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第二百二十五話 一層

 いくら建物が大きくても、ゆっくり歩けば俺たちの体力なら大して疲れないのだが、局長の姿が完全に見えなくなり、途中にある門だけが開いている。貴族の護衛というものもどこにもなく、巨大城はとても静かだった。


「気味が悪いぐらいね」


 エヴィーが言う。


「うん。これで通常なの?」


 伊万里が返す。


「そうは思えないわよ。ねえ祐太」

「ああ、道が正しいのかも自信がなくなってきてるんだけど」


 1段で5mほどある階段が、千段ほど続いている。いつの間にかあたりも闇の帳が降りていた。小人になったような気分で闇夜の城の外観を走る。本当にこの道で正しいのか。本気で不安になった瞬間。それを感じ取ったみたいだった。


 巨大な提灯が空中に浮かび、俺達がゆく道中を示しだした。どこまでもどこまでも巨大な提灯が浮かんで1列に空中に並んでゆく。幻想的な光景。貴族も誰もいないから喜ばれていないのかと思った。だがそうでもないようだ。


 時計を確かめる。時間的にはまだ暗くなる時間ではない。夜になったのではなく夜にしたということか。翠聖様。どこまでのことができる存在なのだろう。提灯の明かりがあまりにも綺麗で、進むのが遅くなる。


 足を止めたいところだが、さすがにそれはしなかった。


「はあ、翠聖様か……」


 美鈴の額に汗が浮かんでいた。ほのかなあかりに照らされた美鈴の横顔が綺麗だ。


「なあ」

「うん?」

「これが終わったらちょっと休もうか」

「いいね。1週間ぐらいパーとバカンスしたいね」


 喋りながらも外のことも気になっている。両親はどうしているのか。さすがに死ぬと寝覚めが悪い。米崎の研究所には移動しているだろう。かと言ってあそこももう安全ではない。むしろ、軍事施設と言ってもいい場所である。


 戦争が始まれば標的にされたところで不思議はなかった。バカンスはともかく一度日本に戻って、状況を確かめる。それだけは必要だというのは、日本出身勢全員の思いだろう。


「明かりが道を示してる。よっぽど意地悪でない限りそういうことだろう。行こう」


 美鈴の手を握った。これはクエストでもなんでもないのだ。苦しまねばいけないことではない。ただ相手が相手だけに気が抜けないだけだ。階段が途中で別れているところもあり、進む先が分かりにくかった。それを提灯が示してくれる。


 その通りに俺たちは進むと、巨大な屋敷が見えてきた。お城の城主が住むという御殿である。


「「よくぞ来た!」」


 そこに初めて人がいた。角剛と金剛。翠聖様を俺が初めて見た時にいた見惚れるほど筋骨隆々の男たちである。まるで仁王像のようで、上半身裸だ。頭はつるっぱげである。思わず触ってみたくなるような筋肉。


 そして近づくほどにその体が大きいことに気づく。二足歩行の生物として最も大きな巨人であった。東大寺にある金剛力士像よりはるかに大きい。南雲さんとアメリカで見た自由の女神ぐらいだろうか。見上げると首がつりそうだ。


「「翠聖様がお待ちである!」」


 声が空から降ってくる。それは白虎様と喋った時と似ている。レベルが上がると巨大化することがあるようだ。この二人は以前見た時は普通の人間サイズだった。転生した姿がこれなら、なかなか格好いい。田中に相通ずるものを感じた。


「「さあ中へ入れ!」」


 入り口の門が角剛と金剛によって開かれていく。当然、翠聖都の門と同様の大きさである。轟音を響かせ、開いていくとはっきりと分かった。この中心に翠聖兎神がいる。その気配による圧迫感が全身を包んだ。


「えっと、はい。じゃあ失礼します」


 緊張しすぎて気分が悪くなってきた。仲間を確認すると全員緊張してるようだった。先ほどから空気が張り詰めている。そして隠しても隠しきれない翠聖様の気配。御殿の中へと、近づくことすら畏れ多いと思える。


 もう何千年も生きているという正真正銘の神。そんな存在がいるんだ。土間で靴を脱ぎ、式台の高さに見上げる。そういえばレベル100しかない榊は大丈夫か。そう思って見たら。かなりバテてる様子で、肩で息をしていた。


「おい、大丈夫か?」


 榊が仲間にいる状態というのが通常ではなさすぎて、正直忘れてた。すまんと心で謝る。


「ちょ、ちょっと疲れた。何なのこの大きさ」


 ビリビリとする圧迫感が続いている。中に入ると本当に重苦しくなってくる。最初はたとえ段差があっても楽にジャンプできていたのに、たかが5mを飛ぶのがしんどく感じてしまうほど圧迫される。息苦しくて鎧が重く感じた。


「っていうか、あんた私のこと忘れてたでしょう!」

「……そんなことはない」

「もう! ああ、早く帰ってゆっくりしたい! 私もう1ヶ月ぐらい寝てないのよ!」

「それはまた無茶を。どうして寝なかったんだ?」

「『どうして寝なかったんだ?』じゃないわよ! 1ヶ月以内に到着したら、それだけでレベル200だって言うんだもの。そりゃ急ぐわよ。中レベル探索者になったら、トップ1000のランキングに乗ってる人もいるのよ」

「それはそうだな。急がせて悪かったよ」


 1ヶ月で女が一人でここに来たという。きっと史上初だと思える。現実感がなさすぎる。しかしそれをやってしまった。こいつの才能はあるいは俺よりも上なのだろうか。そう考えると少し嫉妬してしまう。


「悪くないわよ! ありがとう! 私って超ラッキー!」


 どっちなんだ。伊万里といい、榊といいダンジョンとなると本当に男も女も関係ないな。迦具夜を見ても分かる。どんな人間だろうと才能があるやつは才能があるし、強いやつは強い。


「あともう少しだ。頑張れ」


 そして声をかけて来た人がいた。摩莉佳さんである。綺麗な翼を持っている。この中で一番移動が楽だったのは間違いなくこの人だ。


《この人どなた?》


 榊が聞いてきた。


《大八洲出身の人で生まれながらの翼人らしい。今回の件で仲間になったんだ》

《そうなんだ。誰も友達いなかった六条がこんなに仲間増やすとねー》

《うるさい》


「良ければ私が運んでやろうか?」

「えっと」


 榊が考え込んだ。


「じゃあ、お願いします!」


 こいつコミュ力高いな。俺なら絶対初対面の人にそんなことされたくない。


「了解だ」


 そのまま摩莉佳さんが榊をお姫様抱っこした。そして飛び上がった。俺は全員の様子を見渡す。そうすると入り口のところで切江とシャルティーがまだいた。


「どうした?」

「「この2名に関しては立ち入りが許されていない! 主が出てくるまでここで待て! 六条祐太! こやつらに指示せよ!」」


 角剛と金剛の言葉を聞く。さすがにからくり族に落ちてしまった2人では翠聖様に謁見する資格がないようだ。そしてそういう時にちゃんと俺が指示を出さなければいけないようだ。


「了解しました。切江、シャルティー」

「「畏まりましたご主人様」」


 2人ともさっさと切り替えて後ろへと下がっていく。「玄関前で待っています」と声をかけてきた。2人で仲良く手を振っている。一人だと心配だが二人いるから大丈夫だろう。俺も手を振り返しておいた。


 そして上がり框に向かってジャンプ。


 上に乗るとまた人がいた。浅葱色の袴を着ている熊人である。


「この家は面白いだろ?」


 局長が笑っていた。置いていかれた俺は苦笑いをする。文句を言いたいところだが、なんだかんだで小人になったみたいで楽しかった。


「はは、何だか結構疲れました」

「そういえばまだレベル160だったな。そこの娘に至ってはまだ100か」

「はい。そうです」


 榊が答えた。摩莉佳さんが上がり框の上に榊をおろした。


「すまんな。ここにそんなレベルでくるやつはほとんどいなくてな。ゆっくり冒険気分も楽しかろうと思ったのだが、気が利かないことをしてしまった。考えてみればそのレベルでは移動にも難儀するな」


 局長は言いながらエヴィーに目をつけた。伊万里に背負われていたからだ。


「エヴィーだな?」

「はい」


 エヴィーも伊万里の背中から降りた。局長は全員の名前をちゃんと覚えているようだ。


「お前、召喚獣はどうした?」

「乗っていいんですか?」

「ダメだと言ったか?」

「言ってません……」


 ガクッとうなだれてエヴィーが、ラーイとクーモを出す。リーンも出して、自分が合体すると、そこからは苦労なく進むことができるようになった。運動能力の高い俺と伊万里、ジャックと摩莉佳さん以外は全員召喚獣に乗った。


「ごめんなさい。無理しなくてよかったのね」


 エヴィーが口にした。


「いいよ。俺もよく分かんなかったし。久しぶりにみんなで走るのも1階層みたいで楽しかったしね」

「なら良かった。それにしても大きいわね。こんなに大きいと木材1本だけでも地球じゃ絶対手に入らないわね」


 局長が俺たちとペースを合わせて先導してくれていた。多分、局長は軽く歩いている気分なんだろう。実際普通に歩いているように見えた。それでも速い。俺たちは離れないように気をつけた。


「それに息が詰まりそうなほどの気配がしてくる」

「そういえばな。お前たちを見ていて、ここに貴族しかいない理由が、翠聖様が無理に神気を隠さずとも良い。という理由からだったのを思い出した」


 局長が言う。小人になったような気分で走っていく。きっと1つ1つの建材のサイズが巨大でなくても、本来からしてかなり広い屋敷だと思う。局長の屋敷よりも、意匠に凝った作り。


 枯山水の庭が、庭というより自然公園のようだった。ししおどしが滝のように見える。ただの砂利がバレーボールぐらいにでかいし、庭木は巨大樹。島に見立てた岩が本当に島のようだった。


 眺めながらもどんどんと重苦しい気配のする方向へと近づいていく。進むのが本気で嫌だと思った。だが、


「これは?」


 俺たちが向かっている先から感じていた強烈な気配。近づきがたいもの。走るよりも思わず頭を下げたくなるような感覚。それがフッとなくなる。


「翠聖様がお前たちに気づいたな。ちゃんと近づけるように神気を抑えたのだろう」


 局長とてここでは小人のように見上げる。翠聖都の門と同じく、大きな障子戸がある。わずかな隙間に局長が右手を入れた。そして特に重そうにするわけでもなく片手で開いた。簡単に開いて、普通の障子戸みたいだった。


 簡単に開いたのとは対照的に、重苦しい音が響く。開ききるとすぐに片膝をついて頭を下げた。


「翠聖様。少々遅くなってしまい申し訳ございません。六条以下そのパーティーメンバーをここに連れてまいりました」


 不思議とこの大きな建物の全体によく響き渡る声だった。中にいたのは想像していた通りの巨大な生物。人ではない。1匹の巨大なうさぎだった。俺の身長ほどもある瞳が開いていく。


「来おったか(わらべ)


 体調が50mにもなりそうな巨大なウサギ。大きさ以外は変わったところはない。ただの白兎。そのただの白兎に自然と頭が下がりそうになる。


「よい。此度はご苦労だったな。ちと、お前たちにとり簡単すぎたか?」

「い、いえ。かなり大変でした」


 正直に言ってしまう。いくつもの幸運が重なって、ようやく誰も死なずにここにいる。これ以上難しいクエストを出されたら、本当に誰か死んでしまうかもしれない。簡単でしたなどと口が裂けても言えなかった。


「ふふ、ふあ」


 大きなうさぎが小さく笑う。そしてあくびをする。体のサイズがそれと共に縮小化していく。見上げていたものがどんどんと見上げなくてよくなって、以前見た翠聖兎神の姿に変化してしまった。うさぎの耳に赤い瞳。相変わらずの白い肌。


 そして目覚めたばかりの気怠げな表情。以前と同じく白い着物を着て、胸元がはだけていて、妖艶という言葉がよく似合う。そしてそれ以上の変化に驚く。翠聖様が変化するのと同時に建物の全てのサイズが、通常になったのだ。


「驚くであろう。最初に来たものはみな驚く。すぐに慣れて当たり前になるのがちとつまらぬがな」

「はあ。俺だと当分慣れない気がします」

「そうかえ。……そこの女。表に出よ」


 俺の影に隠れたままにしておこうと思っていたらしいクミカが翠聖様に言われる。さすがに俺が言うまでもなく、クミカもそれに従って影から出てきた。だが、翠聖様に言われて出てきたにしてもかなり嫌そうである。


「ふむ……そなた影を使うのが得意なのか?」

「はい。そうです」


 消えそうな声でクミカが答えた。早く帰りたそうである。チラチラと俺の様子を伺う。戻っちゃだめ? みたいな顔するんじゃない。


「外に出続けるのは苦痛か?」

「大嫌いです」

「なるほどのう。良いぞ。苦痛であるなら戻れ」

「良いのですか?」


 クミカは単純に喜んだが俺が心配になって聞いた。


「よい。苦手なことは誰でもあるものよ。わらわもどうしても食べれぬ物がある。皆はうまいというのだが、なすびが嫌いなのだ。あれだけは、どうにも苦手。その昔、友人に無理に食べさせられてのう。あれにはずいぶん腹を立てたものよ」


 思わずふっと笑ってしまう。そうすると重苦しい空気までが消えた。クミカは言葉に甘えて俺の影の中へと戻っていった。その様子を翠聖様がずっと優しそうに見つめていた。


「さて、六条。五郎左衆を全て殺したようだのう。先に意地の悪いことをゆうたが、戦力差から考えてもなかなか見事だったえ。何しろ、迦具夜の小娘も関わっていた様子。あの阿呆。一緒に呼び出したのに無視しよった」

「そうなのですね」

「全く持ってルビーでも最上級にもなるものが、ブロンズを使うなどと恥知らずな。月読のお気に入り故、あまり無理に呼び出しもできぬ。許せよ」


 会いたくないからむしろ嬉しい。これからもぜひとも関わらずに生きていきたい。それにしても周囲には誰もいなかった。もっと他の貴族が並んでいるのかと思ったが、そんな様子はなく、いるとすれば局長だけだった。


「誰もおらんと思っておるのか?」

「えっと、はい」


 一定以上にレベルが離れると、こちらの考えていることがほぼ全て分かるのだという。余計な嘘は無駄だと頷いた。


「あやつら、なんぞお主が面白くないのか、ずらっと並んで脅そうなどと抜かすやつもいたほど。じゃが、罰でここに来させたわけではない。バカなことを抜かしたから全員下がらせたえ」

「はあ」


 やっぱり喜ばれてないのは確かみたいだ。なぜだろう? 別のところから笑い声がする。見ると局長だった。


「それはさぞ悔しそうだったでしょうな」


 局長がなぜかかなり面白そうだった。


「うむ。銀次がなぜ俺までと言う顔で下がっていったわ」

「くく」

「えっと……」


 愛想笑いでもしておいた方がいいのか。それはそれで微妙な気がした。


「ああ、すまぬ。お前たちには関係のない話題よのう。六条一行。こちらへ来るのじゃ」


 言われてまだ距離があったのを近づいた。


「では一人一人見て、褒美を定めなければいかんのう。呼ばれたものから前に来い」

「はっ、畏まりました」


 これで良いのかよくわからずに頷いた。


「まず、ジャックとやら前へおいで」

「お、おう」


 さすがにジャックもビビりながら、素早く前に出て、翠聖様より少し手前で腰を下ろした。


「五郎左衆を何人殺した? その他の功はあるか? 嘘をついても見抜けるから、つくんじゃないぞえ」 

「お、おう。じゃねえ。はい。えっと、五郎左衆のやつらは大体50人ぐらいぶっ殺したと思いますですはい」


 どうもジャックは敬語は苦手なようだ。まあそれ以上に緊張しているのだろう。


「ふむ……正確には53人じゃな。他に目立った功はないようじゃが、一人の功績としては十分。褒美としてレベル211にしてやろう。コインはブロンズを100枚。金銭は三億貨。シルバーのスキルと魔法もそれぞれ1つやろう。どんなものが欲しい? 己の才能に合うものを言うのじゃぞ。あまり違うものを言うと良いものを与えられなくなるのでな」

「ほお」


 思わず局長が声を漏らしていた。それはかなり破格な報酬なのだと、大八洲に詳しくない俺でもわかった。クエストの難易度が高ければ、ダンジョンクエストでなかったとしても報酬は大きくなるようだ。


「す、すげ、あんっと、ありがとうございます! じゃあ、魔法は風のなんか攻撃的なので頼む。スキルは速く動けるのがあると嬉しい!」

「ジャック言葉遣い」


 土岐が注意した。


「よいよい。あまり堅苦しいのはわらわも嫌いでな。銀次達もおらず、近藤だけならば気兼ねはいらん。ジャック、では魔法は【風王】をやろう。スキルはそうさのう【刹那】で良いか?」

「翠聖様。その2つですと、こやつではまだ使えぬのでは?」


 局長が言った。


「むっ、そうなのか。では精進せよ」


 しかし一度口にした報酬が変わらないようだった。


「わかった。いや、ありがとうございます! 翠聖様。どんなのか知らねえが、精進して必ず使いこなして見せるぜ!」


 ジャックが喜んで後ろに下がった。そしてジャックの話を聞いて、全員の顔が期待に満ちた。これは本当に洒落にならない報酬がもらえそうだ。そう思うとどうしても期待してしまう。俺も正直ワクワクした。


 リーダーだから一番いいものもらいたりするのか? 一度固辞するのが礼儀とか言うけど、ジャックを見る限りそんなことも必要なさそうだ。


「良い心がけじゃ。次に土岐。前においで」

「は、はい!」


 土岐が転けそうになり、前に出ている。なんだか泣きそうになっている。嬉しすぎるのだとよく分かった。それでいて少しだけ迷っていた。その迷いは猫寝様のことなのだろう。


「猫寝か?」

「あ、いえ」


 考えてしまうと分かってしまう。そういうことのようだ。


「気を使うでない。久兵衛というものが死んだ悲しみもあるのであろう。そなたへの報酬の一つだ。猫寝家の名誉に傷をつけぬとわらわが保証してやろう。咎人であろうと友人の死とは悲しいものよのう」

「……はい」


 土岐は本当に少し泣いてしまっていた。


「今の悲しみに、只人であるお主はとらわれるであろうが、命は巡る。死に際が綺麗であったのならば、それほど迷わずまた正しく生まれ変わってくるであろう」

「……僕の友人に過分な言葉、ありがとうございます」


 しっかりと土岐が頭を下げた。


「では土岐よ。そなたは何をしたか延べよ」

「はい! 五郎座衆を殺したと言える数は8人です! 主に諜報で活躍していました!」

「ふむ。五郎左衆を罠にはめるための仕組みを作ったり、敵の位置を探り当てることが中心か。それはそれで重要なことじゃな。功はジャックと同じとみて良いな?」

「じゅ、十分すぎるほどです!」

「ではレベルとコインと金銭は同じとする。欲しい魔法とスキルを宣べよ」


 それぞれの報酬がはっきりと決まっていく。ジャック、土岐、摩莉佳さん、マークさん、美鈴、エヴィー、伊万里、玲香。この8名の評価は全て同じとなった。そしてこの場にはいないシャルティーと切江の名前を翠聖様がつぶやいた。


「両名。六条祐太に従属することにより、五郎左衆での行いは翠聖兎神の名において不問とする。罰もないが報酬もない。六条。異論はないな?」

「はい。それで十分でございます」


 俺がこの場にいない2人の代わりに答えた。


「うむ。少しからくり族について教えておく」

「はい」

「罪を不問としたのに無報酬。それがなぜかと言えばな。もしも2人を強くしたいのならば、他の誰かがするのではなく、からくり族の主であるお主が何らかの手段を持ってする必要があるからだ。その限りにおいては、どれほど強くなろうと自由。からくり族というのはそういう存在。レベルアップをさせたければお主がするのだ。今はまだ無理かもしれぬが、覚えておくと良い」

「畏まりました」


 なるほど。そんなことを言われると米崎のことが頭に浮かんでしまった。頭を振って次に榊の名前が呼ばれた。

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― 新着の感想 ―
過去一イカスリザルトですやん!
論功行賞、楽しいです!
ワクワクの報酬回ですね。 さて残りの者たちの報酬はいかに?
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