第75話 アーム工房にて
ブックマーク! 念願の150件突破しました!!
皆々様のおかげです! ありがとうございました! 次は200件を目指すぞ!!!
※大切なお知らせ
現在、あらすじと、冒頭1話~6話の書き直しを検討してします。
あらすじはちょっとテンションが高すぎたかなというところと、
冒頭6話は3話までに盛り上がりがなく、ブラウザバックが起きているから書き直したほうがいいかなと思ったからです。
ただ現状も思い入れがあるので、もし今の状態が気に入っているという方がいらっしゃいましたら、感想などでご連絡ください。
仮に改稿した場合、今の形のものは、別のページに移植しようかなと考えています。
第75話 アーム工房にて
「よっ、はっ、ほっ」
ムトーさんの体が前後に動く。
「ふん、むっ、よいしょ」
俺の体も前後に動く。
俺とムトーさんは携帯機ゲームの協力プレイ中だ。
ちょっと前の世代の携帯ゲーム機、それをつかって俺とムトーさんはモンスターを狩るアクションゲームをやっている。
モンスターとハンターが、実際に居るみたいにリアルなやつ。
さすがにゴロゴロ転げまわったり、体より大きな武器を自在に振り回すのは嘘が入っているけれどね。
ムトーさんの操るハンターの、大剣3段溜め斬りがボスモンスターに炸裂し、モンスターが倒された。
ステージクリアだ。
「はー、堪能した」
伸びをするムトーさん。
「なんとか倒せましたねー、すみません2没しちゃって」
「いやー、大丈夫大丈夫。楽しかったよ、カラスマくん」
ムトーさんは豪快に笑っている。
俺は疾風に代わるプラモデルを手に入れるため、それを持っているムトーさんを尋ねて、以前貰った住所を尋ねた。
空港の格納庫かよ……というデカさの建物があり、そこで、何故かゲームの協力プレイをすることになったのだ。
俺の護衛兼道案内兼監視役でついてきたハウは、まったく興味がなさそうにその辺で丸まって寝ている。シズルやマズルよりも、けもの成分が多いよなこいつ。
「しかし、2Gですか」
「3もあるんだけど、ソフトが1枚しかなくてね」
「ああ」
「本体は1台自分のをこっちに持って来れたんだけど、もう1台は異界堂でもなかなか手に入らなくてさ。
こないだ2つセットで飛んできたのを市場で見つけたから助かったんだ。今合計3台あるから、4つ目を探してるとこ」
協力プレイは4人までできるんだったなこれ。
「充電はどうしてるんですか?」
「ソーラー充電池が手に入ったからそれ使ってる」
「へー」
「魔石を電力に変換するアダプターもあるらしいよ」
「何でもありますね。この異世界」
「通販とかはまだないみたいだけどねぇ」
若いドワーフがやってきて、
「親方、クライアントが着ました。ゴウレムの仕上げをお願いします」
ムトーさんを呼んだ。
「はいよ、今行きます」
と立ち上がる。
「そうだ、折角だからカラスマさんも見ていきなよ」
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ゴウレムがたくさん並んだ工場のような場所に案内された。
町で見かけたゴウレムがずらりと20機ばかり並んでいる。
数え方は機でいいのかな? それとも台? ……どうでもいいか。
「リビングプレートは仕上がってるから倉庫のほうに回しておいてね」
「はい親方」
ムトーさんが若いドワーフに指示を飛ばした。
クライアントはまだ来ていなかった。
事務所で保険の手続きをやっているらしい。……あるんだゴウレム保険。
「時間もあるし、この世界でのゴウレムを動かすルールを教えようか」
俺とムトーさんの前には一台のゴウレムがある。
馬のゴウレムだな。ロボットの馬。ポニーよりちょっと大きなサイズ。でかめの原チャリくらいの大きさか?
「試作品のゴウレムだ。動かしてみて?」
「動かす……?」
俺は目の前にあるゴウレムに意識を集中してみる。
……動かない。
「動かないよね? じゃあこれで胸に自分の名前を彫ってみて」
彫刻刀を渡された。柄にカラフルな石が嵌めこんである。切れ味を良くするエンチャントだそうで。
言われるがまま、俺はそのゴウレムの胸、馬だから両前足の付け根に名前を彫った。
カ、ラ、ス、マと。
「じゃあもう一度動かしてみようか」
もう一度意識を集中する。
その瞬間、俺の頭の中にゴウレムの視界が開いた。
続けて足を上げろと念じる。その通りにゴウレムが前足を上げた。
「名前を彫っただけなのに……」
「これは名前を彫ったことで、ゴウレムとカラスマさんが、『創作物と創作者』として紐付けられて、魔力のバイパス、魔力経路が生まれたからなんだ」
自分が作ったものは動かせる。幼児でも知っているこの世界の基本的なルールらしい。
(ただし、動くのは生き物の姿をしたものに限るそう。屋敷に帰って簡単な車を作ってみたが、それは動かなかった。)
自分の作った造形物は自分が動かせる。
だから疾風が俺とリンクして動いてたわけか。
納得。
そうこうしていると、保険の手続きを終えたクライアントがやってきた。
「ややっ、貴様カラスマ! どうしてここに!」
あ、あのいけすかないエルフだ。
バトルアリーナで最初に戦ったやつ。
確か名前は……
「掃除のアルタ?」
「奏刃です! 奏刃のアルタ!! あなたわざと間違えたでしょ!」
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この世界では、生き物の彫像は魔力を流し込むと生き物のように動き出す。
その魔力を流し込むバイパス、魔力経路はゴウレムに傷をつけるだけでもできるらしいが、オーナーとのつながりをより強くするには、製作者として深く作品に手を加える必要がある。ゴウレムのオーナーが制作代行者と共に仕上げを行う工程、それが刀入れという作業だ。
ムトーさんとアルタの前には、半分まで組みあがったゴウレムの部品が並んでいる。
胴体、腕、両足。それになんだか剣のパーツが大量に。組み立て途中というよりも、わざと組み立てを待っていた感じがする。
「聞きましたよカラスマ! あなたあのゴウレムを罰金代わりに取り上げられたんですって?
それでアーム工房ですか。なるほどなるほど、代わりのゴウレムを発注しに来ましたか?
くふふふ。でも残念でしたねー、ここは予約で半年先まで一杯なんですよ……、今から発注したんじゃビッグバトルには間に合いませんよざまあみろです! あはははは……」
よく喋るなこいつ。だが……ビッグバトル、なんだそれ?
「クライアント。次が控えてますんで、刀入れにとりかかりましょう」
ムトーさんがたしなめた。
「これは失礼を……」
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アルタはムトーさんに指示されて、ゴウレムの部品を組み立てはじめた。
等身大よりちょっとでかいゴウレムなので、パーツもでかい。ムトーさんとアルタが協力して組み上げていく。
「俺も手伝おうか?」
「触らないで下さい汚らわしい! あなたにも操作権が生まれちゃうじゃないですか!」
それもそうか。
しばらくして、ひとつのゴウレムが組みあがった。
ヤマアラシの怪物みたいなゴウレム。全身の剣はよりするどくなっていて、アルタが以前使っていたやつよりもより凶悪なフォルムになっている。マーク2って感じだ。
だがまだ未完成らしい。
アルタはムトーさんに指示して、トゲである剣の角度を調整したり、協力して彫刻刀を振るいゴウレムを造形していく。
「ではクライアント、これを」
「はい」
ムトーさんはハンドタオルのような大きさの紙やすりをアルタに渡した。
ミスリルの粉で作った紙やすり。ざらざらした面がボウっと鈍く光っている。
アルタは紙やすりを使ってゴウレム全体を磨き始めた。
仕上げか。時間のかかる作業だろう。がんばれよアルタ。
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アルタが作業に集中しはじめたので、俺とムトーさんは入れてもらったコーヒーを飲んだ。
「しかしリングマスターだっけ? あのバトルアリーナの選手になっちゃうなんて。カラスマさんを取られちゃったなぁ」
「自分で望んでなったわけじゃないんですけどね」
シズルとマズル。あいつらが巻き込んでくれたおかげだ。
そういや、あいつら元気かな。
ムトーさんの作業机が見えた。
慶屋のプラモデル、モノコックウェポンズフラウ002ミセリコルデ。
机の上には開いた箱と、組み立て説明書が広げられている。
ランナーから切り離されて、素体の半分が出来上がっていたところだ。
そうか、ムトーさん。組み立てちゃったか。そりゃ組み立てるよな。
ムトーさんの買ったプラモデルを俺の事情を話して頼み込んで譲ってもらう。
俺の考えた第2のプラモ獲得計画は頓挫した。
だって、他人に組み立てているプラモを譲ってくださいとは頼めないよ。
俺だって原型師のはしくれ。プラモ大好きなんだから。
自分が好きで組み立てているプラモを売ってくれなんて、頼まれたら嫌だもの。
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「カラスマさんも刀入れ、やってみるかい?」
俺は再び試作品の馬ゴウレムの前にいた。
「こいつをカラスマさんが、イメージする通りに改造してみてくれ。そうだな、速く走るイメージで形を調整してみるといい」
バケツ一杯のねんどや、造形用の刀、ミスリルの紙やすりなんかを渡された。
「これ、なんか思いっきり聖剣っぽいんですけど」
「わかる? デュランダルブレードだって」
「だって…って」
俺は馬ゴウレムに向き合った。
俺にうまくできるだろうか?
等身大のロボットの模型をつくる仕事は会社でしたことがあるけど、あれは造形チームの社員全員総がかりで作った。
……第一今の俺はプラモデル一つすら気が滅入ってしまってつくれないんだけど。
あれ、この聖剣ものすごく切れ味がいいぞ。ゴウレムの表面にススッって刃が通る……。
このねんど、こねてるとかさが倍になってくし、念じたとおりに固まっていく……。
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楽しかった。すごく。
試作品の馬ゴウレムは俺の好みにカスタマイズできたと思う。
「足を増やすとは思わなかったよ」
とムトーさん。
すみません。興が乗りました。
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ムトーさんに見送られて、俺はアーム工房をあとにする。
「いいんですか? ゴウレム頂いちゃって」
俺は俺が仕上げた馬ゴウレムの背に乗っている。ハウとタンデムだ。
「もともと上げるつもりでいたんだ。ゲームで遊んでくれたお礼だよ。便利だよ、異世界。足があると」
「それじゃ、ありがたく! ゲームの相手でよかったらいつでも来ますよ。また呼んでください。腕を磨いておきますから」
「緊急クエストの亜種を自分で狩れるようになっといてくれると、助かるんだけどなぁ」
「それ大ボスじゃないですか。協力プレイじゃないと倒せませんよ!」
「それもそうか。あははは」
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帰り。
シズルとマズルのパン屋に寄ってみた。
2人は居ない。やめてしまったのだと店主が言った。
一応2人の家にも顔を出してみる。
もぬけのカラ。
あの大金を使って引っ越したのかな?
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屋敷に帰るとすっかり夜。いい時間になっていた。
風呂に入る。え? 沸いてないの?
風呂は毎日沸かさないんだ。そっか……風呂を沸かすガス代もないのね。
夕食が用意されていたので、待っていてくれたガーネットたちと食卓を囲んだ。
「ジャッジから招待状が来てるの」
封筒に入った招待状。
異世界語で書いてあるので読めない。
「ザ・ビッグバトル。バトルアリーナの大規模大会よ。開催日は10日後。バトルロイヤル形式。優勝賞金は2億エンですって。あなたのために企画したんじゃない?」
ジャッジ。あいつも粋なことをするな。
「結局、あたらしいゴウレムは手に入れられなかったのね」
とガーネット。
「カラスマさま……お気を落とさないでください……」
と、ルナリアが心配そうに俺を覗き込む。
スープの芋を咀嚼する俺。
のみこむ。
「まぁ、目的のプラモは手に入らなかったんだけど、……なんとかなりそうなんだよね。別のプラモが手に入ったから」
俺は帰りに異界堂で買ったとあるプラモの箱をテーブルの上に出した。
「なにこれ?」
「これって?」
「慶屋プラモデルシリーズ M・W・F = モノコック・ウェポンズ・フラウ MWF-000EX-A マテリアル素体女性型A」
俺の新たなゴウレムってやつだ。
拙作はいかがだったでしょうか?
続きは頑張って書きたいのですが、書く力を得続けるには、ポイントの力が必要です!!!
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