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第140話 カラスマは眠らない

第140話 カラスマは眠らない


 カラスマが工房に篭ってから2日の時が過ぎた。


 ムトーから特別な工具一式を借り、カラスマはゴウレムの制作に入った。


 中ではガーネットのための新ゴウレムが作られているはずだ。


 工房の入り口は締め切られている。


 ドアの前にはメイド長が立っていた。


 メイド長は1時間おきに部屋に入る。


 そうカラスマに頼まれている。


 メイド長が休憩をするときはハウが代わりにドアの前に立つ。


「できたわ」

 と、ガーネットが、スープを持ってくる。


 屋敷の薬草。それも眠気が覚める効用があるものを集め、煎じてスープにしたものだ。


「ありがとうございます。御前様」


 メイド長が受け取る。


「私が直接中に運んではいけないの?」

 と、ガーネット。


「集中が途切れるので、私だけしか入れるな。とカラスマは申しております。今は会話に使う時間も惜しいと」


「そう」


 メイド長が、スープを中に運び。また戻ってくる。


 メイド長がドアの前に再び立つ。


 その横に、ガーネットも立つ。


 ガーネットもこの二日。ずっと工房のドアの前に立っていた。


「御前様、応援にきてくださった方々と訓練をされてはいかがですか? カラスマもそれを望んでいると思います」


「そうね……でもなんだか。そんな気になれなくて」


「そうですか……」


「私がただここに立っていることに意味はないと思う。それでも……」


「……」


「それでもカラスマと同じ気持ちになりたいの」


 カラスマは食事を取らなかった。眠くなるからと。


 それにあわせて、ガーネットも食事を絶っている。


「御前様。お気持ちはわかりますが、体を壊されてはなりません。御前様はお食事を取るべきです」


「……ええ。でもメイド長。……ごめんなさい、私は……」


 メイド長はそれ以上、何も言わなかった。


□□□□■□□□□◆□□□□■□□□□◆


 屋敷の外ではルナリアの訓練が続けられている。


「ちぃネット! 必殺! 左捻りこみ・斬! ちぇすとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーぉ!」


 ちぃネットを飛ばし、必殺技を放つルナリア。


 刀を前に振り上げながら、仮想敵であるラヴァーズにつっこむちぃネット!


「なんの! 踏み込みがまだ甘いわ!」


 それを抜刀した、日本刀で受け止めるラヴァーズ。


 激突。


 つばぜり合いをはじめるラヴァーズとちぃネット。


「はあッ!」


 気合と共に、ラヴァーズの踏み込みが強さを増し、ちぃネットをはじき返す。


 空に逃れるちぃネット。


「もう一度じゃ、ルナリア殿。相手を倒す念! 必殺の言葉は、ただ叫ぶだけではいけない……。それを実際にこめなさい! できるか? ルナリア殿?」


「はい!」


 それを見ているアルタとフィッシャー。


「ぼくら、来た意味あるッスかねぇ……」


「ですねぇ……なんというか、あの子カラスマ並みに強いんじゃないですかねぇ……私達じゃとてもスパーリングの相手にならないっていいますか……」


「お主ら!」

 と、一喝するラヴァーズ。


「「はいいい!」」

 と、二人。


「次はお主らが、まとめてルナリア殿に当たれ! ルナリア殿、手加減は無用。こやつらの性根を叩きなおすのだ。少なくとも相手を気絶させることを躊躇をしてはならぬぞ! 完全に倒すつもり、殺すつもりでぶつかりなさい!」


「そ、そんなぁッス! 大怪我しちゃうッス!」


「安心してください。怪我はすぐに治せますから」

 と、チャペル。


「相手をぶっ倒す度胸をつけるにはいいんじゃねぇかズラ? 少なくとも相手の顔面をぶったたくのを怖がっているようじゃイカンズラ」

 と、ズーラン。


「カ、カラスマ……私は恨みますよぉ」

 と、アルタ。


□□□□■□□□□◆□□□□■□□□□◆


 夜が更けた。


 1時間ごとに、メイド長は工房の中に入る。


 眠っていたら起こすようにカラスマに頼まれている。


「メイド長。カラスマの様子は大丈夫なの? 倒れていない?」


「大丈夫ですよ御前様。集中して作業に当たっています」


「……そう」


「御前様。お休みになられてはいかがですか?」


 メイド長はハウと何度か交代してカラスマの番をしていた。


 だが、ガーネットはカラスマと同じく、ずっとドアの前に立ったままだ。


「いいえ。ここに居たいの。メイド長」


「ではせめて、座ってください。カラスマも座っていますから」


「ええ。本当に疲れたら、座るから」

 

□□□□■□□□□◆□□□□■□□□□◆


 カラスマが工房に篭ってから4日目の朝を迎えた。


 ガーネットは、ドアの横。その壁にもたれ、座っている。


 いつしか寝息を立てていた。


 その肩に毛布がかけられたのに気づいて、ガーネットは目を覚ます。


「起こしちゃったな……」


 とカラスマ。


 カラスマは、一人で立っていられないのか、メイド長が肩を貸していた。


「カラスマ、あなた! 大丈夫なの?!」


「大丈夫だ。うちはブラック企業だからな。徹夜仕事には慣らされてる……それより」


 ブラック企業がなんのことだかわからないガーネット。


「それより?」


「たった今完成した。……来てくれ」


 ガーネットは、カラスマに招かれ、工房の中に入る。


 工房の机の上。


 そこには完成したばかりのゴウレムが置かれていた。


「こ、これって……!?」


 その姿に驚くガーネット。


「材料を勝手に使っちゃったけど許してくれよ……ギミックは、お前なら説明しなくてもわかると思う……」


「カラスマ!」


 カラスマに抱きつくガーネット。


「カラスマ! カラスマ!」


 ガーネットを抱きとめるカラスマ。


「うれしいけど、今はつらいな。視界がまっ黄色だ……目がしょぼしょぼしてこれ以上目を開けていたくない……」


 その手はしっかりとガーネットの胸に押し当てられていたが、ガーネットは何も言わなかった。


「これは駄目だな。……俺はこれから眠るよ、ガーネット。多分眠りの長いヤツ。あと、俺を俺の部屋に運んでくれない?」


「わかったわ。メイド長!」


 ガーネットとメイド長が、カラスマに肩を貸す。


「……あとルナリアと、ハウを呼んでくれ。眠る前に大事な話があるんだ……他の連中には聞かれたくない」


 二人は、カラスマを部屋に運び、そして、ルナリアと、ハウを呼んだ。

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