第二百六十二話 Sideエルフさん 31日目
カレンダーを確認すると王の指定した日から31日が経過したことが分かった。今日が終わる頃に八英傑側は四国を海に沈めると宣言している。当たり前のことだが現在の四国にはほとんど人はいなくなっている。
この期に及んで八英傑がそんなことをしないなんてお花畑みたいなことを考える人間はいなかった。それでも土地と共に心中しようとする人間、身体的な不自由から逃げられない人間、何よりも大量に発生した国内難民の受け入れ先が整わず、未だに四国から逃げたいのに脱出することができずにいるものもいる。
何度か様子を確認していたが、それはもうひどい有様だった。みんな逃げるのにそれどころじゃないというのに、それでもまだ呑気にマスコミは必死になって私たちの悪口を報道して、四国が海に沈むのは四英傑の責任と言い立てていた。
怒りの矛先が自分たちに向くのが怖いのだ。報道の自由を許した途端に私たちの悪口を書き立てたマスコミ。私たちが消えて出てこないことで、一歩間違えればその怒りの矛先が自分たちに向くことを恐れていた。
『今回の四英傑の暴挙に対して、深く抗議するとともに、彼らは私たちを守る義務がある。一刻も早く、声明を発表し防衛の任務に戻るべきだ』
『そうです。彼らの軽率な行動のせいで日本は世界から非難される立場に追い込まれたんだ。ただの人間が英傑などと名乗り、神を自称し、自惚れもいいところだ』
『世界の皆さん。日本が悪いわけではない。日本国民も悪くない。四英傑が悪いんです』
最初はその報道に乗っかって、抗議デモが各地で広がった。しかし散発的に外国から探索者が攻めてきても、誰一人として戦ってくれる探索者は現れなかった。これにはさすがに抗議する人間たちも焦った。
本当にこのまま探索者が現れなかったら全滅するのだ。
今回の件に関われていないレベル100以下の探索者は、日本の防衛などできるわけもなかった。今までは外国からの探索者が侵略してきたら、即行で日本の探索者が現れて撃退してきたのである。
それが四英傑どころかルビー級の探索者すら1人も現れない。そんな状態が1週間、2週間続いたのだ。本当に現れないことを確信してくると外国の探索者たちが、日本でかなりの横暴な振る舞いを始めた。
日本人を奴隷のように扱い、王様気取りで街を占拠する探索者まで現れたのだ。ただダンジョン関連の技術開発も進んでいた日本である。自衛隊の装備は強化され、レベル100程度であれば撃退例も出て日本はまさにこれからだった。
圧倒的な実力を保有するようになってきた陸上歩兵機械化大隊を筆頭に、探索者を加味しない軍事力も相当なレベルになってきている。
それでも、
「今度は自衛隊が探索者を撃退したことを問題にしてるよ。強制的に改憲させたはずなんだけどね」
それでも報道は必死になって自分たちの正義を言い立てた。平和が破られたのは四英傑と自衛隊が力を持ちすぎたから。そんなことをまだ言ってた。そうすると今度は逆にネットが、自衛隊の擁護に回り出した。
散々汚い言葉があちこちで叫ばれ、飛び交い、そうすると不思議とどこからか情報は漏れる。真実に近づいていき、今ではネットは、『本州だけが生き残る。あとは切り捨て』の線が濃厚になっていく。
そして、
『もう覆しようのない日本の一強時代が始まる。ただ四英傑がこれに失敗した場合。日本は終わる』
『あの六条がまた関わってるらしい』
『ネットが六条という架空の人物を創り出した。それはレベル250で死神様を撃退したというおとぎ話だ』
そんなことが本当のこととして流れていた。おそらく外国のルビー級探索者が漏らした情報なのだろう。みんな信じたいことを信じる。最後には四英傑によって日本は救われる。その情報が今は一番信じられてるようだ。
それでも報道側は必死になって四英傑を叩いていた。
『本州以外を海に沈めておいて、世界の支配者になって何の意味がある』
『民主主義とかけ離れた思想だ』
『四英傑は危険思想の持ち主たちだ』
「自由にさせてみたけどどうも偏るね」
私はそれらを見ながら、【意思疎通】を日本に向かって送った。
《なんだババア?》
《豊國。そっちの後のことは頼むよ》
《約束したのだからそれは守る。面倒な思想を持ってるやつらは炙り出して、適当なところで始末して構わない。それで良いのだな?》
《ああ、私がいなくなっても混乱しないようにしておくれ》
《ふん、分かった》
こういうことをしても精神的に全くダメージを受けない。そういう意味では豊國が適任だ。現在の状況は私が想像していたよりはマシだ。私たちが動く前に、私刑的なさばきが横行するようになれば面倒だと思っていたが大丈夫だった。
「みんな結構自制心があるよね」
探索者になっていない私だったらどうだっただろう。混乱して変なことをしていないか。あまり自信はなかった。そんなことを考えながらもベッドに腰掛けていた体を起こした。パソコンを閉じる。
日本と電波だけはつながるようにしてあるのだ。私がいるのは自室ではなく広い洋室の部屋だった。私の部屋ではない。私の部屋は私の要望を聞いた六条が和室にしてくれてる。
「南雲。ごめんね。ちょっと行ってくるよ」
南雲は六条屋敷の中で、3日ほど前から眠らせたままだ。六条の家でひときわ広い洋室の部屋。六条は私たちの部屋として高級なスイートルームを造らせた。4人とも六畳間で十分と言ったのに、かなり気を使ってるようだ。
私たち以外の探索者が、全て屋敷から出発し、その日から私たち四英傑は八英傑の要求をどうするかずっと話し合っていた。
「それにしても大八洲は相変わらずむちゃくちゃだよ」
日本の大八洲国で起きた神の争奪戦に対する介入。それが許された背景。改めてこの国の考え方は特殊だ。
つまるところ、覆しようがないほどの差が生まれた。ということでも起きない限りは、真性の神が介入して調停するなんてことが起きないらしい。月城迦具夜の援軍に現れたのが日本という新興勢力もいいところのやつらである。
そして、同盟をまとめたのが15歳のクソガキだったってことが真性の神には大層面白かったようだ。
『お前が、あのような子供の口車に乗るとは面白きこともあるものよな』
事情を説明しに行くと大兎は、少し笑っただけで問題視はしなかった。そして私がお願いしたことも聞いてくれた。少し贔屓が過ぎるんじゃないかと思ったが、今はこちらにとって都合が良かったので当然何も言わなかった。
「ここの人間って真性の神が何も言わない。それだけで納得しちゃうんだよね。まあそういう私も理不尽な要求に結構簡単に納得しちゃうようになったけどね」
つぶやきながら私は廊下を歩いていた。隠神刑部様が与えてくれたという屋敷。浮かんだ水球の中を錦鯉が泳いでる。本当に広くて歩くだけでも疲れるような家だ。
「家なんてもっとこじんまりしてていいのにね」
そう言いながらも自分の家も結構広い。日本政府が公金を使って堂々と勝手に建てたのだ。一昔前の華族が建てたような西洋館が、東京の中心地にだだっ広く建ってる。
住まないともったいないから住もうとは思うが、今は放ったらかしにしている。
「お爺さんが文句を言わずに一緒に住んでくれたらよかったのに、死んじゃったしね。結局、住まないで終わりか」
「行くのですか?」
長い廊下を歩き、玄関エントランスに到着すると、般若の面をつけた男が声をかけてきた。
「鈴は?」
「言われた通りに眠らせましたよ。でも、あのアイテム、南雲君と鈴さんを本当に5ヶ月も眠らせられるんですか?」
「ああ、大丈夫さ。何しろ翠聖様にお借りしたものだ。眠るというより時間を止めてしまうらしい。一瞬でも発動を許してしまうと相手にとっては時間が経ってないから、何億年でも目覚めないらしい。ダイヤモンド級のアイテムだからちゃんと返せと言われてるよ」
翠聖様が与えてくださった【時間停止の時計】。何とも単純な名前でおもちゃのような見た目をしている時計だ。だが効果は恐ろしい。たとえそれが神であれ、時間が止まれば自分にとっては進んでいない。
そうなると対処はかなり難しくなる。もしもこのアイテムを八英傑に使う許可が出れば楽勝なのだが、まあそんなことしたらさすがにユグドラシルや盤古の真性の神も黙ってないから無理だ。
「よく貸してくれましたね」
「まあ『敵には使わない。味方に使うだけなら構わない』と条件はつけられたけどね」
「それはそうでしょう。でも、本当にいいんですか? 僕はてっきり卯都木さんはなくなられたお爺さんの分まで長生きするんだと思ってました」
田中の声は元気がなかった。私が何をしようとしているのか話したのはこの男に対してだけだ。他には誰一人として話していない。この作戦に参加した全ての探索者は私が本当に何をするつもりかは知らない。
だから私がこれからすることを、後で、みんなに事情説明する役目は田中に押し付けた。
「面倒をかけるね。あんたはいつも貧乏くじだよ。可哀想だから代わりに私の財産をあげるよ」
「要りませんよ。僕は普通に生きたいので」
「ダメだよ。私のお金を任せられそうなのあんたしかいないんだから。腐るほどあるんだから、ありがたく受け取りな。遺言にはあんたの名前しっかり入れといたよ」
「ええ……」
「その仮面をとって普通に会社に通うの。もうできないぐらい忙しくなるね」
「……やっぱり卯都木さんは意地悪だな」
こんなに意地悪なことをしたのに、田中が私をいたわるように悲しげな声になった。般若の面をつけているのにそれでも泣きそうになっているのがわかった。
「やはり僕も行くべきでは?」
「それじゃあ意味がないね。それに眠ってる二人を放ったらかしにするのかい?」
「それは……分かってるんですよ。でも僕は嫌いなんですよ。年寄りだから犠牲になるとかそういうの大嫌いなんですよ。あなたは生きたいと思ってる。それなら生きるべきじゃないですか」
「まあ、私は、ただ格好つけたいと思っただけさ」
「そうやってはぐらかす。僕が恨まれるんですよ」
ポンポンと肩を叩いて外に出た。田中は後ろから何か声をかけようとしていたが、言葉にはならないようだった。この街は、湯の華の匂いがとても心地よい。六条はいいところに屋敷をもらったね。
田中もだけど何もかも全部あんな子供に押し付けた。あの子が成功しなかったらずいぶんと日本は悪いことになる。昔から味方を作るのが苦手なお国柄である。そうなればずいぶん孤立していじめられるだろう。
「バクチだね。お爺さんが嫌いなやつだ」
それなのに私は結構それをやってここまでのし上がった。自分でも意外と賭けが好きなんだなと思う。
「さて、行くかね」
私は自分の姿を消した。【転移】したのだ。そして大八洲国の本州にあるダンジョンゲートの前に現れる。【転移】は南雲のように次元を渡ることまではできないが、同じ次元内ならばかなり自由に【転移】できる。
最後に空を見上げた。
空飛ぶ島【天岩戸】がとても巨大で、悠然と浮かんでいる。それもこれも何もかも全て見納めだ。正直、最後の最後まで自分の生き残る方法も探ってみた。でもどれもこれも実現性に乏しいと思った。
八対四である。向こうの方にも頭の良いものがいると思えば、戦力の格差がもろに出てしまう。王に奇策はまず通じない。それがどういうわけか六条の案だけはうまくいった。あの子の案は【未来予知】で予知できない部分があった。
「六条。賭けさせてもらうよ」
大八洲国本州に80以上もあるたくさんのダンジョンゲート、その中で池袋ゲートを見つけてくぐる。騒ぎに巻き込まれている暇はないので気配は消した。ここから出るとすぐにダンジョンショップが見える。
ダンジョンショップの中は閑散としていて、この間遊んであげた女の子が暇そうに頬杖をついていた。その姿はいつも通りで、これから四国がなくなるというのに意外と根性が座ってると思った。
「それとも私達を信じてくれてるのかね」
だとすると嬉しい。真っ昼間のことだった。少し寒くなってきて、それでも太陽は空の上に輝いていた。よく晴れていることが嬉しかった。
「ふふ、さて」
もう一度転移する。酔うような感覚は相変わらずだった。私はどうしてもこの瞬間目を閉じてしまう。すっと目を開く。先程よりも強い日差しに感じた。海の音と潮の匂い。大八洲国の果てしなく恐ろしい海ではなく、綺麗な海だ。
沖縄県石垣島。
昔に起きた戦争で、お爺さんはここでアメリカと戦ったのだ。そしてきっとあれほど情けない気持ちはなかっただろうという思いをした。お爺さんは私にそのことを一言も語らなかった。私はそれが悔しい。
「頼りない女だと思われてたかね」
お爺さんがここで戦って悲しい思いをしたから、私はここを明るい場所にしたかった。だから一つの大事な種をここに植えた。住民には悪いが相場の2倍の金を渡して石垣島のすべてを買い取り、大事に育てていたものがある。
それが、
【万年樹】
私の2つ名の由来にもなっている。とても大きな大木に育ってくれたけどそれでもまだ幼い。これが1万年以上経つと翠聖樹のような大木に育つという。今はまだ幹回りが100mほどの小さな木だ。
高さは800mぐらいあるだろうか。世界一高いビル、ブルジュ・ハリファを木として生育させた感じである。立派だけど小さい。本来この子は、もっともっと日本を呑み込むほど巨大に育たなければいけないのだ。
「ごめんね。あんたを枯らすことになる」
【万年樹】は誰の目にもわからないように完全に隠している。だから王が、この戦争が始まった瞬間、この木に向かってきた時、ちょっと驚いた。慌てて全力で守ったけど少しだけ傷が入った。それでもまだまだ力強く成長していく。
私はその幹に触れて言霊を口にした。
【世界を守り育てる神樹よ 今ひとたび守り人のためにその力与えたまえ この国を この国の人間を どうか守り育てて そして繁栄させることを】
手元が緑色に輝いていく。その光が巨大になっていく。力強く輝きは石垣島から日本の方角へと広がっていく。八英傑に邪魔されるかと思ったが、邪魔は来なかった。私の全ての力。この子の全ての力。何もかもを注ぎ込む。
【万年樹聖・招来】
私が力ある言葉を発した瞬間。体の中からゴッソリと力が抜けていくのを感じる。それでもまだ【万年樹】の中に力を注ぎ込んでいく。命を保つために必要なエネルギーも何もかも全てこの子の中に注ぎ込んでいく。
決して誰も死なせないために。この守りは破らせない。
「あとのことは頼むよ」
いろんな思い出が頭の中に流れる。お爺さんとのこと、南雲に出会ったあの日のこと、そして自分の子供たちとはあまりうまくいかなかったこと。海の中から巨大な樹木が伸びだし、それが最初に石垣島の全てを守るように覆いだした。
それにとどまらず海を越え、宮古島まで到達し、那覇を超え、奄美大島に到達し、それでもまだもっともっと広く。仮にも神を名乗っていたのだ。ルルティエラ……どうかこのババアの命を持たせておくれ。
凄まじい勢いで伸びていき、九州を超え、本州に到達し、四国ごと飲み込み、日本という島国を覆い尽くしていく。巨大に巨大にどこまでも広がり高く。空が覆われていく。
綺麗な快晴の空が完全に見えなくなり、自分の中から致命的な何かが抜け落ちたのを感じる。それでもここまでのことができるのだと知ると、いよいよ本当に自分は人間ではないのだと思った。
【万年樹】に手をつきながら視界がぼやける。
視力がなくなっているようだった。
「もうあまり持ちそうにないね」
自分の手を見つめる。世界一美しいと言われた体が老いさらばえて皺が寄ってしまう。顔もさぞしわくちゃになっているのだろう。それでもまだ仕事があった。
「これでなんとか半年ぐらいは持ってくれるはず」
壊そうとするのなら、全てを覆い尽くして守ればいい。なんと単純な方法か。木の下だから真っ暗だ。みんなは半年間も真っ暗な中で過ごすのが嫌だろうが、食料はダンジョンから確保することができる。
ダンジョンに子供は入れないが、半年だけだから我慢しろと思った。子供が半年も太陽に当たらなければ日光に当たらないことによる成長阻害も起きるだろうが、15歳になってダンジョンに入れば、そういった問題も回復させることができる。
「それでも結構な子は死ぬだろうね。もうちょっとマシな方法にすりゃ良かったね。ババアの頭じゃ思いつかないんだ。悪く思わないでおくれ」
立つことができなくなりひっくり返りそうになった。そのまま間抜けに転ぶかと思ったが、転ばなかった。誰かが支えたのだ。
少し振り返るとその顔が見えた。
「あんたかい。よくわかんない子だよ」
助けを借りて樹上へと登っていく。空に現れた樹木が少しだけ開いて私は太陽が燦々と輝く空の下に飛び出した。全てが樹木に覆われた日本を見渡す。
「壮観だな。お婆」
後ろから声をかけられる。綺麗な黒い髪。意思の強そうな瞳。ジャケットをはおり、スラックスを履いた姿は、男みたいな子だと思っていた。
「本当だね」
「お婆はきっとこうすると思ったから、ずっと待ってたんだ」
本当に日本を海の藻屑にする気があったのか。どこまでが本気なのかいつもわからない子なのだ。それでもこちらが必ず動かざるを得なくしてくる。
「本当に困った子だ」
「お婆、死ぬのか?」
分かってるように言ってきた。
「ああ、負けたよ。やっぱり私は死ぬ」
「安心していいよ。一人一人確実に後を追わせてあげるから」
「うまくいくかね」
「うまくいかせるさ」
「王」
私は冷たい顔をした男みたいな女を見つめた。
「うん?」
「世界が嫌いかい?」
「どうだろうな。ただ無性に壊してしまいたくなる時がある」
「そんな力無ければあんたももう少し違う人生だったんだろうね」
「かもしれない」
「王。こんなことやめろとは言わないよ。あんたにも成したいことがあるんだろうよ。でもさ。あんただって幸せになっていいのさ。私は心からそう思ってるよ」
私は【万年樹】にもう一度触れた。根っこの【万年樹】が枯れてしまえば全てが崩壊してしまう。だからこの部分にだけ完全にロックをかける。誰にも破れぬように力強く。
「ああ……」
そんな悲しそうな顔するんじゃないよ。自分でやったことで泣いててどうするのさ。もう言葉を喋ることもできなくなった。私の体が【万年樹】の中に沈んでいく。
意識も何もかも樹木の中に溶けていく。全てが溶けてなくなる。それが実感できるととてつもなく怖いと思った。
これが死ぬってことか……。
南雲……。
どうか生き延びておくれ。
あんたのおかげでこんなババアが、こんな年になってからの人生が随分楽しかった。
本当に……。
でも、やっぱりもう少しあんたと生きたかったね……。
「悪い子だ。見逃したのか?」
「お婆の最後の願いだ。誰も反対しないよ」
消えていく意識。わずかに声が聞こえるだけ……。
それももうすぐ終わる。
「王。何人生き残るのだろうな」
「さあ。私にもそれは分からないよ。でもロロンは生き残りそうだ」
「死神が東堂……」
最後に何か聞こえた気がしたが、私の意識は完全に白い世界の中へと消えていった。





