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第37話 疾風、直す!

 真っ白い空間。

 目が覚めたら千葉の病院だった。

 安心している自分がすこし怖い。


 看護士さんがちょうど尿道カテーテルの繋がったパックを交換してくれているところだった。

 ここは6人部屋の一角みたいだが、一応カーテンでプライベートは守られている。


 俺の私物。

 倒れたときに持っていたバッグはベッド横の壁に立てて置いてあった。


 昨日はいろいろあって私物にまで気が回らなかった。

 何せ三途の川を渡りかけたんだからな。


 枕元にスマホが置いてあったのはズボンのポケットに入れてあったからだろう。


 昨日着ていた服は姉が洗濯してきてくれるそうだ。

 義兄さんに合わせる顔が無いからあまり甘やかさないで欲しい。


 尿道カテーテルがすごく痛いというか、残尿感というか違和感というか、とにかく痛いのだが我慢してベッドから足を下ろす。

 

 3WAYバッグに手を伸ばす。

 祈るような気持ちで中身を見た。


 意外にも、疾風の入ったタッパーは一番上にあった。


 あとで聞いた話だが、俺は倒れたときにタッパーを持っていて、救急搬送されても絶対に手放さなかったらしい。

 気を利かせてバッグに入れてくれた誰かに感謝した。


 タッパーを手に取る。


 片側がひしゃげてべろべろになっていた。

 まるで中から何かが飛び出したように……。


 ……。……。


 このタッパー、まるであの夢で見たのと同じ状態じゃないか……。


 いや偶然誰かが踏んだりしたんだろう……きっとそうだ。


 タッパーは半透明なので、中身が入っているのは手に取る前からわかった。


 ダークエルフ風に改造した俺の疾風が入っているのだが……、何故か頭部パーツが外れていた。


 ……。……。


 この疾風、まるであの夢で見たのと同じ状態じゃないか……。


 まさか現実が夢とリンクしてるっていうのか?


 ……いやいやいやいやいや……。


 過去そういうファンタジーを見たことがある。日本で一番有名な漫画、未来からきたロボットが駄目な主人公を未来の道具で助けるやつ、それの長編で主人公が現実と夢の中を行き来して冒険する話があった。

 それを俺は子供の頃に見たことがある。


 きっとそれを思い出して、そのような夢を見たんだろう……。

 


 

 疾風の全体を見る。

 塗装が剥げてるところはぼちぼちあるがレタッチできないレベルじゃない。今の俺でも筆でちょいちょいとやれば目立たなくなる範囲で済んでいる。

 こいつを塗装したときに調色した塗料のビンはまだ家のどこかにあるはずだ。


 首がないまましまっておくのもなんなので、


 俺は疾風の外れていた頭部を、体に押し込んだ。


 ポリキャップに軸を押し込む構造だったのですぐに直った。

 むしろそうでなかったら大変なことになっていたはずだ。


 あの筋肉おっぱいエルフが力任せに引き抜いた光景が眼に浮かぶ……。


 まぁ、現実と夢がリンクしているんだとしたら、またあの夢を見たときに夢の中で疾風は元どおりになっているはずだ。


 さて直した疾風だが、このまま枕もとのテレビが置いてあるテーブルに飾ろうかとも思ったが、やめることにした。

 姉と一緒に姪が来るしな。


 時刻は午前6時前。

 眠気はない。

 

 俺はスマホを手にとって、異世界を旅する紀行録のネット小説を最後まで読むことにした。


 旅ってどんなだったかな。


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