第二百五十九話 Side弁財天 1~7日目
Side弁財天
水龍の導き内部1日目
顔は綺麗だけど普通の子だなと思った。誘惑してみたら簡単に乗ってきたから、迦具夜が入れ込む理由もよくわからなかった。何がそれほどいいのだろう。迦具夜は500年以上も生きているのに男と関係を持たなかった。
その迦具夜が男のために協力してほしいとお願いしてきた時は、それは一体どんなにすごい男なのかと思った。でも接してみればとても普通で、特定の女をずっと愛し続けるという大八洲国ではあまりいないタイプの男でもなかった。
てっきりそういう男を求めてるのかと思った。だが、こんな綺麗なだけの男の子を求めていたのだろうか。まあ正直言って他にも取り柄はある。というのも性行為の具合はとても良かった。
紳士的だし、上手くこちらも気持ちよくなるように導いてくれる。正直何度達してしまったか分からないほどだった。迦具夜はエッチが上手い男を探していたの? そう思えるほどだった。
ただ、迦具夜はまだ自分はエッチをしていないはずで、気持ちいいかどうかなんてわからないはずだった。
何を考えてるのかしら……。
迦具夜も千代女さんも目の前で私と祐太君がしているのに何も言ってこない。終わるまで何も言ってこないものだから、半日ほど没頭してしまった。私も男としたのは100年ぶりぐらいだ。ついつい焦ってしまって最初に繋がった。
いきなり体の芯を貫かれて、それがとても気持ち良かった。もうそんな気持ちも枯れているものと思っていたが、関係を持ってみると存外に気持ちは良かったのだ。ただそれだけだった。それ以上じゃないと思った。
「上手ね。ちょっと驚いちゃった」
「うまく出来たかあまり自信がないけど」
体は迦具夜が綺麗に清めてくれてお互いに服を着た。彼が簡単なTシャツとズボンを履いただけだったので、私も彼のマジックバッグに入っていた大きめの赤いTシャツを借りて、上からすっぽりかぶっただけだった。
「ご謙遜を。予想以上だったわよ」
「なら良かったです」
「迦具夜も千代女さんもいいの?」
元々迦具夜の”もの”である。横から味見してみたが、自分はいいのかと問いかけた。
「いいの。私は祐太ちゃんから好きと言われたらするって決めてるから」
迦具夜がそんなことを言ってくる。正直これは驚きだった。迦具夜は男に対してかなり苛烈な性格をしてる。奴隷のように扱うこともしばしばだし、ようやく好きな人ができたのかと思ったらすぐに飽きる。
そして男と付き合えば、それが一番大事だろうというエッチなことをしていない。そんな性格だからいつ頃からか貴族の男からは敬遠されるようになっていた。それでも、迦具夜の美貌である。たまにバカな男は現れる。
でもことごとく悲惨な目に遭ってしまう。体も触らせてくれない迦具夜に夢中になってしまった男たちは、無茶な要求を聞いて何人も死んだ。そんな迦具夜がレベル250の男を夫にしたと最初に聞いた。
しかも自分の寿命を縮めてまで助けた。もう一つ付け加えるなら、迦具夜はその男のために本気で神を目指している。そしてその男が提案してきた無茶に付き合ってる。
「本当、変わったわね。混じってしまったせい?」
それも驚いた。誰も、何百年という付き合いがある私にさえ本当の部分は見せなかった迦具夜が他人を自分の魂の中に受け入れた。いくら自分が一番上位になれるとは言っても、普通ではありえない行動。
魂は繊細で歪みやすい。おまけにいじってしまうと修正が効きにくい。自我を崩壊させてしまうこともあり、危険すぎて貴族や神ですら強くなれたとしても混じり合わせたりは決してしないものだ。
それを迦具夜は15歳の子供のためにやったんだ。
そのことで迦具夜は今度のことに命をかけており、いつもの男に対する苛烈な何かではなく、本当に15歳の子供を好きになったのだと理解した。でも理解した今でも信じられない。この綺麗な男の子の何がそうさせたのだ?
「どうかしら、でも、クミカがいなくても、私はきっと祐太ちゃんのために命をかけたと思うわ」
「そうなんだ……」
命をかける。私も長く生きてるけど、そんな経験は一度もなかった。本当に好きだと思った相手はいる。でも命をかけたことはない。そんな状況にそもそもならなかった。だからそういう状況になった迦具夜を羨ましく思えた。
500年も生きるのだ。
この胸が張り裂けそうなほどの恋を、死ぬまでに一度はできるものと思っていたのだが……。
二日目
私は祐太君と関係を持つ時、自分のレベルを落とした。レベル250。もうどれほど昔にそんなレベルだったのかも忘れた。私にとってはそれぐらい低いレベルだったけど、そうしなければレベル差で祐太君を洗脳してしまう。
それだと迦具夜の行動理由を理解できないままだし、私にとっても洗脳なんてものは望んでなかった。
「なんか弱くなってます?」
「ええ、こうしてる方が楽しめるでしょ」
そう言ったのだけど実際のところは、この子の心を万が一にも捻じ曲げてしまったら、さすがに"迦具夜に悪い"と思ったのだ。私と彼の肉体関係はこの日も1日の半分ぐらいに及んだ。
100年以上もご無沙汰だったから、ついつい欲望が前に出てしまう。迦具夜も千代女さんも話しかけても来なかった。だからこんな狭い空間の中なのに、本当に祐太君と2人でいるような気分になってしまう。
「なんだか……」
「どうかしましたか?」
行為の最中で私が物思いに呟いた。祐太君が心配そうに私の顔を見てくる。
「あなたのものが注がれるたびに、私の体が満たされていくような感覚がするわ」
「そんなにいいんですか?」
「ええ、私ね。エッチなことは飽きてたのよ。でも今は何だか結構楽しんじゃってる。祐太君のおかげかしらね」
することをするとまた服を着る。といっても、彼から借りたTシャツだけで、触りたければいくらでも触らせてあげた。逆に私も触った。お互いの体に対してふざけながらも、祐太君の方は真面目にしていることもあった。
私の専門分野、魔法について色々尋ねられたのだ。私はなんだか彼と話すのが楽しくて、ついつい何でも教えてあげていた。息子がいたらこんな気分なんだろうか。そんなことを思ってしまった。
子供か……。
作ろうと思えば今すぐにでも彼との子供を作ることはできる。私の卵子と祐太君の精子を体内で結合させて、そこから導き出される答えをもとに私の腹の中で赤ん坊を形成するのだ。
命を想像することができる貴族にとっては大して難しいことではない。私と祐太君の子供。どんな子供になるんだろう。蒼羅様の中に居る今ならかなり質の良い子供を作り出すことができる。興味は湧くが首を振った。
さすがに男と作ったことのない子供まで試すのはやりすぎだ。
そう思ったのだ。
三日目
「うんうん。上手。魔法は専門じゃないのにすごいわね」
感心してしまう。祐太君はとても飲み込みのいい子で、魔法について教えてあげるとスポンジが水を吸うように吸収していく。かなり大昔、迦具夜と最初に大八洲国の学び舎であった時のことを思い出す。
当時の私は傲慢で、自分より賢い人間はいないと思っていた。それが打ち砕かれたのを思い出した。迦具夜もこれぐらい優秀だった。そしてずっと私以上に傲慢だった。それが変わった。この男が変えたのか。
「祐太君。昔の迦具夜みたい」
「え……こんな感じだったんですか?」
かなり嫌そうだ。まあ性格面では似ても似つかないけど。
「うん、まあ、あなたよりはずいぶん性格が尖った子供だったけどね」
「へえ、小さい頃の迦具夜は見てみたかったな」
私は祐太君を後ろから抱きしめてできるだけ肌を密着させる。こうすると魔力の波動を合わせやすいのだ。私が魔法をどう使うのか、祐太君が理解しやすいようにその状態で魔法を見せてあげる。
「あの、弁財天様。やっぱりこれやめません?」
「どうして?」
「いや、その……集中できないというか何というか……」
「あら、いけない子」
そうすると祐太君が別の意味でついつい興奮してしまう。だから授業は中断して、何をするかは決まってる。
「——あまり甘えさせないでください」
「どうして?」
「俺が弁財天様を好きになったら困るでしょう」
そう言われて困るのかと考えた。
「それもそうね」
「はい。だから厳しくいきましょう。大丈夫、俺結構我慢強いです」
「本当?」
「本当ですよ」
ムキになる顔が可愛い。だから結局甘やかしてしまう。正直楽しいと思った。
四日目
部屋の中に自分と祐太君だけがいる。それぐらい2人だけが喋っていた。その中で私はつい昔の話をした。昔々に恋したこと。結局報われなかったこと。迦具夜みたいな失敗じゃない。どうしてか私は選ばれなかった。
「なぜかいつも最後は他の女に取られちゃうのよね」
「不思議ですね。弁財天様はとても素敵なのに」
そう言われただけで妙に胸がざわつく。何だろうこの子は。私の琴線に引っかかってくる。私たちはほとんど一緒にいて常にくっついてる。離れるのが嫌だというように。こんなこと今までしたことあっただろうか。
「本当に男はみんな見る目がないわ」
私がしゃべる目の前に祐太君の顔がある。綺麗な顔。容姿というのはある程度のレベルになると自由にいじることができる。自分のなりたい姿になれる。だが、それにも条件がある。趣味趣向がどうしても顔に反映されるのだ。
だから自由にいじれるから誰でも綺麗かといえばそうでもない。その人によって顔は様々なのだ。だから大八洲国でも好みの顔に出会えることは珍しいのだ。祐太君の頬に触れる。ペロッと舐めてみる。
くすぐったそうな顔をしたからそのまま首筋にかけてペロペロと舐めた。
「な、何ですか?」
「祐太君が美味しそうか確かめてるの」
「それが舐めてわかるんですか?」
「ええ、とても美味しいわ。ねえ」
「はい」
カプッと首を強めに噛む。少し痛いぐらいにした。優しく頭を撫でられた。そのまましな垂れかかる。ギュッと抱きしめた。いろいろと押し付けてあげる。
「貴族になって最初の100年は好きになっては取られる。その繰り返しだった」
「それは楽しくなさそうだ」
「本当に楽しくない。大八洲国は一夫多妻もありだけど、私の場合それ以前なのよね」
「それ以前……」
それ以前の理由を言うべきかどうか悩んでしまう。言えば楽しい時間が終わる気がした。
「恋愛で失敗を繰り返すとだんだんね。誰かを好きになることに瞬発力がなくなってくるの。このパターンは前にもあった。いつも見たことのある出来事。だからきっと同じになる。そうすると同じことはできないわよね?」
「長生きしててもそうなんですね」
「そういうのって長生きしてる方がひどいわ。何を聞いても何を見ても前に見たことだって思える。違うことを探してみても、結局いつも同じ場所に収束する。貴族になって300年を過ぎた頃からかな、私が全く恋もエッチもすることがなくなったのは」
迦具夜はそれでもまだ何かを求めてるようだった。大変な事態を引き起こすことも度々だったけど、これだけ長く生きてて、それでもこれだけ心を動かすことができる。そんな迦具夜が私は羨ましかった。
「それでも好きになることもあるんでしょ?」
「ええ、でも結局選ばれないの」
「なぜ?」
ストレートに聞かれる。答えは知ってる。散々言われたから。
「祐太君。わかる?」
「そうですね……」
彼は真剣に考えてるみたいだ。思わずちゃちゃを入れたくなるが、彼の答えも聞いてみたかった。だから黙って見つめていた。かなり考えていた彼は、口を開いた。
「多分。弁財天様は優しすぎるからじゃないかな」
「優しいからダメなの?」
「そうですね……、ほら、大八洲国の人間って実力主義じゃないですか。強いと何をしてもいいけど、『弱いままでいるやつは黙ってろ』ってぐらいすごい。そういう世界だと、あんまり甘やかされるのは嬉しくないんじゃないかな」
「そっか……」
よく見ている子だ。平凡だと思ったけどやはり少し違う。人のことをかなり観察する癖がある。そうだ。私は迦具夜と逆で、男に厳しくできない。どこまででも甘やかしてしまう。そうすると好きになった男が全部ダメになる。
皮肉なことにそういう男が、私から離れるとうまくいきだす。私と付き合っていた時は、レベル100を超えることができずにあがいていた男が、私と離れて他の女と付き合いだした途端にどんどんと登り詰め貴族になった。
期待の超新星だった男と付き合った時は、私と付き合いだした時からレベルが上がらなくなり、最終的にその男はシルバーエリアで死んだ。私につけられたあだ名が大八洲国一のさげまん。
迦具夜の周囲は、みんな見た目は抜群にいいのだけど、そういうよくないレッテルをつけられた女が多い。『月は美しけれど蜂は届かず』。そんな陰口を叩かれるぐらい、徹底的に女所帯だ。
その代表が迦具夜だ。なのにその迦具夜が恋をした。月城傘下の貴族はみんな大騒ぎだった。どんな男か確かめなければみんな気がすまなかった。でも呑気に確かめていたら迦具夜が死んでしまう。
とにかくみんなで一致団結して協力することは決めた。
でもやはりどんな男かみんな気になる。
だから私が確かめてあげようと思った。迦具夜がもしも力及ばず死んだとしても、私がどんな風だったのかをちゃんとみんなに知らせてあげようと思った。それが存外にいい……。なんでだろう。
「じゃあ君も私は嫌?」
なぜか嫌と言われたくないと思った。
「いいえ、自分がうまくいかないことを人のせいにする気はありません。俺がうまくいかないのは、俺が……」
彼はどうしてかそこから黙った。
「俺が悪いから?」
私は彼が言おうとしたことに見当がついて言ってあげた。
「そうですね……」
そしてそんなことを言った。
五日目
祐太君はどうしてか次の日。いろいろ考え込んでいた。私は多分何かのトラウマに触れたのだろう。悪いことをしたなと思いつつ、しばらくすると私に近づいてきて、おもむろに触られる。
「痛っ、祐太君?」
なぜか強く腕を握られた。彼は今回の自分の行動について悩んでた。だからなのかと思う。絶対に失敗するわけにはいかない。失敗すれば大罪人になる。自分の国を自分のために滅ぼした男。きっとそう言われる。
そのプレッシャーからか色々思い出されるようだった。同じレベルに落としてるから強く腕を握られると痛いのだけど、私の腕を握ったまま気持ちを抑えようとしてる。
「すみません。何だか今日は気持ちが抑えられない」
「いいのよ。人はそういう日もあるもの。今日は魔法のレッスンはなしで、私を乱暴に扱ってみる?」
男が乱暴な気分になった時も、いつも受け入れてきた。こういうところもだめなのかもしれないが、どうしてかそういう時、私は母性が刺激されて男を優しく扱いたくなる。
「弁財天様……いや、そんな気はないんです」
「いいのよ」
「いえ、強く握ってすみませんでした。そんな風には誰のことも扱いたくないんです。少し眠ります。起きたらまた魔法の練習お願いしますね」
「了解。ゆっくり眠っていいわ」
その日は結局そのまま祐太君は目を覚まさなかった。私はなんだかそれが愛おしくて、ずっと抱きしめてあげていた。
六日目
「そっか。池本君か」
「俺の頭の中ではいまだにね。あいつが一番大きい。嫌なことがあるとすぐにあいつのことが頭をちらつく。自分で殺したのにそれでもまだダメだ」
本質的に彼は自分のことをダメだと思ってる。だから、そういう時、彼は自分が嫌いになる。ダンジョンでは類まれなほどの才能を持ちながら、幸せにはなれない。不思議と私はこういう男が好きなんだ。
守ってあげたいと思ってしまう。
そしていつもダメにしてしまう。
「祐太君。せっかくここまで来たんだもの。私みたいな女とは一緒にいない方がいいのかもね」
この子がダメになっていく姿を見たくなかった。この身が焦がれるほどの恋。私が一度もそこに至ったことがないのはこういうことだなと思う。私は気に入るとその男を徹底的に甘やかしてしまう。だから相手はダメになる。
この身が焦がれるほど恋へと成長する前にダメになるのだ。
「俺が弁財天様でダメになる男だと?」
「そうは言わないけど……ダメになってほしくないと思ってる」
「俺が好きですか?」
はっきりと聞いてきた。意外と男らしいところもあるんだ。さっきのいつまでも昔のことを思い出す女々しい部分とは随分とギャップがある。
「どうかな……分からないわ」
胸が苦しい。心拍数が上がってる。これはよくない。これ以上進むと私は戻れない。そしてまたダメにする。それでもやめておきましょうとは言えなかった。どうしてかって。それは胸がドキドキしてるからだ。
この感覚、とても不安で気持ちがいい。
もっともっとこういう感覚が欲しい。
そうしたら生きてると思える。
「ねえ、祐太君。迦具夜と最初の出会いはどんなだったの?」
「最悪でしたね。俺の大事な人を全員殺そうとしましたから」
「え……生きてるよね?」
「ええ、撥ね除けて見せました。といっても俺としては半分以上は失敗した気分ですけどね。それなのに迦具夜が俺のこと急に『好き』とか言い出して、困りますよね」
迦具夜の”アレ”を撥ね除けた。大八洲国の貴族でも何人も殺された。迦具夜がたまに起こす男への罰。そうとも言われているもの。大八洲国では弱いことは罪だ。だからそれ自体は問題にならなかった。
それでも翠聖様は未だに怒ってる。何しろ紹介してあげた男を全員殺してしまったのだから。
そうか……。
この子は強いのか。
七日目
「これでいいの?」
結い上げていた髪をおろし、祐太君が一度着てみてくれないかというので着せられた。彼は少し変態気質なところがあるようで、それはV型のハイレグ水着だった。私の色とも言える赤色で胸の大事な部分と下半身の大事な部分。
その2つが最低限隠れている。そんな細い布に見える水着だった。下半身がお尻にかけて完全に食い込んでる。その状態で四つん這いになってほしいと言われる。正直面白いなと思った。大八洲国はタンパクな男が多い。
祐太君みたいに変態チックな趣味を持っている男はいない。
少なくとも私は会ったことがない。だからなんだか楽しかった。
「その状態でお尻だけを高く上げてもらえますか?」
「はーい」
言われるままにお尻だけをつんとつきだした。ここ数日でわかったことだけど、祐太君はお尻フェチだ。とにかくお尻が好きで、ずっと触っていたがる。顔を押し付けてくることもある。舐めてくることもある。
今回はそのどれでもなくて眺めたいようだ。後ろにじっと座って見つめてる。大事な部分は隠れているけどそれほど見つめて何かがあるのだろうか。ひょっとすると悟りでも開けるんだろうか。
「ずっと見てたい」
「いいわよ。どうせ時間はあるんだし存分に私のお尻を堪能して」
私は床にうつ伏せになりながらお尻だけを持ち上げる。それをずっと見ている祐太君を魔法を使って、3方向から見ていた。可愛いなと思う。自分の思いに素直になっていく。それでも好きになってまたこの男をダメにしないだろうか。
「ねえ」
どれぐらい眺めていたのかわからない。十分に堪能したのか後ろから抱きしめられて体を起こされた。今はハイレグ水着を着たまま祐太君の膝の上で密着していた。
「はい」
「ダメにならないでね」
「その時は一緒に死ぬ時ですよ。今回の失敗はそういうことでしょう?」
「そっか。ダメになったら一緒に死んでくれるなら別にいいか」
「そうですよ。それに俺は弁財天様と関わったからって1ミリもやる気をなくしていない。今までダメになった男って、要は弁財天様が綺麗で優しくて、それで、甘やかされすぎて、やる気をなくしちゃったんでしょ。でも今の俺はやる気をなくしてる暇がないから、余計なことは気にしなくていいです」
自分がそうならないとは思っていないようだった。状況によっては自分もそうなるだろうと思っているようだった。ただ彼はダメになることが許される状況ではなかった。
「そうだったわね」
「俺、女癖が悪いです」
「悪い? 女癖が悪いってどういうこと?」
「……大八洲ではそういう感覚はないのか。とにかく他にも大事にしている女の人がいるんです。俺の心情的にはそっちの方が問題なんです」
「ねえ、心配するのをやめちゃうけどいい?」
何か色々言い訳してたけど、彼の悪い部分が理解できなかったので私は聞き流した。祐太君がこうしてる間も心の中にパワーを貯めていているのを感じる。2ヶ月後必ずこの子は全てを成功させる。そんな気がする。
そうか……。
迦具夜。
あなたは、この子が自分にとって都合がいいとか、悪いとか、そんなのじゃないのね。
いつものあなたはそういう感じだったからそうなのかと思った。
でも違う。
あなたはこの子を本当に格好良いと思ったから好きになった。
私は祐太君から抱きしめられたまま振り返って、祐太君の顔を見た。
「祐太君。私、今ものすごく胸がドキドキしてる。久しぶり……いえ、きっとここまでは初めて。触ってみて」
祐太君が胸に触れた。
「本当にドキドキしてる」
「こういう気持ち。ここまでの気持ち。ならなかったのよ。だから……」





