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俺の冒険  作者: 黄昏人
第7章 変革する地球世界と異世界
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日本国自衛軍月面基地での活動

読んで頂いてありがとうございます。

 日本は日米安保条約を解消したが、同時に憲法を改正して“自衛軍”を持てることになった。この自衛軍は、陸上、航空、海上、宇宙の4軍となっているが、将来は航空と宇宙は合同する予定になっている。さらには、公ではないが、重力エンジン駆動に切り替わりつつある海上艦艇を考えると海上も合同し、陸と陸以外の2つになるとささやかれている。


 現実に、輸出入のための国際輸送については、その多くを担ってきた船舶がどんどん重力エンジン駆動の航空貨物機に代わりつつあって、あと5年もすれば7割の海上船舶が航空貨物機になると予測されている。このことを考えると、海上戦闘艦を重力エンジン駆動にするのは可能であり、その場合は当然空を飛ぶこともできる。


 そして、その場合は海に浮かぶことを前提にして、速度が精々60㎞/時程度を考えている現在の艦の形状は空気抵抗の少ない形状に変わる必要があるだろう。さらに密閉・耐圧にすれば潜水も可能である。また、重力エンジン駆動のそれは宇宙にだって飛び出せるのだ。


 このことが、陸以外の軍の一体化の論の根拠になっている。実のところ、自衛軍の様々な自走兵器の推進機の重力エンジン化は急速に進んでいる。その変換は、まず当然ながら航空機から始まっており、すでにすでにプロペラ・ジェットを問わず全ての実用の航空機は、その転換を済ませている。


 これは、単純にコストとマンパワーの問題である。航空エンジンは極めて複雑な装置であり、基本的に高速回転が必要で高熱にさらされる各パーツの寿命が短い。このために、絶え間ないメンテナンスと部品交換が必要であり、それに加えて莫大な燃料・潤滑油が必要である。


 その点で言えば、エンジンに対するモーターのようなもので、重力エンジンの構造は極めて単純であり、動的な部分と高熱にさらされる部分がほとんどない。このため、メンテナンス頻度が航空エンジンと比べ物にならないほど少ないうえに、潤滑油は多少必要であるが、燃料を必要とせずにEX-バッテリーの交換のみで済む。


 そして、その価格はレシプロエンジンで同等以下、ジェットエンジンでは半分以下になっている。その上に、マンパワーの大きな削減が可能である他に、馬鹿食いの燃料の代わりに超低コストのバッテリーの励起のみを必要とするため、例えば戦闘機の運用コストは1/3程度になっている。


 その転換に当たっては、当初は予算上の制約で機体全体を変えるのではなく、基本的に機体はそのままでエンジン部と燃料タンクの改修を行っている。その際に問題になったのは翼の扱いである。重力エンジン機では飛行に翼の必要はなく、むしろ機動を妨げる邪魔者である。


 ただ無論、既存機では翼の内部は燃料タンクや様々な機器の収納やミサイルの懸架などに使っている。このため、これらの機器は他に移すとして、基本的には根本だけを残す形になっている。ただ、中にはミサイルの懸架のためにそれなりに長さを残している場合もある。


 このような改修を受けた機は不細工な見かけになって、見た目で笑われることになって搭乗員から嫌われることになった。そのこともあって、予算がつき次第順次重力エンジンに合わせた設計の機体を製造しているが、その際に大きく変ったのは機体の材質である。


 航空機は、限られたエンジン出力で高い速度と航続距離を得ようとして、機体は出来るだけ軽くしようとする。このため、外装板はジュラルミンで内装もアルミやチタンなどの軽い合金を用いるので、どうしても機体も高価になるし、溶接ができない場合が多いために組み立ても容易ではない。


 その点で、重力エンジンでは、重量は気にする必要はないために、機体が潜水艦に使われるような高張力鋼を使うようになっている。だから、戦闘機の場合に25㎜厚の鋼板で作られた機体は25㎜機関砲弾も正面から当たらない限り跳ね飛ばすほどの防御力を持つ。


 これが、戦闘機雷光であり、これは日本のみならずアメリカ、イギリス、オーストラリアなどの同盟国にも輸出されてベストセラー機になっている。ただ、アメリカは初期の300機は輸入したが、その後は自国で生産している。世界最大の兵器生産国の看板は下ろしたくないのだ。


 そして、雷光は完全な気密構造になっており、重力エンジンの特性上高度100㎞を超えるような亜宇宙でも行動できる。さらに最新型では水深20m程度であれば海中でも行動が可能であるように、操縦機器・センサーなどが改修されている。

 これから見ても、近年の重力エンジンの新型機はもはや空軍の戦闘機材の域を外れているが、これらはこのエンジンの特性によるものである。


 そして、陸でも同様なことが起きている。陸の兵器と言えば、戦車がまず挙げられるが、実際はヘリコプターの方がずっと有用である。なぜなら、地形に係わらず高速で移動でき、上から戦場を俯瞰できるので敵を見つけるのが容易である。これが調達価格が3倍以上になるヘリが調達される理由である。


 戦車の利点は頑丈で撃たれ強いことに加えて、大砲という強力で比較的コストの低い打撃兵器を備えていることであり、ヘリよりも価格が安く運用コストも低い点である。しかし、重力エンジンを使えば似たようなコストで戦車を飛ばすこともできる。


 とは言え、いくら何でも飛行中では不安定で戦車砲の命中は期待できない。また、基本的に動きが遅いために、固い防備の戦車であるが、重力エンジンで空を飛べ、ヘリより早い動きのできる地上用戦闘機を同じような重装甲にすることは無駄である。


 このため、陸上自衛軍では、新設計の重装甲地上掃討機(暴風)を生みだした。これは、50㎜厚の高張力鋼の外板の戦車砲のない戦車のような機であり、戦車砲の代わりに無反動砲と小型ミサイルを備えて、小型爆弾を投下できる。


 さらに、少数の暴風については300㎥のマジックバッグが備えられており、この場合には多数のミサイルと砲弾、爆弾など機体からは考えられないような攻撃力を持っている。暴風は、1機30億円と攻撃ヘリと同程度であることもあって、すでに200機が調達されていて、陸上自衛軍の主戦力になっている。


 ちなみに、戦車などの自衛軍の実弾射撃はアメリカで行っていたが、今は中央平原国で行っている。これは、暴風を中心とする陸上部隊の演習に加えて、航空自衛軍や宇宙自衛軍も概ね30km四方の広大な無人の演習地で実弾射撃を行っている。


 中央平原国は、俺の建国初期の『融資』も効いて日本は最恵国扱いになっているため、その豊かな鉱物資源を求めて多数の日本の会社がすでに資源採掘を始めている。さらには、自国でも日系銀行から融資を得て、チベット高原の多数の湖からの灌漑水路網を建設しているので、広大な農地が開発されて耕作を始めている。


 しかし、これらの湖の水収支を的確に掴んでおなかいと、世界第3位だったアラル海が消滅したような悲劇を招くことになる。この点ではM大学を中心に日本の学会が協力している。しかし、幸いに中央平原国の目論見は食料の自給であって、大々的な輸出は考えていないので、その人口の少なさを考えればそこまでシビアな問題にはならない見込みである。


 そのようなことで、C国が分裂して出来た国々の中でも、中央平原国は日本と非常に良好な関係を築いている。これは、一つには内陸であることが全く輸送上のデメリットにならない重力エンジンによる大型貨物機の存在があってのことである。


 海上自衛軍については、艦載機への重力エンジン搭載はすでに完了している。垂直離着陸が可能で滑走の不要な艦載機の登場は、一気に護衛艦への戦闘機・攻撃機の搭載を後押しした。重力エンジン機は、ヘリコプターより狭い場所へ危険なく着陸する能力が高く、暴風にも大幅に強い。それは、中東のきな臭い海域に行く貨物船や、油槽船に雷光を乗せることも行われているほどである。


 次に進められたのは、潜水艦へのAEE発電設備と重力エンジン搭載である。ただ、これらは、“そら”型機の搭載はないなど宇宙軍の宙空護衛艦ほど徹底的な改修はされなかったものの、マジックバッグを使った多数のミサイルの搭載はされていて武装は大幅に強化されている。


 従って、潜水艦を改造した艦は実際的には宇宙空間での活動が可能な万能艦になっていると言える。現在22隻の半数がすでに改修済となっていて、改修の済んだ艦は、飛行訓練や宇宙での訓練も行っているので、実質的に宇宙軍の予備戦力と言うこともできる。


 さらに、8艦体制のヘリコプター搭載型護衛艦、改め空母型護衛艦は現在4隻がAEE発電設備と重力エンジン搭載が終わっている。しかし、これらは最大飛行速度が500㎞/時になるため、露天での艦載機の駐機は不可能であるので、飛行甲板上に鋼製の覆蓋がかけられている。


 海上に浮かぶ艦であれば、そのようなトップヘビーになるような改修は不可能であるが、自艦の重量を調整できる重力エンジン機であれば問題はないのだ。ちなみに“ひゅうが”型の改修後の2万6千トンが現状の重力エンジン駆動の限界である。


 このような潜水艦と空母を、重力エンジン駆動にした場合の大きなメリットは、移動速度の大幅な短縮である。有事の際に、戦闘艦が現場に駆け付ける速度が7~8倍になるというのは、その数が数倍になったのと等しいのだ。まして空母は艦載機が重力エンジン機になったために、ひゅうが型で戦闘機または攻撃機の40機を搭載できるので、その効果たるや極めて大きい。


 宇宙自衛軍では、現在宙空護衛艦が4隻体制になっている。そして、本部は日本では岩国の米軍撤退跡の埋め立て地の海上基地においている。航空自衛軍は陸上部を使っているが、現在では重力エンジン機のみの運用なのでジェット噴射による騒音が無いため、街に隣接する陸上基地も問題なく使えている。


 また、宇宙自衛軍は前進基地を月と火星に置いている。月の基地は㈱Mマテリアルズが経営している月面のニッケル鉱山である“くまもと”鉱山に隣接して地下に建設された。月面では、太陽に照らされるか否かによって極端に表面の温度が変動する上に、太陽光による有害な放射線の影響があるので表面に滞在するのは難しい。


 このため、地下化することが必要になるので自衛軍も地下基地としたわけだ。また、既存の鉱山の工場・居住区に隣接して設置したのは、“くまもと”鉱山にはすでに150人が働いている。さらに、その要員のための居住区の娯楽施設・売店を含めたサポートのために契約した会社の社員のさらに30人が滞在している。


 従って、自衛隊員は基地のみを作れば、生活のサポートはくまもとの施設を利用できるし、それらの生活サポートの会社は売り上げが増えることになる。だから互いにウィンウィンの関係になる。自衛軍はMマテリアルズに基地の設営を発注して建設し、現在40人の要員が交代で勤務している。


 火星はまた事情が異なり、民間企業は日本政府と協力して資源探査は積極的に行っていたが、まだ開発は行っていなかった。これは結局距離が遠すぎることと、地球との互いの公転位置によってその距離も大きく変ることなどが原因になっている。


 そこで、火星にも基地を設けることを決定した自衛軍から、㈱Mマテリアルズに共同開発を持ちかけた。結局自衛軍の場合は、基地設営の能力がある訳でなく結局は民間企業に発注することになる。だから、㈱Mマテリアルズが鉱山開発を行う際に一緒に基地設営を発注するということだ。


 幸い、火星でも近年ますます需要が高まっている希少な高濃度希土類の大規模な堆積が発見されており、同社でも開発が俎上に登っていたのだが、コスト面で二の足を踏んでいた。そのコストのかなりの部分を自衛軍が負担してくれるのであれば、十分実行に移せるということになって建設が実行された。


 この基地は、長さ20m縦横10mの鋼製の箱を2つ繋いで地上に半ば埋めたあと、土砂で覆うことで、現地のマイナス50度を下回る低温に耐えるようにした。このような基地が最初のもので、その後、宇宙軍は必要に応じて、㈱Mマテリアルズは鉱石採取の拡大に応じて順次大きくしていこうということだ。


ー*-*-*-*-*-*-*-*-


 くまもと鉱山と共同の自衛軍月基地は、地球に向けた月面のほぼ中央の入江付近に位置する。アメリカ軍も月基地を持っていて、それより下部(南部)のティコクレーターの端部に位置する。米軍の基地は民間と共同などのものでなく、軍独自での基地であるが、これは流石に莫大な予算の米軍ではある。


 自衛軍月基地にはそら型改宙航機5機、さきもり型改が2機配備されている。これらが駐機されているガレージの天井には自動開閉する水平ゲートがあるが、ガレージ内は与圧されてなく真空である。


「米軍のスカイラークが来ます。距離1100㎞、高度2千m、時速千㎞でまっすぐこの基地に向かっています」

「よし、中田迎撃だ。簡易スーツを着てすぐに乗り込め!」


 計測班の報告を聞いて、基地司令の山瀬2佐が待機室に詰めている神子みどり3尉に命じる。

「は、了解しました」


 応答した中背細身の神子は、すぐに更衣室に入ってスキンスーツと酸素ボンベにバイザーを着ける。基本的には迎撃に出るのは宇宙戦闘機のそら改であり、パイロットは基地にそら機数の倍の10名いる。ほぼ1週間に2回飛んでくる米軍の宇宙戦闘機スカイラークは、識別信号を出しているので間違えることはない。

 この戦闘機は基地から50km内に近づくことはない。これは戦闘機に積んでいる空対空ミサイルの射程が30㎞であるので、これを撃っても届かない距離ということでこのように決まっているようだ。


 神子は体にぴったりで頭・顔も覆うスキンスーツを着て、呼吸をするためのバイザーを付けている。彼女は、小型エアロックに入って、体の前にあるボンベのコックをひねってバイザーの中で呼吸を始める。さらにエアロックの空気を抜いてガレージ側のドアを開けて、自分の02号機の腹のドアを開けて乗り込む。


 シートに腰かけて、すぐに酸素供給スイッチを入れると、30秒でコックピットの中が300hPaの酸素で満たされる。彼女はため息をついてバイザーを外して、機内の空気を呼吸し始め、シートベルトを締めて計器で機体の点検を行う。簡易スーツと呼ばれるスキンスーツとバイザーは使用の制限時間5分である。


 いわゆる宇宙服であれば、酸素がある限り着て活動できるが極めてかさばるし着るのも一仕事である。そこで、スキンスーツが開発されて、戦闘機などの小型機に短時間で乗り込める場合に使われている。ただ真空中での5分の制限時間は、実際は十分ではあるものの気持ちがいいものではない。


 すでに、機体の操縦盤には遠隔でスイッチが入っているので、神子はAIの報告を聞きながら自分でもチェックすることで点検を済ませてマイクに向かって言う。

「点検完了、異常ありません。出発準備完了」

「よし、こちらのモニターでも異常なし。機体を移動し、ゲートを開ける………、機体位置よし、ゲート全開。出発準備良し!」


 機体が遠隔操作でレール上をゲートの下に移動して、上面を映すスクリーンに、開いたゲートから星空が見える。なお、透明の窓は操縦席と副操縦席の全面井シャッター付の円形のものがあるが、基本的には操縦はカメラの映像とレーダーの画像で行うが、ミスが許されないガレージからの離陸はAIに任せることになる。


「こちら、日本国宇宙軍カーミラ、わが基地に向かっている機は応答せよ」

 神子はコードネームを語彙が似ているとしてカーミラとしている。相手機が100㎞に迫った時に、自機が高度5千mで神子は無線で呼びかけた。月面上では大気はないので、無線などの電波は広がりながらどこまでも直進する。つまり相手が見通せる位置にいないと通信はできない。


「こちら、合衆国宇宙軍スカイラーク機、マイク。これはいつもの哨戒飛行である。今日はカーミラちゃんかい?楽しみだ。始めるぞ。追いて来いよ」


 英語での通信があって、相手機は全加速で急上昇する。月の場合には重力がわずか地球の1/6なので、上昇の加速は地球に比べて鋭くなるが、神子もすぐに相手を追って全力加速を行い。これはいつものことで、結局日米両基地の戦闘機が戦闘訓練をしているのだ。


 日米政府は、米政府の日本への敵視政策のためにぎくしゃくしている。そこで、米軍は戦略的に敵対するような行動をとっているが、長く同盟関係にあった現場はそうではなく、秘密での互いの協議の上で万が一にも実際の衝突が起きないように調整している。


 月面基地の場合もそうで、米政府は現場に相手を挑発するように命じているが、現場はそれに応じてはいるふりをして、互いにバトル訓練をして練度を高め合っているのだ。このバトルは相手をロックオンしたら勝ちというもので、その日神子は必死に頑張った。

 しかし、ルーキーに近い彼女ではベテランのマイクに翻弄されて、10分ほどでバックを取られてロックオンされてしまった。


新しい連載を始めました。良かったら読んでください。

名前は「異世界に根付くニホン文明」です。

https://book1.adouzi.eu.org/n5828hd/

2025年、12/20文章修正。

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