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第15話 操作型ゴウレム『ハングドマンズ』 VS 部位限定装備型ゴウレム『羽根うさぎの夫婦』

「はじめに言っておくが俺は分隊長級のゴーレムマスターだ」

 ハングドマンは不敵に言った。


 操作系のゴーレムマスターには等級がある。


 1体のみを操れる兵卒級にはじまり、5体までの班長級、およそ10体までの分隊長級と続き、その上の小隊長級は30体ものゴウレムを一度に使役するという。


 最高位の師団長級のマスターは2000体のゴウレムを一度に動かしたというが、それは神話のエピソードでしかない……。


「さぁ出ろ、俺のハングドマンズども!」

 ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。


 地面の中から、カカシ型のゴウレムが這い出てきた。


 その数8体。


「この数を一度に動かす様は、なかなかお目にかかれるもんではないぜ?」


 分隊長級のマスターに100人に1人居ればいい方という希少な存在だ。ハングドマンは分隊長級を自称したが、その言葉に偽りはないらしい……。

 自分の手の内をさらけだして、精神的優位を得ようというのか。


「痛めつけるように命じられているが正直趣味じゃない。大人しく捕まってくれりゃ俺からはなにもしない」


「……」


 8体のゴウレムたちがじりじりとメイド長に迫った。


 メイド長は距離を取るために何度か常人離れしたジャンプ力で跳んであとずさる。


 メイド長は舌打ちを禁じえなかった。

 警護すべき主君の一人は、このヒゲの男の操るゴウレムに捕まったままであり、

 もう一人の主君は単身で、6体の敵と切り結んでいる最中だった。


 だがハングドマンの口上に付き合っているうちに、肝心の二人から引き剥がされてしまったのだ。


「いけっ」


 ハングドマンが、カカシ達をけしかける。


 飛び掛ってくるカカシゴウレムに対し、メイド長はカカシの膝めがけてかかとを当てる。


 ずん。


 錐のような衝撃派とともに、カカシゴウレムのひざが砕けた。


 ひざが砕けたゴウレムを蹴り、それを軸足にしてもう片方の足で回し蹴りをはなつ。


 ひゅば。


 と、ムチのような音がして、もう一体のカカシの頭がはじけ飛んだ。


 ハングドマンは、その動きに見惚れていた。

 年はいってるが、すげぇイイ女だ。

 大きな蹴りを繰り出すたびに見える、メイド服のスカートの中身にハングドマンの目は釘付けになる。

 実にいい。


 しゅっ。


 再度回し蹴りが、別のゴウレムの首を刈った。

 スカートがぶわっと広がり、しなやかな足先から、太ももの根元までがあらわになった


「す…ッ! すげえ下着だな……ッ。思春期の男子が見たらショックで倒れるぞソレ……!?」

 と、ハングドマンはナイフを投げる。

「それで?」

 投げナイフを指で止めるメイド長。そのままくるりと投げ返す。

「さすがにセクハラくらいじゃ動揺はしないか」

 投げ返す動きを先読みして、ハングドマンのもう一方の手から、再度ナイフが飛ぶ。


 受け止める動作は間に合わない。

 メイド長はシルバーのトレイをとり出すと、それを盾にしてナイフを弾いた。


「その顔、ゴミを見るような目、ぞくぞくするねぇ」

 メイド長に投げ返されたナイフを数ミリでかわしながら、ハングドマンは笑った。


 ばすん。がすん。


  いや、笑ってはいられなくなった。

  ハングドマンが繰り出したはずの8体のゴウレムは今や残り1体。

 

 すぱん。

  そして、今、残り0体になった。


「うわわわわわわわッ!」

  メイド長のムチのような蹴り。その軌道の先にはハングドマンのわき腹がある。

「イヤーッ」


「うえーッ! 勘弁ッ!」 

  ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。


  寸前に、何とか呼び出した3体のカカシをわき腹とメイド長の蹴り足の間にすべりこませる。

 

 だん。だん。だん。ぐちっ。

「ごべ…ッ」

 ゴウレムごしとは言え、メイド長の回し蹴りが腹にまともに入った。

 ハングドマンは哀れ跳ね飛ばされる。


 地面にしこたま叩きつけられて、ハングドマンは泣いた。

「痛てええーいてえよー」


 メイド長が距離を取る。


「あー、いたいいたいー。痛すぎて、あの金髪のお姫様を捕まえてるよー、ゴウレムの操作を思わず間違えそうだー。ふいに力をいれすぎたりとかなー」

 ハングドマンはよろよろと立ち上がった。

「なぁ、あんた、あのお姫様。利き腕はどっちだ……」


 ブンッっと、回転ノコのようなものが眼前にせまっていた

「いイイイイイイイイイーッ」

 ハングドマンは首をひねって避ける。遅れた髪の毛がぼんと爆ぜた。


 メイド長がシルバーのトレイを全力で投げたのだ。

 同時に、ハングドマンの股間目掛けてメイド長の前蹴りが飛んでいた。

「だと思ったわ」

「……!」

 ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。


 だが、ハングドマンも二度同じ手は食わなかった。

 メイド長の目の前に、ゴウレムの群れが現れた。

「……ッ!」

 だん。だん。だん。だん。だん。だん。だん。だん。だん……。

 急所を潰すはずの必殺の前蹴りが、ハングドマンに届く前に、目の前に現れては砕かれ続けるゴウレムによって、威力を殺がれてゆく。

 メイド長の軸足を、地面から現れた腕が、何本も何本も何重にもつかんでゆく。

 ゴウレムを9体ほど串刺しにしたところで、メイド長のヒールはようやく止まった。

 その頃には、メイド長の体はゴウレム達でできた団子に完全に埋まっていた。


「ゴウレム9枚重ねでようやく止められた……どんな足してんだ一体」

 それでもなお、メイド長の反撃を警戒してハングドマンは近づけない。

 

 ハングドマンズを一体操作して、メイド長の蹴り出したほうの足のヒールを脱がせた。

 

 ヒールは鉱石を一刀彫で削り出した品で、ヒールの形がそのままうさぎの姿をしていた。

 ゴウレムにつかまれながらも、うさぎのヒールはまるで生きているかのようにばたばたと暴れている。


「部位限定の装備型。ハイヒールのゴウレムか。なかなかの業物だなこりゃ……」

 ヒールを握る力をこめるようゴウレムに命じる。

「お化けウサギのジャンプ力とキック力で、玉を潰されちゃかなわねぇからな」

 べきっ。

 音を立てて、片方のヒールは折れた。


 ブンッ!

 ハングドマンの背中から迫ってくる飛翔体があった。

 それは先ほどメイド長が飛ばしたトレイだった。ブーメランの要領で、投げた場所へと再び戻ってきたのだ。

 

 ハングドマンは背中側に数体のゴウレムを盾代わりに立たせていた。


 ゴウレムで受けるつもりだったが、トレイは直前で軌道を変えて、ハングドマンの首をはねようとする。

「ごあっ……」


 ぼふっ。


 さすがに避けきれず、ハングドマンは片耳の上部を失う。


 戻ってきたトレイはメイド長の足元にザクッっと刺さった。


 銀のトレイは、海亀の意匠が入った亀のゴウレムだった。ヒレ足の意匠がぱたぱたと動いている。


「いてえええええええええええええ、いてええよおお」

 のたうちまわりながら、ローブをちぎり、耳を押さえるように頭に巻くハングドマン。


「避ける直前でさらに軌道修正とか、どんだけ用意周到なんだよ。……耳の上が吹っ飛んだじゃねぇか」

 なんとか立ち上がり、ハングドマンはメイド長を見た。



「わかったもう、油断しねえ」



 ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。


「……さっきは嘘を言ったんだ。俺のクラスは大隊長級。並みの大隊長級なら操れる数は300だが、俺は特別で500までいけるんだ」


 ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。ずぼっ。


「ちょっと痛い目みてくれや……」


「御前様、お嬢様、どうかご無事で……」

 


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