第十七話 Side美鈴②
夕ご飯を食べてお風呂に入ると、リビングでお父さんがパソコンを見ていた。お姉ちゃん達の言っていることが本当かどうか、記事を漁っているようだ。その様子が面倒くさくて、私は部屋に入って髪を乾かすとさっさと布団の中に潜り込んだ。
「祐太、どうしてるかな」
数日前まで顔しか知らなかったクラスメイトのことを、ずっと考えている。これはやっぱり好きという感情なんだろうか。それとも、ああいう環境で一緒にいるから、吊り橋効果で、錯覚してるんだろうか。
スマホを取り出した。祐太と今日のダンジョンで何枚か写真を撮ったのだ。ゴブリンが狩りをしている動画とか、ゴブリンもだけどキリンとかクロサイとかそういうのが珍しくて、祐太を撮るついでに写真に収めたりもした。
「だんだん下の方に行くとこういう地球の生き物も、ダンジョン特有の生き物になっていくって話だよね」
ゴブリンが集団でクロサイを狩っている動画は、正直言ってどう考えてもCGだ。ちょっと前ならそうだった。
「本当、ダンジョンって誰が創ったんだろう」
とても不思議な空間。私はそれに思いを馳せながらも、どの写真にも祐太が写っていた。
「祐太の写真だらけだ。やっぱ惚れちゃったかな。って、これっ」
私はそこで一枚の写真に手が止まった。その写真をまじまじと見る。そして赤面した。つい出来心で撮った写真。それは、祐太の……。
「そうだった。つい撮っちゃったんだ。たくましい体……」
ガチャが終わってレベルアップした後、ゴブリンのいない空間がかなりあったので、 2人でステータスを見せ合って休憩していた。装備を外してしまって私はタンクトップを着たままだったけど、祐太はよほど暑いのかシャツまで脱いで上半身裸だった。
『うわー』
『どうかした?』
『祐太、今の写真撮っても良い?』
私は見事に筋肉のついた上半身に見惚れて思わず写真を撮った。
『俺なんて撮ってどうするの?』
不思議そうな顔をしていたけど女なら誰でもそんな見事な筋肉を見せられて、おまけにイケメンになっている顔を見せられたら、この映像を保存したいと思ったはずだ。それぐらい祐太は恐ろしくなるほど化けてきていた。
「お、おかしいなあ。今までどんな男を見てもこんな気持ちになったことないのに……」
写真を見てると私はなんだかものすごくたまらない気持ちになってくる。下半身がうずうずしてくる。
「男の人って好きな女の子の写真でいろいろしちゃうんだよね。今の私みたいな気持ちなのかな」
左手がスルスルと自身の下半身へと伸びた。パンツへともぞもぞとして、
コンコン
「ひゃっ」
心臓が飛び出るかと思った。
部屋の扉を叩く音がした。この叩き方は多分、芽依お姉ちゃんだ。こんな姿見られたら死ぬまでからかわれる。私は慌ててスマホを消して、衣服だけ整えると返事をした。
「何ー」
できるだけ平静な声。心臓のドキドキは外へは漏れないはずだ。
「開けるわよ」
「うん」
やはり芽依お姉ちゃんで、扉を開けてきた。鍵などないし、以前なら全く遠慮せずに開けてきたのだが、アメリカでそういう習慣でも身につけたのか。
芽依お姉ちゃんはお風呂から出てきたところなのか、顔が火照っていた。長身でスラッとしたお姉ちゃん。ゆるふわの長い髪を触ったら気持ち良さそうだ。
「座っていい?」
昔は身長が高すぎることでバカにされたりもしたらしいが、その頃から驚くほど綺麗なことだけは変わらなかった。
「いいけど、どうしたの?」
「話したいことがあってね。ダンジョンについて」
お姉ちゃんはベッドの端に腰を下ろす。
足を組んだその姿が日本人離れして様になっていた。かっこよく生きているお姉ちゃんだとばかり思っていたが、ダンジョンから逃げてきたと言っていた。私は寝転んだまま、話を聞いた。
「お父さん達には言わなかったけど、美鈴、あなた無茶したでしょ」
「そんなこと」
「別に怒りに来たんじゃないから警戒しないで。ただ聞いてた感じ、2人でダンジョンに入ってるの?」
「そうだけど」
「お父さん達、そのこともかなり心配してたよ。普通はそんな人数で入らないから。私だって10人で入ったのよ。おかげで経験値が分散してなかなかレベル上がらなかったけどね」
「でしょ。だから少ない方がいいかなって」
「2人で入って1日でレベル3か。少人数が一番効率がいいのは分かってるけど、私は怖くてそんな真似できないわ」
「ま、まあ、私も祐太がいてくれたからできたことだし」
「と言うか、そんな無茶したら大抵死んで帰ってくるのよ」
「……それは認める。祐太がいなかったら多分、ううん、そもそもダンジョンに入れなかったと思う。祐太も南雲さんっていう高レベル探索者と知り合ったのが大きかったみたいだし」
「高レベル探索者? それ、お父さん達に言ってる?」
お姉ちゃんが目を見開いていた。何か驚いてるようだ。
「言ってないけど」
「呆れた」
肩をすくめる姿が、本当にアメリカから帰ってきたんだなっていうぐらい、あっちの人の仕草だった。
「あのね。高レベル探索者って、日本だろうが外国だろうがVIP中のVIPよ。『ハリウッドセレブとか大企業の社長さんと知り合いになりました』って言ってるようなものよ。一緒に行ってる人が、そんなのと知り合いなら言えばよかったのに」
「どうせお父さん、私の言うこと聞く気ないし」
「さすがにそれは……、いや、まあ今のあの様子じゃそうか。……でもそれなら大丈夫か。玲姉も私も、お父さんが『美鈴がダンジョンに家出した』って言うから結構心配したわよ。でも美鈴なりに考えがあって、ちゃんとやったことなのね?」
「うん、まあ……」
曖昧に返事をしながら考えた。
私に賢い考えがあったとは思えないし、あの夜、祐太がレベル2になったと聞いて、それなら一緒に入れば大丈夫ではと衝動的に思っただけだ。そんなこと言わなければいいのだが、 私は正直に言った。
「ううん、私は考えてなかった。だから本当なら入れずに終わるはずだった。でも一緒に入ったクラスメイトが1日でレベル2になったって聞いて、彼とならダンジョンに入れるかもって」
「やっぱいい男いるんだ」
「そんなんじゃない」
口ではそう言ったが、そんなんではある気もした。何と言うか祐太のことを考えると胸がモヤモヤする。
「ふふ、よかったわね。ダンジョンってあまりレベル離れた人と一緒に入っても、ステータスの上がりが渋くなるから大変なのよ。だから同レベル帯での仲間を見つけられるかどうかがとても大事なの」
「お姉ちゃんって、モデル10人で入ったの?」
「そうよ。拳銃すら撃ったことないような女たち10人。もう大変だったんだから。腕を切り落とされた子もいてね。私は、もうそれを見てギブアップしたの」
「ダンジョンって残酷だよね。祐太は1日だけだけど高レベル探索者にレベリングしてもらえたって言ってた」
「その子、無茶苦茶ついてるわね。相当上のレベルじゃないとうまくレベリングなんてできないのよ。却ってレベルが上がらなくて迷惑になるもん。アメリカじゃ高レベル探索者にそんなことしてもらおうと思ったら、いくら払わなきゃいけないか。多分10億積んだってやってくれないわ。無料でしょう?」
「うん」
「かなり幸運に恵まれる子ね。ゲント中将が言ってたわ。ダンジョンじゃそういうのが必要なんだって。日本の探索者はそういうのを『縁に恵まれる』って、言ってるそうよ。ガチャ運高いんじゃない?」
「うん、高い」
「そうでしょうね。じゃなきゃクジ運最悪の美鈴が1000万クラスのポーションなんて出るわけないもの」
「そんなに酷くない」
「お正月はあなたの大凶を見るのが家の恒例行事みたいなものでしょ。よくあれで毎年クジを引こうって思うわよね」
「むう」
私はむくれたが、確かにクジ運が悪い。それは昔からのことで、もはや呪われてるのかというぐらい悪い。でもタマにいいのを引く。今まで1度だけだけど【大千年吉】と言う、神社が建立1000年を記念してその年に一つだけ入れたクジが出たことがある。
「まあ確かに何か忘れた頃に急に幸運に恵まれてる時あるよね」
お姉ちゃんがおかしそうに笑った。
「それで何の用事?」
「ああ、うん、そうだった。美鈴。私、中レベルの探索者の人と喋ったことあるんだけどね。10階層まででも大概大変だけど、11階層からはさらに大変になるって聞いたの。特に少人数では絶対無理なんだって。実際その人よりはるかに才能あるって人が11階層に2人で挑んだら帰ってこなかったそうよ」
「……」
「美鈴。あなた本気で探索者やりたいの?」
「うん」
それだけは祐太と関係なく本気だった。ダンジョンに一人で入る勇気はなかったけれど、元々はDランを卒業したら本気で挑む気だった。
「ならさ、パーティーに入ってくれそうな人間紹介してあげようか?」
「紹介? お姉ちゃんが?」
「そ。そして私が言いに来たのはこのこと」
「止めないの?」
「止めるつもりないし、よっぽどの馬鹿じゃない限り情報収集してたら二人で11階層を行こうなんて思わないでしょ。1日でレベル3になれたってことは、その辺のことを分かってないとは思えないし」
「そっか」
尊敬と憧れを抱いていた芽依お姉ちゃんに信じてもらえていることが嬉しかった。実際私もだけど、祐太は私以上にダンジョンに詳しい。お姉ちゃんがどう考えても無理なんて思っていることをやろうとは思ってないだろう。
「お父さんともちょっと喋ってたんだけどね。私達で適切だと思える仲間を後二人紹介できるなら、正式に許してもいいって言ってたわ」
「どんな人?」
それを聞いて私は芽依お姉ちゃんに先を促した。両親に反対され続けてダンジョンに挑むのは結構心に来るのだ。
「それなんだけどさ。お父さん達勘違いしてるみたいだけど、と言うか、あなたわざと勘違いさせてるでしょ? さっきも言ってたけどクラスメイトって子、男なんでしょ?」
「う、うん、そうだけど」
私は一緒にダンジョンに入ってくれる祐太のことを『クラスメイト』としかお父さん達に言っていない。男だなんて言ったらますます反対するに決まってる。
「それだと私が紹介するのは嫌じゃないかな。私が紹介しようと思ってた子って、女なのよね。15歳にしてトップモデルよ。運動神経抜群で、モンスターを殺すことにもすぐに慣れた。あなた達と同じレベル3にもなってる。ただちょっと気難しいの」
「気難しい?」
「ダンジョンに入ることを望んでする人間なんて、モデルじゃ珍しいの。だから会社はその子に期待しててね。エージェントがレベリングのために中レベル探索者を引っ張ってきたの。中レベル探索者でもあっちじゃ死ぬほどお金かかるのよ。元々人気ある子だから安全にレベリングさせようって魂胆。でもその子それが『嫌だ』って乗らないのよ」
「いい条件なのにね」
「全くよ。おまけに『じゃあダンジョンスクールに行け』ってボスから言われるんだけど、それも嫌だって。おかげで干されちゃってるのよね。私より綺麗なのにもったいない」
「お、お姉ちゃんより綺麗なの?」
ちょっと信じられなかった。何よりもこの姉が自分以外の人間の方が綺麗だと言ってしまうのが信じられなかった。
「悔しいけどちょっとだけ綺麗」
「なんでその子そんないい話を蹴ってるの?」
「世界一綺麗になりたいんだって。そのためにはレベル10ぐらいじゃ納得いかないんだってさ。レベル1000を目指したいの。レベル1000を超えると人間って、ほら、もう人間じゃないぐらい綺麗になるでしょ。それを目指したいんだって」
レベル1000を超える人間は12人しかいない。 そしてその12人は12英傑と呼ばれていて、まだ3ヶ月前のことだが英傑会議というものを開いている。その時はもう世界中が大騒ぎになった。
世界最強の12人が集まって、一体何を話し合うのかと誰もが戦々恐々とした。今、どんな国際会議よりも影響力があると言われるその会議に参加できることは、世界で最も強く、賢く、美しいとも言われていた。
英傑会議に参加するレベル1000を超えた選ばれた人間。
その人たちはどれをとっても見た目が卓抜して優れていた。あれはもう綺麗とかじゃない。神々しい。見た目が人型じゃない転生をした人もいるのにそう見えるのだ。
「中レベル探索者はレベル10までならお金を積めば、レベリングしてくれるんだけどそれ以降は、どんなにお金積んでも無理なのよ。美鈴なら理由分かる?」
「多分それ以上になると安全が保障できないんだと思う。レベル10になるには3階層まで行かなきゃいけないんだけど、3階層ぐらいになってくると軍隊とかが出てくるから、離れてるとどんなにレベルの高い探索者でも安全なレベリングなんか無理だと思う。それにレベル1000まで目指してるんなら、Dランも行きたがらないのは分かる」
「美鈴もそれが嫌だったそうね」
「だって3年かけてレベル30とか言うんだよ。バカバカしくてやってらんない」
「その子もそういうこと言うのよ。『高レベル探索者はダンジョンスクールに行ってない人ばかりだ』ってね。それでも一人じゃ無理だしで、パーティー仲間を探してるんだけどさ。男はどれもこれもあの子が有名人だってわかると目の色変わっちゃってね。有名人と付き合えると思ってるバカが山ほど寄ってくるわけよ」
「それは嫌かも」
「女でもそういうのを目指す人たちはいるんだけどさ。そういう女は偉そうで気に食わないって。あなたこそそうでしょって私は思ったけどね」
「でもその気持ち分からなくもない。私も祐太じゃなかったら嫌だったし。命を預けるだけになんかこう違うって思う相手と組みたくないの」
「なんか私は美鈴を見てると、あの子と波長が合うんじゃないかって思う。それに何となくだけど祐太って子は気に入りそうな気がするの」
「むむ」
私は反射的に眉間にシワがよる。
「そういう顔すると思った。祐太って子ともうエッチしたの?」
「そ、そんなのするわけないじゃん。好きかどうかもまだはっきりしないのに、何でするとかの話になるのよ」
「じゃあ何したの?」
「何もしてない。したい気持ちはちょっとあるけどまだ15歳だし」
恥ずかしい姿を何度も見られたけど、あれはカウントできない。
「へえ~。美鈴ってそういうのはさっぱりな子だと思ってたけど、やっぱ女だったのね。あっちじゃ好きになったらもう心より体って感じ。キスぐらいなら好きじゃなくてもするわ」
「ひょっとしてその子もそうなの?」
「いいえ、あの子は違うわ。最後まで添い遂げる相手を見つけるまでは誰とも関係は持たないって公言してる。アメリカではそういうのも格好いいって言われたりするの。特にエヴィーはダンジョンが現れてから余計に『添い遂げる相手を見つけたい』とも言ってるわ」
「ゆ、祐太は日本人だよ」
「エヴィー曰く国籍はどうでもいいんだって。それよりダンジョンに好かれてる人間がいいんだって。それに探索者は、探索者の彼氏が一番いいって言うじゃない」
「まあそうだね。同じパーティーならなおさら最高だって言うよ」
何しろレベルが上がると容姿もだが力も速さも変わる。そしてレベルによってもそれは違う。だから同じパーティー内の人間と付き合うのが一番理想的だと言われている。しかし性格などの不一致からなかなかそうはいかないのが実情らしい。
「だから自分が一生一緒にいてもいいって思う男と一緒にダンジョンに入りたいんだって」
「そんな子、紹介しないでよー」
そんなことを言いながらも、私は何か予感めいたものを感じた。
きっとその子は祐太を気に入る。理屈じゃない。どうしてかわからない。でもそう感じるのだ。私があの日初めて喋った男子に、電話したように、その子もきっとそうなる気がした。
「祐太って子のことを抜きにして考えたら、あなたにとっては悪い話じゃないでしょ? それにお父さん達が納得しそうなのはこの子しかいないわ」
「お父さん達が納得しても私が納得しないよ」
「でもエヴィーが言ってたわ。早く仲間が欲しいって。なーんかどれもこれも全然ピンと来なくて、なかなか見つからないらしいのよね」
「エヴィーっていうの?」
なんだか名前からして格好いい。
「名前覚えといてあげて。私は自分以外の人間を初めて自分より綺麗だって思ったのよ。だからエヴィーがあのまま埋もれちゃうのだけは見たくないし、できれば日本に呼んであげたい」
「そんなに思い入れがあるの?」
お姉ちゃんを取られたようで、ちょっと嫉妬してしまう。
「まあね。私たちが10人でダンジョンに挑んだのって、エヴィーが言い出したからなの。それであの子は片腕落としちゃった子に責任感じてる。でもその子がダンジョンから生きて帰れたのは、エヴィーが必死になってその子を守ったからなの。だから私はあの子を尊敬してる。でも妹の恋路を邪魔するのは忍びないわ」
「うぅ、ほっといてくれたらいいのに」
初めて恋心というものを理解できそうな気がした。それなのによりにもよって、私が、この人より綺麗な人はこの世にいないんじゃないかと思っていた芽依お姉ちゃんよりも綺麗な人が仲間になる。
「むう。お姉ちゃん達、何で示し合わせたみたいに一緒にいるの?」
「ああ、それはね、お互い重要なことを相談する相手がいなかったのよ。お父さん達に今のあっちの状況なんて話したら、心配かけるだけだし。で、二人で電話で相談して、このままじゃ死にかねないって、話し合って一緒に帰ろうってなったの。それで、メキシコにいた玲姉がアメリカに来て、仲良く逃げ帰ってきたわけ。ほら、一応どんな子か見せとくわ」
お姉ちゃんがスマホの画像を見せてきた。
そこには妖精がいた。妖精なのに大人びていて、緑色の瞳をしていて、絵に描いたように綺麗だった。いっそ現実感がないほど綺麗だった。と言うかこの人知ってる。日本でも有名なアメリカ出身のモデルだ。
ずっと小さい頃から活躍していて、ずっと人気があり続ける。そしてキレイであり続ける奇跡の15歳。エヴィー・ノヴァ・ティンバーレイク。
「こんな子が本当に日本に来るの?」
「来るでしょうね。今の日本は世界で一番安全だし、ダンジョン関連は今のところ世界で一番上手く対応してる。日本じゃ何もしない政府だって批判されてるけど、世界じゃ日本政府のことは褒めちぎられてる。アメリカは何かしたから3000万人も殺しちゃったんだもの。それなら何もしないで数十万人しか死ななかった日本の方が褒められるに決まってるわ」
「そんなもんかな」
「まあでも日本人だと分かるんだけどさ。油断してるとまた経済大国とか言われて調子乗ってた時みたいに、お尻に火がつくぐらい追い立てられたり、追い抜かれたりする気がするけどね」
「確かに」
「どうする?」
エヴィーを無理やり呼ぶ気はないようだ。
それでもやる気のある人が仲間になってくれた方がいいと言いたいのだろう。私はよく考えた。祐太はどうだろうか?嫌がる理由がない。とても有名で、綺麗な女の子とダンジョンに入れる。
好きな芸能人とかも別にいない私にはあまり理解できないが、男というのはみんな綺麗な女が好きだという。私も綺麗な部類には入っているらしく、よく告白された。私程度の綺麗さで告白してくる男子がいるんだから、こんなチャンスを男子なら逃すわけがない。
祐太を好きだとも明言できない状態の私である。それなのに断るのか。明らかに3人の方が安全なのに。祐太には迷惑かけてる。余計なことを考えずに現実的に考えて、その方がいい気がした。
「……いいよ。呼んで。その子が私たちの仲間になりたいって言うなら受け入れる」
「祐太君にも聞かなきゃいけないんじゃない?」
お姉ちゃんが意外そうに見てきた。
「明日の朝に聞いてみる。断らないとは思うけど」
彼女の写真を見てデレッとする裕太は見たくない。でも仲間がいる。二人じゃ限界があるのは私以上に祐太がわかってる。
「そっか。なんかごめんね。私は結局エヴィーの世界一綺麗になるっていう夢が叶うところ見てみたいのかもしれない。あのエヴィーをはるかに超える綺麗ってどんなんだろうって。お姉ちゃんなのにね」
「ううん、心配してくれているのはわかってる」
「ふふ、頑張れ美鈴」
お姉ちゃんが私の頭を撫でた。それが妙に心地よかった。





