョンの全てが老人たちにとって気に食わないものだらけを詰め込んだ穴蔵だった。できるだけ遠くに遠ざけたい。そのためにヨーロッパはあらゆる手を尽くした。


 メディアとネットの全てを駆使して、ダンジョンのネガティブキャンペーンを展開し、ダンジョンを悪とし、大国の中では唯一ダンジョンを開放していた日本を蔑んだ。彼らはもうすぐ日本は探索者のせいで沈むと信じていた。


 それが自分たちに降りかかる火の粉だとまだ誰も気づいていなかった。日本ですらダンジョンが崩壊するまでは、日本が滅びると思っていたのだ。


『カイン、お前を一族から追い出す。今日からもうお前はロッキンガム侯爵家のものではない。お前と私達とは何の関係もない。忘れるな。お前はもうこの家のものではないのだと……』


「……カイン。大丈夫か? また夢を見たのか?」

「ああ、嫌なことばかりよく覚えている」


 天蓋付きのベッド。真横には赤い髪をした裸の女がいた。私を慰めるように同じく裸の私の体を抱きしめてくる。嫌なことをどうして忘れられないのか。赤い髪の女を抱きかえし繋がりながら、過去が思い出された。


 

 ダンジョンができてまだ間もない頃、まだダンジョンがどんなものかもわからず、とにかく危険だからとヨーロッパは臭いものに蓋をした。私はその処置に疑問も持っておらず、むしろ正しいと思っていた。


 何よりもダンジョンを開いていた少しの間に入った人間が大いに治安を乱し、スポーツ界で化け物のような記録を打ち立て、混乱を招き、政府の息がかかったものが入ろうとしても入れず、ダンジョンは嫌われて当然だった。


 当時の私は運動、頭脳、容姿、全てに秀で、イギリスで今も残り続ける貴族の跡継ぎ。家はかなりの貴族が衰退する中、繁栄を続けるロッキンガム侯爵家だ。侯爵家をより繁栄させる存在として大いに期待されていた。


 16歳だった私は無鉄砲だった。自分に自惚れてもいた。全てにおいて秀でていれば当然である。平均をはるかに超える成績をどんな分野でも叩き出すことが簡単だった。それなのにダンジョンが現れて2週間経ったある日。


 とある男から勝負を挑まれた。その当時付き合っていた公爵家の娘を賭けてだ。あの当時は笑った。何しろ勝負を挑んできたのは、顔にも恵まれず、ひ弱な痩せた男子だったのだから。


「お前が私に勝てると思ってるのか? 正気とは思えないな」


 私に比べて血筋も何も持っていないような男だった。どうして私の通う同じスクールに所属できているのか不思議なほどだ。きっと外国人枠でギリギリ入れた口だろう。


「いいから受けろよカイン。俺はお前のいつも傲慢で自分が一番だって顔が大嫌いだったんだよ。それとも俺に負けるのが怖いか? それなら勝負は何でもいいぞ。お前の得意なものなんでも受けてたってやる」


 庶民とは野蛮だ。勝てなくても私の美しい顔を一発でも殴れれば気が済むとでも言うのか?


「カイン。仕方ないわ。何でもいいって言ってるんだからチェスでいいじゃない」


 彼女はそう言ってきた。私にとってチェスは昔から大好きだった趣味の一つだ。プロにもなれると言われるほどの腕前である。これで勝負はいくらなんでも大人気がないと思った。だが彼女を賭けるという。


 万が一にも負けるわけにはいかない。だから受けて立った。こういう意地も張りたい年頃だったのだ。そして負けた。10回勝負して10回とも負けた。勝負にすらなってなかった。なんだこれは? 私はその結果が信じられなかった。


 こいつはチェスの天才だったのか?


「ふざけるな! イカサマだ!」

「どうやって10回もイカサマをするんだよ?」

「それは……そうだ。お前、どうにかしてAIの指示に従ってるだろう!」


 そう思った。でもその証拠はなかった。彼女が不安そうに俺を見てくる。


「AIか。くく、面白い言い訳だな。OK。じゃあ何でもいいぞ。カイン。お前が次に得意なものを選べよ」


 そう言われて私はサッカーでも、クリケットでも、勝負した全てで負けた。運動能力も頭の良さも相手の叩き出す数字は全て、異常だったのだ。それはとても人間が叩き出す数字とは思えなかった。


 やつは100mを5秒で走ったのだ。


 私は何を相手にしている?


 理解できなかった。彼女は無理やり男に連れて行かれ、その2日後に自殺した。それが大問題になった。何しろ相手は公爵家の娘である。衰えたとはいえ貴族の血筋の中の名門中の名門。


 それがどこの馬の骨ともわからないような男に好きにされた。男は警察に捕まり、そしてダンジョンに入っていたことが判明した。これがさらなる大問題となった。その当時、ダンジョンに入った人間は化け物になる。


 そんな話が本気で信じられていた。その考えはヨーロッパではかなり主流だったのだ。ただちに男は警察の中で死んだ。その知らせだけが聞こえてきた。後で調べた限りでは、抵抗したらしいが、まだレベル10だった。


 軍隊まで出て来られて容赦なく化け物扱いされて射殺されたのだ。


 だが、私は男が死んだことなどどうでもよくなっていた。それよりも男がやって見せたことが私の頭から離れなかった。化け物? 化け物には見えなかった。むしろ頭も良かった。運動能力も人間の限界を超えていた。


 あれこそ人間が目指すべき姿。ヨーロッパ諸国が次々と化け物を生み出すダンジョンを閉鎖していく中、イギリスもいち早くダンジョンを閉鎖した。だが私は1人こいつらはバカだと思った。


 これを閉鎖したらイギリスは世界から置いて行かれる。だがダンジョンはまだ現れたばかりで、探索者は軍隊にも勝てない中途半端なものばかり。ダンジョンに入り化け物認定された人間たちは次々と殺されていく有様だ。


 解剖されて体の中を調べられるといった惨めな最後を迎えた探索者もいたらしい。そして真に賢いものは海外にとっとと逃げてしまった。


「どうしてこれほどすごいものを閉鎖してしまおうとする。老人の頭では今までと違いすぎてついていけないのか。そうか。ダンジョンがあまりにも凄すぎるのだ。人は理解できないものを怖がってしまうものだ。しかしこれは困った。私もダンジョンに入りたい」


 いくら侯爵の息子とはいえ、ダンジョンを開放させる力はなかった。だから家を出た。幸いその頃の私は親への信頼が厚く、外国で学びたいといえばいくらでも許してくれた。


 そして親にはアメリカに行くと言い、ダンジョンが閉鎖されていない唯一の大国、日本へと向かった。私はやはり天才で順調にレベル100へと上がり、大八洲国という見たこともない発展した世界も知れた。


 初めてあの国を見た時は、自分は間違ってなかったと狂気した。だが残念なこともあった。召喚士というレアジョブを得たのに、私の召喚獣は一体しかいなかった。そう。私はダンジョンに好かれていないようだった。


「ダンジョンは私を見ていない。大八洲国の神々も外国人の私に対しては冷たい」

「どうなさいますか? 所詮、私たちはこの国で外様です。おっしゃる通り神々からの協力を得るのも難しいでしょう」


 初期の頃から私と一緒にいる唯一の召喚獣バハムートが答えてくれた。大八洲国にいる限り私は特別になれない。私が出遅れている間にも、先に進むものはどんどんと先に進んでいる。


「レベル100ではまだ弱い。今のままでは国に帰っても軍隊を一人で滅ぼせるわけでもない。もっと力がいる。この国で南雲たちのようなレベルアップが私にできないというなら、海からユグドラシルにわたるしかない」

「本気ですか? 海はダンジョンの中などよりはるかに危険だと言います」

「行く。ついてきてくれるか?」

「それはもちろん。あなたのいる場所に私がいないなんてことあるわけがない」


 私はレベル100のまま海を渡る決意をするしかなかった。なぜそこまでするのかといえば国と家族を思うがゆえだった。ダンジョンの中に入れば入るほど、ダンジョンを閉鎖したままにしている自分の国が危ういと思えた。


 何よりも大八洲国で仕入れた情報では、ストーンエリアは例外なく2年間誰も入らなければ崩壊するという。大八洲国で私は好かれることもないが、探索局で悪い扱いを受けたわけではなかった。この情報は信用できた。


 ヨーロッパの国々は全てダンジョン閉鎖に成功してしまっている。閉鎖に出遅れた小国も、NATOの力を借りて反対する探索者を皆殺しにして、無理やり閉鎖してしまった。ヨーロッパだけで200を超えるダンジョンが閉じたままだ。


 そのダンジョンが全て崩壊したらどうなる。まだ一階層のゴブリンならどうにかなる。二階層でもまだいけるだろう。しかし三階層のジェネラルはまずい。数十体ならともかく数百、数千と出てきてしまえば、軍隊でもどうしようもない。


 その奥にはゾンビやスライムまだいるのだ。日の光に弱いゾンビでも、あまりにモンスターで溢れ返った空間だと影ができ、外に出られるようになってしまうのだという。


 イギリスの人間が、私の家族がゾンビになってしまう。


 何があってもそれだけは阻止せねばいけなかった。


「カイン、ほら、これを使いな」

「お婆か。いいのか?」

「ま、困った時はお互い様さ。それがあっても海を渡るのは命がけだと思うけどね。死ぬんじゃないよ」

「感謝する。この恩だけはカインの名にかけて一生忘れん」


 海を渡る前に、この国で最新式だという船を渡してくれた。そして海のモンスターが出にくいという深海の層と航路も教えてもらった。そのおかげで1年近くかかって何とか渡れた。船とアドバイスがなければ途中で死んでいた。


 お婆への感謝だけは忘れてはいけないと思った。


「なんとお前様。大八洲国からここに来たのか?」


 最初に出会った赤い髪の女に言われた。女は呆れた顔をしていた。海のモンスターに体をえぐり取られ、ポーションでなんとか止血だけをして、バハムートも死にかけていた。ユグドラシルにたどり着いた時はもう虫の息だ。


 イギリスと家族のために何とか頑張ったがこの命もここまでかと諦めた。浜辺で死を待つだけであった。しかし、死にかけている私を赤い髪の女がそのまま介抱してくれた。その女がアフロディーテだった。


 その名前からもっと清潔な美しさを持つ女だと思ったが、実物のアフロディーテは少し違った。3000年以上も生きるという女は、私のことを大層面白がり、私が大八洲国から海を渡ってきた行為を【クエスト達成】扱いにしてくれた。


 そしてシルバーへの昇格とレベル300になるためのエネルギーを分け与えてくれ、11体のモンスターまで下賜してくれたのだ。


「アフロディーテ様。11体もモンスターを与えてもらってよかったのでしょうか?」

「お前様の国から誰か来たら少しずつ分けてやろうと思っていた子たちだよ。それがお前様しか来なかったのだから、お前様に全部あげたまでだ」

「ありがとうございます。ここまでしていただいたこと本当に感謝してもしきれない。この上は、このカイン、祖国を救うことでさえできれば、あなた様のために生きると誓いましょう」

「お前様はその口の軽さをどうにかすることだな。お前様は約束を守れない。そういう運命に生まれてる。だから軽はずみに誓いなど立てぬことだ」


 アフロディーテが余裕たっぷりにそんなことを言ってきた。愚弄されたと思うが、かつての彼女を助けられず、そのことを悪いとも思ってなかった。そして老婆への恩もここについて薄れてきていた。なぜあの者たちだけが恵まれてる。


 日本は間違ったのに恵まれてる。いつの間にかそれに腹が立つようになってきていた。そして老婆への恩などないように感じていた。恵まれすぎている老婆が、貧者に少し与えた。それだけのことだったのだと。


「私はあなたには本当に恩を感じてる。これだけは真実だ」


 やはり同じ国の人間というのは違う。ユグドラシルというのは、ヨーロッパ全体の味方なのだ。だから私の扱いも急に変わった。心からそう思う。同じ国の人間への恩は、他国のものとは違う。


「そんなものはどうでもよい。与えた子たちも所詮は幼子。成長するかしないかはお前様次第。それよりも1つわらわの命のため、お前様にしてもらいたいことがあるのだ」

「それは何でございましょう?」

「まずその改まった口調をやめ、わらわと【恋】をせよ」

「こい?」

「そうだ。お前様のような男もたまには良い。わらわは長く生き過ぎてのう。もう何をしていてもあまり感動が起きない。それでもまだ恋だけは我が心が震える。それももうこの国の人間では物足りなくてのう。だからカイン。わらわを全力で愛せ」


 それは非常に難しいことだった。愛せと言われて愛せるものなら苦労はない。公爵家の娘も結局のところ私は愛してなかった。だから死んだとしても大して悲しいとも思わなかったのだろう。幼い頃から人に愛されて生きてきた。


 そのことに対して特段の努力は必要なかった。故に愛することは苦手だった。だが、それがアフロディーテへの何よりの恩返しになるというのならば全力を尽くした。


 私はアフロディーテに大げさな花をプレゼントしてみたり、チープな人間の国の遊園地に誘ってみたり、動物を見たり、あの方は悪戯好きで平気な顔で地球に出てきて、あちこち巡ったものである。気づけば自分は彼女を愛していた。


 彼女の顔を見れば心臓が高鳴るようになった。ただ彼女が私を本当に愛しているのかは知らない。不意に冷たい顔をしている時がある。それがどういう意味なのか私には理解できないままだ。


「この1月なかなか楽しかったぞ。レベル400になった。そのレベルならもう十分だろう。カイン。送ってあげるから国にお帰り。そして、ダンジョンを開いておいで。今度はちゃんとお前様の国から私に逢いに来ておくれ」


 アフロディーテの言葉に私は自信を持って国へと帰った。そして私は祖国で苦戦した。敵が強かったのではない。同じ国の人間が思った以上に頑迷だったのだ。人の心を変える。それがこれほどまでに難しいのかと、心から驚いた。


「お願いしますお父さん。国にダンジョンを開放するように働きかけてください。今私が言ったこと全ては本当です。本当に今ダンジョンを開放しなければ、全てが終わる」


 正しいことを言っているのに理解しない。外国からの情報も入ってきてるはず。ポーションなどの有用なものも手に入る。衰えた老人も健康になれるのだ。それなのに開かない。その意味が私には理解できなかった。


 今ならわかる。政府の統制を一切受け付けないものを開放する。何よりも開放した瞬間、政府もマスコミも自分たちの間違いを認めることになる。それはつまり自分たちが容赦なく殺してきた探索者の罪を問われるのだ。


 それが恐怖だったのだ。


 今度は自分たちが殺されるかもしれない捕まるかもしれない。


「カイン。お前が私をたばかり日本に行っていたことがそもそも間違いだ。私たちがどれほどこれまでの期間心配したと思う。そしてお前は帰ってきてあの聡明さを何もかもなくしてしまった。あんな黄色い猿の国にお前の考えがこれほど毒されてしまうとは」

「毒されてなどいません。ダンジョンの開放は今しかない。一度崩壊したダンジョンは二度と閉じることはないのです」


 父はどれほど私が事実を口にしても、私の頭がおかしくなったとしか思わなかった。どれほど話しても国への働きかけなど何もしてくれない。それどころか私の精神を疑った。正気ではないと言うのだ。


「カイン! お前は侯爵家の人間だということを忘れたのか! この父に恥をかかせる気か!」

「そうですよカイン。まずお父様に謝るのです」

「お兄ちゃんどうしたの? 本当におかしくなっちゃったの?」

「この2人を見ろ! カイン。お前は頭がおかしいのだ!」

「私はおかしくない! 貴様こそ侯爵家の体裁にこだわってこの国を滅ぼす気か! 今の時代に貴族など何の役に立つ! もはや時代錯誤にしかなっていないのに、いつまで昔にすがるのだ!」


 あまりに腹を立てて家の一部を破壊してしまった時は大変だった。警察が来て取り調べを受け、探索者であることがばれてからは珍獣扱いである。イギリスではレベルの高い探索者の扱いなど全く分かってなかった。


 日本ですら自衛隊と米軍が徒党を組んで南雲と戦争になったぐらいだ。イギリスでは異常者と思われるだけだった。それどころか軍隊が出動してきて私を狙撃しようとした。そんなものはレベル400にもなれば効かない。


 そのためにレベルを上げてきたのだ。もはや現代兵器など私に何一つ通用しない。だからと言って自国の人間に対する暴力はふるえなかった。私は大人しく捕まり、私が死なないとわかると、精神病院へと隔離された。


「ハハ、アハハ!! 私が精神病院! 面白すぎて腹がよじれそうだ!」


 精神病院の隔離部屋まで大人しく入ってやった。それでも込み上げてくる虚しさはどうしようもなかった。この国はまだこんなことをしている。あらゆる武器が効かなかったのに、精神病院でどうやって隔離をするんだ。


 頭が悪いというか、マニュアル通りというか。


「うん? ああ、そうか。毒殺しようとしたのか」


 食事を出されて舌がピリピリした。


「一瞬、イギリス軍が本当に馬鹿になったのかと思って心配したぞ」


 あまりにも効果がなくてよくわからなかったが、出した看護師に食べさせたら即死したのでよくわかった。なかなか粋なことをするではないか。私にとって当然、毒も隔離部屋も何の意味もなかった。


 南雲のように一個師団に見張られるなどということもなかった。日本ではもうそれもやめて南雲に屈してる。それが正しいのだ。探索者の怖さを理解している。まだこの国は探索者を化け物かよくてサイコパスとしてしか見ていない。


 この国がゴールド級と出会ったのは初めてか……。


 これからこの国がゴールド級に対しては降伏するしかないのだと理解するのにどれほど時間がかかる。ゆっくりと教えてやる時間はない。ならば"分からせるしかない"のだ。


 インドもメトに軍隊を壊滅されてダンジョンを開放した。私よりもかなり早かった。ドイツでも近々(ワン)が動くという噂がある。あの女が自国に対して何もせずドイツなどで何をしてるのかは知らんが、もうこれ以上遅れることは許されない。


 ヨーロッパにおける最初のダンジョン開放はイギリスでなければならない。


「これだけはしたくなかったのだがな」


 私はドラゴンとなったバハムートに乗り込み、イギリス国会が開かれる場所、ウェストミンスター宮殿に乗り込んだ。空を飛んで近づく10mを超えるドラゴン。イギリスの首都がたちまちのうちに厳戒態勢へと入った。

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― 新着の感想 ―
カインはクズ 確定しちゃったね
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この話初見で読んだ時はカインって傲慢で適当なやつだなーって感想だったけど二週目読んだらアフロディーテの高い魅力値だかスキルで思考誘導されてる可能性もあるなと思えてきた 婆への恩が薄れたのがアフロディー…
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