第120話 命名「ちぃネット」
第120話 命名「ちぃネット」
ガーネットとルナリアは、デン侯爵家当主とその後継者の二人と、決闘をすることになった。
「今度の決闘。俺が全力でセコンドに付く。そしてガーネットとルナリアを絶対に傷つけさせない。無傷で勝たせる」
そう宣言した。
2人の前で、わりとカッコよく。
宣言はしたのだ。
したものの……。
前途は多難だった。
まず決闘の日まで、時間が無い。マジでない。10日しかない。
その上で……やっぱり問題が起きた。
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屋敷の工房。
俺と、ガーネット、ルナリア、メイド長、ハウ。屋敷の全員が集合している。
「俺の疾風は最強のゴウレムだと思う」
と、俺。自分で言うのもなんだが。
「ええ」
と、ガーネット。
「はい」
と、ルナリア。
「だからこいつを二人に貸す! コイツを使えば絶対に勝てるから!」
疾風を机の上に置き、その横にデザインナイフを置いた。
「疾風にこれで名前を彫ってくれ、そうすれば疾風の製作者として紐付けられて、魔力のバイパス、魔力経路が生まれるはず。それで2人も疾風を動かせるようになるはずだ」
自分が作ったゴウレムは魔力が繋がって動かせるようになる。幼児でも知っているこの世界の基本的なルールだ。
「……」
「……」
「どうしたの?」
「いやよ」
「いやです」
と二人。
「なんでだよ……」
まさか俺の力は借りたくないとか言い出すのか?
「私達に疾風に傷を付けろって言うの? そんなことできると思う? 貴方が疾風をどんなに大切にしてるかずっと見せられてきたこの私達に?」
「ガーネット……」
「疾風様は私達にとっても、もう家族なんです。ただ動かすためだけに意味の無い傷をつけるのなんて嫌です」
「ルナリア……」
「だからカラスマ、私達は疾風に傷をつけられない」
「お前達……」
なんか胸が熱くなってきた。疾風のことをそんなに大事に思ってくれていたなんて……。ちょっと涙が出ちゃう……。
「ありがとう」
でもな……。
「疾風は大事だ。すごく大事だ。俺の嫁というか、俺自身くらい大事なものだ」
「「……」」
無言で聞く二人。俺の嫁というくだりでなんかひっかかった気がするが……。
「でも、所詮はプラモなんだ。お前達のためなら、たとえ疾風が壊れたってかまうもんか! 俺には疾風よりももう、お前達のほうがもっと大事になったんだよ! 言わせんなよ!」
「カラスマ……」
顔を赤くするガーネット。
「カラスマ様! 私嬉しいです!」
目を潤ませるルナリア。
「ふー」
あついあつい。あっついなこいつら、何その歳で青春してんの? と、手で内輪を作って扇ぐメイド長。
「何よメイド長?」
「いいえ……」
「わからんわからん」
とハウ。
「御前様、ルナリアお嬢様、カラスマ。今は、言い争っている時間はないと思います……」
とメイド長。
「疾風をお二人に貸す、貸さないはこの際一度棚上げしましょう。その上で……」
「「「その上で?」」」
「この小さい御前様」
机の上に置かれた1/12ガーネットに指先をしゅっとすぼめた手を伸ばす。まるで通販番組で紹介するようなしぐさだな。
「この小さい御前様でしたら、皆様3人が協力して制作されたはずです。御前様、お嬢様ともに操作権を持っていらっしゃる」
『あっ』
と、気がつく俺たち。
そういえばそうだったね。ビッグバトルの決勝後に、ガーネットが操るガーネットにボコボコにされたわ俺。
「まずは、この小さい御前様を軸に決闘の対策を立てられてはいかがでしょうか?」
そういうことになった。
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屋敷の庭。
まず、二人が1/12ガーネットを動かす訓練から始める。
「ルナリア・ベルン行きます! 魔力経路エンゲージ! 全エーテル解放! 小さいお姉さま、リンクアップ!」
俺がいつも喋ってるモノコックウェポンズ・フラウと繋がるおまじないの言葉を叫ぶルナリア。
まぁ動かすのにこういうのは必要ないんだけど、気合を入れる儀式みたいなものだから二人にはやってもらう。
ゴウレムを動かすのはイメージの力だし、より強いつながりをイメージしたほうが強力になる気がするんだよね。
1/12ガーネットにルナリアの魔力が流れ込み、うっすら体が輝いた。
シュッ。シュシュッ。
俺が動かすのよりは若干動作が鈍い気がするが、及第点の動きをするルナリア=1/12ガーネット。
「次、ガーネット」
「わかったわ」
1/12ガーネットを手に取るガーネット。
名前が一緒だからややこしいな……。前から思っていたけどさ。
「いくわよ……こほん」
と、ガーネット。
「魔力経路エンゲージ! 全エーテル解放! 華麗なる戦場の花!! リンクアップ!」
「ストップ」
と、俺。
「ええ?」
「もう一回やってみてくれ……」
「わかったわ……」
と、ガーネット。
「魔力経路エンゲージ! 全エーテル解放! 美しき戦乙女!! リンクアップ!」
「ストップ」
と、俺。
「ええ?」
「あのさ……、『華麗なる戦場の花』とか、『美しき戦乙女』ってなんだよ?」
「だって……」
「こいつの名前は1/12ガーネット。ユーアンダスタン?」
と、ジャッジの口調になる俺。
「わかってるわよ。でも、なんだか自分の名前が付いてるゴウレムの名前を叫ぶのってなんだか恥ずかしくて……」
ハングドマンをディスるのはやめてやれ。あと自分の分身をさして『華麗なる戦場の花』とか『美しき戦乙女』とか呼ぶほうがよっぽど恥ずかしいわ。
「お姉さま、小さいお姉さまでいいじゃないですか」
と、ルナリア。
「小さい御前様でいいと思います」
と、メイド長。
小さいお姉さまに、小さい御前様か。こいつらも1/12ガーネットとは呼ばないよな。
「名前を付けるか……」
と、俺。
「!」
と、なるガーネット。
「カラスマ、私にいい名前の案があるんだけど……」
「……」
と、俺。
「……」
と、ルナリア。
「……」
と、メイド長。
「一応聞こうか?」
と、俺。
「ええ! こういうのはどうかしら? 『気高き剣姫』!」
「却下」
「何でよ」
「そんなもん自分で考えろ……」
「じゃあ、カラスマには何かいい案があるの? この子は私達三人が力を合わせて作った子なのよ! 良い名前をつけなきゃ駄目なんだからね!」
力を合わせて作ったというか、こいつは、自分の乳はこんなにだらしなく垂れてないとかお尻のラインが違うとか駄目出ししかしなかった気がするが……。あの時何回リテイクくらったことか……。
俺は1/12ガーネットを手元まで引き寄せて、手のひらに乗せる。
まあいい、今はこいつの名前の話だ。
「名前、そうだな……」
小さいお姉さま。小さい御前様。小さいガーネット。ちいさいガーネット……だから……。
「こいつの名前はちいさいガーネット。略して『ちぃネット』だ!」
「ちぃネット。かわいい名前です!」
と、ルナリア。
「良い名前かと」
と、メイド長。
「まほう(のように良い名前だね)!」
と、ハウ。
「なんでよ! なによそれ! もっとあるでしょ!」
と、ガーネット。
「うるさい。屋敷の人間の多数決、4対1で可決だ! こいつの名前は今からちぃネットだ!」
俺の手のひらの上でグーを作って天を衝く、ちぃネット。
「よろしく頼むぞ、ちぃネット! ガーネットとルナリアを守るんだ!」
そういうことになった。
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