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第33話 主人公、ムスコの危機!

「誰が陥没だ、この(中略)野郎ッ!!!!!!」


 メイド長の全力の蹴りが俺に向かって飛び続けている。


「持ち上げがいがあるってなんだ! この(中略)ッ!」


 メイド長っていうからにはメイドさんの長なんだろうに、お上品さとはかけ離れた言葉を発しながら。


「私の胸は鏡餅じゃない、重ねるな!!! (中略)野郎ッ!! (中略)野郎ッ!! この(中略)の(中略)がーッ!」


 (中略)野郎ってよく思いつくよな。ほら、ルナリアがおびえている。


 俺は突然立っていられなくなった。

 体が動かなくなった。

 冬場にドアを触ったときに指先が痛くなるほどの静電気。アレを何百倍にもしたやつがパァンと全身を一気に駆け抜けたみたいなショックを受けたからだ。指先の震えがまだ止まらない。

 知らないけどスタンガンていうのを受けるとこんな感じになるんだろうか。


 俺はメイド長を怒らせてしまったので、今彼女から総攻撃を受けている。


 ……が、疾風になんとかがんばってもらって今のところクリティカルなやつは食らわないで済んでいる。


「やめてメイド長! そんなのが当たったらカラスマ様が死んじゃう!」


 ルナリア。

 ダークエルフがメイド長を止めようと俺とメイド長の間に入ってくれようとしたのだが……。


「ルナリア様は下がっていてください……。ハウ、そのまましっかり押さえておきなさい! 離してはだめですよ」


「わからん」

「わかれッッッ!!!」

「(こくこく)」


 喋りながらもメイド長の流れるような足技が俺に浴びせられ続けていた。


 体は動かないが、疾風は飛ばせる。なので、疾風を使ってなんとか凌いでいるのだが……、ここで大きな問題が起きた。


 めちゃくちゃ眠くなってきたのだ。


 とても集中できず、疾風の動きが緩慢になっていく。


「お前のような危険人物は……危険の元を根絶するしかない」


 危険の元ってお前まさか……。


「去勢だ!」


 やめてー!


 メイド長のかかと落としが俺の股間に振り下ろされた。


 疾風、大の字になってガード! キックをキャッチ! 

 そのまま押し合いになる。


 とにかくやばいのが眠けがどんどん強くなってきたことだ。まずいまずい。今寝たら俺のお股のおふくろさんを守るものが居なくなってしまう!


 守れ疾風! 押し負けるな!


 うわー負けてるー!


 なんてパワーなんだこいつ。いや、確かにメイド長はすごい力だが、疾風の馬力も明らかに弱くなっている……。


 だんだん押されてメイド長のかかとが股間にぴったりくっついてしまった……が、なんとか疾風が足の腹を押し返して支えている。


「……ッ。こんな……」

 メイド長が足の感触で股間の様子を把握したらしい。


「どうしましたかメイド長?!」

 と、ルナリア。


「いいえッ……なんでもありません」


 メイド長が『喋るゴミ』を見るような目で俺を見た……。


「……お前、この期に及んで……!!!!!」


 男は命の危機を迎えると自然現象でこうなる。決してキックに合わせて揺れ動くちょっと重力に逆らえない感じのわがままな双球や、さっき俺がひっぱりだした恥ずかしがり屋さんや、すごいデザインのパンツを見たからじゃない。


 くそう! 持ちこたえてくれ疾風! そして早く助けてくれルナリア!


 その時、俺の顔に影がかかり、枕元に気配がした。


「メイド長。私も手伝うわ」


 おっぱいエルフ! お前かーっ!


 おっぱいは俺の頭のすぐ上に立っていた。


 俺は首が回らないので、目だけでおっぱいを見上げた。


 あー、そんなパンツなんだ。案外可愛い趣味してんだな。


 あー、パンツが……。まぁそうなってるよな。俺いい仕事してたんだな……。


 俺の目線がどこを見ているかおっぱいもわかったようで、


「フぅー」

 と、『この薄汚いゴミ虫』と一緒の空気を吸うことが心の底から苦痛、というふうにため息をはき、『喋る腐ったぞうきん』を見るような目で俺を見下した……。


 きゃあっ。とか、赤面して股を閉じるとかしないんだ……。年齢的に?

 あー。あきらめたように殺意を目線に込めるんだ。そっち系かー。


「あなたのせいでまだ体の震えが止まらないの。お腹に力が入らなくて正直立っているだけでもやっと」


 無理しないで寝てたほうがいいぞ。

 まだ(中略)は両方とも元気に立ちっぱなしだけどな……。


「でもこのままでもね。手錠を掛けられた女の胸を気絶するまで好き放題揉みしだくような最低のゲスの顔面を全体重を乗せて踏み抜くくらいはできるわ……それも何回か」


 敵は二人だが。こちらの防衛手段は一つのみ。


 頭とおふくろさん、どっちを守るか。

 いや、両方守る手段を思いつけ俺の頭。


「妹と私達を助けてくれたお礼にヒールと急所は外してあげる」


 顔面て全部急所だろうが!


 奴はヒールを足だけで器用に脱ぎ捨て、その足を俺の顔面に乗せた。


 マジか。有言実行か。


「じゃあね、手先が器用なゲンケイシ殿」


 おっぱいはひざをもちあげ、足を構えた。


 おああああああああああー


 (中略)


 恐怖がようやく終わり、顔面全体ににぶく走る激痛と、薄れゆく意識の中で、俺は思い出した。


 俺はアメフェスの会場で急に胸が痛くなって倒れたのだ。


 そして死ぬ前に、コスプレイヤーのたわわな巨乳を見ておっぱいがどうしても揉みたくなったんだ。


 だから俺はあんなにおっぱいが揉みたかったのか……。


 まぁいいや、俺は多分死んだのだ。



□□□□■□□□□◆□□□□■□□□□◆


 ガーネットのかかとの一撃がカラスマの顔面に炸裂するのとカラスマの体に現世のAED由来の電気ショックが走るのは同時であった。


 カラスマの体に足をつけていたガーネットとメイド長はそのまま感電して倒れ、現在3人仲よくノックダウンしている。


「ねぇハウ。どうしたらいいのこれ……」


「わからん」

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