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俺の冒険  作者: 黄昏人
第6章 異世界の再編と日本の異世界への進出、日本発宇宙時代の始まり
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ムラン大陸の開発

読んで頂いてありがとうございます。

 ムラン大陸調査団は総員380人であり、団長の河野浩二元M大学教授以下、管理部、生物調査部、資源調査部、警備部からなる。ムラン大陸はハウリンガ世界の南半球に位置しており、東西に長さ最大8千㎞、南北に幅は最大4千㎞、面積2千万㎢に達する広大な大陸であり、大部分が温帯に属している。


 中央部には山岳地と砂漠があり、沿岸部は基本的に樹林に覆われている。この広大な大陸に姿は獣人であって比較的原始的な生活をしている人々が住んでいて、人口はわずか2百万人程度と推定されている。その多くは中央の砂漠と、大森林の境目にある草原地帯の湖や川などの水辺に住んでいる。


 気になるのは大森林地域に象などより大きな生物が見えることで、ドローンが捉えた映像の最大のものは頭からしっぽの先まで長さ50m余りもある。それは地球のティラノザウルスに近い形で、鱗に覆われた表皮と、2本の巨大な足にそれに比べると小さい手に大きな頭と口がある。


 調査基地に作られたプレハブの管理棟内の会議室で、生物調査部の主として研究者グループ35人を率いる三原早紀はその映像を見ながら言う。ここは、内陸の草原地帯の真珠湖と名付けた2万㎢にもなる巨大な湖のほとりである。海岸際には魔獣が多く危険すぎるのだ。


「あれは物理的にあり得ない生物です。ティラと名付けたあれの体積は75㎥ありますから、比重1として75トンということです。対してあの足の太さであの速度で走り急激に止まっています。あれが鋼製であれば耐えられますが、生物の骨や筋肉では絶対に耐えられません。

 さらに、あの大きさで人と変わらない速度で動いていますが、あれもその巨体を動かす筋肉としてはあり得ません。だから、他の要因、魔力というか意力というかそのようなものが、構造面と動きのアシストをしているということです。だから、ジャーラル帝国の言う魔獣と言うくくりになります」


 さらに、ワイバーンと名付けた飛翔する生物の映像を映して説明する。それは嘴の先から尾の先まで15m余りで羽根を広げると20m余りもある。


「このワイバーンはまさにラノベで言うワイバーンそっくりです。体積は4㎥ですが飛翔するところを見ると比重は小さめでしょうから、多分3トンくらいの重量ですね。羽根は40㎡の広さはありますから、羽ばたきの強さによっては飛べますが、この優雅な羽ばたきでは無理でしょう」


 そう言って聞いている、河野団長や西村警備部長などを見て言う。西村2佐は、ムラン大陸調査隊の警備部長であり、警備部隊には現役の自衛官105人が配置されている。


「つまり、これらは地球にいるような通常の野獣ではなく魔獣と呼ぶべき存在であり、今私は目立つ大型のものだけ挙げましたが、今まで見つかったものだけで55種あります。これらは、基本的に極めて強力であり、人間ではよほど強力な武器が無い限り到底歯が立ちません。

 特に最強と考えられるティラについては、戦車砲でも打ち抜けるとは考えられませんし、ミサイルでもどうでしょうか?なまじの打撃や爆撃では死なないでしょうね。ただ、ワイバーンは魔力の補助があるにせよ飛ぶという特性上、比較的華奢ですから機関砲でも通用したようですね?」


「ええ、三原部長。3日前に33号飛翔機が3羽に執拗に追われたものですから、搭載していた25㎜機関砲で1羽は撃墜というか殺しました。多分数十発は撃ちこんだようです。ただ、他の2羽はそれなりに打ち込んだはずですが逃げていきました。

 そして、問題なのは、それらが火を吐いたのです。ブレスと言うのでしょうね。まあ射程は100mもいかないレベルなので本質的には危険ではなかったので良かったですが。それにさらに問題だったのは逃げる相手に空対空ミサイルを各1発放ったのですが、その2羽はそれを避けて逃げていきました」


 西村2佐が答えるが、彼の表情は真剣だ。大型獣についてはハウリンガ通商の報告書にも述べられている。それによると、ムラン大陸の人々が森林付近に居住していないのは、そのような野獣の危険を避けるためという推定である。

 西村もそれは承知しており、それらへの対処は考えてきた。ただ、彼らの交通手段は飛翔機なので、本質的に危険なのはワイバーンのみと考えていた。


 しかし、しょせんは相手は生物なのでミサイルを使うまでもなく、25㎜機関砲を数発打ち込めば追い散らせると考えていた。確かに数十発の機関砲弾で1羽は殺せたが、最初の何連射かの後は機関砲弾を避けるような飛び方をしたと言う。それに、信じがたいがミサイルを避けた映像記録が残っている。


 ミサイルは的に向かって軌道を調整できるが、一旦避けられると引き返すような機動は出来ないので飛び去ってしまうのだ。つまり、あのワイバーンは知能が高いうえに、ミサイルのように高速で迫る危険物を検知して避けることが出来ることになる。


 そこに、原住民の調査に当たっていた現地住民調査班の人類学者の岬慎吾が言う。彼はハウリンガ通商で調査に当たっていた一人だが、「ハ」世界開発機構に加わった32歳の若手研究者だ。


「そうですか、そんなに強力な魔獣がいるわけですね。この広大なムラン大陸に、こんなに人が少ない原因を考えていたんですよ。気候も穏やかで肥沃ですしね。結局その魔獣の脅威が理由ですね。ムラン人の言葉は、ほぼ解っているので聞き取りをしましたが、とにかく彼らは大森林とそこから出没する獣を恐れています。今でも頻繁に、彼らのそれなりの人数がその魔獣に捕食されているようです」


 彼の班はこの大陸のムラン人について、3つの大きな集落と接触して過去2か月ほど調査してきた。ちなみに、この大陸の名前はハウリンガ通商の調査に基づき、現地の人々が彼らが住む大地を呼んでいる名をつけた。

 ただ、無論たまたま会った人に聞いた結果である訳だから、将来他地域の者が不満を持つ可能性はある。しかし、それでも、よそ者である日本人が名をつけるよりは良いということだ。


 ところで原住民の住居は例外なく、岩山に掘り込んだ横穴住居であるが、そうでないと獣に襲われたときに避けられないためらしい。だから適地は少なく、農場もその周辺に限定されるので、常に食料は不足しがちになるようだ。


 彼らは、他の大陸の人々と同様に地球人に似ているが、獣人と呼んだ方が相応しい身体的特徴を持っている。男女に分かれているが、性別で身長にほとんど差はなく成人の場合には160㎝くらいであるが、体つきは肩幅が広く筋肉量の多い男と、乳房が突き出て柔らかいシルエットの女性では全く異なる。


 また、獣人と言うのは顔を除いて体は薄い毛に覆われている他に、30㎝ほどの毛に覆われた尻尾を持っている。容貌は全体に丸っこく、肌の色は日に焼けた日本人に近くて目は大きく耳は猫に似て位置が頭に近い。頭髪は茶色だが黒に近い色から金髪に近い色まであって、男は坊主に近いほど短く、女は肩にかかるほどである。


 服装については、男女でほとんど差はなく獣皮の靴を履いて、麻のような繊維で編んだズボンとシャツを着ているが、女性は前開きの上着で男はすっぽり被るものである。衣類に染料は余り使っていないので、白っぽい灰色だ。しかし女性は男と違って身を飾るものとして、色のついた紐で上半身を飾っている他、様々な髪飾りをつけている。


 食料には苦労しているようだが、水には困っていないようである。これは、衣類の洗濯が行き届いており、水浴びも十分している様子であることからも解る。洗濯や水浴びに当たっては彼らは簡単な生活魔法と言うべき魔法が使えるので余計頻繁にやっているらしい。


 彼らは清潔であることもあって、とりわけ女性ははっきり言って可愛い。岬の班の若い男性隊員は、村の若い女性が目について大いに気を取られたらしい。その岬班が撮ってきた映像を、他の部の者達がスマホの壁紙にしたり、プリントして自室に張っているのが目につくようになってきた。


 彼らの食料は、穀物として水田でコメの一種の栽培をして主食にしており、様々な野菜や果物も栽培しているほかに、草原で野生の様々なものを採取している。その上に、ウサギやタヌキに似た生物を家畜として飼って肉を取って毛皮を利用するほか、魚や貝を捕食している。

 しかし、魔獣を避けるために洞窟に住むしかないという条件から、十分な面積の水田の栽培はできず、作物の植え付け、さらに家畜の飼育の頭数も限定的である


 彼らは、温帯の肥沃な土地に住んでいるという恵まれた条件であるにもかかわらず、魔獣が跋扈する地で生きていくという過酷な環境で生きてきた。そのために、知能は発達しており、古くから鉄器、焼き物は作っていて、武器も槍、剣、弓も弩を実用化している。実際に岬らの調査では、彼らの平均のIQは100前後なので、地球人に劣らないと言えよう。


 だからすでに社会を形成する段階になっているが、強力で絶対的に敵わない敵がいるために、洞窟に住むほかに選択肢がなく、限定された農場もしばしば荒らされるという制限が多い生活を営んでいる。そのため、都市を築くことができず大きな勢力も現れないために、文明社会を築く余地がなかったのだ。


「結局、この魔獣をどうにかしないと、原住民であるムラン人もこれ以上の発展の余地はないし、日本から移住者を連れて来ることはできないですよね。まあ、魔獣にも生きる権利はあるでしょうが、極めて凶暴で決して懐かないということなので、害獣選定一択で滅ぼすしかないと思いますけど、どうなんでしょう。河野隊長?」


 三原女史が調査団長の河野に聞くと、じっと議論を聞いていた白髪の元教授が答える。

「うーん。確かに、ジャーラル帝国が魔獣について調べており、魔素を吸収して魔獣化した生物はどのようにしても懐かないと言う結果になっている。この基地はティラとかワイバーンには襲われてはないけど、結構大型の魔獣に襲われているよね。


 今のところ重機関銃で撃退できているけど、我々だってティラが来たら逃げるしかない。たしかに。ムラン人が都市を作れないのも解る。まあ、魔獣は滅ぼすしかないけど、容易なことではないよね。西村さん?」


「ええ、団長。はっきり言って、我々が持ち込んでいる武器と要員では不可能です。ただ、重火器で手に負えないティラほどの魔獣は少なく、ティラの場合多分全部で100匹以下、飛行魔獣であるワイバーンも精々2~3百羽のはずです。ワイバーンは重力エンジン戦闘機雷電をもってくれば一掃できると思います。


 またティラとか巨大魔獣は、静止軌道からも十分マーキングできます。だから、軌道から岩石でピンポイントで爆撃してやれば良いと思いますよ。ハウリンガには小さいですが3つの月があって、重力エンジンで引っ張ってそこから持ってきてもいいし、マジックバッグを使えば地上から持って行ってもいいですね。だから、この大陸上空に静止衛星を設置して、まもる型の宙航機をもってくればいいのです」


 それを河野隊長は顎に手を当てて聞いていたが賛同する。

「うーん、なるほど。それはいいね。どのみち気象観測に静止衛星は要るよね。それに宙航機を使えば、人工衛星を必要な軌道に必要な速度で置いてくるだけだ。これにはマジックバッグが使えるものね。4機設置するとしてたしか1機1億円位だったな。

 それに、宙航機にマジックバッグの組み合わせだったら高度300kmから1トンの岩を落として、空気抵抗を考えても速度は秒速2㎞を超えるな。さらに、落ちたときは空気との摩擦で灼熱になっている。まあこれなら如何なる魔獣も耐えられんだろう。ただ、ピンポイントでは当たらんだろうなあ」


 元教授の団長はスマホでチャカチャカ計算しながら言って、顔を上げて皆に更に言う。

「うん、本部に僕から提言するよ。気象観測機能・GPS・地上観測機能のついた静止衛星を4機調達する。さらに宙航機2機、雷電型戦闘機4機編隊の一時配置というところかな。さらに、ムラン人向けに重機関銃を持った飛翔機を10部隊の増援というところだね。

 その前提条件として、軌道からの巨大魔獣への岩石爆撃の許可とワイバーンの撃滅の許可がいるな。ああそう言えば、各魔獣への爆撃には岩石が最低10発は要るな。ピンポイントでは当たらないものね。どうかね、こんなところで?」


「は、はあ。いいと思いますよ」

 というのが、返事をした西村2佐を始め出席者の正直な心情だが、その中で岬が言った。

「ええ、それで危険性が高い魔獣の排除は出来ると思いますが、ムラン人への危険な魔獣は残りますよね。だから彼らにも自衛手段を持ってもらうのも必要だと思いますけど、どうでしょう?」


「うん、岬君の言うことは心情としては判る。だけど、僕らは彼ら独自の集落をつくるのではなく、日本人の植民する人々と一緒に住んでもらいたいんだ。そうして、彼らの文化も生かしながら、僕らの現在文明に染まってもらおうと思っている。そして、この大陸に根づく新ムラン大陸自治区かな、その一員になってほしい。

 あくまで、重火器を持った自衛はその自治区なりの自衛隊にやってもらうということだ。僕は、ずっと魔獣の脅威にさらされてきたムラン人は、そうなることに大きな抵抗はないと思う。まあ、この大陸が魔獣の恐怖から解放された後に自分たちで住みたいと言えば、それを妨げる必要はないと思うけれどね」


 この河野団長の返事に、三原女史も同意する。

「私も河野先生の言う通りだと思うな。ムラン人達が警戒心が強く、他を嫌う人々だったら彼らがこれまでと同様に纏まって住むのもありだだとは思う。だけど、魔獣の脅威を取り除いた場合には、洞窟でなく外に都市を作り、その周りに広い農場を作るのは既定の路線だと思うのよ。

 その場合、彼らが最初から日本から来た人々と一緒に住むと言うのは、特に違和感はないと思う。岬君の報告でも、彼らは魔獣に対しては恐れ、大いに警戒しているけれど、君らのチームにはほとんど警戒しなかったと言っているよね。たぶん、魔獣の脅威が大きすぎて人同士は争う余裕がなかったせいね。


 それと、日本人の側から言えば、彼らの見かけがあるよね。彼らはこう言うとあれだけど、愛らしいのよね。水に恵まれているせいもあるだろうけど、清潔でいい匂いがするというし、少なくとも日本人の側から彼らと一緒の町に暮らすことに抵抗はないと思う。

 疫学的には、ハウリンガ通商がかなり詳しく調べているから、あちらからはまあ心配はないだろうし、こっちも検査と対策はしているしね。

 いずれにせよ、政府が“国民として公平に扱う”と公的に言っているから、そのように制度上はなるだろうけど、心情的な“差別”というのはあるよね。その点で私が安心したのは、彼らの知性に関する調査結果よ。厳しい状況に置かれてきたためだと思うけど、地球の平均とほぼ同じくらいよね。


 身体的は、日本人より、かなり能力は高いね。それと、日本人として無意識に好意を持つ見かけと雰囲気からすれば、彼らを見下げる人は少数だと思う。すでに、ハウリンガ通商の社員が十数人も獣人の女性と結婚して子供を作っているから、互いに生殖は可能でしょう。多分、植民が始まると混血児が沢山生まれるよ」


 魔獣への亜宇宙からの爆撃の申請は、機構のみでは決まられず政府に挙げられたが。政府も簡単には決断を下せなかった。なにせ、日本のみならず世界にはヒューマニズムとかで、動物にまで保護の広げる人が多い。特に、過去数千万の黒人を奴隷貿易で殺した白人がね。


 だから、魔獣が人と共生不能という根拠のジャーラル帝国からのさらなる提供、聞き取りによるムラン人の被害の資料を基に、ようやく軌道からの爆撃などの魔獣対策が閣議決定されたが、半年ほどの時間を要した。


よろしかったら並行して“なろう”で連載中の「異世界の大賢者が僕に住み憑いた件」及び“カクヨム”の以下のURLのRevolutionも読んでください。https://kakuyomu.jp/works/16816452219050653749

後者は前に書いたものの途中から、ストーリーを変えて書いているもので、私の小説の原点です。

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2025年、12/17文章修正。


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