第90話 伝説の再現
※大切なお知らせ
現在、あらすじと、冒頭1話~6話の書き直しを検討しています。ご了承下さい。
第90話 伝説の再現
「ハンッ!! ギブアップはごめんズラ! 絶対しねえ!」
立ち上がれないズーランは、尚も不敵に啖呵を切った。
「そして、そいつを、龍撃鞭を破壊するのは不可能ズラ!」
「そんなもん、やってみなきゃわかんないだろ!」
「そいつは女王竜オルガスデルの牙から削り出したゴウレムだ! なんびとたりとも傷ひとつつけられねえズラ!」
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霧の谷の女王=虹竜オルガスデル。
異世界より1500年前に呼び出されたドラゴンの一柱であり、この世界の始祖ドラゴン、大母のひとつである。
その巨躯は暗黒の島の皇城の大きさをはるかに超え、空を飛べば一つの町がまるごとその影に覆い隠されたという。
その頑強な鱗は太陽のコロナを直接浴びても傷一つつかない。
人間が入浴を愉しむように、女王は太陽まで飛翔し、その炎を浴びて愉しむのだ。
女王は破壊と殲滅を何より好み、人間の苦しむ様を何よりも愛する。
この世界に伝わる寓話にこうある。
むかしむかし。
王国と帝国。戦争をはじめた二つの国があった。
王国の王子と帝国の皇女は将来を約束しあった恋仲であった。
だが、互いの祖国が戦争をはじめ、仲を引き裂かれることとなった二人は嘆き苦しんだ。
その前に現れたオルガスデルは、戯れに王子と皇女の願いを一つだけ叶えてやろうと持ちかける。
二人は『どうか祖国同士の戦争を止めてくれ』とオルガスデルに願った。
オルガスデルは二人の願いを聞き入れ、実際にその戦争を止めた。
王国と帝国。2つの国を、民を、国土を、その炎の息で粉微塵に消し飛ばしたのだ。
自分達の愛のために、互いの祖国を失った王子と皇女は悔恨に泣き叫び続け、その涙がやがて塩の湖を作ったと言われる。
親月、兄月、妹月。
この世界に浮かぶ3つの月のひとつ、妹月の表面を覆う巨大なクレーターは、オルガスデルスが吐いた息一つが穿ったものだ。
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ドラゴンの牙から削ったゴウレム? なんだそれ、超かっこいい設定!
「いいんだなズーラン? お前の龍撃鞭、粉々に消し飛ばしても?」
「やってみろよカラスマ!」
「恨むなよズーラン!」
俺はバッグのなかから、一つの模型を取り出した。
台座にとりつけられた、1/12の騎士の鎧だ。
俺は1/12ガーネットを呼び寄せ、その騎士の鎧を台座から外して着せていく。
装着完了。
龍の頭の意匠を象った額当てのついた白い兜。
龍の爪が張り出した肩当をつけた白い鎧。
すね当てと一体化したレッグアーマー、そのつま先とかかとには、巨大な竜の足爪が生えている。
分厚い両刃の聖剣を構え、背中にはマントがたなびく。
1/12ガーネットは聖騎士の姿となった。
準備はできた。
俺はほぼボールになった鞭、いや、鞭でできたボールを1/12ガーネットに放り投げる。
斬るようなソバット。
1/12ガーネットは、とんできたボールを蹴り上げる。
一直線に天を衝くボール。
天高くでスピンをはじめる。
「1/12ガーネット、エーテル体最大励起!」
1/12ガーネットの体から、鈍い光があふれ出す。
「なん……ズラ……?」
「1/12ガーネット、ジークフリートアーマー! 【英雄武装】、リンクアップ!!」
その光が、聖騎士の鎧へと伝播し、鎧全体が光を放つ。
「ニーベルングの歌にうたわれし、龍殺しの英雄よ! 我がフラウが貴方の伝説を、今ここに再現します!」
同時に、1/12ガーネットの体から激しい風が巻き起こる。
風に吹き付けられて、俺とズーランの髪の毛が逆立った。
「なんズラそれは……ッ!!」
上空で空転していたボールが落下軌道に入った。
「アウトリガー、放て!」
レッグアーマーの竜の爪が、リングの床板に深々と突き刺さる。
「機体固定よし! 聖剣、構え!」
1/12ガーネットが聖剣を振りかぶる。
「目標! 上空の龍撃鞭!」
吹き付ける風と光がその激しさを増し、俺と、ズーランは目を開けていられない。
俺は自分の目を閉じ、視界を1/12ガーネットのものに集中する。
1/12ガーネットの目が、リングに向かって、落下してくるボールを捉えた。
「全エーテルを、聖剣に注げ! 龍を殺した聖剣よ、再び啼き叫ぶがいい!」
1/12ガーネットの全身から溢れていた光が、掲げた聖剣に集められてゆく。
風が止んだ。
無音が周囲を支配する。
「いざ放て! バルムンクの慟哭!!」
落下してくるボール目掛け、まばゆく光る剣を振りきる1/12ガーネット。
一閃。剣から生まれた巨大な光の柱が天を衝く!
光の柱が、落下してきた龍撃鞭に激突し!
巨大な爆発が、空で起こった!!
上空で生まれた爆風が、リングや、観客席にふきつける。
「な……ああ……」
空を見上げて、うめくズーラン。
「うそでしょ、うそよ……龍撃鞭を、オルガスデルの牙を……本当に消し飛ばしてしまうなんて……」
ぱきん。
からん。
役目を終えた、聖騎士の鎧が、1/12ガーネットの体から、ひとりでにはがれてゆく。
「どぶだ! 見だがよ!」
俺の顔を見て、
「ひっ」
と、驚くズーラン。
そりゃそうだろな。俺、さっきから鼻血がとまらないんだもの。
この技。
威力は凄まじいんだが、俺の体の何かを消費するらしく、俺の体への負担がとんでもなくでかい。
屋敷で軽く実験したときは、貧血を起こして倒れてしまった。
あと、屋敷の庭木が何十本か消し炭になった。
……とにかく。
1/12ガーネットを、まだ立てないズーランの前に立たせた。
その手にはチェーンにつながった棺がある。
ブンブンブンブン……。
棺を振り回しはじめる1/12ガーネット。
これ旋風機だな。
回転から生まれた風が、ズーランの髪を揺らす。
「こいつで、お前の顔面を気絶するまでぶんなぐれば、このバトル! 俺の勝ちだ!」
どうだ怖いだろう?
「お前の武器であるゴウレムは無くなった。お前は自分を守る手段が無くなった! ギブアップしろズーラン!」
ぶっちゃけ、すごい疲労感と、ズーランのドロップキックの痛みで立っているのがやっとなんだけど。
はやくギブアップしてズーラン。
「くっくっく……」
と、小さく笑い出すズーラン。
なにそれ? なんで、笑い出すの?
「あっはっはっはっは!」
なんかむかつく笑い方だ、ばかにしてんのか!
「何がおかしい!」
「できるのかお前に?」
なに!
「なぁカラスマ? その小さいガーネットをオレの胸に入れた時、どうしてお前はそいつでオレの顔を蹴らなかったんだ?」
ええと。
「お前は防戦一方で、どうしてお前からオレに仕掛けてこなかった? 生身のゴーレムマスターを情け容赦なく速攻で潰すのがお前の戦法だったよな? それをどうしてオレにやらなかった? なぁ疾風のカラスマさんよ」
それは……
「お前、女が殴れないんだろ?」
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