第二百七話 Side美鈴 安心
「美鈴。あなた本当に出て行く気?」
「当然。今回ばかりは絶対に許せないから。むしろエヴィーが出て行かないことに驚いてるぐらいだもん」
私は怒りに任せて口にした。私たちの留守中、祐太がしてきたことを全て聞いた。本当はこっちの話をいろいろ聞いてほしかったのに、そんなの全てが吹き飛んだ。まずシャルティーという伊万里ちゃんを超える爆乳痴女。
そして祐太の影に入ったまま出てこないクミカという女。最後の極めつけが私のお姉ちゃん。祐太は3人を紹介した後、何か言い訳をしようとした。でも聞きたくなかった。私は玲香お姉ちゃんの話だけはどうしても我慢できなかった。
だから玲香お姉ちゃんのほっぺたを引っ叩いて、最後まで聞くことなく祐太の部屋を出て行くと、腹立ち紛れにこの宿から、そして祐太のパーティーから出て行く準備を進めていた。
「はあ、とにかく今回の経緯を全て私の口からちゃんと教えてあげるから聞きなさい」
それなのに聞きたくない話をエヴィーがしてくれようとする。
「やだ。あんな浮気男の話もう聞きたくない。こればかりはいくらエヴィーが言っても聞かないから」
「祐太、落ち込んでたわよ」
「だからなんなの。ちょっと目を離した隙に3人も女を作るってどういうことよ。小春だって怪しいし、あの男には慎みっていう言葉がないのよ」
「だからそれは」
「それ以上言えば怒るから!」
私は久しぶりにエヴィーのことを睨んだ。それはエヴィーが祐太に最初に手を出した時以来だった。
「一切聞かないの?」
「聞かない」
こんな短期間で3人である。これから先、何人増えるか分かったもんじゃない。もし納得できるような理由があったとしても、また増えたら、それもまた納得させられて、やってられない。祐太は絶対私をバカにしてる。
「こんな男だと分かってたら最初から仲間にならなかった!」
「何を言っても無駄みたいね」
「そう無駄だから!」
「OK。分かったわ。じゃあその話はもうしない。でも、これだけは聞かせて。聞いておかないと私があなたを心配して夜も眠れなくなるわ」
「な、何?」
最初の頃、エヴィーとは色々あった。でも今ではこれほど親しくなった女の子がいないというぐらい仲良くなっていた。だからエヴィーが心配するという言葉だけは聞こうと思った。
「美鈴。あなたはこれからどうするつもりなの?」
「どうするって何が?」
「……何も考えてないのね」
「それは……」
「自分の立場を忘れるのは良くないわ。あなたの探索者としての市場価値を忘れてるの?」
「そんな言い方……」
「こういうのはドライにとらえた方がいいの。あなたはガチャ運1よ。多分他のパーティーになんて入れてもらえないわよ。入れてもらえたとしても祐太のように同じ仲間として扱ってもらえるかしら? ガチャを回すたびに、相当嫌味なことを言われることになるかもよ」
「そんなことないもん」
そう言ったけど自分でも分かってる。私が大事にされたのは、祐太というガチャ運6の男がいたからだ。おかげで私は、どんなことがあってもお金に困ることがなかったし、虹装備が出るまで自由にガチャを回すことができた。
それどころか今のパーティーは私にガチャコインを融通してくれたりもした。私が【毘沙門天の弓槍】を出すことができたのは、このパーティーにいたからで、他のパーティーでは出なかったと思う。
「あるわよ。あなたがこれからできる探索者としての道は、低レベル探索者として大八洲国で小遣い稼ぎをするぐらいかしら」
「もっとできるもん」
「どうやって? 私が言ったことだって【毘沙門天の弓槍】を持ってるからできることでしょう。その凄い武器、1人でいたら間違いなく狙われるわよ。だいたいあなた他の探索者をしている人間が祐太よりいい人だって思ってるの?」
「思って……るけど……」
「美鈴。世界の常識は急激に変わっていってるわ。探索者として力を持つことは王様になることと同じぐらいの価値がある。この人類が生まれてこの方、複数の女性に手を出さなかった王様がどれほど少ないか。むしろ手を出さない王様は煙たがられたぐらいよ」
「だから認めろって言うの?」
結局、祐太の話になるんじゃないか。でも、この言葉まで聞かなかったら、さすがにエヴィーとの関係まで終わってしまうかもしれない。それは嫌だった。
「とにかく納得できなくてもいいから聞きなさい。これは何もあなただけの話じゃないわ。美鈴は私の召喚獣が何体いると思ってるの?」
「5体でしょ?」
1体増えているのは、猫寝様である。どういうわけか猫寝様が今回のクエストが終わったら、自分のレベルにわざわざキャップをかけて、エヴィーの5体目の召喚獣になってくれると申し出てくれてるのだ。
『すまぬが理由は一切言えぬ』
猫寝様からそう言われ、理由が分からないのがネックではあったが、断る理由のないエヴィーは当然それを快諾した。レベルを抑えなければいけないのは、召喚士は自分のレベル以上の召喚獣を持つことができないのだ。
それをすると召喚士はかなり消耗が激しくなり、寿命すら縮めることになるらしい。
「違うわ。たったの“二体”よ」
「は?」
エヴィーも実は祐太のことがショックすぎて、簡単な足し算もできなくなったのかと思った。
「でも、リーンとラーイとクーモと黒桜と今回の猫寝様でしょ?」
「その中で私の召喚獣と言えるのは、リーンとラーイだけね。クーモは祐太がいるから私の下についてくれただけよ。一緒にいるから分かるの。あの子は、私が祐太から離れたら、私の言うことを聞いてくれる状態じゃなくなるでしょうね」
「そんなことってある?」
召喚獣は召喚士の言うことを聞くものじゃないのか。それじゃあまるでエヴィーの召喚獣じゃないみたいじゃないか。
「あの子は私の召喚獣であって召喚獣じゃないのよ。本当は祐太に仕えたいのでしょうけど、祐太には召喚士の適正がない。だから仕方なく私に仕えてるのね。黒桜に至ってはどうして私の下にいるのか分からないわ。戦いにも全く積極的になってくれないし、私はそれを強制させることができない」
「どうして……」
確かに黒桜はエヴィーの命令を聞いていないことが今回の遠征中に何度かあった。特に戦いの場面になると積極的ではなくなるのだ。その結果エヴィーが追い詰められても戦わずに逃げる。
もちろんそれはエヴィーを連れてだけど、強力な魔法があるのだからできれば戦ってほしかった。私はそれを黒桜の性格だと思っていたけど、エヴィーにとってはかなり考えさせられたのだろう。
「おそらくあの子は私よりもかなりレベルが上なのだと思う。まあ白蓮様のペットという時点で、それは想像してたけどね。猫寝様もどこまで言うことを聞いてくれるか。正直、リーンとラーイ以外は私の指揮下にいるという感じが全くしないわ」
「でも、黒桜は別に祐太から離れてもエヴィーについてくるんじゃない?」
「ないわね。100%ついてこないと断言できるわ」
エヴィーの言葉が実際どうなのかは私にはよく分からなかった。ただエヴィーは召喚獣のこともあるから祐太から離れられないのだろうか。
「でもそうだとしてもおかしくない? エヴィーが祐太のそばにいる理由が、召喚獣で首根っこを抑えられてるからみたいになっちゃうじゃん」
「それもかなりの部分であるわ。と言っても美鈴の捉え方とはかなり違うわ。私は祐太といると他のどの探索者と一緒にいるよりも利益がある。おまけに祐太は夜も上手いしね。さっきシャルティーと話した時に言ってたの。『これから祐太は毎日私たちを抱く』って」
「う、嘘だー」
「本当よ。本人もその気みたい。聞いてみたら『エヴィーさえよければ』って言われたわ」
「絶対嘘。そんなこと祐太がするわけないもん」
私はつい言葉が大きくなった。祐太は探索を早く進めたいのか、かなり禁欲的だ。3人も相手にするのに手を出さない日の方が多かった。人付き合いが苦手なところがあるから、あまりベタベタすると嫌なのか。
だからそっちに積極的でなくても怒らなかった。ただ寂しいと思う夜が多かったのは確かで、祐太とすると気持ちがいいこともあり、そのことが不満ではあった。
「美鈴は嫌がるでしょうけど玲香とシャルティーの開放的な考え方に接して、我慢する必要がないんだって気づいたみたいね。正直それもすごく嬉しい。祐太の禁欲的なところだけは結構不満だったから」
「5人もいるのに毎日?」
「クミカとはしてないそうよ。あの子はちょっと特殊な立ち位置みたいね。だから4人。毎日1時間半ずつ交代で抱くんですって。ふふ、あの祐太が女を抱く時間割なんて決めてたそうよ。美鈴がいたら1時間ずつだったらしいから、私はともかく玲香とシャルティーはあなたがいなくなってくれて喜んでるんじゃないの」
「そんな無茶苦茶な……」
祐太は、私がいなくなってもダメージ0ってこと? そんな不公平な事ってある? 私はきっと祐太から離れたら、パーティー仲間を見つけるだけでも苦労する。ガチャ運1の女なんて、どのパーティーでも受け入れてもらえない。
探索者として上を目指さないパーティーなら当てはあるかもしれないが、上を目指すパーティーとしては私のピーキーさは絶対に嫌がる。
「美鈴、自分で分かってるでしょ。あなたがここから出て、それでも上を目指すなら、ステータスで魅力が上がらなかった男パーティーの、夜を条件に着けたらOKしてくれるところがある。それぐらいのレベルになるわよ。まあそれが嫌ならダンジョンペットを作って自分の理想の男を作って、それから上を目指すっていう手もあるわ」
「そんなことするわけないでしょ」
「じゃあ、上なんて目指さずにDランで教師でもしておくってところかしら? まああなたみたいなピーキーなのは教師としても嫌がられるでしょうけどね」
「そ……そこまで言わなくても」
「あなたを虐めたいわけじゃないわ。ただちゃんと祐太の側から離れる意味が分かって出ていってほしいと思うだけ。もちろんものすごく縁に恵まれる可能性は否定しないわ。ただ、祐太は私たちがいない間にミカエラとジャックというどこのパーティーにも属していなかったレベル200の超問題児。そして強さも一流の二人を仲間にしてる。土岐も摩莉佳も能力的に非常に魅力的だわ。探索という部分では完全にあなたの上位互換よ」
「……」
正直それも不満だった。私は【自然化】を持ってるけど、探索におけるスキルはその二人には負ける。それはまるで私がもういらないみたいだった。
「玲香とシャルティーは開放的で、祐太にとってはごちゃごちゃうるさいあなたみたいな15歳のメスガキより、かなりやりやすかったんでしょうね。そしてマークよ。ダンジョンで失敗したマークがフィジカルの化け物になるなんて誰が想像するのよ。今はまだちょっと活躍しにくいみたいだけど、あなたと戦った大鬼が祐太の仲間よ。最後が——」
「米崎」
「そうよ。やっぱりこの男が祐太にとって一番大きかった。まず抜群に頭がいい。作戦立案は祐太と二人でほとんどしてるみたいだけど、祐太の直感的な部分とあの男の計算能力の高さが合わさるとミスがない。資金力はどこかの小国クラス。【炎帝アグニ】を融通してくれるって何それ? おまけにこっちに来ていた私の家族の避難場所まで提供してくれた」
「人工レベルアップ研究所だよね。本当に大丈夫かな?」
「忍神の領域ならさすがの五郎左衆も手を出すわけないわ。この国で最強の高レベル探索者なんだからあなたの方が詳しいでしょ。この人を万が一でも怒らせたらどうなるか。何しろ【暗殺大好き千代女様】だもの」
実を言えば私の家族も芽依お姉ちゃんも含めて人工レベルアップ研究所に避難させてもらったそうだ。千葉県にあるそこは近くにダンジョンもあり、当然入ることもできるらしい。五郎左衆のメンバーには日本人もいる。
だから万が一を考えて米崎と祐太が先手を打ったそうだ。
「私たちがいない少しの間にこれだけやっちゃった。正直ね。私は美鈴とは逆の感想よ。何があっても絶対この男から離れないって思ったわ。祐太の傍にいるためならなんだってする。私はそれぐらいあの男に感じてしまった。私が出て行かないことに驚いている? 美鈴。私にとってあの男は最高よ。あの男のそばにいれば私はもっと上に行ける」
「……」
私はエヴィーの言葉を聞いていて、圧倒されてしまった。エヴィーが私みたいな考え方を欠片もしていないことに驚いた。そしてまるで自分が子供だと言われている気がした。
15歳で世界のトップモデル。ダンジョンが現れるずっと前からずっと大人たちと関わり、ランウェイを歩き続けた少女。私みたいな凡人とは考えていることが本当に違うんだ。
「美鈴、あなたがこれからどうするべきか。自分で本当によく考えてから出て行きなさい。一応言っておくけど今はだめよ。ここにいなさい。今出て行ったら五郎左衆に攫われて何されるかわからないわよ。奴ら70人以上祐太に殺されて相当怒り狂ってるらしいから」
「うぅ」
そうなのか。それも聞いてなかった。危ないところだ。迂闊に出て行ってたら、本当にひどいことになってた。
「美鈴、私はあなたと一緒にいたい。少なくともそう思ってるわよ」
エヴィーが私の体を抱きしめてきた。そして唇にキスをしてくる。しばらくの間、エヴィーはキスをしてくれた。祐太がいない間、寂しくて2人で何度か慰めたのだ。エヴィーはとても上手で私はいつもされっぱなしだった。
そういうことももうなくなる。エヴィーが離れると唾液の糸が引いた。もっとしたいと思ってしまう。でも、エヴィーは、
「これから祐太に抱かれるわ。美鈴、終わったらここを覗くから、ちゃんといるのよ。あと、どうしても出て行くなら私が一生あなたの面倒を見てあげてもいいわ。このクエストが終わって、あなたが外に出て、自分でやってみて困ったら必ず私に連絡して。必ずよ」
エヴィーがいなくなった。何も考えられずにぼーっとしてしまう。これまで学校に通っていた退屈な毎日とは違い、本当に刺激的な毎日。女性同士なんて不潔だと思ってたけど、それもいいんだってこともエヴィーに教えられてしまった。
「……」
胸が苦しくなる。祐太から離れたら全部失う。エヴィーは私を養ってくれる。でも間違いなくその毎日は、今よりもはるかに惨めだろう。外に出れば私はほぼ間違いなく探索者としての未来は終わり。
もともと祐太と一緒にいたからガチャ運1でもパーティーの役に立って探索者として成立していたのだ。祐太がいなければ成立しなくなる。でも無性に腹が立つこともあった。私が本当に怒った一番の理由。
玲香お姉ちゃん……。
私は玲香お姉ちゃんのアドレスが【意思疎通】の名簿の中に入ってなかったから、一般用のスマホに連絡を入れた。しかし何度コールしても出てくれない。メッセージも何度か送ってみるが、既読がついたものはなかった。
エヴィーが出て行って3時間ぐらいが経過した。もう一度部屋に来てくれると言ったのに、エヴィーも来てくれなかった。ちょっと薄情じゃないかと腹が立つ。でも連絡を入れる勇気がなかった。
「ひょっとして私ってみんなに嫌われてた? 面倒くさい女だと思われていただけなの?」
気持ちが沈んでくる。祐太に腹を立てていたはずが、玲香お姉ちゃんに腹を立て、最終的には自分に自信がなくなってひどく落ち込んでしまった。それからさらに2時間経過してしまった。
もうすぐ朝になる。みんながクエストを達成するために動き出すことになる。私はそれに参加しない。
「なんか……」
5時間寝ずにエヴィーから言われたことを考え続けていた。自分のこれから先の未来。それがどうしても明るいものに思えなかった。どうして私はそんなにつらい場所に自分から行くんだろう。
「嫌だな……祐太にごめんなさいしちゃおうかな」
その方が楽なのではと思えてきた。でもプライドが邪魔をする。どうして自分が謝らなきゃいけないのか。でも私が出て行った結果で言えば、私は困りに困る。祐太は何も困らない。
何なのだこの理不尽。世が世なら訴訟ものだぞ。
「いや、私って奥さんじゃないしな。恋人だとそんなのないか。やっぱりごめんなさいしちゃおうかな。祐太、許してくれるかな」
だんだん自分が悪いことをしたような気がしてきた。もう他に女がいてもいいから、許してもらおうかな。でも浮気をしてない私がなぜ許してもらう側になるんだ。
「でもなあ。正直、外に出てエヴィーが言ってたみたいな苦労をしたくない」
枕を抱えてグルングルンする。
「よし、やっぱり謝ろう!」
自分でも打算的だと思ったけど、外に出て恐ろしい目に遭うぐらいなら、祐太の庇護下にいた方がよっぽど楽しい。祐太の弱点は女癖の悪さだけなのだ。それさえ我慢したら、ものすごく優しくて大事にしてくれる。
そして私が祐太に【意思疎通】を入れようとした時だった。私の部屋の扉が叩かれたのは、
「はーい」
エヴィーが出発前に挨拶にきたのだろうか。やっぱりエヴィーだけが私の味方だ。そんなことを思いながら、
「エヴィー私ね。祐太……」
目の前にものすごい男前がいた。
一瞬誰かと思った。
すっかり落ち込んだ様子で立っていた。
そしてそのものすごい男前が廊下で足を折り曲げて座った。
そのまま綺麗な頭が廊下の床に擦りつけられた。
土下座である。
やばいぐらい完璧な土下座だった。
そして絶世の美男子は大声を張り上げた。
「ごめんなさい! さすがに玲香に手を出したのはやりすぎだった! いや、シャルティーのことも怒ってるんだろう! クミカのことも許せないかもしれない! だが仕方なかったんだ! いやいや言い訳をしに来たわけじゃないんだよ! でも、美鈴と別れたくない! どうか許して欲しい! もう二度と浮気はしません!」
これだけは絶対当てにならないと思った。大体こんな絶世の美男子。女が放っておかなくて寄ってきて仕方がない。それを断ればいいのだけど、本当にこの男はどういうわけか断れないらしい。
「俺は、美鈴のことを一番愛してる! 本当に死ぬほど好きなんだ! 美鈴が明日からいないと思ったらそれだけでお先真っ暗だ! 美鈴がいない未来なんて考えられない! ついさっきまでどうしたら美鈴に許してもらえるのか一人でずっと考え続けていた! でも謝るしかないと思ったんだ! どうかこの馬鹿な男を許してほしい! 本当にごめんなさい!」
正直私は今ものすごく気分がいい。間違いなくこんな熱烈な言葉玲香お姉ちゃんには言ってない。玲香お姉ちゃんに私はこの瞬間勝ってる。そして祐太は私のことが本当に好きで好きでたまらないのだ。
もう許す気満々だった。早く許したい。一刻も早く許したい。
「その、私も話も聞かずに怒っちゃってごめん」
その言葉を自分で言って、ほっとしすぎて涙が出てきた。それが止まらなくなって、祐太に抱きしめられた。結局私は鼻水が出てくるぐらい泣いてしまった。
それぐらい心の底から安心してしまった。どうやら私はもうこの男から離れられないらしい。どうしようもないぐらい全てを握られている。こうして抱きしめられるとどうしようもないほど安心してしまう。
結局それからずっと祐太が私から離れなくて、散々愛されてしまった。そして私はエヴィーから今度は逆に愚痴られた。





