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俺の冒険  作者: 黄昏人
第4章 俺のために地球世界と異世界は大きく変わっていく
39/84

空間イージス建造

読んで頂いてありがとうございます。

「いってらっしゃい」

 ドアを開けたシャイラに見送られて、俺は部屋を出て会社に向かう。俺は、ほとんどの場合はRGエンジニアリング(株)に通っていて、ハウリンガ通商には数回の日本滞在の内1回行くかどうかであってあまり顔を出さない。


 これはハウリンガに行っている間は、ハウリンガ通商の仕事をしているようなものなのでこうなっている。しかし、最近では日本での仕事の規模がだんだん大きくなってきて、引っ張り込まれるプロジェクトが多くなり、あまりハウリンガに行けないようになってきた。


 このこともあって、シャイラを呼び寄せたのだが、彼女は今、同じ棟に住むハウリンガ通商の社長山下の妻の沙耶さんから、日本に住むための指導を受けているところだ。それはまずは、主婦と夫が住むマンションに必要な家具、様々な生活用品、服や食品の購入から始まり、そのための買い方の練習、さらに屋内の器具の使い方の指導が含まれている。


 買い物の金は、むろんカードを渡しているので問題はないが、日本語は念話による指導である程度しゃべれるがまだ付き添いが必要なレベルである。一方、世界でも難解と言われる日本語の書き言葉は、いまだほとんどできないが、数字の読み書きだけはできるようになっている。


 むろん、そのような必要なことをするだけでなく、シャイラは沙耶さんと娘の中二の安奈に連れられて様々なところに出かけて、様々な小物の買い物と食べ歩きを楽しんでいる。さらには、博物館、動物園、水族館、遊園地と回ってまったく違う日本の文化の成果を大いに楽しんでいる。


 ちなみに、彼女に関しては日本への在留資格取得の問題があったので、これについては俺の配偶者として専門家を雇って必要な書類を整え申請させて資格を取得した。むろん、彼女の出身は地球上ではないので、どうするか考えたが、結局政府にも話をして真実を伝えることとした。


 必然的に俺が次元の壁を越えて異世界を往復可能なこと、さらにハウリンガのことが判ってしまったが、元々ハウリンガ通商という社名を選んだ時点で、いずれそれが知れるのは承知していた。そこで問題になったのは、病原菌による疫学的な安全性であった。


 これについては、ハウリンガ通商として15名の専門家を雇って徹底的に調査をして、当面訪問予定の地で危険な病原菌やウィルスがまん延していないこと、さらにゲートを通過時の安全策を確立している。このような議論と調査さらに手続きをへて、シャイラの在留資格が発行されている。


 俺が日本で忙しくなった理由の一つが空間イージス基地の建造である。これは日本政府が、そら型の“まもる”機によって実証された亜宇宙でのミサイル迎撃の有効性を認め、亜宇宙に恒久的な防衛基地を建造することを決定したのだ。


 この決断に至ったのは、KT国の日本への挑発、C国の尖閣列島への攻撃と、露骨な両国の軍事行動があった。これに対して、重力エンジン機という実用できる防衛手段があるのだから、早期に実用化すべきという大きな声が国民から上がっているのだ。


 それに、この全く新しいシステムは、廃案とされた陸上イージスよりはコストが高いが、代わりに計画されたイージス艦2隻よりは安くつくことが算定されている。だから、防衛の有効性は大きく高いので、費用対効果(B/C)は遙かに優れている。


 ただ、この計画には、例によって左巻きのマスコミと野党の先生方が『専守防衛に反する』と騒いだ。しかし、世論調査の結果、8割以上の配備賛成の支持を得たのを見て黙ってしまった。

 この空間イージス基地は、基本的には日本上空500㎞に占位する、概ね長径20m短径7mの葉巻状の機体であり、亜宇宙間迎撃ミサイルを通常100発を積んで管理乗員は6名となっている。ミサイルの収納は、無論マジックバッグで行っているために、これほどの数のミサイルが装備されている。


 基地とは言え、重力エンジンを積んでいるので実際は宇宙船と変わらず、自力で定位置に昇っていける。だが、新開発の大型重力エンジン2基を搭載していても700トンに上る重量のために、最大加速は1Gに留まっている。実のところ左巻き連中が騒いだのはこの自航能力であり、『世界中どこにもいける』ということで、侵略に使えるということだ。

 確かに、迎撃ミサイルとは言え、100発ものミサイルの攻撃力は強大ではある。


 とは言え、この空間イージス基地『さきもり』型は、基本的には地上との往復はせずに空中に留まる。乗員は、5日ごとに半数が搭載能力を高めた“そら型改”で交代するのだ。この際に、基本的に交代要員を乗せてきた“そら型改”は、“さきもり”とドッキングした状態で次の交代のための降下まで上空に残る。


 なお、“さきもり”は500㎞上空の日本上空の亜宇宙に停止するが、秒速10㎞ほどの必要な軌道速度で周回していないので、重力エンジンを常に稼働する必要がある。この自由な高度で定点に留まれる点が、動力は消費するものの重力エンジン機の最大のメリットである。


 その動力はAC電池であるので、交代要員の乗せてきた“そら型改”によって他の補給物資と共に運んでくる。このように、重力エンジン機が無ければ、空間イージス基地などという発想そのものがなかっただろう。さらに、補給と乗員交代にACバッテリーの電力を消費するのみの重力エンジン機を使えるのも計画の条件の一つである。


 それに加えて、長期宇宙に留まる場合の重力エンジンのメリットの一つは、機内の重力をコントロールできることである。無重力の宇宙機内に人間が長期間留まると筋肉の衰えが著しい。しかし、1Gを保てる上に、最小限の広さではあるが運動できる設備を整えた“さきもり”では、その心配なく長期の滞在が可能である。


 “さきもり”などの常時稼働が必要な設備は1機体制ということはあり得ない。だから、2機で運用することが当初から決まっているために、2機が同時に完成している。また、日本のみがこのような絶対的な防衛兵器を持つことを、“国際社会”が認めず、現在10機の機体が完成して艤装中であり、1か月後には完成の見込みである。


 日本はあくまで2機体制の運用であり、4機をアメリカ、2機を欧州、2機をインドと東南アジア、1機をC国、1機をロシアに売却する予定である。ただマジックバッグを購入しているのは日本とアメリカのみであり、これがないとミサイルの装備数は最大8基止まりになる。


 とは言え、宇宙から見下ろす形で基地からミサイル発射を見張り、上空から迎撃ミサイルを打ち下ろすことが出来るということは防衛側に極めて有利である。これはミサイル自体が、まず最も推進薬を消費する高空までの上昇が必要ない。そして、逆に重力に味方されて飛翔するので、小型ミサイルでも有効射程が大幅に伸びることになるのだ。


 ちなみに、日本が売るのは航行能力を持った重力エンジン機であり、レーダー設備と武装は各国で行う。このうち、製造については、重力エンジンは無論我がRGエンジニアリング、それを組み込んだ本体はM重工であるが、販売そのものは日本国政府が行うことになっている。


 “さきもり”は、外装板は25㎜厚の高張力鋼であり、形と構造は小型潜水艦に近いため、潜水艦の建造実績があるM重工が担当するのは当然である。ミサイルランチャーは機内に装備されているので、目で見てマジックバッグから出して装填できるため、俺でなくとも装填が可能である。

 機内には4人分のベッドがあり、正副操縦士の席と限定的な監視機能のパネルが備えられた座席が2席設置されている。


 さらに、機内には簡易キッチン、シャワー、3m×3mの運動マシンが供えられたスペースが供えられている。また、水は満水で3㎥の清水タンクが備えられて、これは飲み水や調理に使い、1㎥の再生水タンクは乗員が使った水を再生して、トイレの洗浄やシャワーに使うようになっている。


 機内では湯を沸かす程度で料理は考えておらず、食事はパックしたものを温めるか解凍して摂り、果物や様々な飲料も用意されている。だから、5日ごとの補給と交換品・廃棄物回収の量は水に食料やバッテリーなど3トン以上に上る。


 ちなみに、“さきもり”型の防衛システムであるが、積んでいる迎撃ミサイルは当然自分への攻撃するミサイル等への防衛にも使える。そのほかにも25㎜機関砲を4門積んでいるし俊敏なそら型機が常時帯同している。


 この機が実際に攻撃されるとしても、戦闘機などははるかに攻撃圏外である。無人衛星からの電磁波や、ミサイル攻撃はありうるが、基本的に可能性の高いのは地上からのミサイル攻撃である。しかし、地上からのミサイル攻撃ということは、重力の底から弾頭をロケットで打ち上げることになる。

 これを迎撃することは、近接信管の機能があるので弾道弾を撃ち落とすより簡単である。有人飛行のできるこの“さきもり”を撃墜することは実際的に困難と言わざるを得ない。


 また、なぜ敵性国家であるC国とロシアにこれを売ったかであるが、基本的には“さきもり”型は動きの鈍い防御専用の機材であり、そら型を持つ西側国家にとっては、それを持つことによる脅威にはなりにくい。また、安全策として核をこの機に積んだ場合には検知できるようになっており、その場合には重力エンジンの機能を止めるようになっている。


 また、この措置は西側のみが一方的にほぼ完ぺきな弾道弾防御システムを備え、それに対抗するC国やロシアには無いというのは不公平であるとの議論が一定の支持を得たことによるものだ。つまり、彼らを空中基地が入手できない状態にしておくと、軍事的な暴発に至る可能性があるということが懸念されたわけだ。


 もちろん、これらの国々は重力エンジンの製造方法を知ろうと必死の努力を続けてきた。流石にすでに海外への配備が始まった雷光型戦闘機、そら型宙空機は入手していないが、ハヤブサを1~2機は入手して、ばらして構造を調べたらしい。


 だから、エンジンの構造そのものは判っただろうが、これは全く同じ材質で同じ部品を使って組み立てても機能しないのだ。このためには、一定の素質があって、訓練を受けたものが増幅した意力を用いて、いわばキーを活性化する必要がある。


 そして、俺は無論、調査を頼んだ学者もそのキー作動原理を理解していないので、バトラの言われるとおりに製作するしかない。さらには、その材質についても、地球の冶金の知識に反する合成方法を使うために、仮に成分を正確に分析できたとしても作るのは無理だろう。


 つまり、製造方法を正確に伝授される以外に重力エンジンの製造はできない。そのため、RGエンジニアリングの社員が誘拐されるという試みが何度も行われ1回は実際に誘拐された。しかし、実際には製造のすべてを知っているものはおらず、誘拐された社員も一部の部品の製造について知っているのみであった。


 このことは誘拐された本人から伝えられ、さらに大々的な捜査網が敷かれたために、ビビった犯人たちが解放して逃げ出したために誘拐された社員は無事であった。ところで、“そら型改”についても、“さきもり”と同様の販売方法をとるが、これは容易に宇宙戦闘機に改造できるために、敵性のC国やロシアへの販売は固く禁じている。


 だから、1機しか買えなかったC国とロシアは、空中基地“さきもり”の運用は地上と往復させることになる。そのために規定高度に昇るのに1日、地上に降りるのに半日を要することになるために、要員交代と物資補給時に2日のブランクが生じることになるのだ。


 その他の国々はそら型を購入できているので、日本と同様にまもる型を用いて要員交代と補給を行うことになっている。ちなみに、この日本政府のみならず世界に広がる空間イージス建設計画のRGエンジニアリングの役割は、基本的にはエンジンの供与のみであるが、大型化が必要になったために俺も忙しくなったのだ。


 ロケットであれば、多数のものを連ねれば出力を自由に増大できるが、重力エンジンの場合には同期が難しく現状のところ2基のエンジンの同期が限度である。このため、機体が大型化すると大型エンジンが必要になるのである。エンジンの大型化は、旅客機への重力エンジンの適用のために進めてはいたが、より緊急の要求として挙がってきたわけだ。


 結局、さきもり型のエンジンの開発によって、大型旅客機への重力エンジンの適用が可能になったわけで、今後旅客機の重力エンジン機への転換がどんどん進むことは間違いない。日本政府の“さきもり”実用化は、KT国とC国、ロシアそしてアメリカにとっても、膨大な費用を費やして営々と建設してきた大陸間弾道弾が、日本に対してはほぼ無力化することを意味するわけである。


 さらに、同型機が世界中に配備されることは、世界的に中長距離ミサイルの有用性を失わせる。しかし、むろん飛翔時間の短い短距離のミサイルに空中基地が対応することは難しい場合があるので、ミサイルそのものの脅威は残っている。


 大陸間弾道弾を所有する国々で、大きな影響をうけるのは覇権争いをしている、アメリカにロシアとC国である。KT国は、大陸間弾道弾を持つという証拠はなく、それらの国に比べると大幅に小粒であるが、近隣の日本にK国それにC国にとっては核を積んだミサイルは十分な脅威である。


 日本の“さきもり”配備に最も影響を受けるのは、日本に対する核の脅しが効かなくなるKT国とC国それにロシアであろう。事実この3国は様々に日本の空中防衛基地配備計画を非難してきた。だから、日本国内の左巻き連中がその計画に反対すると、これらの国々の手先とみなされ、その声が一般の人にほとんど影響を与えられなかった原因になっている。


 C国とロシアに“さきもり”型の販売を決めたのは、ヒステリックになってくる両国の暴発を抑えるためという意味もあった。またアメリカについては、その大陸間弾道ミサイルシステムが実質無力化することに思いはあっただろうが、通常兵器において世界一の実力を持つことは明らかなので大きな痛みは感じていない模様だ。


 核兵器という存在は大威力を持つ大量破壊兵器だけに、万が一にも自分たちが食らうことを避けなければならない。だから、核を持っておりそれを脅しの道具に使うことをためらわないKT国に対して、大国が譲歩を重ねてきたのはそのためである。従って、KT国の独裁者が権力を失うのは間もなくであろう。


 欧州を含めて世界にこの空中基地が配備された場合には、ロシアも失うものが多い。この国はまだ国力が盛んなころに大陸間弾道弾の巨大なシステムを作り上げた。そのうちの、どの程度が実用に耐えるかわからないが、この核戦力の故に世界の大国としてふるまってきた。


 しかし、ロシアの経済力はK国並みであるため、当然軍備に費やせる予算は少ない。なので、一般的な戦力はC国に大きく劣るであろうし、増してアメリカ相手では鎧袖一触である。だから、核兵器の有効性に疑問が生じた今、その世界への影響力は今後どんどん下がっていくのは間違いない。


 C国であるが、現在明らかに世界中からはぶられつつある。投資は引き上げられ、あらゆる協定からは排除され、輸出入が減少して経済が落ち込む中で全国の暴動がどうにもならないほど広がっている。かの国のGDPは粉飾されているという評価があったが、それがだんだん真実であることが判ってきた。


 ただ、C国の厄介なのは、核のみならず一般戦力についても戦力を拡充しており、陸上戦力に航空戦力及び海上戦力において、2年前に尖閣沖で戦闘機や攻撃機を100機以上も失っても未だ日本に勝る点である。ただ、防衛という観点で見ると、最大の戦闘力を持つのは重力エンジン機であり、それを世界で最も多く持つ日本はC国に勝るであろう。


 その点はわずか2機のそら型宙航機が、100機以上の最新型の戦闘機と攻撃機を撃墜したことからも明らかである。増して、今や日本はそら型宙航機を38機、電光型戦闘機の100機以上が配備され、“さきもり”も2機が完成して公試も済ませている。


 C国空軍は日本への攻撃を迫る共産党首脳部に『勝てないのは明らか』と拒絶したという。だが、一番焦っているのはKT国の独裁者であり、例の国営放送で散々日本への脅しの言葉が並べられたがいつもの事なので相手にされていない。


 それに日本には、そら型が多数あるので、“さきもり”の実用化前には交代で最低1機は日本海上の亜宇宙に占位している。だから、少なくともKT国から飛んでくるミサイルには対応は可能である。

 KT国の場合には対処が楽なのは、飛んでくるのはミサイルのみで、その数も最大で2~3発であるという点だ、だからそら型のランチャーにセットしている6基の迎撃ミサイルで対処可能である。

 結局、KT国の独裁者も、撃ち落とされるのがほとんど確実なミサイル発射はできなかった。


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趣の違う「日本列島、時震により転移す」も良かったら読んでください。

https://book1.adouzi.eu.org/n0417ge/

2025年、12/16文章修正。

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