表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/164

第28話 ハングドマンの未来視

 俺は疾風を上空に飛ばす。メイド長を探す為だ。


 目を閉じて、視界を疾風に集中させる……。自分達の位置かららせんを描くように範囲を広げながら飛ぶ。だが、あのでかい女。メイド長の姿はどこにも見つからなかった。


「わからん……」

 獣人ハウの鼻も耳も、彼女の存在を感じ取れないらしい。


「う……うう」

 ダークエルフが泣きだした。

 姉のおっぱいエルフがダークエルフに寄りそう。


 エメラルドドラゴンが居た場所には、白目を剥いた改造エルフが倒れている。


 ハウは思い出したように歩きだすと、改造エルフの前に立った。


 すらりと、手のツメを伸ばす。

 猫科のそれと同じように、出し入れができるらしい。伸ばしたツメはナイフのようだった。


 ダークエルフのお嬢さんも今度は何も言わなかった。


 ずずずずずずず。


 ハウが改造エルフに止めをさそうとして構えたその時、地面がにぶく揺れだした。


『助けてくれ! あんた達の探してるやつはここにいる』


 地面を割って、巨大な銀色のイモムシともムカデともつかない構造物が現れた。

 つちのこのような電車のようであり、触手か足の様なものが無数に生えている。


 銀色のイモムシが口を開く。


 中から現れたのは、ハングドマンだった。


 両手を上げ、降伏の意思を示していた。


「戦闘の意思はもうない。勘弁してくれ」


 俺は疾風を巨大イモムシに向ける。


 だが、さすがに俺もこれ以上の連戦は勘弁して欲しい。なんだか酷い脱力感がある。


 コミゲットに始発で向かい、4時間灼熱か氷点下で待たされ、ようやく買えた同人誌、特典ペーパー付き。家に帰って風呂にも入らず、ティッシュをそこらじゅうに敷き詰めて全力で(中略)をし、全部吐き出した後。疲労感と満足感でそのまま倒れ込むように眠りたい時の感覚によく似ている。



「今おたくらの仲間を返す。ハングドマンズ・ファクトリー!」


 巨大な芋虫の口から、カカシが飛び出してきた。


 これが無限に地面の中からカカシがでてきた仕掛けか。地面の下にこのイモムシを潜り込ませることで、その場でカカシを作り続けてたのか。


 飛び出してきたカカシは、デカい女をおぶっていた。


「メイド長!」


 命乞いよりよほど効果のある降伏だった。


 メイド長はぐったりしているが、肩で息をしている。命に別条はなさそうだ。


「さすがに熱線で蒸発させるには惜しい女だからな……」


 ハングドマンが再びイモムシの口に入る。


 そしてイモムシはクジラが海面を打つように身を地面からはい出すと、倒れていた改造エルフを呑みこんで再び地面の中へと潜り込んだ。


 乗り物でもあるのか……。


『あとそうだ……そいつは『霧の谷の女王』や、『星海生まれの恐怖』に匹敵する化け物だ。過去そんなものを呼びこんだ召喚主は必ず、その代償を支払わされた。お前らはそいつを呼びこんだことで必ず報いを受ける』


 ハングドマンの声がイモムシの消えた穴から響いた。


『幻視か、未来視が見えたぞ。お前らがそいつに体と心を引き裂かれるビジョン。お前らはじきに生まれてこなければよかったと思う苦しみを味わうことになるだろう』


 捨て台詞とも、負け惜しみとも言えない言葉を残して、地面の下を進む振動は遠くなった。


 『あいつの占い。当たったね』と、ガーネットとサシで飲んでいて、ポツリと言われたことがあった。……俺が丘の上の屋敷で暮らすようになってしばらくしてからの話だが。


「召喚主の報いか。俺がはじめからこの世界に生まれていたら……」


「でもそれだったら、私はあなたと出会ってない」


 『好きになる相手ってどうして選べないのかな』

 しおらしいこいつはひどく色っぽかった。


□□□□■□□□□◆□□□□■□□□□◆


「うおおおーっ!」


 疾風につかまって俺は宙に浮く。

 過去に何回か、明晰夢を見た時に空を飛べたことがあった。


 この明晰夢はなかなか醒めないので、今回もとやってみたが、浮き上がることができた。


 疾風は俺の体重を完全に持ち上げて、軽々浮き上がる。疾風の両足を両手でつかむ感じで浮いたのだが、すぐに指が痛くなってやめた……。懸垂なんて10年以上やってないもの。


 ……とはいえ、自分の足が地面を離れて宙に浮くのは不思議な気持ちだった。

 夢だけどね。


「あの……」


 飛行を諦めた俺の前に、おっぱいが立っていた。


「何とお礼を申し上げたらいいか……」


 手は後ろに回ったまま。まだ手錠が外せてないのか。胸もそのまんまだった。隠す布が無いからな。


 すごかった。


 全力で見てしまう。ガン見という奴だ。


 確実に視線に気づいているのか、頬を赤くしている。


「……こんな姿で、礼もありませんね……」


「いいよ別に、俺の夢なんだし……それよりちょっといいかい?」


 そうだ! こいつには頼みたいことがあったんだ!


「なんですか?」


「おっぱいを揉ませてくれ!」


 次の瞬間、俺の体は別の方法で宙を舞っていた。


 おっぱいが凄まじい勢いで放ったローリングソバットをまともにアゴに喰らったのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ