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第158話 黒き戦士の復活

ブックマーク340件突破しました!

ありがとうございます!

ptも900を超え、夢の1000ptが見えてきました!

この勢いで更新がんばるぞ!

第158話 黒き戦士の復活


 光が収まった。


 光に怯んでいたケルベロスと対峙するガーネット。


 その左手には、新たな鎧に包まれたちぃネットが立っていた。


 ちぃネットが武装、身に着けたのは黒い鎧だった。


 古代ケルトの戦士を思わせる無骨な兜。


 むきだしの男の筋肉を連想させる胸当てにはベルトが巻きついている。 


 猛獣の毛皮が張り出した肩当。


 胴回りの下と、レッグアーマーはチェインメイル。


 それらはすべて、黒曜石のようなつややかな黒でまとめられている。


 身長よりも長い両刃の剣を携え、ちぃネットは古代ケルトのゲリラ戦士、『ウォード・レイダー』を思わせる姿となった。


 この黒い鎧は、ガーネットの父親のゴウレム、ゲートキーパーのデザインを元に、その残骸から俺が作ったものだ。


 ゲートキーパーの外観は屋敷に飾られている写真からわかったので、それをモノコックウェポンズ・フラウが着れる鎧にアレンジしたものだ。


 ガーネットの左手から飛び出す、ジャンプする英雄武装ちぃネット!


 ケルベロスの頭に、大上段から長剣の一撃をぶちかます。


<ぎゃおおおおおッ!>


 体格差的には、マンモスと蜂みたいだけど、ケルベロスが怯んだ!


 パワー負けはしていないぞ。


 よし! 


 よーし!


「さぁ、いけ! ぶちかませガーネット! そのまま必殺技を撃つんだ!」


「カラスマ!」

 とガーネット。


「なんだよ!」


「それどうやって撃つの?!」


「ええっ!?」


「撃ち方がわからない!」


<ぐるおおおおおッ!>


 がっ、がっがっ、ぎん、ぎん!


 ケルトの狂戦士となったちぃネットは、長剣でケルベロスの前足と格闘している。


 だが体格差はどうにもできない、押され気味だ。


「俺がジークフリートアーマーを使ったのを見てるだろ? バルムンクの慟哭だよ! あんな感じで、英雄が活躍しているさまを頭の中に思い浮かべて、その必殺技を実体化させるんだよ! 英雄を具現化させる言葉を叫びながらイメージを固めるんだ! お前のお父さんだろ? お父さんの必殺技とかあるだろ? それを思い浮かべてぶちかませ!」


「……ないのよ」


「なに?」


「わからないのよッ!! 私は子供だったから、お父様が戦っている姿を見たことがないの!」


「なにいいいいいいいいー!!」


「だいたいあなた計画性が無さ過ぎるのよ! 秘密兵器とかもったいぶらないで全部話してから寝ればよかったじゃない!」


「作るのが限界ぎりぎりだったんだからしょうがないだろ! それにやっと完成して説明しようとしたらお前廊下でぐーぐー寝てたろ!」


「そ、それまでずっと廊下で起きて貴方を待ってたのよ私! 人の気持ちも知らないで何言ってるのよ!」


<ぐらぁおおおおッ!>


 がつっ!


 ケルベロスの前足にちぃネットが弾き飛ばされた!


 長剣を床に突き立て、リングに軌跡を残して耐えるちぃネット!


「もういい! とにかくお前の父さんのことだけを考えて、とにかく力を貸してって念じるんだ!」


「……! ちぃネット! リンクアップ!」

 体勢を立て直すちぃネットに魔力を飛ばすガーネット。ガーネットの左手がじんわり光って、何かエネルギーを注ぎ込んでいるのが見てわかる。


 その証拠にちぃネットの体から、鈍い光があふれ出す。ちぃネットの体から溢れた光が、狂戦士の鎧へと伝播し、鎧全体が光を放つ。


「数多の武勲を上げし救国の英雄よ! 我がちぃネットが貴方の伝説を、今ここに再現します!」


 同時に、ちぃネットの体から激しい風が巻き起こる。


 風に吹き付けられて、ガーネットのポニーテールが波打った。


「お父様! お願い! 力を貸して!」


 吹き付ける風と光がその激しさを増し、観客席の俺は目を開けていられない。


<ぐるるるる……>


 ケルベロスも顔を背けている。


 ちぃネットの全身から溢れていた光が、掲げた長剣に集められてゆく。


 風が止んだ。


 無音が周囲を支配する。


「ゲートキーパーの復活!」


 カッ!


 金魚鉢の様に切り取られ、空中に浮くリング。その中が凄まじい光量で真っ白に塗りつぶされる。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……光が晴れた。


 どうなった?


 ケルベロスは健在。


 ガーネットの前にそびえている。


 あれ? もしかしてもう一回光っただけ?


 そんな……。


 と、思ったら、リングの中に変化があった……。 


 軍服を着た男。


 鋭い目つきの冒険者みたいなおっさんが、ガーネットの前に居る。


 ケルベロスからガーネットを守るように立っている。


 おっさんの体は半透明の幽霊みたいだ。まるでオーラみたいに向こうの景色が透けて見える。


 そしてちぃネットが居ない。


 あ、居た。


 ちぃネットは、透明なおっさんの体の中、心臓の部分に浮いているぞ……。


 あれは……。


 あれって……。


「お館様……ッ!!!」

 メイド長。


 さっきまで全身を痙攣させて倒れていたメイド長が立ち上がり、身を乗り出して叫んだ。


「わからんッ(お館様!!)」

 ハウもか。


 あの透明な人、あれ、ガーネットのお父さんか?


「お父様……!?」


 俺が、英雄を再現して呼べって言ったけど……本当に呼んじゃったよガーネット。


<会いたかったぞ、ガーネット>

 振り返る透明なおっさん。


 透明なおっさん、ガーネットのお父さんがしゃべった……。


<綺麗になったなガーネット。……ジルに、お母さんにそっくりになった……>


「お父様! お父様! お父様!!」

 ガーネットが透明なおっさんに抱きつく。


<再会を喜ぶのはあとだ……俺がこの世に居られる時間はあまり無い!>


「はい、すみません! お父様、ルナリアがッ!!」


 ルナリア。


 ルナリアは、宇宙みたいなケルベロスの体の中に取り込まれ、浮かんだ状態でつかまっている。


 気絶しているのか、水中に浮いているみたいになっている。


<待っていろルナリア、すぐにそこから助け出してやる>


 すぐに助け出してやるって、お父さん丸腰なんですが……まさか素手で戦うんですか?


<ぐるおおおおおおおおおーッ!>

 ケルベロスが吼えた! 現れたガーネットのお父さんに向かって突っ込んでくる!


<来い! ゲートキーパー!>


 魔方陣。


 お父さんの目の前の床に、3メートルくらいの魔方陣がシュッと描かれた。


 なにあれかっこいい!


 ……そして、その中から、地面からズズズっと現れる黒い頭……、あれは……。


「ゲートキーパー!? うそ……壊れてなくなったはずなのに……」

 と、ガーネット。


□□□□■□□□□◆□□□□■□□□□◆


「ゲートキーパー。うそだろ!? ……アレは旦那がパワーテンで粉々に破壊したはずだ……どういうことだ……」

 観客席の最前列にいたハングドマンが狼狽の声を上げる。


「この世界では……」

 と、エンプレス。


「この世界では、兵士の彫像は兵士の力を持ち、馬の彫像は馬の足の速さを持つ。あのゴウレム。ゲートキーパーを象った彫像は、ゲートキーパーとそこに残った男爵の思念の力を持ったということか……あの男爵家の異界人。こと思いを具現化させることに掛けては確かな力を持っておるな……忌々しいことよ」


□□□□■□□□□◆□□□□■□□□□◆


 俺の目の前で奇跡が起きている……。


 魔方陣の中から、3メートルくらいの黒いゴウレムが現れた。


 筋骨隆々な裸体の戦士を、そのまま鎧にしたようなゴウレムだった。


 表面の装甲の意匠は筋骨隆々な人体を模していた。


 むきだしの胸の筋肉に直接ベルトをつけたような胴部分。


 無骨な鉄兜をかぶっただけの頭部。


 肩当は毛皮の意匠。そこから伸びる太い腕。


 上半身は裸で、下半身は、チェインメイル。鎖帷子を履いたような意匠で構成されている。


 身長よりも長い剣を構え、背中にはマントがたなびく。


 遠めに見れば、筋肉だるまの熊男に見える。


 お父さんの体と同じようにちょっと体が透けているが……。


 ぶんっ!


 黒いゴウレムが、長剣を横なぎに振るった。


<ぎゃおおおッ!??>


 突進してきたケルベロスが、その横なぎをまともに食らう。


 加速して体重を掛けてきたところにそのまま剣が刺さったんだ。痛そう。


 ケルベロスの3つの頭が、真横に切れていた。


 銀河みたいなもやが血みたいに飛び散る。


<ぐるるるららららら……!!!>


 すぐさま頭を再生させるケルベロス!


「うあああ……」


 ケルベロスの体の中があわ立ち、ルナリアが苦悶の声を上げる。


「お父様! あいつには、攻撃が通じないんです! どんな傷を与えてもすぐに再生してしまって……!」


<化け物か……。だがゴウレムだ。ゴウレムならば対処のしようはいくらでもある……>


「……でも」


<見ていろ!>


 透明なお父さんは、ガーネットの体を突き飛ばした。


<搭乗!>


 ばくん。


 ゲートキーパーの背中が開いた。


 そこに飛び込むお父さん。


 お父さんが乗り込み終えると、ゲートキーパーの背中の蓋がとじた。


 そして、その両目がギンと光を放つ。


 全身の間接から光を放つゲートキーパー。


 かっこいい……かっこいい。


『対ゴウレム戦の基本を教えてやる、ガーネット』


 ゲートキーパーの中から、お父さんの声がする。


『来い!』

 ケルベロスに向かって、長剣を突きつけるゲートキーパー。


<ぐろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーッ!>

 挑発されたケルベロスが吼えた。


<ぐるおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!>


 ぼこぼことケルベロスの体があわ立つのが見えた。


「うあああ……」

 ケルベロスの中のルナリア、シズルとマズルが叫びを上げる。


 ケルベロスの3つの頭。そのあごが真っ赤に発光する!


 口の中にビームを溜めて……、


 コオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーッ!


 ケルベロスの3つの口が、ビームを吐き出した。


 3つの光線が、ゲートキーパーを直撃する!


 はずが……ッ!?


『ぬんッ!』

 長剣が閃き、3つのビームが、真っ二つになって、掻き消える!


 うそっ!?


 ビーム斬っちゃったよお父さん。


 強い。というかでたらめだ!


『があッ!』

 そのままケルベロスに向かって突進するお父さんのゲートキーパー!


 ショルダーアタック!


 肩を前にしたぶちかまし!


 ケルベロスの真ん中の下あごに当たって、ケルベロスの上体がのけぞる。


 のけぞった頭。左端の頭の下あごを左手で押し上げるゲートキーパー。


『鋭ッ!』


 一閃!


 長剣を右手で振り下ろし、ケルベロスの真ん中の頭が、首が、飛んだ!


 ぶしゃああああ。


 まるで血が飛び散るように、銀河のようなもやが、ケルベロスの首から、ふきだす!


<ぎゃおおおおおおおおおおおおおーッ!>


 残りの2つの首が悲鳴を上げる。


『鋭ッ!』


 振り下ろした剣を上に向かって振り上げるゲートキーパー!


 ケルベロスの右の頭が、飛んだ!


 ぶしゃああああ。


 銀のラメの入った黒いもやが、ケルベロスの首があった場所から、ふきだす!


<ぎゃおおおおおおおおおおおおおーッ!>


 残りの1つの首が悲鳴を上げる。


 2つの首があった場所がぼこぼこと泡立ち、再生をはじめている……。


 最後の首の口が光った! やばい! もう一度ビームが来るぞ!


 その時だった。


 ばすん!


 ゲートキーパーの左手、その袖の部分から杭が飛び出した。


<ぎゃおおおおおおおおおおおおおーッ!>


 掴んでいたケルベロスの左の頭を、飛び出した杭が、串刺しにする。頭を貫通する杭。


 ゲートキーパーの右手が、ケルベロスの最後の頭に回る。


『ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーッ!』


 がっちりと首を絞め、ぎりぎりと首を締めあげるゲートキーパー!


 がき……!


 ケルベロスの首から、なんか折れる音がした。


『ぬおあーッ!』 


 ぶつっ!


 ケルベロスの最後の首が、引きちぎられた……。


 ぶしゃああああああああああああああああああああーッ!


 血の噴水のように飛び出すもや。


 同時に、3つの頭を失ったケルベロスの体に変化が起こった。


 まるで銀河のようなもやで構成されていた体が、その『もや』をあたりに撒き散らしながら、急速に縮んでゆく。


 数秒後、もやの晴れたリングの床には、首を失った2体の狼ゴウレムが、倒れていた。


 ゲートキーパーの左手の杭に刺さったケルベロスの頭も、元のゴウレム、オルトロスの物へと戻っている。


 斬り飛ばされたケルベロスの頭も、フェンリルとオルトロスのものへと変化していた。


『魔導彫像ゴウレムは象られた生き物の力を宿す。だが、彫像がその生き物としての形を維持できなくなれば、すべての力を失い、もとの彫像に戻るだけだ……』


 生き物としての形が損なわれると、ゴウレムは動かなくなるか……。

 前に、疾風を動かそうとして、どうしても動かせないときがあったな。

 あの時、ガーネットは疾風の頭部パーツを胴体から取り外していたっけ。

 あれには意味があったんだな……。


 2体の狼ゴウレムの胴体のそばには、それぞれ主人である、シズルとマズルが倒れていた。


 そして……。


「ルナリアッ! ルナリアーッ!」

 双子のそばに倒れているルナリアに駆け寄るガーネット。


「……起きてルナリア、ルナリア!」

 左手で、ルナリアの上体を抱き起こし、揺する。


「……う。ああ……姉さま……!?」


 良かった。ルナリアは無事か……。


 ただルナリアの銀の髪が、その色をわずかに薄くしている気がするが……。


 そして、倒れているシズルとマズル。

 鮮やかな銀髪と濡れるような黒髪だったのに、二人とも脱色されたみたいに真っ白な髪の毛になっている。


 ……。


 双子はぴくりとも動かない。


 まさか……。


「「がふ……」」

 シズルとマズル、仰向けに倒れていた双子の腹が同時に動いた。


 よかった……生きてる。


 ばくん。


 ゲートキーパーの背中の蓋が開いた。


 中から、ガーネットのお父さんが上半身を出した。


<終わったな……>


 同時に。


 金魚鉢の様に球体になって浮かんでいたリングが、地面に降りてゆく。


 切り取られていた場所にぴたりとはまると、リングを包んだ球体が掻き消えた。


 男爵家と侯爵家の決闘。


 その戦いの趨勢、その決着はついた。

 拙作はいかがだったでしょうか?

 続きは頑張って書きたいのですが、書く力を得続けるには、ポイントの力が必要です!!!


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