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団らんの場にお邪魔します

後日談開始です。

 エステルが筆頭魔導師になってから、エステルは屋敷――つまりディートヘルムの邸宅に帰るようになっていた。

 就任前は宛がわれた自分の部屋に戻るかヴィルフリートの家に泊まったりしていたのだが、今はイオニアスの様子を見に行くためにちょくちょく屋敷へ顔を出しているようだ。


 イオニアスとはそれなりに喧嘩(なかよく)しているようなので安心するのだが、当然イオニアスに構う分エステルがヴィルフリートの家にやってくる頻度が少し落ちた。


 それはそれで仕方ないとは思うのだが、エステルが居ない食卓というのは落ち着かない。それだけヴィルフリートの日常にエステルが侵食している、という事だ。


「今日は屋敷に顔を出すのですか?」


 仕事終わりにそう聞いてみると「そうですよー」とまったりした口調で頷かれる。


「今日はヴィルの料理が食べられないのは残念ですけど、お兄様やお義父様と食事するのも楽しいですし……ヴィル?」

「えっ? ああいえ、気になさらないでください」


 今日もエステルはうちには来ないのか、と無意識に落胆して眉が下がっていたらしい。兄妹仲がよくなっているのは喜ばしい事であるし、家族との触れ合いが増えるのは当然よい事だろう。

 この、微妙な寂しさというか物足りなさは、エステルと食事する事が当たり前になってしまった弊害なのかもしれない。


「何か問題でもありましたか?」

「いえ、そうではありませんよ。兄妹仲がよろしいようで何よりです」

「仲が良いのでしょうか、あれは。……って、ヴィル、今誤魔化しませんでした?」

「誤魔化してなど」

「さっきの顔はヴィルが物言いたげでしたもん。さっさと白状するのです」


 ぺしぺし、とヴィルフリートの肩を叩いて促してくるエステルに、素直に言うのは気恥ずかしさを覚えるものの、追及は止まりそうにもないので言った方が楽なのも分かっている。


「何て事はありませんよ。エステルがうちにくる頻度が少し減って、物足りないな、と」


 我ながら女々しい悩みだな、と苦笑したヴィルフリートに対して、エステルは首を捻っている。


「じゃあヴィルがうちにくればいいのでは?」


 エステルにはあまり言ってる事が実感出来ないかな、と思いきや、至極不思議そうにそう返されて「え」と素の声が漏れた。


 うちにくればいい、というのは、つまりエステルの家――ディートヘルムの屋敷であり、イオニアスが現在療養している場所である。

 間違いなくイオニアスとディートヘルムに会う事になる。

 会うのが嫌、という訳ではない。ただ、会えば確実にディートヘルムにはからかわれるしイオニアスには皮肉の一つでも贈られるだろう。行かなくても想像がついた。


「いつもヴィルのおうちですから、たまにはヴィルもうちに来てください! ディートヘルムもお兄様も歓迎しますよ!」

「めちゃくちゃ皮肉かからかいでもてなされそうな方々なんですが」

「そんなまさか。お兄様はともかく、ディートヘルムはちゃんとおもてなししますよ?」

「……喜ばれそうには喜ばれそうですが、色々と言われそうで」


 ディートヘルムが今のヴィルフリートとエステルの関係に複雑な気持ちを抱いているのは、ヴィルフリートもよく知っている。背中を押すどころか蹴飛ばす勢い、といった意味でだが。


 彼としてはエステルが幸せならそれでよいらしいし、エステルの精神的な不安を取り除くためにも、早く今のふわふわ浮かんだような曖昧な恋人関係からきちんと名のある関係に至ってほしいそうだ。


 まあ要は早くプロポーズくらいしてやれ、との事である。


 こっちとしてはまだ筆頭魔導師の仕事に不馴れであるし求婚しようにも準備もあるので急ぎたくはない。エステルは感付いた様子もないので、着実に準備を進めている状況だ。


「大丈夫ですよ。何か言われたら私が怒りますし」

「いや閣下はそういうのではなくて……なんというか、応援されて気まずいというか」

「応援?」

「……ほら、俺達の仲は親公認みたいなものでしょう?」

「いいことですよね?」


 エステルには、ヴィルフリートの気まずさは分からないらしい。

 彼女にとってディートヘルムは親でもあり師でもあり、頼もしい人間という認識であって「お父さん」という認識はあまりないらしい。

 ヴィルフリートなら実の親に恋人関係を応援されるのは無性に恥ずかしくなる。何と言って良いのか分からないが、とにかく恥ずかしいし兄が母親に関係をばらした時は苛立ちもした。


 エステルにまた不思議そうな顔をされたので、ヴィルフリートも説明を諦めて頭を撫でてやる。


「まあいいでしょう。じゃあ、お伺いしても?」

「どうぞ! あ、ディートヘルムに伝えておかなくてはですね」


 ヴィルフリートの気持ちには気付かず、のほほんとした表情でディートヘルムへ伝達魔法を飛ばしているエステルに、ヴィルフリートはひっそりと苦笑した。

後日談始めました。作者がちょっと入院してるので開始遅れましたが、今後ちみちみと後日談の方を投稿していけたらと思います。

一応本編より甘くなる予定です。

応援していただければ幸いです(*⁰▿⁰*)

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