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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
天文16年(1547年)

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第三十四話・変革の歪み

side・久遠一馬


「家中で一部に、私たちと若様のことを苦々しく思ってる者が居ます」


 様々な試みが始まり、美濃と今川対策も今のところ悪くはなく順調だけど、急激な変化に最初に反応したのは織田弾正忠家の家中らしい。


「史実の信行派の人たちかな?」


「はい。正確には林兄弟です。柴田勝家様は現状ではまだ信行様の家老ではなく、特に動きはありません。奥方様の治療も影響しているのでしょう」


「平手様も、意外にと言えば失礼かもしれないけど、策士だよね」


 ケティは勝家さんの奥さんの治療をした後も、織田弾正忠家の家臣たちの家に往診に行っている。


 往診先は政秀さんが決めていて、こちらは頼まれて行く形にはなってるけど、実質的な家中の融和と取り込み策になっている。


 津島や熱田は商売を通じて関係を深めているけど、それ以外の土着の武家とは関わりがなかったからね。


 病に苦しむ家族を診察して治療すれば、感謝することはあっても敵意は持たないだろう。上手くいけばオレたちや信長さんに協力してくれるかもしれない。


「林兄弟か。兄の秀貞さんは、史実だと一度許された後は割と忠実だったイメージがあるけど」


「現時点では若様の筆頭家老になっていますが、若様と合わないようで名ばかりの筆頭家老になりつつあります。私たちの試みからも除外されていますから」


 ここで厄介なのが、林秀貞さんと林通具さんの林兄弟だ。嫡男の筆頭家老になるくらいだから、家中でも影響力と実力があるのは確かだと思う。


 問題は、この人、信長さんと合わないんだよね。


 まあ歴史を見ると代替わりの時に先代の重臣が疎まれるなんてことはよくあることだけど、この二人もそんな感じに見える。


 秀貞さんからすると、自分の意見を聞かず、諌めてもなしのつぶてなんだから面白くないよね。


 プライドが高い人なんだろうって思う。オレは那古野城に挨拶に行った時に顔を合わせて以来会ってないから、詳しくは知らないけど。


 この時代だと、家臣が主君を追い出したりするのは時々あることなんだよね。


「どうしよっか」


「こちらからは迂闊に動かぬ方がいいかと」


 この件の情報源は今のところ二つある。


 一つは史実を元に林兄弟に虫型の無人偵察機を配置した情報と、もう一つは津島の大橋さんが教えてくれた情報だ。


 自分の知らぬところで工業村と牧場の工事が始まり、交易の話からも外されているからね。


 ただ、これに関しては、信長さんが相手にしてないというのが正確なところだ。


 オレたちが来るまでの信長さんは、政秀さんや秀貞さんの注意を聞かなかったらしいし、その延長なんだろうけど。


「どうも、土田御前様を焚き付けているのは、弟の林通具様のようです。若様と違い、手元で育てている信行様の方が織田弾正忠家の当主に向いている、などと囁いているようでして」


 うーん。史実で信秀さんが亡くなるまではまだ数年あるはずだけど、亡くなる数年前から具合が良くなかったという資料もあったはず。


 でも今の信秀さんは健康みたいなんだよね。前に家に泊まりに来た時にケティが直接信秀さんを診てるから、それは確かだろう。


 まさか毒を盛られてたなんて、ないよね?




「林通具さんのこと監視してる?」


「はい。彼は史実で若様を切腹させようとしましたので、要注意人物にしてます」


 史実に拘る気はないけど、なんか怪しい人だな。


 考えてみると、林兄弟が動いたのは信秀さんが亡くなってからなのは明らかだけど。信秀さんが亡くなる前から信長さんをよく思ってなかったのは事実だろうし、水面下で何か動いていた可能性も否定できない。


「オレたちが時計の針を進めたために、炙り出されてきたのかな」


「武家に限らず、人の集団や組織では、多かれ少なかれ対立や争いはあります。逆に言えば、無ければないで問題とも言えます。この時代だと武力や力で解決しようとしますが」


 こうして考えると史実の信行さんは、担がれてその気になった御輿だったようにも思えるな。


 個々の好き嫌いから権力争いまで絡むせいで、一概にどれが決め手だとは言えないけど。


 この世界の信行君は、まだ十一才の子供で元服すらしていない。彼の守役は林兄弟の弟の林通具さんみたいなんだよね。




「殿、お呼びで」


「織田家中に、うちのことを快く思ってない人が居るみたいなんだ。まだ誰とは言えないけどみんなも気を付けてほしい」


 そして翌日には資清さんと一益さんと益氏さんに、具体的な相手の氏名は言わないけど、家中の不穏な動きについて話していた。


「それは若様の筆頭家老を勤める林様とその弟では?」


「なんだ。知ってたんだ」


「津島の商人の間で密かな噂になっております。身辺に気を付けるようにと、助言を頂いた人も居りますれば」


 だけど滝川さんたちに驚きはなく、すでに同様の情報を基にうちの屋敷や家臣たちの身辺も警備を厳しくしてるみたい。


 エルは知ってたんだろうな。知らなかったのオレだけだったりして。


「情報提供をしてくれた人にはお礼しないとな。何がいいかな?」


「商いの取り引き先ですので、あまり大袈裟な謝礼は不要かと。酒と食べ物などで宜しいかと思いまする」


「じゃあ、品物は出すから、情報を聞いた人がお礼しておいて。あと情報提供者は次回から取り引きの参考にするから、誰が教えてくれたかはあとで報告して」


「はっ」


 滝川さんたちって本当に有能だわ。オレたちやることほとんどないよ。


 資清さんなんか、うちの屋敷の警備体制が危ういからって言うから任せたら、きっちり警備体制整えてくれたんだよね。


 オレが付けた条件は、七日くらいの間隔でみんな一日ずつは休ませるように言っただけ。


 この時代だと盆と正月以外は休む習慣がないんだよね。


 ともかく大丈夫だとは思うけど、裏と表の双方で警戒して注意しないと。


 あとは信秀さんの身辺にも、無人偵察機を張り付けておくべきかな。


 謀叛を起こされたり毒殺でもされたら困る。



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書籍版戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。

第十巻まで発売中です。

― 新着の感想 ―
[一言] 織田家内の謀反の警戒かぁ、、、今(1559年あたり)の新人さんが聞いたらひっくり返るぐらい驚きそうだなぁ
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