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第139話 ガーネットの涙

180ブクマ突破しました!(現在181ブクマです)

皆様ありがとうございます!


夢の300ブクマまで、あと19ブクマ! 第1部完結までに達成できたら嬉しいな!

第139話 ガーネットの涙


 ガーネットは足早に屋敷に入った。少し離れてメイド長が追いかけてくる。

 さらに足早になって、メイド長を引き離し、そのまま自室に引きこもる。


 過保護すぎるんだからと、メイド長を恨む。8歳の頃からだからかれこれ16年になる付き合いだ。

 自分だって一人になりたい時はあるのだ。


 ベッドに腰掛けようとしたが、それすらも面倒になって、そのまま倒れこむ。


 ぼふっ、とベッドが鳴いた。


「うう……」


 ベッドに顔をうずめたまま唸る。


 模擬戦を思い出す。


 ゴウレムの操作には自信があった自分。


 かつて軍人を目指し、士官学校では負けることはなかった。バトルアリーナでも腕を鳴らした。


 その自信はついさっき折れてしまった。ひどくあっけなく。


 ゴウレムの操作。自分が何年もかけて腕を高めたゴウレムの操作、それが、妹にかなわなかった。


 ゴウレムを動かしたばかりの妹に、ルナリアに自分の力はかなわなかった。


 自分はちぃネットを動かしただけで、疲労して倒れてしまった。


 カラスマに運んでもらって木陰に移動した後、ガーネットはすぐに立ち上がってカラスマ達を追いかけた。


 そして、丘の上から妹とカラスマとの戦いを見下ろしていた。


 カラスマの疾風の力はすさまじい。その疾風に負けない妹の操るちぃネット。


 背筋に電気が走った。身震いを押さえきれなかった。


 とても妹には、ルナリアにはかなわない。そう思った。


 これから決闘に望む自分と妹。

 だが、ゴウレムは一つしかない。二人のどちらかがゴウレムを操ることになるだろう。


 カラスマが、自分と妹。どちらを操作手に選ぶのか、それはわかっていた。


 だから。


「ちぃネットはルナリアが動かしたほうがいいわ」


 自分から辞退した。


 そうすることで自分のプライドを守ったのだ。


 カラスマがルナリアを選ぶ様が見たくなかったから……。


 いや、カラスマに選ばれない自分を、自分に操作する資格がない事実を突きつけられるのが嫌だった。だから、自分から資格を譲った形をとった。


 ……。


 ……。


 ……。


 カラスマが妹を選ぶとか、自分はカラスマに選ばれないとか、一体自分は何を考えているんだろう。


 たかだか誰がゴウレムを動かすかという話なのに。


 ……。


 疾風はルナリアに似ている。そっくりだと思う。


 妹そっくりなゴウレムを大切にしているあいつ。


 カラスマと出会い、はじめは何も感じなかったが、最近は妹そっくりなゴウレムを大事にしているあいつを見ると、なんだか胸がちくちくすることが多くなった。


 そのカラスマが疾風を奪われ、今度は自分、私そっくりなゴウレムを作った時にはすこしだけ嬉しかった。


 そうだ。嬉しかったのだ。


 ……。


 その少しだけ嬉しかったゴウレムは、妹が使うことになった。


 ルナリアは、カラスマが作ったゴウレムを使う。

 妹は決闘で、カラスマと一緒に戦うようなものだ。


 だが、自分は一人で、戦う。


 自分には何もない。


 落涙しているのに気づいた。


 そこでやっと、自分が妹に、ルナリアに嫉妬しているのだと気づいた。


 違うな。違う。違う。違うんだガーネット。違うのよ私。


 ガーネットは自分は何を考えていたのだと、頭を振った。

 しっかりしろと、自分に言い聞かせる。


 自分は妹と、ルナリアと一緒に戦う。


 それを忘れるところだった。


 妹はあの日、あいつに助けられて以来、その好意を隠すことはしないでいる。


 妹はよくやっている。ルナリアはカラスマの上着をずっと着ている。


「そのセーター。今日は暑くないの?」

「これを着ているのがいいんです。これはカラスマ様の服、なんだかカラスマ様に抱きしめられているような感じがするんです」


 妹はあいつが大好きだ。その好意を示す方法は、姉として、とても心配になるが……。


 ルナリアはとても怖い思いをした。

 それから助け出してくれたカラスマに好意を持ってしまうのは自然なことだと思う。


 私もあいつに助けられて、背筋の奥がじわりとしびれたからわかるのだ。


 自分ではとてもかなわなかったデン侯爵。


 侯爵と、その手勢を、小さなゴウレムを操り、完膚なきまでに倒したカラスマ。


 妹と私を守るために戦ってくれたカラスマ。


 自分だって、私だって、心がときめかないはずはなかった。(もっとも、それはすぐに失望に変わったが。……あいつのせいで……自分の胸の形が変わってしまった。ブラのサイズがきつくなったのはきっとあいつのせいだ……)


 男に助けられたのは父親以外では初めてかもしれない。それも二回。


 二回目は、あのバトルアリーナでは、何て間の抜けたことをしたんだろうと思った。


 バトルアリーナの試合は、命のやりとりをするものではない。


 ズーランの全力の鞭。その鞭を頭に受けて、顔の形が変わるだけ、それだけのことだったのに……。


 でも、助けに飛び込んで来てくれたあいつが嬉しかった。


 白馬の王子様にあこがれるのだ。この私だって……。


 とても王子様には見えないけれど……。


 外が騒がしくなった。新たな対戦相手を迎えた、妹の模擬戦が始まったのだろう。


 カラスマが私そっくりなゴウレムを作った時、私はすこしだけ嬉しかった。


 そのすこしだけ嬉しかったゴウレムを使って、今、妹は模擬戦をやっている。


 頭が、思考が、堂々巡りを始めた。


 小さいな自分は。そう思う。


 ……。


 カラスマは、あいつは自分のことをどう思っているのだろうか?


 あいつの言葉を思い出してみる。


「お前のおっぱいは俺の理想のおっぱいだ最高のおっぱいなんだ」


 胸の話ししかしてない。胸しか褒められたことがない。


 欲望のはけ口でしかないのか私は……。


 あいつにとって私は胸だけなのだろうか、胸に顔と体がついたもの、それが私なのだろうか……。 


「ガーネット、ちょっといいか?」


 ドアが叩かれた。


 カラスマ!?


 ベッドに伏していた体を起こし、居住まいを整える。頬をぬらした涙をぬぐう。


 ベッドに座った。


「なによ?」


「入るぞー」


 カラスマと、そしてメイド長が入ってきた。


「顔が赤いな。やっぱり疲れてたんだな」

 と、あいつが言う。


 カラスマは巻尺を構えていた。


「ガーネット、ちょっとサイズを測らせてくれないか?」


 サイズ……。ブラのサイズ……。


 おっぱい! おっぱい! おっぱい!


 こいつはいつもそうだ!


 どんなときにもこれなんだ!


 思わず手が出てしまった。


 とびかかって、ぐーにした手であいつの胸を何度も叩く。


「痛い痛い痛い! いきなりなにするんだよお前!」


 メイド長が見かねて、止めに入ってきた。だが、自分は止まらない。


「何するんだよじゃないわよ! 胸、胸、胸! いつもそればっかりじゃない! こんなときまで胸のサイズなんか測ってどうするのよ!?」


 本当にデリカシーの無い男だとガーネットは思う。涙が出てきた、悔し涙だ。私はどうして……よりにもよって……こんな男を……、こんな男のことを……。


「そんなもの測ってどうする気なの!」


「待てよ、何の話だよ? なんでそこで泣くんだよ? ……ああ、まぁ……胸のサイズは……結局測るんだけど、それだけじゃないんだよ……全身も測るから」


「えぇ?」


 全身?


 全身を測る?


「だから叩くなよ! ……を作るのに必要なんだ。お前のためなんだからさ」


「えっ?」


 聞き取れなかった。


「ガーネット」


 いつにない真剣な顔だった。


 私はすこし落ち着きを取り戻せたと思う。


「俺は今から『お前のゴウレムを作る』! だから、お前の体の寸法を測らせてくれ」


「え?」


「ちぃネットはルナリアが使う。お前にはゴウレムが無い。だからお前のための機体が必要だろ? 今から俺が作るから、お前はそれを使って決闘に望むんだ!」


「そんな……」


 私のためのゴウレム。それをカラスマがつくる……? 私もカラスマと一緒に戦える……? カラスマが一緒に戦ってくれる……。


「お前のための専用機体だ。だからしっかりサイズを測らないとな」


 胸の奥が熱くなって、涙が止まらなくなった。


 拙作はいかがだったでしょうか?

 続きは頑張って書きたいのですが、書く力を得続けるには、ポイントの力が必要です!!!


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