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47 冷えた体と伝わる熱

「しくじりましたねえ」


 窓を叩き付ける雨の音。降り始めた当初は弱々しいものであったが、今は窓を突き抜けようとせんばかりに激しく降り注いでいる。

 小屋の中からもはっきりと聞こえる雨音は大きく、この調子だと当分降り続けそうだ。


 瞳を細めて窓の外を見るが、既に日が傾いている時間な上鈍色の雲が空一面を覆っており、既に薄暗さすら感じる。その上で木々に囲まれたこの小屋では、夜に近い程に暗くなっていた。


「……ごめんなさい、私のせいで」


 この分では日帰りは出来ないな、と静かに息を吐き出すと、聞こえていたらしいエステルが申し訳なさそうに呟く。


 そんな事はない、と目を見て言えればよかったのだが、今の彼女は下着姿なので直視はとてもではないが出来ない。

 もちろん不埒な目的ではなく、雨でずぶ濡れになってしまったので軽く洗って乾かしているのだ。


「いえ、山の天気は変わりやすいですし足場も悪い、それに加えて疲労していたのですから仕方ありませんよ」

「でも……私のせいで」

「エステルのせいではありませんよ。……雨がやむまでは、ここで待機しましょう。エステルは休んでいてください」

「……はい」


 か細い声は相変わらず申し訳なさそうで、おそらく表情も沈鬱なものだろう。

 こんな事になるとは思っていなかったので、これはヴィルフリートの計算ミスだろうな、と自身で反省するように溜め息をついた。




 こんな事になったのは、遡る事数時間。


 町長に挨拶と共に憲兵に拘束してもらっている男達の事情説明をした翌日、改めて当初の目的である魔物退治に向かった。

 途中でのエステルのエネルギー不足を懸念してお弁当を拵えてったあたり、見た目ピクニックのようでもあった。実際は大真面目に仕事をしているのだが。


 登山はあまり機会がなく心配ではあったが、山の地形は地図で頭に入れているし、ヴィルフリート達が登る予定であり魔物が根城にしている場所に向かうルートから少し外れた場所ではあるが、山小屋もある。何かあればそこに向かって休憩する事も出来る。


 魔物討伐に関してはエステルの実力は疑うべくもないので、その点ではあまり心配はしていない。

 一番心配なのが、エステル本人の体力だ。


 なにせ、魔法の腕前は群を抜いているとはいえ、彼女は華奢な少女であり、体力もない。これは本人も自己申告している。

 今回の仕事は山に魔物の住み処があるというのがネックで、道中が一番不安なのだ。体力も、はらぺこ度も。


 空腹状態では力を発揮しきれないエステルのためにお弁当はあるが、一つで足りるか非常に不安である。

 いざとなれば、エステルが以前してきた手段(キス)という手もあるが、これはなるべく避けたい。


 そもそもエステルがこうした討伐の任務を滅多に任されないのは、強い魔物が滅多に現れないのもあるが、一番は体質上遠征には向かないからなのではないだろうか。


「疲れてないですか、エステル」

「平気です。朝ご飯も一杯食べて元気です!」


 そこまで険しいという訳でもないが、軽装で登るには不適切な斜面。木の根に転びかけるエステルを何度支えた事か。

 度々躓きつつもまだまだ余裕はありそうなエステルに安堵しつつ、もう手を繋いだ方が転ばないのではとエステルの手を取る。


「ヴィル?」

「放っておくと転びそうですので」

「子供じゃないのですが……」


 口では不満をこぼしつつも、エステルの顔は喜色を浮かべている。ぎゅ、とこちらの手を握り返してへにゃへにゃとしまりのない笑顔を浮かべていた。

 足取りも先程より軽やかなものになって――また躓きかける。


「エステル、足下」

「ごめんなさい」


 引き寄せたのでヴィルフリートの胸元に突っ込んできたエステルを軽くたしなめると、エステルは今度こそ申し訳なさそうに眉を下げた。




 難航するかと思った魔物退治だが、それ自体はそう手間がかかるものではなかった。


 山の中腹、開けた場所に、その魔物は居た。


 分かりやすく形容するなら、それは馬のような形をしていた。

 ただし、四肢はしなやかを通り越して頑強な筋肉の発達をしており、毛に覆われていてもその剛健さは見てとれる。その上、普通の馬と比べて二回りは大きな、巨体と言ってもいい。


 そして、その額には人間の頭二つ分はあろうかという長さの角が生えている。

 しかし、先日大人しくしてもらった彼らが狙うような、黄金のものではなく、象牙色のねじけたもの。先端は鋭く、これで体当たりでもされたらひとたまりもないだろう。


 真っ赤に染まった瞳が、こちらを射抜く。


 その瞬間に、象牙色の角に、光が瞬くようにして角に集まって――。


「なるほど、そういう事ですか」


 エステルの呟きが宙にばらけた瞬間、光を集めて黄金色に輝いた角が、まるで鋭利な何かで切り落とされたように、まっ平らな断面を見せて転がり落ちた。

 エステルが魔法を使った、とワンテンポ遅れて気付いた時には角からは光が失われていたし、屈強そうな四本の足から白炎が巻き起こり、あっという間にその胴体を包む。


 あまりのまばゆさに目を逸らすと、全身にいっそ神々しいともとれる美しい炎を宿した魔物は、耳障りな悲鳴を上げた。

 無慈悲なまでに圧倒的な火力で、大地の穢れと言われる血ごと肉体を焼き尽くしていく。


 その癖膨大な筈の熱量は余波すらこちらに届くこともなく、浄化の炎としてただ魔物の穢れを焼失させていた。肉の焼ける特有の匂いだけが、風に乗って辺りを漂う。


(相変わらず、というか……圧倒的というか)


 そんな感想を抱いたのは、灰となった魔物のなれの果てが白い炎の後に残ったのを見付けてからだ。


「……魔物はこれでおしまいです。これだけ焼き尽くせば、大地にも問題はないでしょう。肝心の、大地の調査が必要ですけど」


 エステルはそうまとめて、焼けた地面や空気を冷やすように魔法でしっかりと冷やしてから、魔物だったものに歩き出す。


 遺品と言っていいのか、切り離された角だけは変わらずに残っていたので、ヴィルフリートはエステルの後を追いつつ転がるそれを回収する。幸い、持ち運べる大きさになっていたので、鞄にしまう事が出来た。


「……なんというか、俺は戦闘ではエステルに及ばないのでこういう時役立たずなんですよね」

「私はよく転んだり迷ったりするから一人でここまで無傷で辿り着ける自信ないので、ヴィルはもっと胸を張っても良いのですよ!」

「そこにエステルが胸を張ってどうするんですか」


 あまり自慢にならないことをえへんと自慢げに話すエステルには苦笑しつつ、まあ役割分担だよな、としみじみ思う。


 エステルは高火力の代わりに燃費が悪く危なっかしい。一人でいかせて迷子なんてオチが容易に想像出来る。

 ヴィルフリートはその欠点を補うように、エステル程の力はないが細かいところに気付いて気を配ったり、エステルのご飯を用意したりとサポートの方に向いているのだ。エステルのような活躍がしたくないと言えば嘘になるが、こちらの方が性に合っていたりする。


 エステルを支えるのが仕事でもあるので、適材適所というやつだろう。


「……で、大地の調査とは俺が手伝えない類いのもので?」

「はい、どうしても性質上、ね。ですので、ヴィルはちょっと辺りを警戒してくれたら嬉しいです」

「了解しました」


 ヴィルフリートの出番はないようなので、エステルに言われた通り他の魔物が出てこないか確認する。

 といっても主だった先程の魔物が居た場所なので、縄張りを荒らす魔物も居なさそうであるが。


 エステルはというと、魔物が根城にしていた岩場の地面に手を触れて、何かを確かめている。


 筆頭魔導師の代役を果たせるエステルには、何らかの感知能力があるのだろう。

 大地の様子を見ながら、真剣な表情で思案している。時折草木の方に目を向けて眉をひそめている。


 茂みや岩、大地を触ったり、サンプルを取ったりしている彼女を眺め、それからふと空を仰ぐ。


「……こりゃまずいかもですね。山の天気は変わりやすいと言いますが、一雨来るかもしれません」


 最初は青々としていた空は、今や鈍色の雲に覆われている。頭上にどんよりとした雲があれば気分も何だか落ち込んでくる上、雨に降られでもしたら最悪な状況になる。


 雨が凌げる場所は、近場には見当たらない。

 木で凌ごうにも限度があるし、体が冷えるのは否めない。ヴィルフリートはともかく、エステルの体を濡れ鼠にして冷やす訳にもいかない。


 エステルの調査が終われば即撤退、下山するなり雨風が凌げる山小屋に向かうべき、なのだが。


「エステル?」

「……やっぱり」

「エステル、終わりましたか?」


 大きめの声で問いかけると、ゆっくりと顔を上げるエステル。

 その表情は、真上に広がる雲の大群と遜色ない程に、曇っている。


 どうしたのかと近寄るとエステルは緩慢な動作で立ち上がって、何とも言えない、困ったような笑みを一つ。


「……終わりはしましたが……」

「とりあえず、報告は後にしましょう。この調子だと雨が――」


 と言った瞬間に大粒の雫がヴィルフリートの頬を直撃する。

 ぽた、というならまだ優しいものだ。一粒の水滴は、二つ、三つ、それから数えきれない程の水滴となって、空から地面を打ち始めていた。


「……言った側から降ってきましたね。エステル、急ぎましょう」


 おそらく、すぐに本降りになるだろう。

 遠くの空を見ても淀んだ色の雲に覆われており、暫く止みそうにもない。


 あまり顔色の優れないエステルを促して、急いで下山していく、のだが。


「い……っ」


 途中、元々足場が悪く急いでいた上に、雨の視界不良によって、エステルが足を挫いたのだ。

 地面に激突する前に受け止めはしたものの、足首を痛めてしまっては急いで下山出来る訳がない。雨足は強くなる一方。コートもじんわりと水を吸って重くなっている。


 エステルに自身のコートを羽織らせ彼女を背負い、とりあえずの避難として少し道から外れた場所にある山小屋に避難したのであった。




「痛みはないですか?」

「はい。ちょっと捻っただけですから」

「取り敢えず足首は暫く動かさないようにして下さいね。……その、体が冷えてしまいますから、火の近くに居てください」


 二人して肌をさらした姿なのでとても気まずい。ヴィルフリートはズボンこそ穿いているが、エステルに至っては下着姿だ。


 不本意ながらタオル一枚の姿を見た事があるものの、濡れて肌に貼り付いて透けるのとは全く違う。

 胴体を覆うような下着を身に付けていたのが幸いだったが、ゆったりした作りのものが貼り付いて体のラインを浮き彫りにするのは非常に目のやり場に困る。


 ある程度絞っているので、多少皺になっても火の近くに居れば乾くので、さっさと乾かして欲しい。体も冷えているだろうし、暖まって欲しかった。


(出来れば、見えないところで)


 ヴィルフリートは顔を背けているが、少し動けばエステルに触れる距離だ。暖炉を利用して炎を灯しているが、それ故に近寄れる範囲にも限りがあり、火にあたって温もろうとすればどうしても近付いてしまうのだ。


 服さえ乾いてしまえば気にならないのだが、湿気た空気のせいで乾きがよくない。魔法も使ってはいるが、乾くまで時間は必要だろう。


「寒くないですか」

「……少し寒いですけど、そこまででもないです。ヴィルフリートは寒くないのですか?」

「俺は平気ですよ、体温高いので。それに、エステル程消耗してませんから」


 どうしても、魔法を使った後はエネルギーと休息が必要になってくる。食事しかり、睡眠しかり。


 エステルはそれが顕著なため、使うとかなり消耗する。今はなくなった魔力を補充するために体がエネルギーをそちらに回している状態で、 あまり体も温まらないのだろう。


 そもそも、エステルはあまり平熱が高くないので、どうしても寒い思いをしてしまうらしい。


「……ほんとだ、ヴィル、あたたかいです」


 言葉を確かめるように、エステルはこちらに無防備にも近付いて、後ろからそっと小さな掌をヴィルフリートの手の甲に触れさせる。

 触れられた瞬間ひや、と一瞬背筋が震えるような冷たさを覚えたので、相当冷えているのだろう。


 本人の自己申告では少し寒いとの事だが、こんなに体が冷えているなら早く温もるべきだ。暖炉の火だけではまだ足りていないのだろうか。

 一応、室温もそれなりに暖めてはいるのだが、冷えきったエステルには物足りないのだろう。


「……冷えていますね。もう少し火にあたった方がいいですよ」

「これ以上近付くと炙られちゃいます」

「流石にそれは困りますね。……服もあと少しすれば乾くでしょうから、それまでの辛抱です」


 服さえ着れば、視界の暴力の嵐は収まりヴィルフリートも身を寄せる事が出来る。不埒な目的ではなく、単純にくっついた方が暖を取れるからだ。

 エステルも寒いから人肌を求めているのだろうし、遮るものさえ出来れば、抱き締める程度ならするつもりだ。少しずつ触れ合うのも慣れつつあり、抱き締めた程度でうろたえるつもりもない。


「……服が乾いても、雨はやみそうにないですよね。一泊する事になるでしょうか」

「そうですね。一夜明かした方が安全でしょう。雨でぬかるんだ足場の悪い状態で夜に下山など無謀でしょうから」


 幸いこうして山小屋があるから雨風の心配をする必要はない。欲を言うなら寝具があればいいのだが、本当に休憩用として建てられたのか、ろくな設備がない。暖炉があるだけ。毛布でもあればここまでヴィルフリートは苦悩しなかっただろう。


 ヴィルフリートの言葉に反対をする気はないらしいエステルは「そうですね」とだけ呟いて、そっと手を離し華奢な背をヴィルフリートの背に預けた。


「……時間もある事ですし。ヴィル、今の内に言っておきますね」


 パチ、と暖炉の炎が爆ぜる音に紛れ込ませるように、小さな声が小屋に漂う。

 気の進まないといった感じがよく分かる声音で、彼女が一体何を言いたいのかヴィルフリートには分からず、彼女が言葉を紡ぐのを待つしかない。


「多分、その内また私は筆頭魔導師のお仕事を代わります」


 躊躇いがちに呟かれた言葉は、以前危惧したものだった。


「ディートヘルム閣下が言っていた事ですか」

「はい。……ちょっと、まずいかもしれません」

「まずい、とは」

「前より、間隔が狭まっています」


 間隔というのはイオニアスの代理の事だろう。

 ヴィルフリートが一緒に過ごしてきた時間はそう長くはないし、本来の業務がどのくらいの頻度で行われているかも分からないので、何かを言える訳ではない。


 ただ、エステルの声音の深刻さから相当なものだとは読み取れる。


「それに……大地の調子があまりよくありません」

「確かめていたのはそれですか」

「はい。実際に目で見て、改めて」


 やけに調査中顔色が悪いとは思っていたのだが、大地の容態は相当悪いらしい。筆頭魔導師の仕事であるメンテナンスが滞っている、という事になるだろう。


「……彼の能力自体に問題はありませんから、体調不良によるものだと思います」

「その負担がエステルにくると」

「ええ。……次は、いつもより消耗すると思います。……その時は」

「その時は?」

「……側に、居てくれますか……?」


 躊躇いが混じった、どこか懇願混じりの問い掛けに、ヴィルフリートは静かに背中にもたれてくるエステルの熱を感じながら、随分と可愛らしいお願いだとひっそりと笑う。


 拒まれると思っているのか、ほんのりと遠慮がちなエステルだが、拒む訳がないというのに。ヴィルフリートとしては、側に居る事を誓っているし、むしろ居させて欲しいとこっちからお願いしたいくらいだ。

 自分が支えたいのもそうだし、一人にして苦痛を震えながら耐えさせるのは、嫌だった。


「それくらいならお安いご用ですよ」

「……ほんと?」

「どうして嘘つくと思ったんですか」

「嘘というか……その、多分、我が儘になりますよ?」

「我が儘?」

「……甘えたがりになります」

「いつもでしょうに」


 茶化すように一つ指摘すると、エステルは不満を口にする代わりにどうやら振り返ったらしく、背をぽこぽこと叩き出す。


 実際、十年前の真相を知った後からエステルは全幅の信頼を寄せてくるし、それこそ恋人が甘えるような仕草すらしてくる。本人はおそらく無意識なのだろうが、前よりも距離は近いし接触をためらわなくなった。


 いいか悪いかで言えば、いいのだろう。

 気の休まる場所がヴィルフリートの隣、という事に他ならないのだから。


「あなたが甘えたいのであれば、存分にどうぞ。辛いなら、俺に甘えてください。他ならぬ、この俺に。あなたを受け止めますし、なんならだめだめになるくらいに甘やかして差し上げますよ」

「もうすでに割とだめだめな気がします。……ヴィルが居ないと、私、だめだめですもん」


 ぺたん、と剥き出しの背中にくっついてきたエステルは、ヴィルフリートの腹部に手を回して抱き付いては少しだけ湿っぽい声で呟く。


「……今からこれでは、本番どうなるか分かりませんね」

「……もっと甘えたがりになって、ヴィルにべったりです」

「それは役得というやつなんですよ、世間一般では」


 いつもより弱気なエステルに苦笑して、自分のお腹に回った掌をそっと撫でる。

 甘えるというよりはすがりつくエステルに、ヴィルフリートは少しだけためらって、それから腹を決めてゆっくりとエステルの拘束をほどく。


 後ろで悲しげな雰囲気が生まれた事に苦笑して、ヴィルフリートはそっと体ごと振り返る。

 大分乾いたのかふわふわと柔らかそうな布地の下着が見えたが、なるべく胴体は見ないようにして、眉が下がって泣きそうなエステルに手を広げる。


 ぱち、と瞬きを繰り返すエステルに、気恥ずかしさを覚えつつも「どうぞ」と笑いかけると、意図を理解したエステルはゆるりと相好を崩して――そのまま、ヴィルフリートの胸に飛び込んだ。

 ふにゃりと緩んだ顔が、一瞬だけ歪められたのは、捻った足のせいだろう。仕方なく、ヴィルフリートはエステルの膝裏と背中に手を添えて、ひょいっと持ち上げて足の間に座らせる。


「……ほら、寒いのでしょう。……服が乾くまでは、こうして肌を寄せ合っていましょう」

「……うん」


 腕の中で信頼に満ちた笑顔を向けてくるエステルに、これは邪念なんて抱ける筈がないと苦笑。


 早く服よ乾け、と願いつつ、冷えている華奢な体を抱き締めてはそっと背を擦った。

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