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第92話 お帰り疾風

ブックマーク200件突破しました!!

(剥がれて減ってるかも知れませんがこの更新の時点では200件です)

あとポイントも500ポイントを超えることができました! 皆様日頃のご愛顧ありがとう&ありがとうございます! これからも更新がんばるぞ!


このまま目指すぞ300件!!

第92話 お帰り疾風


 ザ・ビッグバトルに優勝し、賞金の2億エンを得て俺は疾風を取り返した……とはすんなり行かなかった。


 優勝セレモニーを終えた直後のバトルアリーナ法務局窓口。


「優勝賞金が1億8000万エンだと……?」

 と、俺。


「2000万エンは?」


「源泉徴収だ」

 と、ジャッジ。


「そういえばブラザー、直接賞金を受け取ったことはなかったよな? 賞金は1割源泉徴収で引かれるんだよ」


 税金はわかるが、源泉徴収って何だよ。なんなんだよこの異世界。


 窓口の机にはドンドンドンと置かれた1億8000万エン分の金貨入りのパンパンの布袋。


 その奥には返還を待つ、疾風が封じ込められた琥珀が見える。


 見えるのに……。


 罰金の納付期限は今日までだ。


「なら、今から俺がバトルアリーナで稼ぐ! 20戦もすれば2000万なんて……!」


「ブラザー、残念だが、この窓口が開いてるのは17時までだ……」


「そ、そんな……」


 時刻は16時30分過ぎ……。


 今から試合をやっても、リングを登録して試合を開けるのに10分はかかる……とても間に合わない。


 その場にへたりこむ俺。


「あんなにがんばったのに……、ものすごい痛い思いもしたのに……、そんなのって、そんなのってないよ……」


 気がつけば涙が出ていた。


 助けて……。


 誰か助けてくれ……。


 誰か俺に2000万エンをくれ……。


 もう座っても居られなくなったので、その場に大の字に寝てしまう。


 天井が見えた。


 天井から生えたプロペラみたいなのが、ぐるぐる回ってた。


 その時、窓口のドアを開けて誰かが入ってきた。


 この下から見上げたとき、顔が見なくなるおっぱいは……。


「ここに居たのねカラスマ」


 ガーネットだ。


 ルナリア、メイド長、ハウも居る。


「お前ら一体どこに行ってたんだよ人が大変な時に!」


「ふふん……困ってるみたいね」

 どこか楽しそうなガーネット。というか、満面の笑みだなお前……。


 こいつこんなに性格が悪かったっけ?


「そろいも揃って俺を笑いに来たのかよ……。そりゃあお前、俺はお前らにひどいことばっかりやってきたけど……」


「メイド長」


「はい」

 メイド長はパンパンに詰まった布袋を下げていた。


 それをドンと、窓口に追加で置く。


「ベルン男爵家から2000万よ、カラスマ」


「ええーッ!!!!!!!!」


 2000万……? あの貧乏屋敷のどこにそんな大金が?

 毎食薄い芋スープでやりくりしてるのに……。


 まさか、夢? 夢の中でさらに夢を見てるのか?


 俺はここに居なくて、医務室のベッドで寝てるとかそんなオチなのか?


「夢じゃないのか……」


「夢じゃないわよ、現実よ」

 と、ガーネット。


「なんなら一撃殴られてみますか? 痛いと思いますよ」

 と、メイド長


「OK、窓口係、集計をたのむ!」

 と、ジャッジ。


 窓口のエルフが数人立ち上がり、麻袋を開いて中身の金貨をすごい速さで数えていく。


「でも2000万なんてそんな大金どうやって……」


 ふと、メイド長の首元が目に入った……、


 メイド長の首元。


 メイド服の首元のクラバット(ブローチのついたスカーフみたいな奴)が戻ってる!


 あれ質入れしたはずじゃ……。


「私達全員の全財産を貴方の優勝に賭けたのよ!」

 と、ガーネット。


 ザ・ビッグバトルでも優勝者を予想するギャンブルが行われていたのか……。


「疾風が使えないってことでお前の下馬評、評価はかなり低かったからな。わりと大穴。けっこうな倍率だったんだぞ、おかげでこっちは大損害だがな」

 と、ジャッジ。


「優勝、よくやった。よくやってくれたわカラスマ!」


 俺に賭けて、それを的中させたわけか。だからこいつらニコニコしてたのか。


 集計が終わったようだ。


「2000万。確かにあります、オーナー」

 と窓口係。


「よろしい。カラスマならびにベルン家からの罰金納付はここに完了した」


 ハーミットが、疾風の詰まった琥珀を持ってくる。


「よくやったなブラザー! おめでとう! これで疾風はお前に返還される!」


「ジャッジ……、ハーミット……!」


 感極まる俺。


「あ゛りがどぉう゛ーー!!!」


「よせブラザー! 近寄るな! 汚ねぇ」


「鼻水がつきます離れてください!」


 2人に突き飛ばされる俺。


 後ろに倒れそうになる俺をガーネットとメイド長が受け止める。


「気をつけなさいよもう」


「う゛わ゛ーん!! ガーネットもメイド長もあ゛りがどう゛」


 がしいーッ!


 思わず二人を抱きしめる俺。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……あー、いいにおいだなこいつら。暖かいし。やわらかいし。


 ……。


 ……。


 ……あれ? いつもならこの辺でパンチが飛んでくるんだが?


 ……。


「よくやったわ、カラスマ。頑張ったわね」

 とガーネット。うっすら目が潤んでいる。


「必ず勝って来る。約束を果たしましたねカラスマ」

 とメイド長。いつもの鉄面皮の顔がどこか微笑んでるような。


 背中に手を回してとんとん叩いてくれる二人。


「うう、ありがとう、ありがとう二人とも」


「カラスマ」


「カラスマ……」


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。


「だからもうやめてカラスマ、ドレスに鼻水がついちゃうでしょ」


「……気持ちはわかりましたから、もう離れなさい」


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。


「だから離れ……あん…駄目…そんなとこ触らないで……」


「ん……くぅ……」


 ……。


 ……。


 ……あの、この流れで祝福のチューとか?

 

「「調子にのるなこの変態!!」」

 

 ばきっ×2。


 おうおう、これこれ、この調子ですよ。


 こうでなくては調子が出ませんよ。


「おい、それでブラザー疾風はいらないのか?」


「この琥珀。結構重いんですから、はやくしてください」

 

□□□□■□□□□◆□□□□■□□□□◆

 

 窓口の机にバスケットボールみたいな琥珀が置かれる。


 ハーミットが、それに手を触れて念をこめる。


「我が故郷を守りし世界樹よ。今こそその封印を解き放ちたまえ」


 琥珀にひび割れが入り、それが細かいひび割れとなって、琥珀全体を覆っていく。


 ぱん。


 と、琥珀が破裂し、そこには疾風が立っていた。


「疾風!!」


 俺から流れ込んだ魔力を受け、疾風の体がプラモデルから、生身のそれへと変化していく。


 飛行ユニットに魔力が回り、空中に飛び上がった疾風が俺の手の平へと帰還する。


「疾風……、疾風、疾風! 疾風! 疾風! 俺の疾風!」 


 俺は手のひらに浮かぶ疾風をそっと両手で掴んだ。


 お帰り! 疾風!

 『ビッグバトル編』これにて終了! しばらく日常話を挟んだ後、その後『第1部完』となる大型エピソードを始める予定です。カラスマの前に立ちはだかる強敵。そしてこの世界の秘密の一端が明らかに。


 拙作はいかがだったでしょうか?

 続きは頑張って書きたいのですが、書く力を得続けるには、ポイントの力が必要です!!!


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 またブックマークがつくことが何より嬉しいです!! 


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