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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
天文17年(1548年)

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第七十一話・佐治水軍強化計画?

side・久遠一馬


 佐治さんの大野城は知多半島の西岸側にある。常滑焼きとして有名な場所と言えば分かりやすいかもしれない。


 大野港がある場所であり、伊勢湾の交易の中継地点として重要な場所だけど、知多半島には大きな川がなく水利が悪いのがこの時代では致命的な欠点だろう。


 史実においても愛知用水ができるまでは、水に苦労していた土地だとエルが言ってたしね。




「なかなかの賑わいではないか」


「全ては殿や久遠殿のおかげでございます。津島や熱田から東に行く船が一気に増えましたからな」


 今日はエルやジュリア、ケティや一益さんたちに加えて、信長さんも連れて佐治さんの大野城に来ている。ウチの船で津島から来たから速かったね。


 大野港は通常の伊勢湾の交易の他にも、今川や北条との商いの船で賑わっている。今の織田を支えてるのは伊勢湾の交易であり、佐治さんはちゃんとそれを理解しているみたい。


 例によってエルたちは衆人の注目を集めて、多少騒ぎになったみたいだけど。


「お望みの滑車は持参しましたよ」


「おお! ありがとうございます! それでいかほどでお譲りいただけるので!?」


「それなんですけどね。銭ではなく少しばかり私の商いに、協力して頂けないかなと考えてまして」


「商いでございますか?」


 滑車はとりあえず欲しいと言ってたんで、それなりの数を運んできた。ただ代金は銭じゃなくて、ウチの事業に協力してほしいんだよね。


「一つは大きな網を持参しました。津島と熱田で使っている物です。御存知でしょうが。あれで漁業をしてほしいのです」


「噂は聞いております。何でも干した鰯が売れておるとか」


「本当はあれ、食べ物じゃなくて肥料としてお願いしたんですけどね。普通に食べ物として売れちゃって」


 お願いの一つは漁業だ。干鰯作りを頼みたい。津島と熱田で作ってるけど、普通に食べ物として売れちゃってるんだよね。


 史実のように油の絞り粕とかじゃなく、そのまま干してるからだろうけど。


 尾張だと農民でもちょっと頑張れば食べられる程度の値段らしく、地味に売れていて評判もいい。


「ほう。そうでしたか。こちらとしては、むしろお願いしたいくらいですな。此処は米がほとんど取れませぬので」


「他にも海でやりたいことがあるんですよ」


「某としては儲けになるならば構いませぬが、よろしいので?」


「津島や熱田は少し人の出入りが多いですから。こちらのあまり外の人が入らぬ場所でやりたいんです」


 佐治さんの反応は悪くない。米が取れないだけに収入源を増やさなければならないのは理解しているみたいだ。


「ここは米があまりとれぬ土地ですので、食べていくには海に出るしかありませぬ。交易で暮らしておる我らから交易を取り上げられると、何もできませぬ。久遠殿のような船が増えれば我らは食べていけなくなりまする。我らに新たな仕事を下さるなら喜んで協力いたしますぞ!」


 うーん。やはり交易に携わってるだけに話が早い。ウチの力も理解してるみたいだし、意外に侮れない人かも。


 ガレオン船の特性も地味に理解しているし、影響も考えてるのか。まあガレオン船が日本に根付くかは分からないけど、その可能性に気付いてるのは凄い。




「かず。植林はやらぬのか?」


「ああ、それもありましたね」


「植林でございますか?」


「はい。この辺りは少し山の木が足りません。なので植林も同時にしていただければ、将来のためになります。一部には桑とか柿に栗やみかんなど植えれば、将来は更に楽になります。ウチの南蛮渡来の知恵で協力しますからやりませんか?」


「まあ、食うに困らぬ程度ならば……」


 知多半島の安定と佐治水軍の強化は必須だ。幸いなことに佐治さんは歴史的にも目の前の本人も、進んで裏切るタイプではないだろう。


 もちろん油断するべきじゃないし、織田弾正忠家との経済的な繋がりで、しっかり繋ぎ止めておかなくては。


 困った時の南蛮渡来。南蛮技術ということにして植林もしてもらおう。




「これは何でございますか?」


「海苔を板状に干した物です。佐治殿には海苔を養殖してこれを作ってほしいんです」


 さて協力してくれるからには、利益になる話をしなくては。


 まずは海苔の養殖から始めようか。真珠なんかもやりたいけど、真珠ってこの時代の日本だと、薬に使うくらいで需要がないんだよね。でも、伊勢湾で真珠の養殖ってできるのかな? 志摩半島でも太平洋岸でしかやってないからな。後でちゃんと調べないと。


 真珠は海外向けに売れるだろうけど、その価値はまだ理解しにくいかもしれない。それに比べて海苔は食べれば分かるし、割と早く育ち収穫もできる。


「握り飯に巻いたりしたら、美味しいんです」


「ほう。ではせっかくなので用意させましょう」


 オレ達が持参した板海苔を佐治さんが用意したおにぎりに巻いて、オレたちや佐治さんの家の人と一緒に試食する。


 この時代で海苔を扱う欠点として湿気ることがあるけど、軽く火で炙ればパリパリの海苔になる。


「なるほど。確かにこれは美味い」


 米はこの時代の玄米だったけど、パリパリの海苔と塩の味でかなり美味しくなる。


 元の世界ではコンビニの百円おにぎりは、田舎でも買えるような当たり前の物だったからな。ちょっと懐かしくなるね。


 佐治さんの家の人たちの反応もいい。味もいいし新しい品物はお金になるからね。最初の設備投資の費用はウチで出すから頑張ってほしい。


「これを作れるのですか?」


「ええ。ウチに技術がありますので」


 佐治さんの家中の空気が和んだとこで、具体的な話をしよう。


 まずは網の大型化で漁業の収入アップして、海苔を筆頭に養殖をして安定させる。あとは山の植林や山の斜面で育つ野菜、史実に倣うならフキとか育ててもらうべきだろうね。


 史実に近い品種を持ってくるか。


「まさかこれほどの話を頂けるとは」


「船の方も少しずつ改良していきましょう。南蛮船は遠方に行くための船なので、すべての構造を変更する必要はありませんが、和船にも使える技術はいろいろありますから」


 気前よく技術を渡して経済的な繋がりでしっかり繋ぎ止めたら、余程の馬鹿じゃない限りは裏切らないだろう。


 史実の信秀さんが亡くなった後のようなことにする気はないしね。


 頑張れ佐治さん! 織田弾正忠家の未来は佐治さんに掛かってるぞ!


 打倒村上水軍を合言葉にしようか?


 うん。まだ早いよな。分かってる。



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