第149話 ラムペガスの篭手
第149話 ラムペガスの篭手
ガーネットの背後に現れた3つのあごをもつ二つの影。
それは、銀色の狼型ゴウレムと、黒い双頭の狼型ゴウレムだった。
「行けフェンリル!」
叫ぶシズル。
「行けオルトロス!」
叫ぶマズル。
地面から飛び上がるように現れた二頭。体長が人間の大人ほどもある2頭の狼ゴウレムは、ガーネットの首筋と胴体を狙い、鋭い牙の並んだ大あごを開く。
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「やばいズラッ! 避けろガーネット!」
叫ぶズーラン。
だが!
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狼と、双頭の狼は、たしかにガーネットの体に噛みついたはずだった。
だが、次の瞬間、ガーネットの体がまばゆい光に包まれる。
「なんだッ!」
つばぜり合いをしていたシズルが、ガーネットから生まれた衝撃波で跳ね飛ばされる。
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数秒前。
ルナリアの操作するちぃネットがルビーアイの後ろ足を蹴り飛ばしていた。
蹴り飛ばされ、弾丸になったルビーアイは、一直線にガーネットに向かい、その体をガーネットに激突させる。
激突と同時に、ルビーアイは、その姿を胸当てと左腕を覆う篭手に変貌させ、ガーネットの体に貼り付いた。
金色の光を放つ、赤い胸当てと篭手。
二頭のゴウレムがガーネットを噛んだ瞬間、ガーネットは篭手に覆われた左腕を伸ばし、2頭の狼にわざと噛み付かせて、手傷を受けるのを避けていた。
「噛み砕けフェンリルッ!」
「噛み砕けオルトロスッ!」
2頭の狼は、篭手を噛むあごに力を込める。万力のようにぎりぎりと牙が篭手を食む音がする。
だが、音がするだけだ……。
「これはうちのカラスマが作ったゴウレムよ。あいつが私のために作ってくれたゴウレム! そのゴウレムが姿を変えた鎧! そんな子犬の牙じゃ、傷ひとつつけわれないわ!」
不敵に笑うガーネット。
「さあ力を見せよ! ラムペガスの篭手よ!」
篭手に覆われた左腕を振り上げるガーネット。
左腕にぶら下がった銀と黒の狼ゴウレムの体が振り上げられ、弧を描く!
ずだん!
ずどん!
闘技場の床へと叩きつけられる。
「フェンリル!」
と、シズル。
「オルトロス!」
と、マズル。
床に叩きつけられ、2頭の狼が、篭手からあごを外した。
「それがあなたたちのゴウレム?」
と、ガーネット。
吹き飛ばされたシズルと、倒されていたマズルは、アイコンタクトを交わして、瞬時に合流し、地上のガーネットと空のルナリアから距離を取る。
「必殺! ダブル木の葉落とし・斬! チェストオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
ルナリアの叫びとともに、上空に飛び上がっていたちぃネットが、空間を飛ぶ斬撃を放つ!
形となって見えるほどのオーラで出来たかまいたちが、倒れたフェンリルと、オルトロスに迫る!
「潜れフェンリル!」「オルトロス!」
激突の瞬間、2頭のゴウレムはその姿を闘技場の床の下へと消していた。
2つの木の葉落とし斬が、闘技場の床をむなしくえぐる。
「「来いッ!」」
シズルと、マズルの傍に、フェンリルと、オルトロスが姿を現した。
「仕切りなおすよシズル!」
「ええマズル!」
「……だ、そうよルナリア?」
「動かれる前に倒しましょう! お姉さま!」
と、空中で応えるルナリア。
ルナリアの体は現在、ちぃネットの支えもなく宙に浮いている。
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「なんでガーネットの妹は空に浮いているズラ?」
「あれは、羽うさぎの夫婦か?!」
と、ムトーさん。
「そうです。浮遊特性を持ったピンク羽うさぎの夫婦。ルナリアのサイズに合わせて作り起こしたやつを履かせているんです」
と、俺。
これで、ルナリアは安全圏の空中に居ながら、ちぃネットを自由に操作できる!
屋敷の総力戦だ! 使えるリソースはなんだって使うさ。
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「ラムペガス・レイピア!」
ガーネットの左腕を覆っていた篭手から、真紅のレイピアが伸びる!
同時に床を蹴るガーネット!
「必殺、左捻りこみ斬!」
ちぃネットを飛ばすルナリア!
「鋭アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「チェストオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
赤いレイピアを前に伸ばして、シズルに突っ込むガーネット!
同じく、日本刀を構えて、マズルに飛ぶルナリアのちぃネット!
だが、シズルとマズルは、避けようともせずその攻撃を待ち構える!
「「魔法鎧!」」
次の瞬間! シズルの背中にフェンリルが、マズルの背中にオルトロスが、それぞれ覆いかぶさり、銀と黒の光を放った!




