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俺の冒険  作者: 黄昏人
第6章 異世界の再編と日本の異世界への進出、日本発宇宙時代の始まり
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ハウリンガ世界の開発状況

お読みいただきありがとうございました。

体調不良により更新が遅れました。済みません。

 ハウリンガ世界の開発に日本政府が主体的に関わるようになったのは、主として日本の食料安全保障のためである。とは言え、当然開発するムラン大陸において、鉱物等の有用資源があれば開発することになっている。


 食料については、主として日本が殆ど輸入に頼っている小麦、大豆、トウモロコシ等については100%の自給が出来るように計画して開発している。

 さらには、漁業資源については、ハウリンガ世界でも地球と似たような魚類、甲殻類、貝類が地球以上に豊かに生息しており、食用に適することは確認されている。だから、すでにムラン大陸には2つの漁業基地が建設されて、水産会社の漁船団が操業を始めている。その結果として、国内のスーパーにはハウリンガ産の水産物が並び始めている。


 ちなみに日本政府は、ハウリンガ世界での農産物や鉱物資源の生産を、コスト的に優位で環境に無理がない範囲で進めるつもりである。一方で、国際的な摩擦を避けるために、地球において今までの購入先からの購入量を急に減らすことはしないつもりでもある。


 地球上では、AEE発電によって基本的にエネルギー問題が解決されたとの認識がある。従って現在は施設更新による投資の活発化で全世界的に急速な経済成長が続いていて、農産物、鉱物については需要が継続的に増加している。

 

 だから、政府の方針は、世界需要の増加に沿って日本の購入量を減らしていこうということで、無理はする必要はないということだ。そして、そうすることで食料、資源価格の高騰も抑えられる効果も期待できるという目論見でもある。


 さらには、すでに全世界での発電能力の60%をAEE発電が占め、ACバッテリーの普及で燃料油による車は全体の30%を下回っていて、温室効果ガスの発生量は漸減しつつあるが、今程度の気象変動が今後20年は続くと見られている。


 その場合に、今後20年の間に、地球規模の大飢饉が少なくとも数回は訪れると予想されている。だから、ムラン大陸での穀物生産量は、日本の需要の3倍以上をターゲットに進めて余剰分は貯蔵している計画である。この場合には、時間経過がない異次元空間での貯蔵が可能であるため、劣化の恐れはない。


 今のところ、貯蔵量を10億トン程度とする目標にしているが、世界の需要である年間27億トンに比べると如何にも心細いものの、全世界で全面的な飢饉はないと想定されているので現実的な限度あろう。


 ちなみに、現状でハウリンガ世界に共住している日本国民の数は、すでに100万人に近づいている。そして、それだけの人々が住みついて、そこから産出する様々なものが地球にもたらされている。その結果、世界からハウリンガ世界のことを隠すことは出来なくなっており、その状況が日常的に露出するようになった。


 そうなると、当然ながらいわゆる国際社会から、日本政府にハウリンガを解放するように強要されるようになっている。近年において、その圧力はますます高まり、とりわけ人口過剰な途上国からの公的またはネットからの私的な要求と脅しは過激化している。


 確かに、彼らにとっては豊かな日本が、富を独占しているように見えるだろうな。日本政府としても、このような味方がいない国際的な圧力に抗する有効な術はなく、押される一方になっている。だが、それについては、絶対的に必要な次元ゲートをコントロールできるハウリンガ通商、そのオーナーたる俺が実質的には拒んできた。


 俺の考えでは、確かに地球の多くの途上国の人々は貧困に苦しんでおり、飢えている者も多い。そしてそのような人々はハウリンガで豊かな生活が出来ると期待するのは理解できる。しかし、はっきり言って余裕のないそれらの人々は、現地の入植先の現地の人々、動植物、環境などを思いやる余裕がない。


 そういう人々が押し寄せた所が、どういう風になるか想像に難くないし、俺としてはそのようなトリガーを引くつもりはない。俺も同意したので、日本政府はハウリンガに日本人以外を受け入れない理由を、唯一ゲートのオペレーションが出来る俺が拒んでいるということを政府レベルでは公知している。


 これは、一般への開示はしないということだったのだが守られるわけもなく、今はハウリンガに日本人以外が入れないのは俺のせいであるということは公知になっていて、俺はすでに世界的な悪者になっている。


 俺の見解は以下のように公開しているよ。

『ハウリンガは、異次元のゲートを形成する能力を与えられた俺が自分で探した世界だ。そこには多分全部で3億から4億の知的な住民が住んでいて、地球の15世紀位の発達段階にある。だから、まさに地球のそのころのような人権侵害も飢えも災害もあり、その上に地球にはない魔獣による害もある。

 俺は過去5年にわたって、地球との往復を繰り返しながらその住民と付き合ってきて、そこの女性と結婚することになるほど、そこの世界と人々を気に入っている。そして、この世界とどういう付き合いをするか考えた結果、ハウリンガ通商という会社を作って、ハウリンガの人々の生活を改善する決断をした。


 その後、日本政府にもこの世界のことを知られて、その政府とは食料の安全保障ということで、殆ど人が住んでいない大陸を開発することを了解して、その開発は日本人の手でそれなりに進んでいる。考えたら、そういうことをすれば、世界に知られることになって、ハウリンガに入植することを当然の権利と思う連中がでることは当たり前だな。


 でも、俺は自分の属する国民である日本人以外のものを受け入れて、地球上の争いをハウリンガに持ち込ますつもりは元々なかったし今後もない。それはハウリンガの人々に対する裏切りになる。それはなぜかということを説明すると、人種差別とか言われるのでその説明をするつもりはない。

 異世界が欲しければ、異世界そのものについて実在することは俺が証明したので、自分で渡る方法を開発するなどして手に入れてほしい。異世界は理論上無限にあるから、もっと良い世界が見つかるよ』


 だけど、これも現状に不満を抱いていて、ハウリンガがその解決になると思っている人々にとっては勝手な言い訳にしか過ぎないのだ。だから、彼らは自分の政府に武力を使ってでも入り込めと要求している。それを正当化するために、日本の国と俺を悪者にするためにネット社会を中心に熱心に活動している。


 とりわけ、日本の東隣りの2国が熱心であるが、彼らにとって残念なことに、重力エンジン先進国の日本はすでにかつての軍事的な弱者ではない。そして、日本政府としても他国がハウリンガに入れないことは都合が良い。そして、それを俺が拒んでいるというのは都合の良い口実だから、軍事的にゲートの保護は当然きちんと実行する。


 とは言っても、世界から日本人のみの受け入れを非難されている状態で、これ以上受け入れ人数を増やすのは得策ではないと考えている。だから、俺は地球からハウリンガへの受け入れ人数は100万人を上限にするつもりでいる。日本人の欠員が出れば他国人にするかどうかは勝手にすればよい。


 この程度の人数だったら惑星一つに大きな悪さは出来ないだろうからね。このことを、日本政府に説明しようとしたのだけど、首相の紺野は主要な閣僚を呼び集めたので、俺はその前で説明させられることになった。

「そういうことで、ハウリンガへの受け入れ人数は、間もなく上限に達っするということです」


「ええ!そんなー。まだまだハウリンガへの移住希望者は沢山いますよ」

 俺が人数制限の話をして、間もなく上限に達すると告げると、官房副長官宮田聡が悲鳴に似た声を上げるので、俺も言葉を付け足す。


「もう今の日本人の人数がいれば、少なくとも食料安保という意味では人数は足りているでしょう。世界の食料危機に対しての、余剰分の生産はハウリンガ人を雇えば問題はないと思いますよ。これ以上の受け入れはハウリンガの自立を大きく歪めますからね」


「うーん。そうですね。これ以上ハウリンガ世界の日本人を増やすのは、世界をますます敵に回すことになります。このあたりが潮時でしょう。ねえ、紺野総理?」

 木村みどり官房長官が首相に水を向ける。


「まあ、もう少しという思いもあったものの、確かに潮時でしょう。AEE発電、ACバッテリーと重力エンジンのお陰で我が国の国土も隅々まで効率よく使えるようになった。だからだろうね、意外にハウリンガへの移住を希望するものが少なかったのは。

 我が国はハウリンガの産物を加えれば農水産物については100%以上の自給率を達成することがほぼできた。更に莫大な地下資源の利権を握ることが出来ており、宇宙開発を含めれば資源については将来に渡って心配はない。こう言うとなんですが、三嶋さんのご決断のお陰でハウリンガでのトラブルを抱えなくて済みます。

 その意味でも三嶋さんには、大いに感謝していますよ」


 首相の言葉に続いて木村官房長官が言う。

「中韓や途上国からのハウリンガに関する非難は多いですが、アメリカを始めG7などの先進国からは意外に非難は出ていませんよね。アメリカなどに強硬に来られると聊か困ると思っていたのですが……」


「どうも、わが国もそうなのですが、飛翔機の普及によって移動の利便性が極端に高まり、僻地という存在が無くなってきて、国土が有効に使えるようになってきています。特に飛翔機を普通に買える先進国ではその傾向が強くて、余り広大なフロンティアというものに魅力を感じていないのだと思います。

 また、アメリカは人口密度が我が国より遥かに低いので特にその傾向が強く、実質的にハウリンガに移住したいと思う人は少ないようです。日本人の場合はまた別で、仕事先として移住した人が7割近くいますからね。


 それに、先進国の場合にはAEE発電、ACバッテリーと重力エンジンの導入で、一種の産業革命が起きています。だから、機器の入れ替えインフラや生産設備の更新、改良の需要増大のために投資が多くて好景気に沸いていますからね。その意味ではむしろ途上国の発展が逆に行き詰っていますが、結局は資金不足なのですよ。

 先進国の政府機関はそれなりに資金需要に応えていますが、民間銀行は先進国に資金需要があれば、信頼性の面でもどうしても新興国には向きませんよね。だから、途上国の人々の目がハウリンガに向いていくのはやむを得ないということです」


 外務大臣の西野秀樹が解説するのに続いて、俺は結論を言う。

「そのようなことで、ここらで日本人のハウリンガ移住を含めて在住者を締め切るのは仕方がないと判っていただけたと思っています。ゲートの管理者がそのように言っているということで、よろしく周知してください」

 出席していた6人ほどの閣僚は、あるものは苦々しく、あるものは止むを得ないという表情で同意した。


          ―*―*―*―*―*―


 ムラン大陸北西部の沿岸に近いミノリ町が、ハウリンガ開発機構(略称機構)によって開発されはじめてすでに2年半が過ぎた。元々人口が4200人の洞窟に住む人々の村であったここも、周辺から集まってきているムラン人が多く彼等のみで2万人の人口を数える。


 更に、開発に携わる要員に加えて、ここに住み付くことを前提として移り住んできた日本人は3万人を超えていて、すでに市政を布いているのも当然の規模になっている。ミノリ市は農業と鉱業の中心都市になるべく開発が進んでおり、近い将来には日本からの移民を含めて人口は30万人が当面のターゲットになっている。


 前身のミノリ町は、出没する魔獣を避けるために、岩山に縦横に巡らされた洞窟を住居として、農作は魔獣の隙を狙って行うような不安定な生活の場であった。ムラン大陸全体がそのような状況であったために、面積2千万㎢もの広大かつ肥沃な大陸にもかかわらず、その人口は200万人程度に留まっている。


 しかし、最強者であった魔獣も近代兵器で武装された人類の敵ではなく、火砲ですら対抗できない50mもの体長を持つ最大のティラも、すでに残存生存数108体すべてが衛星軌道からマーキングされている。これらは中央部の大森林に住んでいて、開発地に近づこうとしたら衛星軌道から落下する岩石に拒まれる。


 他の大きな脅威は飛竜であるワイバーンであるが、これは武装飛翔艇による機関砲とミサイル攻撃で排除できる。そして残存する個体ごとに発信機を打ち込まれているので、これもすでに管理状態にあると言ってよい。さらに、狼や熊、馬に類似した様々な魔獣は開発地近くに居住するものは大体駆除されている。


 加えて、開発地周辺には重力エンジンドローンを使った無人警戒排除システムが完備されていて、これらの脅威は実質的に排除されたと言ってよい。

 ティラやワイバーンを含めて大規模な魔獣の駆除については、日本のみならず世界の動物愛護団体から非難の声が上がった。だが、マナによって魔獣化した魔獣という存在が、いわゆる野獣と大いに異なっていて、人類と共存は不可能であるという研究結果が出て現状では小康状態にある。


 ミノリ市はムラン大陸最大の大河ミノリ河の沿岸で、かつ洞窟住居の舞台になった岩山の裾に位置している。その周辺の農業については、背後に大規模な山地を背負った市域から海岸部までの20㎞の平地に広がる1千㎢を超える肥沃な大地で行われる。

 現状では計画した農地800㎢の農場の造成はほぼ完了しており、半分ほどにはすでに作付けが行われている他、灌漑用水網の工事が急ピッチで進んでいる。


 ムラン大陸もそうであるが、ハウリンガ世界においては地軸の傾きが小さいために気候の変化は少ない。そのためもあって、暴風雨などの極端な気象現象は少なく、さらに明確な雨期などは見られず、降雨量は年間を通じて安定している。このために農業においても、長期間乾くことがないために灌漑の必要性は低い。


 とは言え、今のところ機構が保有する、ムラン大陸においての気象データは数年分であるので信頼性は低い。だがジャーラル帝国には、観測点は限定されるが200年以上気象データが揃っていて、そのデータも先の記述を裏付けているので、ミノリ市周辺の灌漑設備は、地球に比べると計画規模が小さい。


 ここでは小麦の生産を行っており、最終的には年間220万トンの日本への出荷が計画されているが、昨年はすでに70万トンの出荷の実績がある。そのための集荷、脱穀、袋詰めのラインは当然ミノリ市に設置されている。


 地球上であれば、船で日本に運ぶことになるが、ミノリ市に設置された次元ゲートを通って日本本土に直接運ばれる。その意味で、ハウリンガ世界における長距離運送には地球のような重要性はない。


 鉱業については、ミノリ市が背負っている大規模な山地に発見された膨大なニッケル鉱脈の採掘はすでに本格操業している。日本のニッケルの消費量は年間約18万トンであり、鉱石を輸入して国内で精錬している。だから、当然日本への移送も鉱石によることになる。


 西野みずきは13歳の女子中学生であり、西ミノリ中学校の2年生である。彼女の父である警備隊の西野良一3尉は、このミノリ町の開発当初に警備隊として着任してずっとこの地に留まった一人である。彼は、その後自衛隊を退官して開発機構の警備隊に籍を移し、それを機に尉官に昇進している。


 それが、昨年この中学校が創立された時期であり、その時にみずきは母恵子と共にこのミノリ市に引っ越してきたのだ。今のところミノリ市は、旧来の洞窟住居周辺から広がっている原住のムラン人の市街地と、農業及び工業関係の業務に携わる人々とその家族及び商業他のサービス業に携わる日本人の市街地に分かれている。


 西野家は無論日本人居住区にある2階建ての真新しい家であり、警備隊士官の父と、総合病院に勤める母との3人で暮らしている。彼女のミノリ市での生活を紹介したい。


よろしかったら並行して連載中の「異世界の大賢者が僕に住み憑いた件」も読んでください。

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2025年、12/20文章修正。

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