第121話 異世界タブレット鑑賞会
第121話 異世界タブレット鑑賞会
ガーネットとルナリアがちぃネットに慣れる訓練。いわゆる慣熟訓練は続く。
続くのだが。
「ちぃネット! シズオカ製アフターモデリングパーツ、『力場発生フィールド展開装置』リンクアップ!」
叫ぶガーネット。
点灯する、ちぃネットにとりつけられたバリア展開装置のLED。
しーん。
だが、何も起こらない。
「おっかしいなぁ……」
と、俺。
なんでバリアーが出てこないんだろう。
「次、ルナリア」
「はい! ルナリア行きます! ちぃネット! シズオカ製アフターモデリングパーツ、『力場発生フィールド展開装置』リンクアップ!」
叫ぶルナリア。
点灯するLED。
しーん。
だが、何も起こらない。
「ルナリアでも駄目か……」
「すみません」
故障かもしれない。念のため俺がやってみる。
「ちぃネット、静岡製アフターモデリングパーツ、『力場発生フィールド展開装置』リンクアップ!」
点灯するLEDが唸りを上げ、ちぃネットの体を柔らかい光が包み込む。
「ふーむ。故障でも電池切れでもない。バリヤーは正常に張れるよな……」
この世界、玩具のプラモデルは、本物になるはずなんだが……。
どうしてうまくいかないんだろう……。
「あのカラスマ様?」
「なんだいルナリア?」
「ばりやーってなんですか?」
「そうよ。ばりやーって何よ」
そこからか。
そうか。2人はバリヤーがわかっていなかったか。
わかってないものをイメージしろって言っても出来ないよな。
どうしよう……。
とりあえず駄目元でバリヤーを見せてみるか……。
「ガーネット、ルナリア。ちょっと俺の部屋にきてくれ」
「ええっ!!!???」(顔を真っ赤にしながら)
「はいッ!」(嬉しそう)
そういうことになった。
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ベッドに座る俺。
その隣にガーネット。
反対隣にルナリア。
いいにおいがする。
一応俺が2人に変なことをしないように監視するためメイド長もハウも来ている。
失礼だな、変なことなんかしないよ。
今は。
……いずれするかもしれないけどさ。
俺はタブレットの電源を入れる。
「なんですかこの板?」
と、ルナリア。
「動画とかネットが見れる魔法の板かな。ここじゃネットには繋がらないけどダウンロードした動画は見られるはずだ」
「あなたの言ってることがよくわかんないんだけど」
と、ガーネット。
百聞は一見にしかず。俺は二人にダウンロード購入したあるアニメの映画を見せることにした。
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宇宙に浮かぶスペースコロニー。
カメラの視点がその中に入り込んでいって、ロボットの製造工場を映し出す。
宇宙なので無重力。
登場人物たちは宙に浮いている。
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「すごい絵が動いてるわ。これアニメってやつ?」
と、ガーネット。
アニメを知っていたなら話は早い。この世界にはゲームが流れ着いてるし、アニメが知られていてもおかしくはないな。
「あのカラスマ様」
「なんだいルナリア?」
「絵が動いてるのはわかるんですが、なんでこの人たちは宙に浮いてるんですか?」
「それは宇宙空間にいるからなんだ。宇宙空間っていうのはね(中略)、なんだよ」
「そうなんですか……」
よくわかってないだろな。
まぁ今は宇宙空間の説明をしている時間はない。置いていく。
「あとあの……」
「なんでしょうか?」
「この人たちの言っている言葉がわからないんですが……」
マジか。
そういえば、俺もこの世界の文字が読めない。
でも言葉は通じるんだよな。
……そういえば俺たちは何語を使って会話してるんだろう?
まぁ、『こんな世界だから魂同士が会話してる』とかそういうヤツなんだろうな。
俺は主人公たちのセリフを同時に読み上げることにした。
一人アフレコだ。
疲れる。
恥ずかしい。
ここに新谷徹さん(声優さんの名前)と池畑秀一さん(声優さんの名前)を呼んで欲しい。
でもやるしかない。
時々一時停止しながら、主人公たちのセリフを一言一句トレースして喋る俺。女のキャラもその口調で喋る。
「これなら内容はわかるか?」
「はい! わかります」
「なんとかね……」
「よし、鑑賞会を続けよう」
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(アニメ映画劇中)
癖毛の主人公がバッとシートをはがす。
下から出てくるのは巨大なロボット。まだ製作途中だ。
そこにタイトルがかぶさる。
デデーン。デデデデデーン!
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かっこいい! やっぱり最高だこの映画!
「よくわかんないわねぇ」
と、ガーネット。
こいつは置いていこう。
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(アニメ映画劇中)
約25分後。
スペースコロニーの中を馬で疾走する主人公。
そこに、主人公の積年のライバルが現れる。
ライバルに飛び掛る主人公。殴り合いになる二人、
取っ組み合いになって、草原の丘をごろごろ転がり落ちる。
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「なんでこの二人は殴り合っているんですか?」
「うーんと、この金髪が好きだった女の子が居たんだけど、その女の子はこの癖毛の人を好きになっちゃったんだよね。それでというか」
本当はその後、癖毛は女の子を戦闘中の事故で誤って殺してしまうんだけど黙っておこう。
「昔の女のことをいつまでも引きずってるわけ? 情けない男ね二人とも」
そういう言い方はないだろう……。
「御前様。男というのはそういう生き物なのです」
と、メイド長。
この人も動画を見てたのか。
「わからん(続き続き)」
と、ハウ。
こいつも見てるのか。
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(アニメ映画劇中)
約1時間後。
主人公が新機体に乗り換える。
新機体の背中に張り出した帆のような装置。
「……伊達じゃないッ!」
それが、分離し、発射され、宇宙空間を飛ぶ。思念波によって、コントロールされ、主人公が思い浮かべた通りに動き出す。
遠隔攻撃装置からビームが発射され、敵軍のロボットを撃ち落としてゆく!
敵のビーム攻撃が主人公の機体に迫る!
遠隔攻撃装置が4個、ピラミッドの頂点の形に並ぶ。
遠隔攻撃装置の間にエネルギーの壁が発生し、主人公の機体をピラミッド型に包み込む。
これがバリヤーだ。
敵のビームを、バリヤーが防ぎ、主人公の機体には傷一つつかない。
ここで、動画を一時停止する俺。
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「二人ともよく見ろ! いいか、これがバリヤーだ! 『力場発生フィールド展開装置』が張ってるやつなんだ」
と俺。
「わかったわ」
「わかりました」
「そうか! よし」
「で、カラスマ! 止めてないではやく続きを見せなさい」
「そうですカラスマ様、いいところなんですから!」
「えっ!?」
ま、まぁ、いいけどさ。
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(アニメ映画劇中)
物語終盤。
ライバルの計略によって、宇宙に浮かぶ小惑星が、地球に落とされようとしていた。
この小惑星が地球に落とされれば、数億の人命が失われるばかりか、ジャイアントインパクトが起こり、地球の環境は激変する。
二度と人類が住めない惑星になるだろう。
「うおおおおおおおーッ」
主人公の機体が、そうはさせじと、小惑星を押し返す。
だが、地球の引力に引っ張られだした小惑星はびくともしない。
もう駄目なのか。
誰もが諦めたその時、
戦闘を継続していた地球軍のロボット達が次々と戦闘を放棄し、主人公のロボットに加勢して、小惑星を押し返し始める。
そして、なんということだろう!
地球軍と争っていた敵軍のロボット達、その敵軍のロボット達までもが、小惑星を押し返すのに加わり始めた。
全軍のロボットのスラスターが唸りを上げ、小惑星を地球の引力から引き剥がそうと、全力で押し出す。
ここで、奇跡が起きる。
小惑星の軌道が変わり、衝突軌道からそれたのだ。
場面はここで地球、地上の風景を映し出す。
空を見上げる少女。
その少女の瞳には、小惑星が進路を変える様子が映る。
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俺達は一本のアニメ映画を鑑賞し終えた。
「ねえカラスマ! あの二人はどうなったの? 死んじゃったの? 生きてるわよね!!」
「ごめん、それは俺にもわからないんだ」
「なによそれ! なんでよ! なんでそんな物語にしたのよ」
それは、作った監督に言って欲しい。
俺もこのラストはちょっとさびしいなって思ってるんだが。
「カラスマ様」
と、ルナリア。
「はいなんでしょうか?」
「(中略)ってなんですか? どんな意味なんですか? 作中に(中略)、(中略)って何回もその言葉というか概念が出てくるんですが、最後まで説明されませんよね」
「えーと(中略)かぁ。それは、宇宙に進出した人類がたどり着いた新しい境地というか、古い人類オールドタイプの反対の概念というか。ごめん俺にもよくわからないんだよね」
「えー」
と、ルナリア。
(中略)に関しては俺もわからないので、やっぱり作った監督に聞いて欲しい。
まぁ、とにかく。
「二人ともこれで、バリヤーがなんだかわかったろう? もう一度庭で試してみよう!」
そういうことになった。
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「ちぃネット! シズオカ製アフターモデリングパーツ、『力場発生フィールド展開装置』リンクアップ!」
叫ぶガーネット。
点灯する、ちぃネットにとりつけられたバリア展開装置のLED。
フィィィィン!!
ちぃネットの体を、緑色のバリヤーが包み込む。
「できた! 成功だ!」
と、俺。
「やっぱり実物を見せたら、イメージできるものなんだな」
「でもこれ、かなりつらいわ」
と、ガーネット。
なんだか疲れている顔をしている。
「一気に魔力を持っていかれる。魔法を使ったあとみたいな感じ」
え? 魔法使えるの君? さすがファンタジー異世界。
まぁそこはいいか。
「じゃあ、常にバリヤーを張るのはやめて、ピンポイントで使っていこう。あとは慣れること。慣れていけばそんなに疲れなくなるはずだ」
「そうね」
と、ガーネット。
「じゃあ、次、ルナリア」
「はい! ルナリア行きます! ちぃネット! シズオカ製アフターモデリングパーツ、『力場発生フィールド展開装置』リンクアップ!」
叫ぶルナリア。
点灯する、ちぃネットにとりつけられたバリア展開装置のLED。
ヒュオオオオオオオオオオオオオオーーーッ!
その時が、点灯したバリア展開装置が、ちぃネットの体を離れて宙に浮く。
そして、それがちぃネットの頭上にふわふわ浮いたかと思うと、
バリバリバリバリバリ……ヒィィィィィィィィィン!!
展開装置から、緑の稲妻が発生し、ちぃネットの体をエネルギーフィールドが包み込んだ。
やだこの子完璧。
あの映画の遠隔攻撃装置の動きを完璧に再現してる!
すごい! すごくないこれ。
「どうでしょうかカラスマさま!」
「あ、ああ。すごいよ! 完璧だルナリア」
「えへへ、ありがとうございます」
いや、すごい。
すごいんだけど、若干腑に落ちない。
俺よりも上手くバリヤーをイメージできたってことなのかな?
これは……そうか。
……と俺は思いつく。
アニメ映画を一本見せただけでこれだけの効果があるんだ! アレを二人に見せれば、戦力を根本的に底上げできるかもしれない。
俺は、次の動画を二人に見せることを決めた。
拙作はいかがだったでしょうか?
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