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第73話 俺と疾風

※このなろうはフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 プラモデルの疾風には俺は特別な思い入れがある。


□□□□■□□□□◆□□□□■□□□□◆


 プラモメーカー慶屋。

 カタカナ表記でヨロコビヤとされることもある。

 日本のプラモメーカー群の中では中堅どころに位置する規模の会社だ。


 チャンバラアクションが魅力の有名な宇宙戦争映画の宇宙船のプラモ。


 巨大企業が支配する未来を舞台にしたアクションロボットゲームの傭兵が駆る戦闘兵器のプラモ。


 宇宙の彼方の惑星に生息する戦闘機械生命体のプラモ。


 慶屋は数々のプラモデルシリーズを発売しヒットさせてきた。


 2009年。


 それまで他社の版権コンテンツのプラモデルばかりを出してきた慶屋は、

 満を持して自社原作のオリジナルプラモの販売に挑戦する。


 それが慶屋オリジナルロボットシリーズ、『モノコックウェポンズ』だ。


 モノコックウェポンズはその名の通り、モノコック構造がウリのプラモだ。

 背骨がありそれに肉付けをしていくフレーム構造ではなく、甲虫のような外骨格構造。


 モナカという、どうしても中身に空洞が発生してしまうプラモデルの製造上の構造を逆手にとったデザインで、

 中身に空洞があることに物語設定上の意味を持たせたシリーズだ。


 モノコックボディの中に意思を持つ概念生命体『エーテル体』を内包した戦闘ロボットが、地球側と外地球側に別れ、戦いを繰り広げる。


 地球側に付いたエーテル体が己を包むモノコックボディに選んだのは、第二次大戦で活躍した兵士たちの『士魂』を持つ兵器群だった……。


 シリーズ立ち上げの一作目となったモノコックウェポンズ001疾風は、第二次大戦中に存在した四式戦闘機疾風がリファインされた戦闘ロボットという設定がなされている。


 テレビアニメの原作を持つ他社プラモが大勢を占めるロボットプラモの世界において、慶屋の独自シリーズであったこのモノコックウェポンズは、

 玄人のロボットファンに受け入れられ、一定の売り上げを上げた。



 2015年。


 日本のオタク業界は、美少女化の波に包まれていた。


 戦艦や、スーパーロボット、特撮怪獣、動物といった、既存の人気コンテンツを美少女に擬人化するのだ。


 モノコックウェポンズもその美少女化の波に乗り、擬人化を果たすこととなる。


 日本を代表する美少女メカデザイナー、『島田ミカ』をコンセプトデザインに招き、

 モノコックウェポンズのロボットを美少女化したのが、モノコックウェポンズフラウだ。


 第一作目として、モノコックウェポンズ001疾風がフラウ化されることとなった。


 『島田ミカ』が描き下ろした美少女版疾風のデザイン画。


 そのデザイン画を初めて見たとき、頭に電撃が走ったのを覚えている。


 なんてかっこよくて可愛いイラストなんだろう。


 こいつの立体物が一刻も早く欲しい。


 そう思った。


 モノコックウェポンズ・フラウが発売されると、美少女アクションフィギュアのファン達に受け入れられ、大ヒットを飛ばした。


 売れた。


 売れに売れた。


 こんなに売れていいの? というくらいに売れた。


 創業60年を超える慶屋の歴史において、MW:F疾風はもっとも売れたプラモデルとなった。


 当初美少女プラモの企画に懐疑的であった慶屋の社長は思わず苦笑いをしていたと聞く。


 俺も発売された疾風のプラモデルを発売日に量販店で一つ買い、その日のうちに組み上げた。


 そして、夢中で疾風で遊んだ。


 武器を持たせ、ポーズをつける。


 すると頭の中で、妄想の中で、疾風が生きているように動き出す。


 頭の中で疾風が動き出すうちに、俺の中の疾風のキャラクターが、世界観が、爆発するように広がっていった。


 そして、製品版だけで完結している、『島田ミカ』とヨロコビヤが考えた疾風には満足できなくなってしまった。


 俺だけの設定を持った新しい疾風。


 世界に一つだけの、俺だけの疾風が欲しくなった。


 そして俺はそれを手に入れるために、疾風にカスタマイズを加え始めた。


 『島田ミカ』がデザインした製品版の疾風は、黒髪の大和撫子な剣道少女なのだが、

 俺は銀髪に褐色の肌、緑の瞳のダークエルフの武人風に塗装して作り変えた。


 ちゃんと耳もエポパテで整形し長いとんがり耳にした上で顔のパーツをレジンで複製して置き換えた。ABSにポリパテで継ぎ足すと、耳の質感だけが浮いてしまうからね。


 疾風の武装である四式戦アーマーにも、製品版にはない俺が勝手に考えた『俺設定』のギミックを仕込んだ。


 組み立てながら、改造を加えながら、頭の中で、妄想の中で疾風が勝手に動き出し、敵に見立てた他のフラウ達を相手に大活躍をしていた。


 こいつが動き出したらどんなに嬉しいだろうなんて思いながら。


 そして今、実際にそれが起きてしまった。


 この不思議な夢の中で、疾風は俺が妄想した通りに動き出し、俺が考えていた『俺設定』通りの強さを発揮した。


 世界に一つしかない、俺だけの疾風。


 俺が心血を注いで作り上げた疾風。


 俺自身の夢が詰まった疾風。


 その世界に一つだけの疾風が、……取り上げられてしまった。


 取り返す手段は……無い。


 ああ。


 どうしよう。


 どうしてこうなった。


 俺はどうすればいいのだ……。


「おしまいだ、どうしよう……俺の疾風が……没収ってマジか、競売って……、2億って……」


 アリーナが用意してくれた馬車に乗っている間、俺はずっと頭を抱えていた。


「カラスマさま、お気を確かにしてください」

「さっきからそれしか言えないの?」

 ルナリアやガーネットが何度か声をかけてきたようだが、内容は耳に入ってこなかった。


「はぁ……」


 ため息しか出ない。


□□□□■□□□□◆□□□□■□□□□◆


 馬車は丘を登り、見覚えのある建物に着いた。


 ベルン男爵邸。


 ガーネット、ルナリア、メイド長が馬車を降りたので、俺も続いて降りようとしたが、


「カラスマはそこで5分待ってて、5分経ったら屋敷に入ってきて」


 とガーネットが言うので、その通りにした。


□□□□■□□□□◆□□□□■□□□□◆ 

 

 俺は、正面玄関の扉を開けて、屋敷に入った。


 玄関ホールで、ガーネットを前に、ルナリア、メイド長、ハウが並んで立ち、俺を迎え入れてくれた。


「異界より我らの召喚に応じられたゲンケイシ、カラスマ殿。

 よくぞ参られた。

 私は当家の当主であるガーネット・ベルン。ベルン男爵家は貴方を歓迎する」


 ガーネットがスカートをつまんで、俺に頭を下げた。

 続いて、ルナリアと、メイド長もそれに習う。

 ハウはそのまま立っている。


「あ、ああ……よろしく」


 気分は沈んだままだったが、こういうのはちょっと嬉しかった。

 拙作はいかがだったでしょうか?

 続きは頑張って書きたいのですが、書く力を得続けるには、ポイントの力が必要です!!!


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