表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の冒険  作者: 黄昏人
第6章 異世界の再編と日本の異世界への進出、日本発宇宙時代の始まり
57/84

ムラン大陸の開発3

読んで頂いてありがとうございます。

 伊刈純3尉以下15人の警備隊は、その後も積極的に魔獣を狩っている。狼に似た魔獣ワイガは、すでに25匹を狩って、大型鷲のカザンは42羽を狩った。ワイガは最大のものは体重が800㎏程度もあって、走る速度は時速60㎞とチーターに劣らず、そのジャンプは7mを超える。開けた所でこれに狙われたら、まず人間は逃げられないので、人々の恐怖の対象である。


 また、鷲に似たカザンの最大のものは羽根を広げると5mほどもあるが、体重は100㎏以下でありワイガほどのパワーはない。しかし、極めて凶暴であり、魔力の助けを借りて大人でも持ち上げる上、空を飛ぶというアドバンテージと、鋭い爪と嘴による攻撃で凶悪な魔獣として恐れられている。


 ミノリ町の周辺にはその他の魔獣もいたが、ネズミやイタチサイズのごく小さいものである。どうやらこの地域ではワイガとカザンが絶対的な強者であり、これらから穴に潜って避けることのできる小型の魔獣や獣のみが生息しているということらしい。


 ワイガとカザンについては、飛翔艇から重機関銃と小銃で撃ち殺している。このうちワイガは重機関銃でも大体3発程度は打ち込まないと死なないが、カザンは重機関銃でなくても小銃でも5~6発命中すれば大体墜落するけれど、空を飛ぶということと素早いので仕留るのは容易ではない。


 これらはマナを浴びて吸収して育っている魔獣ではあるが、ラノベのように殺すと消えるわけでなく、ちゃんと死体が残る。ワイガとカザンはムラン大陸には普遍的な魔獣で、ティラとワイバーンを除けば、絶対的な強者である。そのため、先遣隊によってすでに調査がされており、食用になることも確かめられている。


 特に、ワイガの肉は美味く、魔素をたっぷり含んでいることもあって、強壮効果がある。少量のワイガはすでに地球に持ち込まれて高評価を受けており、最高級肉として扱われ始めている。一方でカザンは元々取れる肉が少なく、強壮効果はあるがワイガほど美味くはないので、それほど価値は高くない。


 このため、警備隊もワイガについては、マジックバッグに入れて地球に持ち帰るように命じられているが、カザンは現地で消費しても良いことになっている。だから、すでに狩ったワイガ25頭は全て警備隊が装備を入れて持って来た容量300㎥のマジックバッグに入れて保管している。


 ワイガを狩って渡せば、警備隊にはワイガの1頭につき25万円が支払われる。だから、それを隊の中で個人に分けて良いので、隊員にとってはなかなかの小遣い稼ぎになっている。もっとも日本に持ち帰るとこの価格は10倍にはなるという。


 ちなみに重力エンジン駆動の飛翔艇は、重力エンジンを使って、艇の近くにある10トン程度までの重量物を釣って動かすことができるのでクレーン代わりにも使える。だから、狩ったワイガは重力エンジンで吊ってマジックバッグに仕舞っている。

 

 このように警備隊は、ムラン大陸にはびこるワイガとカザンについては積極的に狩ることで、これらがミノリ町に近づくことを防いでいる。問題は警備隊には手に負えないと考えられるワイバーンとティラである。このうち、明らかに彼らの現状の装備では対抗できないティラについては、すでに大陸に生息している525頭がマーキングされている。


 具体的には、これらは大きな魔力を持っているので、その検知は容易であるために、大陸上空の静止衛星で常時位置をマーキングされている。だから、それらが11か所の開拓団に一定の距離より近づくと、雷光の基地があるサーコラ開拓地のムラン大陸開発本部のアラームが鳴って、雷光の編隊が出動する。


 最近、ティラの1頭が、開拓地の一つのカワイル開拓地に近寄ってきたために、出動した雷光によって“処分”され、その映像のファイルは解説付きで各開拓地に送られた。警備隊長の伊刈は、それが送られてきた夕刻、部下を集めてその映像をじっくり見た。


 映像はまず、森の中を進む怪物の映像から始まる。ティラノサウルスに似たそれは、貧弱に見える上肢に比べ発達した下肢で立ってゆったりと歩いている。流石に大きな木は避けているが、10m~15m位の木は気にせず正面から突っ切っているので、樹木は枝や幹がバキバキ音を立てて折られ、かき分けられている。


 その状態でティラの身長は30mほど、頭から尻尾の先までは50mほどもあるので、これは最大の個体の1頭である。森の樹木は高いものは30m位であって、平均的には20mほどで幹の太さは1~2mもある。ティラは1歩を2秒ほどでゆったり歩いているが、1歩が6m以上あるので時速は10㎞を超えている。


 これが、上肢を使って4つ足で走ると時速は50㎞を超え、太さが3mほどもある上腕をふるうと高さ30mの大木がすっ飛ぶ。その上に、これは有効範囲50mにもなる白熱のブレスを吐くというから、近代兵器を持たない人に抗う術はなく、ムラン人の根源的な恐怖の対象になっている。


 自衛隊による今回の攻撃は、日本政府のティラを絶滅させることも可という承認を得た結果行われるもので、初めての試みである。攻撃は配備されている雷光4機による1編隊によって行う。別に飛翔艇3機が映像記録のために付き添っていて、本部では大勢の者がライブ映像を見ている。


『まずは、雷光2機が25㎜機銃の掃射を行いまず。高度は100m、接近速度は100㎞/時です』

 映像の中のアナウンスと共に、雷光が風切り音のみをたてて画面の手前に位置するティラに急速に迫ってくる。ティラは迫ってくる雷光に気付いてにらみつけて、口を大きく開く。


 それに向かって、距離300mで機銃の火ぶたが切られ、10発に1発の曳光弾が火箭を発してティラに向かう。僅か1秒半の射撃で、約120発の銃弾が全て怪物の胸に吸い込まれる。しかし50㎝のコンクリートをもぶち抜く銃弾は、怪物の胸の鱗を貫くことはできず、15トンの体もほとんど揺れない。

 しかし、痛かったようで、怪物は怒りに燃えて振り向いて去っていく戦闘機をにらみつける。その振り向く動作が早い。


『機銃弾は効果なしと認めます。次は99式空対空ミサイルASM-3を撃ちます。これの重量は220㎏で弾着時の速度は秒速1㎞になるはすです。重量98㎏のAM-4の方が新しいのですが、重量を重視してこちらを選びました。発射する機が位置についていますので、約1分後に発射します』

 しばらく沈黙があって、怒って腕を振り回して、辺りの樹木を薙ぎ払っている怪物が映っている。


『こちら、雷光R411機、間もなく99式の射点に着きます、10,9,8、……3,2,1、発射!』

 そのように雷光から連絡があって、手前に怪物が立ち遠くに戦闘機の点が見える映像に切り替わる。

  

 監視している飛翔機から再度アナウンスがある。

『映像に注目してください。ティラにミサイルが迫っています。コースに問題はなさそうです。ミサイル迫ります。あと約1㎞、ミサイル迫っています』


 映像には、薄く煙を吐くミサイルが映っているが正面からの映像なので、まだ小さな点である。画面が2つに分かれて、正面からの画面に側面からの画面が加わる。

『それ!命中!』アナウンスの絶叫と共に怪物の胸に大きな爆発が起き、それは後ろによろめいてドスンと倒れる。映像は倒れたティラの胸の部分のズームになっていく。


『御覧ください。砕けたミサイルの破片が食い込んで胸が裂けています。死んだか?』

 しかし、怪物は頭をブルっと振って、よろよろと上肢をついて立ち上がろうとするが、ドスンとまた倒れる。しかし、数秒後には再度上肢をついて、今度はふらふらしながらであるが立ち上がる。


 そして怒り狂って、口を大きく開けて白熱のブレスを撒き散らす。そのために、森は燃え上がるが生木であるために辺りは濛々たる煙が立ち込める。


『残念ながら。空対空ミサイルでは威力不足のようですが、鱗をはぎ取った今の状態だと機銃が有効である可能性もあります。しかし、ここでは質量弾、つまり岩による爆撃を試みます。マジックバッグに入れた概ね差し渡し2mの大きさ10トン位の岩を、1万mの高さから5個を同時に落とします。

 地上での速度は時速1500km位になります。高度1万mというのはAIで落下を制御して、概ね半径5mの範囲に命中する限界の高さです。威力としては、ミサイルよりは数倍高いはずです。当初は100㎞レベルの成層圏から爆撃という話もあったのですが、精々数百m範囲にしか命中させられませんのでこの高さにしました。いずれにせよ、今回はコストの安い質量爆弾のティラへの効果を調べるための試行です』


 そのアナウンスを聞いていて、伊刈3尉はいささかティラが気の毒になった。ティラにとっては結果が解っている分の悪い勝負だ。かれらの、普通の生物ではありえない巨大な重量と、それを駆る巨大な運動能力も、さらに強力なブレスも遠くから強力な武器を投射する人間には全く手を出せない。


 今から大きな岩石を遥かな高空から落とされるのだ。そして、よしんばそれを耐えたとしても、成層圏から沢山の岩を落とされたら、摩擦熱で赤熱したそれに耐えることはできないだろう。そう思ううちにも事態は進行していく。


『今、岩が落とされました。約45秒後に着弾します』

 平静なアナウンスが告げるが、画面は2分割されて、怪物の正面と裏側を映しているが、煙のためにぼんやりしか見えない。

『最後の10秒間は秒読みをします。 …10,9,………3,2,1,落下!』


「「「うお!」」」

 見ていた皆がその着弾に思わず叫ぶ。見えたのは飛び散る瓦礫であったが、それらは当初は高速の岩に押された空気により地面から巻き上げられ、すぐに地面にめり込んだ岩本体によって大量に跳ね上げられた。そして、ティラの茶色の巨体には2発が命中した。何かを感じて上を見上げて立っていた怪物は、その衝撃にぐしゃとへたり込んだ。


 一発は上肢の片方をもぎ取って、地中に潜り込み、もう1発が肩に当たってそれを砕いていた。怪物は岩の運動量に負けてへたり込んだが、それでも未だにのろのろと動いていた。


『岩は、2発命中しました。片方が腕をもぎ取り、片方は反対の肩を砕きました。それでも、ティラは死んではいません。念のために機銃掃射を加えます』


 その声に戦闘機雷光が乱舞して、座り込む形になったティラに銃撃を加えた。鱗のある部分では相変わらず銃弾は食い込まずに表面で破裂しているが、あちこちで鱗の剥がれた部分では銃弾が体内に潜り込んで爆発している。


 その光景を映しながらアナウンスが言う。

 『結局、このティラは4機の全戦闘機の装備した半数ほどの銃弾弾を食らいました。そして、10分後に動きを止めたので調査した結果ようやく死亡が確認されました。このように、ティラは恐るべき頑健さをもっています。

 結果的に機銃弾では、鱗のある部分では有効な打撃は与えられません。ミサイルは胴体では有効ではありますが少なくとも一発では致命傷は与えられません。

 その意味では、マジックバッグを使って1万mの上空から落下させた質量弾は間違いなく最も威力がありました。そして、落とすのは岩なのでコストはこの方法が明らかに最も安くなります。一方でミサイルの調達価格は約4千万円、25㎜銃弾は一発1万円でこれを1500発ほど打ちました。


 ですから、コスト的には質量弾が最も望ましいのですが、問題は落下に45秒かかることです。今回は運よく相手が落下の間動かなかったために命中しましたが、いつもそうとは限りません。だから、もっと重い岩をより低くから落とすことなども検討したいと思っています』


 映像が終わって、真剣に見ていた隊員たちが息を抜く。

「ひゃあ。ティラは強敵ですね。あんなのに攻められたら逃げるしかないですね。ところで、隊長。ワイバーンはどうなんですか。その映像もあるんでしょう?ティラは移動速度が知れているから逃げられるけど、ワイバーンは追われたら逃げられるほどぬるくないですものね」

 映像を見ていた西野陸曹長が伊刈に聞く。


「いや、ワイバーンについての映像はない。しかし、思ったより頑健ではないようだな。重機関銃でも致命傷を負わせるのは無理のようだけど、翼は貫通するので追い払うのは可能だそうだ。それに84㎜無反動砲であれば撃ち落とすことは可能のようだぞ。

 勿論戦闘機雷光の機関砲だと致命傷は与えられるそうだ。ただ素早いし、ミサイルを避ける不思議な能力があるという。だから無反動砲では当てるのは難しいかも」


「なるほど、それならワイバーンが現れたら基本的には逃げる。そして重機関銃を撃つということですね。でもティラとワイバーンの狩りはどういう予定になっているのですか?」

 再度西野が聞く。


「うん、どちらも戦闘機雷光を使うことになっていて、1か月後に今の4機編隊に加えてさらに4機編隊を2個送って来ることになっている。それで、4機編隊1個でティラ狩りを行って、4機編隊2個でワイバーン狩りだ。ティラの方が手ごわいが、位置を確実に捕まえておけてさらに、移動速度が遅いので対応が楽だ。

 一方で、ワイバーンの位置はあまりはっきりしないので、当たりを付けたエリアで超音波により追立てて順次退治していく予定になっている。また、ワイバーンの方の数が一桁多くて多分3千羽程度はいると考えられている。狩りの開始は1ケ月後からになる」


「なるほど、じゃあティラとワイバーンは多分数ヶ月で片付くわけですね。じゃあ、ワイガとカザンをせっせと狩ってやれば、この大陸も安全になるわけだ。そうですよね?」

 続いて長野士長が聞く。


「まあ、そういうことだな。そうなると理解すれば、ムラン人も洞窟から外に出て暮らせると理解するだろうよ。まあもう少しの辛抱だ」

 伊刈が言うのに皆が頷く。ムラン人は、誘っても中々外に開拓団が建てた家に住もうとはしないので苦労しているのだ。


よろしかったら並行して“なろう”で連載中の「異世界の大賢者が僕に住み憑いた件」及び“カクヨム”の以下のURLのRevolutionも読んでください。https://kakuyomu.jp/works/16816452219050653749

後者は前に書いたものの途中から、ストーリーを変えて書いているもので、私の小説の原点です。

作者のモチベーションアップのためにブックマーク、評価をお願いします

2025年、12/17文章修正。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ