第二百十三話 Side五郎左 罪
どうしてこんなことになっているんだ。今の状況が良くない。五郎左衆の人数が減ってる。六条祐太に挑発されて、いいように狩られていってる。武官を相手にあれほどうまくやっていた集団が、たかが15歳の少年に翻弄されている。
「今までは勝てていたのにどうなってるんだよ!」
「困りましたね」
「弥生! それどころじゃないよ! もう何人死んだかわからないぐらいだ! みんな武官には勝てたじゃないか!」
思わず叫んでしまった。
「怒ってはだめです死黒」
「でも、一度や二度じゃない。もうすぐ1ヶ月が終わりそうなのに一度も勝ったって報告が来ないんだよ! 今じゃ桃源郷中で五郎左衆は実は雑魚集団だったって言われてる!」
僕たちは武官にはことごとく勝利をおさめてきた。でも、相手が15歳の子供になってから誰も勝利できていない。まだ五層でメンバーが大量に殺された時は納得ができた。不意打ちだったし、モンスターの構成員も多かった。
『五郎左衆弱すぎワロタ!』
『五層でならあいつら簡単に半分以上殺せた!』
『武官も五層に行けばすぐに壊滅できてた!』
六条が口にして高笑いをしているらしい。五層で構成員が何十人も暗殺された。おまけにこちらが待ち構えている場所には現れず、とっとと逃げて行方がつかめなくなった。そうして、3日ほどしたある日、奴ら三層で堂々と行動し始めた。
僕たちに狙われていることが分かっていて、桃源郷のレジャー施設で遊んでいるのだ。
【木星環境リアル体験・ジュピターパーク】
なんていうアトラクションで本当に遊んでる。本気で楽しんでる。そんな報告が来た。僕たちは明らかに挑発されていた。五層でかなりの構成員が死んで、その時に1人か2人はパーティー仲間が殺されてしまっている構成員が多かった。
身内を殺されたことで冷静になれない構成員が続出した。太陽系の惑星である木星に実際転移し、釣り出されてバカみたいに殺されていく。その1日でまた50人死んだ。奴らと戦って3戦目でこちらの戦力は半減してしまった。
そうすると街中に、
【五郎左衆壊滅。六条パーティー1人の死者も出すことなく鮮やかに勝利】
そんな話が瞬く間に広まってしまった。
元々悪評ばかりの集団である。嫌いな奴らが多い。その痛快な話に飛び乗ったマスコミもこぞって大々的に報道した。結果、大八洲国で六条は有名人になり、ただの15歳にいいようにされた五郎左衆は世間からの笑いものだ。
そして仲間を殺され今まで好き放題やれていた五郎左衆の構成員が暴走した。またたく間にさらに100人が殺された。
「なんて汚いやつらだ!」
ここのところ毎日イライラしている。今まで何もかもがうまくいってたのに。ほとんど壊滅状態だ。理由は誰も逃げないからだ。そもそも五郎左衆は武官と戦っても分が悪くなれば逃げればいいだけだった。
そして、それは【異界渡り】を使えば簡単だった。
だが、六条達を相手にそれをする構成員がいなかった。分が悪くなってもまともに戦ってしまう。そりゃそうだ。こちらの構成員は大人ばかりだ。子供相手に怖いから逃げますなんてできなかった。
【極楽粉】を過剰に摂取してでも、六条達を一人でも殺そうとした。それが逆に被害をどんどんと大きくしてしまった。結果、切江と木阿弥がまだ生きてるとはいえ、ほぼ壊滅状態だ。それでも僕は冷静だった。
構成員が死んで腹は立つ。でも正直、本質的にはどうでも良かった。僕には関係のないことだった。
「はあ、つまらないけどここまでか……」
これだけ殺されてはこの組織はここまでだ。弱点もばれてしまった。どうやら【異界渡り】の仕様も全部ばれてる。【異界渡り】がかなりの部分で頼りだった五郎左衆としてはもうダメだろうし、さすがに構成員も頭が冷えてる。
もう一度奴らに襲撃をしようとしても、誰も参加しないだろう。
「いいえ、死黒。諦めてはいけません」
先ほどから僕が喋っている人。小さくて可愛い月影弥生である。五郎左衆の最後の幹部にして、僕の“ご主人様”。背が小さくて水色の長い髪には花飾りをつけてる。アニメから出てきたような可愛い少女。
日本にダンジョンが現れてしばらく経ったダンジョンの中、僕の前に現れて、僕の運命を変えてくれた。僕は弥生の本当の名前は知らないけど、“貴族”なんだってことだけは知ってる。
「でも弥生。これはもう無理だよ。ここまでにしようよ。弥生は戦ってくれないんでしょ?」
「ええ、それは仕方がないのです。六条祐太に私がここにいると知られればちょっと困ってしまいます」
弥生はとても可愛い。小さな胸にくりっとした瞳。今日はおへそが出ている服を着ている。水魔法がとても得意で、動くのはちょっと苦手でそういうところも可愛い。僕は怖くて震えていた。六条が怖くて仕方なかった。
以前、弥生から言われて一度だけ会いに行ったことがある。僕とは全然違う。ダンジョンから好かれているという少年。男の僕でも惹きつけられて、この子とならキスしてもいいと思えたほどの綺麗な男の子だった。
でも仲間にできそうになかった。悪に染まりそうなほどの負の感情がなかった。あの綺麗な子供が僕の命に迫ってきている。すぐ後ろに現れるかもしれない。そうなれば僕の人生は終わりだ。弥生のおかげでこんなに楽しかったのに終わりだ。
「可哀想な、死黒」
僕の本名だった。僕の家は昔から裏社会を生きてきた。それは遠い遠い昔。鎌倉時代からそういう家系だったらしい。人の弱みにつけ込み、それを暴きたて、そうすることで権力者に取り入る。
他家の情報を手に入れたい権力者たちは、僕の家ととても仲が良かった。それは現代のダンジョンが現れるまでの世の中でも変わらなかった。しかしダンジョンが現れた。
裏社会の中でも元々トップクラスだった忍穂家は、早々に千代女という化け物女が現れて、その地位を相変わらず盤石なものにした。当然のように死黒家でも探索者を排出しようという動きが強まった。しかし、どいつもこいつも失敗した。
肉体的にも優秀とされたやつらが次々とレベル100付近で死んだのだ。そして家でニートをしていて、母親が庇ってくれるからなんとか生きていただけの僕が、無理矢理ダンジョンに放り込まれて、レベル200まで上がってしまった。
その理由の全てが弥生だった。
「こんにちは死黒。あなた1人でこんなところにいるの?」
彼女と出会った日のことを僕はまだ鮮明に覚えている。一階層で、ゴブリンに殺されかけていた。家では僕がどうせ死ぬだろうと思われていた。僕もそう思った。でも僕は弥生に助けてもらった。
ゴブリンに殺されそうだった僕の前から全てのゴブリンを消し去ってくれた。ゴブリンはまるで潰れたトマトみたいにぐしゃっとなってた。可愛い女の子がとても強くて残酷で、僕は正直おもらしをしてしまった。
そんな僕に着替えとお風呂を用意してくれた。そしてまだレベル1だった僕を大八洲国に特別招待してくれたんだ。
「ここどこ?」
「おめでとう死黒。あなたは地球人で初めて大八洲国に来た人よ。まあ誰にも言えないのだけど。言えば私もただじゃ済まないから秘密ね」
「あ、うん」
そんな僕は弥生の奴隷だ。4年ほど前に正式に奴隷になった。弥生は僕よりもはるかに強いから、一緒にいるとそうなってしまう。僕はレベル1で、最初はダンジョンペットという文字が称号に現れて、4年前にダンジョンから忠告された。
【あなたはダンジョンペットを続けて360日が経過しました。365日までダンジョンペットを継続した場合、あなたは仮名・月影弥生の奴隷となります。奴隷となった場合、死黒怨偽魔は基本的人権の喪失。自由意志が喪失され、あなたの全ては月影弥生のものとなります】
僕はそれが素晴らしいと思った。弥生は僕が今まで見てきた中で一番可愛い女の子。フォーリンなんて弥生の足元にも及ばない。そんな弥生の奴隷になれる。それで満足だったから僕は逃げなかった。
どの道、あの日以来家にも帰っておらず、50すぎて、探索者をしても見た目の変化も何も起きなかった。そんな僕に弥生以上の女性が見つかるわけがなかった。そんな僕を気に入って、弥生は全ての世話をしてくれた。
ダンジョンの中で戦うのが怖いといえば、弥生は、僕が眠っているうちに、僕のレベルを上げてくれた。つまりレベル200になるまで僕はモンスターを一体も殺さなくてよかった。
「どうしてそんなに良くしてくれるの?」
そう尋ねたら弥生が、
「私はね。神様になりたいの」
そう教えてくれた。
「そのために死黒は私の言う通り動いてほしいの。他の子を使っても良かったのだけど、死黒以外だと死んじゃうと困るしね。死黒は死んでも別に困らないから、いいでしょ?」
「もちろんだよ。僕は弥生のために生きてるんだから」
「良かった。奴隷って造ってみたのは初めてなのだけど、さすがルルティエラ様ね。完璧なお仕事だわ。あなたはもう主に対して悪意を抱くことすらできないの。何を言われても私のことがすごく正しく思える。哀れなお人形さん。いえ、そうね。人間だったわね」
弥生の笑顔はいつも可愛かった。その笑顔で微笑まれると僕は何でも言うことを聞いた。奴隷だから聞いてしまう? 自由意志がなくなってるから聞いてしまう? 違うね。僕は僕自身でちゃんと考えてるんだ。
そんな毎日が最高に楽しい日々の中、奴隷になるとすぐに、
「必要になるまでしばらくここにいなさい」
「え? でもここって牢屋の中だよ?」
「あ、そうそう、一応これだけは言っておいてあげるわ。あなたはこの中でもとても楽しいの。ここは牢屋じゃなくて楽園。そう思い続けるのよ。これは命令。ふふ、私って優しいわ。どうしてみんな『永遠処女。根性が悪すぎて結婚相手がいない』なんて言うのかしら」
牢屋みたいな場所で閉じ込められて囚人みたいにして生きていた。お母さんが心配していないかちょっとだけ気になったけど、その気持ちもすぐに消えた。弥生がここにいなさいというからここにいればいいんだ。
それから何年経ったんだろう。
「はあ、やっぱり織田家はなかなか崩せないわね。こんなのがうまくいくとは思えないのだけど、まあ誰もやったことがないという意味では評価できるプランか……」
「月城様。本当におやりになるのですか? 五層になど行くことになるのですよ?」
「八代。一応、『名前を呼ばない』って言ったでしょ」
「も、申し訳ありません。えっと、弥生様」
「いいのよ。神様になるためだもの。これぐらいはしてみせるわ」
何年ぶりだろうか。もう10年もあっていないような気がした。でも、実際はたったの2年だったらしい。現れた弥生はどういうわけかもう一人、弥生そっくりの女の子がいた。こちらはピンク色の髪である。でもそれ以外は全部弥生だ。
「まだ生きてるかしら? 餌はちゃんと与えてたの?」
「はい。月に一度でいいとのことでしたので、与えておりました。生きていることだけは確認しておりましたよ」
「うわー汚い。ちょっと八代。お風呂に入れてから連れてきて」
「月、いえ、弥生様。そんな調子で大丈夫ですか? 私が代わりにいたしますのに」
「いいの。こういうことはちゃんと自分でしておいた方がいいのよ」
そんな声が聞こえた。このピンクの髪の女の子とお風呂に入れば、また弥生と会うことができる。僕は喜んでお風呂に入って弥生の前に出た。
「僕はこれから5層に行くの? あそこは出来そこないばかりがいる場所だろ。死体だらけで臭いと言うし行くのは嫌だな」
僕の正直な感想だった。五層は生命体として致命的なほど失敗した。そういう生命体のゴミ捨て場所だと聞いた。死体の山が築かれてそれを掃除もされていない。そんな場所に僕は行くのが嫌だった。
「でも、死黒。五層には他の探索者が誰も来ないそうですよ。それに少し覗いてきたのですが、なかなか面白い発明品がありました。それを使えば……というか私が我慢するのにあなたが我慢できないとか、奴隷としての自覚がありますか?」
そんなことを言われて僕に言うことを聞かない選択肢はなかった。やっぱり直前になっていくのが嫌になったという弥生を置いて、五層に降りてみた。そうすると五層では探索者が来ること自体がとても珍しい。
「探索者様ですか? え? 本物?」
「おい、みんな本物の探索者様だって!」
「すごーい!」
全く見た目が良くならなかった僕でも、その空間では驚くほど大事にされた。まるで王様だった。気分が良くて僕は五層に喜んで入り浸るようになった。
「【異界渡り】?」
そんな中で献上品だと言って、五層の中央から送られてきた品があった。何でもこの五層での発明品らしい。難しい説明は考えるのが面倒で聞き飛ばしたが、要は犯罪にも使用できるもので、姿を簡単に消すことができる道具だと分かった。
使い方はとても簡単で便利。僕はドキドキしながら少しだけ悪いことをしてみた。三層の探索局で、一番綺麗な女性に目をつけて誘拐してみたのだ。姿を消せば結構簡単にできた。
全然違う場所に現れた。そのことにいくら探索者でも女性は驚いていた。僕は、
「なんだお前!?」
「俺か? 俺は死黒だ」
大物ぶって声をかける。そうするとみんな驚くほど簡単に騙された。何しろ自分が全く知らない場所に現れるのだ。【龍炎竜美】や【瞬神ゲイル】で有名な【転移】が使えるのだとみんな勘違いするらしい。
そして少しだけ自分の気配を大きく見せてやればいい。弥生があげてくれたステータスは、ステータスという点だけにおいてはかなり優秀で、レベル200の最高峰らしい。そうすると気配だけはとんでもなく大きくなる。
相手は勝手に逆らえないと思い込んでしまう。
そしてさらに、
「天国に行かせてやろう」
相手の混乱に付け込んで【極楽粉】を服用させた。レベル200で伸び悩んでいる探索者は非常に多い。今までよりも強い力を発揮できて、そして気分が最高にハイになる。【極楽粉】を服用することで僕に服従するものが増えてきた。
「本当、思わぬ盲点だわ。こんなのがうまくいくなんて……」
「死黒って汚いおじさんですけど優秀だったんですね。これなら奴隷などにせず、まともに育てたら結構優秀な部下になったのでは」
「嫌よ。この子見た目が悪いもの。私ね。初めては綺麗な男の子がいいの」
「ババアが何か言ってますね」
僕のことを弥生は1年ぐらいまた放置していたけど、成果報告に1年に1度だけ【意思疎通】を入れる許可をもらった。そして報告したら驚かれた。その頃には僕はすでにレベル200ぐらいの部下が100人ほどいたのだ。
その結果、弥生と八代という女の子が直接見に来てくれた。仲間になりそうだというやつを【異界渡り】で移動させて仲間にする。ある程度人数が集まってからは余計にそれが簡単で、話に乗ってこないバカは殺せばいいだけの話だった。
「死黒。本名を名乗るのは良くないかもしれませんよ。これからは五郎左で通しましょう。一味の名前も五郎左衆とするのはどうでしょうか?」
弥生の言う通り生きていたら、いつの間にかブロンズ級で最高位の犯罪集団のボスになっていた。家でニートをしてバカにされていた。気づけば年は51にもなっていた。それが大八洲国という地球全体よりも発展した世界で有名人だった。
そこからは僕が使っていた手口を元に、弥生が作戦を立ててくれることも多くなった。そうすれば【仙桃園】ですら簡単に狙うことができた。今までそんな大それたことをしたやつがいなかったのだ。
僕たちのすることはどんなことでもうまく嵌まった。ついには貴族の屋敷からルビー級のお宝を盗むこともできた。そして今度はその貴族まで死んだんだ。
「弥生。本当にお前はすごいな。僕なんかじゃとてもできない」
「いえいえ、これも死黒の偉大さゆえです。仙桃がこんなに手に入った。織田派閥のルビー級も勝手に死んだ。おまけにルビー級の防具まで手に入るなんて、もう最高だわ」
何年も放置されていたけど、弥生は最高に気分がいいみたいだった。僕のことを何度も褒めてくれた。弥生がそう口にしてくれるとそれだけで嬉しかった。不思議な弥生。綺麗な弥生。可愛い弥生。
いつも僕を気持ちよくしてくれる。でも女として扱ってはいけない。
「私の体に触れてはいけません」
そう言って指一本触らせてくれない。僕はそれだけが不満だった。
そして今現在全てがうまくいかなくなっていた。五郎左衆は逃げるのが得意。それは僕が逃げ出すのが得意だったから、そうなったのかもしれない。
「弥生。もういいから逃げようよ。五層で十分楽しんだ。五郎左衆が稼いだお金も山ほどある。仙桃もまだ50個も余ってる。あとは盤古にでも行って、2人で余生を過ごそう」
「……ふふ、本当ね。それもとても魅力的。でもどうしても最後に証拠隠滅で桃源郷の五層の人形は全員、皆殺しにしておきたいの。最後に一度だけあなたも表に出て戦ってくれない?」
「僕が? 本気?」
五郎左を名乗ってから一度も戦ってなかった。いやそれどころか探索者になってから戦ったことなどなかった。レベルは確かに200だし、ステータスもなかなかいいのだというけど、戦い方など何も知らない。正直不安だった。
「本気よ。それが終われば私はあなたのものになってあげる。私の体が欲しいのでしょう?」
一度も指一本も触らせてくれなかった。弥生の体に触れる。それだけで僕は興奮した。
「本当だよね?」
少年のように目が輝いた。全然見た目が良くならなかった僕。人の良い中年のおっさん。一言で言えばそんな見た目だ。相変わらずアニメが大好きだった。弥生が与えてくれている牢屋みたいな部屋は、アニメのグッズで満たされている。
そして弥生が甘えさせてくれたから子供の言葉が抜けなかった。
「もちろん本当よ。じゃあ木阿弥と切江も呼びましょう。五郎左衆は全員参加よ。まだ50人ぐらいは残っていたでしょう。それで挑めばきっと大丈夫だわ」
「あれ、でも、あっちにはルビー級の探索者がいるんじゃ……」
「心配しないで。私に考えがあるの」
弥生が言うのだから間違いない。今まで彼女が口にしてうまくいかなかったことなど一度もないのだから。僕は全て弥生に任せたらいいんだ。すぐに切江と木阿弥を呼んだ。自分の片腕を切り落としたまま、切江は治すことを禁じていた。
相手を侮って負けてしまった償い。そう言えば切江は納得した。真面目腐った声で木阿弥が、正座をしている。元の久兵衛の人格だと普通ぐらいの身長しかないのに、木阿弥になるとモンスターみたいな大男に変身する。
自分の熱いパトスをどこにもさらけ出すことができなくて、五層で物を壊して鬱憤を晴らしていた男。その頃からもうおかしくなりかけてた。でも誰一人出来損ないの人形ですら殺さなかった。聞けば武官の中ではかなり信用のある男らしい。
仲間にして【極楽粉】で最初の1人を殺させたら、壊れた。おかげで武官の情報が抜きたい放題だった。誰もまさかこの男が裏切ってるなんて思わなかったらしい。
「全員集めろ!」
弥生に指導された演技を守る。本当の僕はこんな喋り方じゃない。でもカリスマってやつを維持しなきゃいけないらしい。弥生曰くTPOが大事なのだという。おじさんの僕だけど、こうすると奇妙なほどカリスマ性があった。





