第58話 セイクリッドシルバー
第58話 セイクリッドシルバー
すっきり、さっぱり、つーやつや。
最高の気分だ。
とても満ち足りたコンディションで、俺はリングの上に立っていた。
リングマスター。リングに立って挑戦者のチャレンジを受ける剣闘士。
つい数時間前までの俺はこのリングを攻略する立場だったが、これからはこのリングを守る立場になったわけか。
「ようブラザー! いやリングマスター、カラスマ!」
金髪リーゼントにグラサンでキメたジャッジ・ザ・オーナーがリングサイドに立っている。
「これからはよろしく頼むぞ! ところで、リングネームはどうする?」
リングネームか。
あの奏刃のなんちゃらとか、釣り師フィッシャーとか、ああいう名前が必要になるのか。
「そうだな……」
俺は目の前に浮かせている疾風を見る。
「みんなゴウレムの名前をつけてるんだろう? じゃあ俺は『疾風』のカラスマでたのむ」
俺の武器はこの疾風だからな。
「OK、OK。疾風のカラスマか。いいだろう、お前のファイトスタイルにぴったりだと思う。それでいこう。決定だ」
ジャッジは近くに居たスタッフに指示を出す。看板とかを作るそうだ。
「では疾風のカラスマよ、早速一試合稼いで貰おうか」
対戦相手がやってきたらしい。
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「私はチャペルです。リングネームは『侵されざる白銀の盾』」
黒い祭服(神父さんの服)を着たエルフの男だった。
銀髪に透き通るような白い肌、青い目の男前。
クレリックという職業がある。
神父だな。結婚式で新郎新婦に誓いのキスをさせる人。あるいは神官?
だがこの場合の神官は剣と魔法のファンタジーゲームの中に出てくるやつだ。
神様由来の神聖な魔法を使い、ゾンビやスケルトンなんかを退治する人。
そのいかにもファンタジーに出てくるクレリックのエルフが俺の前に立っている。
こいつ絶対神聖魔法とか使ってきそうな感じがする。
チャペルの背後に控えるのは同じく神官型のゴウレムか。
身の丈およそ3メートル。重厚な鎧の上に同じく祭服をつけた巨人型のゴウレムだった。
全身のそこかしこに、おそらくこの世界で神様をあらわすのであろうマークがつけられている。
武器は巨大なメイスか。
「カラスマさん。さきほどまでの貴方の戦い、拝見させていただきました」
「それはどうも……」
「ゴウレム同士の戦いを回避して直接ゴーレムマスターを狙う貴方の戦法。……実に卑劣なやり方だと思います、断じて許しがたい」
いきなりクレームか。
「リングマスターになられた貴方にはまず教育的指導が必要です。私の挑戦、受けていただきます!」
「まぁ、それはいいけど……」
俺はリングサイドに居るジャッジを見た。
「ジャッジよ。アレ同じリングマスターって同僚ってことだろ? それが戦ってもいいもんなのか?」
「OKだ。ここでは挑戦権さえ買えばどんなマッチングでも断らないのがウリだからな。
リングマスターがリングマスターに戦いを挑むのもアリなんだ」
「手加減とかしたほうがいいのか?」
「ナッシング! そんな気を使う必要は無い」
ジャッジがオーバーアクションで両手を広げる。
「いいか? これはどの世界でもよくある新人潰しってやつだ。お前は目立ちすぎたんだカラスマ。
最初の通過儀礼ってやつだな。だが、このくらいの試練軽々ハネ退けてもらわねば困るぞ」
「了解!」
「それと言っておくが……アイツは手加減ができるような相手じゃないからな?」
相当強いってことか。
「よくもやってくれましたねカラスマよ、だがお前の命も今日これまでです!」
「ぼくらの仇はチャペルさんがとってくれるッス、ざまあ見るッス!」
チャペル側のリングサイドには、俺が負かしたアルタやフィッシャー達が居る。
鉄格子の向こうの観客席は人間が5重6重になる大賑わいだ。
ぎちぎちに混み過ぎててあぶなくないか?
「チャペル兄ちゃんがんばれーッ!」
「勝ってーチャペルさーん」
エルフの幼児と幼女の一団が、対戦相手に向かって声援を飛ばす。
応援団か。どうもこの対戦相手、かなり人気があるらしい。
スタジアムはアウェーな空気だ。
「観客の皆さんも試合開始を待てないようだ、勝ち札の投票もそろそろ時間だ。始めるぞご両人!」
ジャッジ・ザ・オーナーがリングの上に飛び乗ってくる。
「さぁ、ご来館の皆様、お待たせしました! これより始まります試合、リングマスターは本日登録の期待のルーキー!
チャレンジャーとして25人のリングマスターを葬った道場破り! 掟破りの瞬殺戦法! 疾風のカラスマッ!」
俺が紹介される。
観客席から歓声と拍手が響いた!
「いいぞおっさーん!」
「お前には稼がせて貰ったからなー今度も勝てよーッ」
俺にもファンが出来たのか、ちょっと嬉しい。
「カラスマーッ! ボコボコにされるがいいわ!」
「もう二度と立ち上がれないようにされてしまいなさい!」
シズルとマズルが、鉄格子を隔てた最前列から俺を罵倒してくる。
なんだよ、さっきまで散々俺で稼いだくせに。
「対する挑戦者は、同じくリングマスター! 鉄壁の完全防御を誇る神の御子!
『侵されざる白銀の盾』チャペル!」
ワァァァァァァァァァァ!!
俺のときより明らかに大きな歓声がスタジアムを包んだ。
「チャペルの完全防御をカラスマは破れるのか? オッズは1.2対2.5でチャペルが優勢だ!」
ジャッジが、右手を上に掲げ、
「ゴーファイト!!」
振り下ろす。
試合開始の銅鑼が鳴った。
「疾風、速攻だッ!」
俺はいつものように疾風を超加速させて、対戦相手に飛ばす! 狙うのはみぞおちだ!
だが次の瞬間、チャペルの体から強烈な光がほとばしった!
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