第161話 激突! 異世界の原型師 VS 異世界の原型師
第161話 激突! 異世界の原型師 VS 異世界の原型師
バトルアリーナ。その外観。
ドーム球場やコロシアムを思わせるメインコロシアムを中心に、ホテルやサブアリーナがひしめきその様相は、1つの小さな都市を思わせる。
地震。
メインコロシアムを中心に、揺れが始まる。
『バトルアリーナへお越しの皆様。これよりバトルアリーナは、非常モードに変形を開始します。非常線のお近くのお客様は外側へ。館内のお客様はどうかお近くの手すりにお掴まりになるか、その場で身を屈めてお待ちください』
バトルアリーナの周囲から、土煙が上がる。
1つの都市。
その都市の周囲が楕円形に浮き上がろうとしていた。
ずしん。
北側に1つ、巨大な柱が持ち上がる。
ずしん。
続いて南側。
ずしん。
東。
ずしん。
西。
柱と思われたそれには、建物よりも巨大な爪が生えていた。
足だ。
柱のような巨大な足だった。
ずずうん。ずずうん。
4つの巨大な足が、バトルアリーナ全体を支えるべくふんばる。
続いて、後ろ足の間には巨大な尻尾が生え、前足の間からは同じく巨大な亀の頭がせりあがる。
甲羅にバトルアリーナを乗せた陸亀。
神獣型ゴウレム『バトルアリーナ大玄武』。
バトルアリーナの真の姿であった。
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バトルアリーナの変形は魔導モニターによって、館内に中継されていた。
すごいな。すごい。
「ジャッジ。それがお前のゴウレムか?」
『YES。見事なもんだろ? 俺の自慢さブラザー』
続けて館内の、リングの変形が始まる。
コロシアムリングを囲んでいた観客席が、切り離され、どんどん遠ざかってゆく。
同時に、俺とムトーさんが立っているリングが、そのまませりあがりはじめた。
リングの床が、観客席が遠ざかった分、その面積を拡大してゆく。
屋根部分が完全に取り外され、空が見える。
いいね。
広々戦える。
観客席とリングを完全に隔てるように、透明な壁がせり出してきた。
『そのリングと観客席は次元を切りはなしてある。存分に戦えブラザー』
「ありがとう、ジャッジ」
さて。
俺はムトーさんに向き直る。
「はじめますか、ムトーさん」
「ああ、カラスマくん。悪いけれど……僕は君を殺さなくてはならない。そういう命令なんだ。僕はそれをこなさなきゃならない。僕の願いをかなえるためにね……」
「……」
ムトーさんの肩に乗っていたローブをかぶった小人。それが、ムトーさんの目の前に、すたん、と着地した。
「僕はねカラスマくん。もう一度。もう一度僕の望みをかなえるためだったら、どんなことでもする。どんなことだってやってやるんだ!」
「ムトーさん……」
「……」
「あなたの望みは叶いません」
「……なに?」
「あなたの望みはかなうのかも知れない。でも、それは多分、あなたが望んでいる形ではかなわない。シズルとマズルをあんな目にあわせる奴等ですよ? それをやったらあなたはそれを選んだ瞬間は幸せでも、あとで、あとできっと不幸せになる」
「知った風な口を利くな。お前に俺の何がわかる!」
「これ以上は、平行線ですね……」
俺は疾風を乗せた右手を前に出した。
「魔力経路エンゲージ、疾風、四式戦装甲リンクアップ!」
疾風の体に魔力が、俺の思いのエネルギーが循環を始める。
「発動機点火! エンジン回し! 疾風、離陸!」
俺の手のひらから勢いよく空中に飛び出した疾風が、目の前の敵、ムトーさんに突進する!
「ゴウレムバトル!」
叫ぶ俺!
「ゴーファイト!」
叫び返すムトーさん!
ムトーさんの目の前に控えていたローブを被ったゴウレムが、疾風を迎え撃つべく飛び上がった!
疾風と、ローブのゴウレムが、空中で激突した!




