第82話 襲撃! ダブルのスーツのおじいちゃん
※大切なお知らせ
現在、あらすじと、冒頭1話~6話の書き直しを検討しています。ご了承下さい。
第82話 襲撃! ダブルのスーツのおじいちゃん
「ふぅむ」
ラヴァーズはザ・ビッグバトルのバトルフィールドに立っていた。
フィールドは広大だった。
斬り合うもの。
殴りあうもの。
あるいは、魔法を放つもの。
怒号と金属の激突音がそこかしこで響く。
見渡す限り、視界一杯にゴウレムや剣闘士達が戦いを繰り広げている。
合戦場を思い出す。
だがここには命のやり取りがない。
詮無きことよ。
『おらあっ! くたばれやじじいッ!』
自分の背丈の倍もある、レスラー型のゴウレムが飛び掛ってくる。
すぱん。
『えあっ!?』
刀を払って両断する。
雑兵など、気合を入れるまでもない。
なで切りにされたゴウレムはそのまま沈み、動きを止めた。
『殺しはするな』とジャッジメントに言い含められている。
搭乗型ゴウレムの外身を斬り、中身の人間は生かしたまま気絶させている。
こんなことを、さきほどから繰り返している。
だが一向にノイズは減らない。
「ふぅむ、目障りも度が過ぎるというもの……」
ラヴァーズは日本刀を上段に構える。
刀身に意識をやる。
突如刀身が熱を帯び始め、真っ赤になった。
「ひとつ、掃除といくかな」
ラヴァーズを中心に、周囲の気温が数度上昇していた。
刀身は今、もう一つの太陽となって、灼熱を帯びている。
「なんだあれッ!」
『やべえぞ』
「に、にげろッ!」
ラヴァーズの様子を見ていた参加者達が、次々と異変を口にする。
「鋭ッ!」
一閃。
日本刀を振り下ろす。
次の瞬間、視界いっぱいを爆発と炎熱が覆い尽くした。
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チャペルを見下ろしていたはずの俺の視界が、突然オレンジ色に塗りつぶされる。
続いてくるのは知覚できないほどの圧と熱波。
俺とチャペルは、次の瞬間大爆発に巻き込まれていた。
爆風が周囲の空気を根こそぎ吹き飛ばしていく!
バリヤーで覆っているはずだが、立っていられない。
しばらくして視界が晴れた。
少し離れた場所に光の繭が見えた。
チャペルか。
「無事かチャペル!」
『何とか。そちらも健在のようですね』
何故か互いの無事を確認してしまう俺たち。
大地震がおきた直後みたいな感じだ。
「爆発?」
『いいえ。これは『気合』のようなものだと思います。あまりにも凄まじすぎて、我々の眼にはまるで爆発のように見えた。そう見えただけかと』
見れば周囲には倒れたファイター達や、ゴウレム達が転がっている。
高熱で溶かされた様子は無い。(爆発じゃないってこういうことか?)
気絶しているのか。
倒れたファイター達の姿が次々とかき消えていく。
転送の腕輪というのは意識を失っても機能するらしい。
「おう……おう……」
声がした。
声がしたほうをみると、一人の男がこちらに近づいてくるのが見えた。
「あれを耐えるのが二人か」
でかいじいさんだった。
60代後半? 70代?くらいに見える。
「よきかな、よきかな」
ダブルのスーツを着込んだマッチョ。
ナイスミドルでダンディなじいさんだった。
腰には、鞘。手にはぶっとい日本刀。
パッと身の印象はTHE・戦国武将。
アゴには白いひげを短く揃えていて、顔には古いやけどのあとが見えた。
「では、御両人。『死合う』とするかな?」
『……ッ!』
「……ッ!」
おじいちゃんの視線に背筋が凍りつく。
殺気ってやつか?
「かかかか。いや、これはいかん。『試合』だったな! ではどちらから?」
『我が神、主サンマルティーノよ、我が身と我を鎧う使徒に力を!『侵されざる白銀の盾』』
光の繭に覆われたチャペルが、再度神聖防御魔法を唱える!
バリヤーが二重になった!
そんなことまで出来るのかこいつ。
『はああああああーッ!!』
メイスを振りかぶったセイクリッドシルバーが、おじいちゃん目掛けて跳んだ。
迎え撃つおじいちゃん。
爆発が起こった
刀の一閃。剣のすじに爆発がともなう一閃!
『なッ!? が!? ああ……ッ??』
二重にされたバリヤー。
その『バリヤーごと』、チャペルのゴウレムが『斬られた』。
セイクリッドシルバーの装甲が袈裟懸けに切られていた。
装甲が切られ、生身のチャペルの体が露出している。
その服、神官服が切られ、チャペルの肌が見えた。
肌にうっすらと見える一本の線。そこから血がにじんで見える。
切ったんだ。
わざと中身の生身を切らないように外のゴウレムの鎧だけを切ったんだ。
神業だ。
「逃げろチャペル! そいつはやばい!」
にぃ。と、笑うおじいちゃんと目が合った。
やばい! 次の標的は俺だ。
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