第100話 異世界スライムで複製型作り & 100話更新記念・SS 「ルナリアとシリコンスライム」
第100話 異世界スライムで複製型作り
ベルン男爵邸。
この屋敷には何故か工房がある。
何年か前に男爵家でゴウレム制作の事業を始めようとしたがうまくいかなかったらしい。
その時に作った部屋だそうだ。
俺は1/12ガーネットを作るのにこの工房を利用した。
今回、メイド長の靴を作るのにも、この部屋を使うとしよう。
工房には、メイド長と、ガーネット、ルナリア、ついでにハウ。俺と、ムトーさんがいる。
大きな制作机の上。
「まずは原型、靴を複製するための複製型を作ろう」
と、ムトーさん。
まず靴が入るくらいの木の枠を用意する。これを2つ。
木の枠の下に粘土を敷き詰める。
木の枠の中に、メイド長の靴を片方ずついれる。
粘土の形を整えて、靴が宙に浮くかたちにする。
そして、ここからが重要。
靴から一本棒を生やしておく。
靴のヒール部分がいいな。ここに棒を生やしておく。これはシリコン型が固まったあと、レジン液を注ぎこむための注ぎ口になる。
さて準備は完了。
いよいよ、枠にシリコンゴムを注ぎ込むのだが……。
「ぴきゅー、ぴきゅ、ぴきゅー」
シリコンスライムだ。
「これを絞ってシリコンゴムの粘液を入れよう」
「ちょっとかわいそうですね」
と、ルナリア。
シリコンスライム。なんだか、かわいいなこいつ。愛嬌もある。
「粘液を絞ったくらいだとスライムは死なないよ。薬草を食べさせれば元気になるし」
薬草なら屋敷の周りにうんと生えてるから問題ないな。
じゃあ、絞るか。
もみもみ。
あっ、この揉んだ感じ
思わず、ガーネットと、メイド長のおっぱいを見る俺。
「……」
胸を隠すガーネット。
「……」
胸を隠すメイド長。
「貴方が今何を考えてるかすごくよくわかるわ」
と、ガーネット。
「本当に最低のクズですね」
と、メイド長。
「皆、仲がいいねぇ」
と、ムトーさん。
話がそれた。
とにかく、スライムを絞ってシリコン液を出すか。
えいっ。
ぎゅびゅう。
「びぎゅー。びぎゅ。びぎゅー」
スライムの体から、粘液が出てきた。
「スライムさん、がんばれ!」
と、ルナリア。
シリコンゴムの液体で、靴の入った木の枠をいっぱいに満たす。
靴は左右あるので、この工程を2回。
「ぴきゅー…、ぴきゅ…、ぴきゅうう……」
粘液を絞られたシリコンスライムはしわしわになっている。
「あとで庭に放してもいいか? ガーネット」
「いいわよ」
「スライムのシリコンゴムが固まるまで、1時間くらいかかるから、ちょっと休憩にしようか」
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全員で庭に出る。
「ぴきゅー、ぴきゅ、ぴきゅー」
ルナリアがしわしわになったシリコンスライムを抱えている。
「薬草を食べるのよね。これなんかどうかしら?」
薬草をスライムの口? に持っていくガーネット!
「ぴきゅー♪、ぴきゅ♪、ぴきゅー♪」
「食べてるみたいだな」
嬉しそうにぽんぽん跳ねるシリコンスライム。
「庭に放せば増えるかな? こいつが一匹居るとかなり便利になるんだけど」
と、俺。
「どうかな、僕もシリコンスライムの養殖は考えたこともなかった」
と、ムトーさん。
シリコンスライムはぽんぽん跳ねると、そのまま庭の茂みへと消えていった。
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工房。1時間後。
木枠に入ったスライムのシリコンゴムを指で押してみる。
ぐにぐに。
うん、完全に固まったようだ。
「じゃあ、木枠を剥がそうか」
木枠を剥がす。
透明なシリコンゴムの四角いブロックが出来上がった。
ゴムブロックの中には、メイド長の靴ゴウレムが浮いているのが見える。
「このゴムのブロックから、中身の原型、つまり靴をとりだす」
靴から生やしておいた棒。
その棒に沿って、ナイフで切込みを入れていく。
ブロックの真ん中くらいまで切込みが入った。
「ブロックのゴム切り込みに沿って、左右にひっぱって……」
ぶりん。
メイド長の靴が出てきたので、それをとりだす。
「これで、複製型の出来上がりだ」
靴をメイド長に返す。
いよいよここから、複製作業に入る。
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100話更新記念・SS 「ルナリアとシリコンスライム」
数ヵ月後。
ベルン男爵邸、庭。
「ぴー(口笛)」
を、吹くルナリア。
ぽいん、ぽいん、ぽんぽん。
シリコンスライムの群れが茂みの中から出てくる。
「よしよし、みんな良い子ですね」
「ぴきゅー、ぴきゅ、ぴきゅー」
「今からカラスマ様とお出かけします。いつものやつを頼みますよ」
「ぴきゅー、ぴきゅ、ぴきゅー」
シリコンスライムの群れは、ルナリアの前に整列する。
ちゃんと背の順で整列できるあたり、シリコンスライムの知能は意外と高いのではないかと、ルナリアは思う。
「んー。今日は、あなたと、あなたに頼もうかな」
「ぴきゅー、ぴきゅ、ぴきゅー」
「ぴきゅー、ぴきゅ、ぴきゅー」
2匹のシリコンスライムをむんずと掴むルナリア。
ルナリアの手のひらに乗るサイズ。
それをおもむろにドレスのブラ部分から中に入れる。
なんということだろう。
ルナリアのバストのカップが2サイズほどビルドアップした。
「ふふふ。これでお姉さまやメイド長には負けません!」
……。
……。
「ぴきゅー、ぴきゅ、ぴきゅー」
「ぴきゅー、ぴきゅ、ぴきゅー」
「……」
「ぴきゅー、ぴきゅ、ぴきゅー?」
「わかっています。わかっていますよ……でもいいじゃないですか……カラスマ様は微乳も好きだって言ってくださるんです……でもね、わたしだって、わたしだって!」
「ぴきゅー、ぴきゅ、ぴきゅー」
「ぴきゅー、ぴきゅ、ぴきゅー」
「ぴきゅー、ぴきゅ、ぴきゅー」
ルナリアは落涙していた。
シリコンスライムの群れがルナリアを慰めるように、ルナリアの体に集まってくる。
「ありがとう。ありがとうみなさん。わかってくれるのはみなさんだけです」
「ぴきゅー、ぴきゅ、ぴきゅー」
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「わからん」
茂みの向こう側。ルナリアの警護についていたハウは、その光景を目撃してしまう。
自らの語彙を戦神に捧げることで常人離れした狂戦士の力を得たハウ。戦場の悪鬼、血の雨の帝国軍師団長と呼ばれたハウであったが、今見た光景をそっと自分の心の中だけにしまっておく、
そんな人間の心をまだ持ち合わせているのであった。




