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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
天文18年(1549年)

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第三百六話・土岐なき美濃

Side:大湊の会合衆


「どうだ?儲かったか?」


「ああ、大分儲かったな」


 美濃の守護様が亡くなられた。流行り病と聞くが家臣に殺されたようだ。まあそれはいいが、今回は本当に儲かった。


 兵糧や武具を美濃に売ったばかりか、高い値の米相場を落とすために大量に米を売ったんだからな。売った米は美濃の商人に泣きつかれて、半値以下で数日もしないうちに買い戻すことになったが、恐ろしいほど儲かった。


「それで、織田様にはいかほど払えばいいんだ?」


「儲けはわしらの取り分だそうだ」


「本当か!?」


 これだけ儲かったんだ。矢銭を要求されるかと思ったが、尾張にいる湊屋の隠居の話ではこっちの儲けは大湊の取り分だそうだ。気前がいいと言えばそうだが、逆に恐ろしいとわしは思う。


 現に湊屋からは『今後も頼む』という一言があった。米相場の操作は敵国には脅威になるだろう。わしらは今後もその片棒を担がねばならぬということだ。


 これが良いことか悪いことか、判断に迷うな。だが今回ではっきりした。仮に南蛮船がなくても久遠様は武家としても商家(しょうけ)としても生きていけるだろう。絶対に敵に回しては駄目なお人だ。米を転がすだけで儲けたばかりか、美濃者の生き死にを実質握っておられることを示してしまったのだからな。大湊とて伊勢の海のまことの支配者たるあのお人のご不興ふきょうを買えば……。


「今川家と縁があるところは覚悟したほうがいいな。次は駿河だろう?」


 織田様は長年の懸案だった敵を減らした。和睦の証として斎藤家は織田様に娘を嫁がせるんだ。見返りらしい約もなしにな。実質は臣従と受けとられても文句は言えない条件だ。


 同盟ならば本来は織田様側からも嫁を出すはずが、今回の話にそれはないからな。だから和睦なんだろう。斎藤家は織田様に臣従しても和睦を欲したが、織田様はそこまで和睦を欲してなかった。力関係に明確な差があるということだろう。


 しかも、美濃をるがし、力をいだのに、織田様には銭や糧秣りょうまつの損も、兵を失う事もない。それどころか逆に儲けたんだからな。こんな話は聞いたことがない。仮に今すぐに今川様が攻めてきても、なんの問題もないはずだ。


「そういえば堺の件、本当らしいな」


「やっぱりか」


「ああ、織田様と久遠様が気に入らんと何人かの商人が土岐家に肩入れしたらしい」


 美濃の件で一番慌てておるのは今川様か、それとも堺の会合衆か。


 偽の手形造りに堺が関与しておったと湊屋から知らせがあったが、こちらでも堺の商人から確認がとれたか。堺も大湊も決して一枚岩ではない。互いにそれなりの内情は聞こえてくるからな。


 堺の連中も桑名の件を知らぬはずもなかろうに。久遠様は不正を嫌う。対応を間違えると桑名の二の舞いだぞ。


 そういえば湊屋が偽の手形造りに関与した職人の家族を欲しがっておったな。なんでも久遠様は捕らえた職人を許す代わりに手元で働かせるそうだ。大湊で偽の手形を使った商人まで許すおつもりのようだしな。何も知らずに利用された者、弱きゆえに脅された者には慈悲深いお方だ。


 ただし、人質になる家族は必要だろう。それくらいはこちらで堺と交渉して手に入れて尾張に送るか。我ら大湊の商人の力も織田様と久遠様に見せねば。


 童の使いではないのだ。堺はまだ我らのほうが繋がりもあるのだから、交渉は早いだろう。




Side:久遠一馬


「許したんですか」


「これから姻戚になるのだ。慶事の前の小事として不問にする。愚か者でないようだしな」


 斎藤義龍が長井道利を筆頭に反道三の者たちを討ち取った。史実では義龍を担いでいた者たちであるだけに、史実を知っていると複雑な心境になるが、道三は義龍に関しては自分の監督不行き届きだったとの謝罪と、責めは自分が負うと、信秀さんに手紙を寄越したみたい。


 ただ信秀さんは、今回の件は斎藤家家中の問題であり、織田家が口を出す問題ではないと、処罰は求めなかったようだ。斎藤家がこれからどうなるか知らないが、土岐頼芸と距離を置くタイミングがギリギリセーフだったんだろう。


 まあ、信秀さんはお馬鹿さんを嫌うから、時勢が読めただけでも生かす価値はあるとみたんだろうね。道三が庇ったのも大きそうだけど。


 一方美濃では早くも検地と人口調査の準備が進んでいる。昨年には分国法と一緒に尾張全土と三河安祥や美濃大垣などの織田家直轄領は検地したが、美濃の国人衆には土岐家に配慮して検地も人口調査も出来なかったんだ。


 信秀さんのとこには早くも土岐家に臣従していた国人衆や日和見をしていた国人衆が挨拶に来てるみたいだが。今後、正式に臣従を受け入れるには基本的に分国法の受け入れと検地と人口調査を前提としたみたい。


 美濃の国人衆は戸惑っているようだ。ただ、臣従しなくても協力することはするみたいだけど。挨拶に来た国人衆は米の相場の暴落で損をした者も多い。裕福な織田に従えば領地安堵のうえに援助が無条件で貰えると勝手に思って、先に銭の無心をする厚かましい人も少なくないからなぁ。


 というか日和見して勝った方にそのまま付いて、自分たちの既得権を認めろとか虫が良すぎる。まあ織田も戦で勝ったわけではないから強く出過ぎることはないが。


 織田に臣従するにはこれからはその条件を基本とすると信秀さんが決めたが、友好的な関係まで否定はしてない。いわゆる中立の立場での独立領としての存続は認めるらしい。


 

 この辺りはオレやエルの意見もかなり入ってる。統治体制の組織化は以前から提言していたからね。


 ただ形式は変わっても尾張ですら、現状ではそれほど以前と変わったわけではない。


 先に分国法を制定したが守ってない国人衆はそれなりにいる。特に三河や美濃との国境が近い国人衆とか。自分の領地は自分のものという固定観念があるんだろうね。


 信秀さんはとりあえず放置している。悪意があって守ってないならともかく、単純に新しいやり方を理解出来ていないだけだし。


 まあ独立意識が強いところはちらほらとあるが。瀬戸に近い品野城の桜井松平家とか。あそこは相変わらず織田を利用して三河が欲しいみたいだし。ただ現状ではわざわざ討伐するほどでもない。尾張の改革が進んだら飼い殺しにするかもしれないが。


「そういえば揖斐いび北方城はどうするんです?」


「蝮はこちらに寄越すそうだ。森越後守に任せようと思っておる。尾張の者よりよかろう」


「なるほど。確かに揖斐北方城は遠いですからね」


 少し話が脱線したが、美濃の話だ。現状で空いている城がある。土岐頼芸のいた揖斐北方城だ。どうも土岐家の家臣だった者が勝手に占拠してるらしいが。道三側との意見交換で織田側にくれるらしいので、信秀さんは森可成さんの親父さんの可行さんに行ってもらうようだ。


 占拠してる連中を追い出すために軍が必要だろうな。美濃の織田領から兵を集めるんだろうが、銭と火薬を差し入れしておこうか。何度か会ったがいい人だったし。


 他にも土岐家の家臣で反織田だった者は追放することになっていて、従わないなら兵を挙げることになるだろう。ただこの挙兵は小規模なので尾張から派兵する数は少数になる予定で信秀さんや信長さんの出陣予定もない。


 うーん。益氏さんを美濃の調査目的で、可行さんと一緒に行かせてもらえるように頼んでみるか。実戦経験も大切だしね。楽しみにしてるらしいんだよね。


 活躍する機会があるかわからないけど。


「また人形、いや、ぬいぐるみか?」


「前に約束したので、人数分持ってきたんですよ」


 さて、小難しい話も終ったし、信秀さんの子供たちにぬいぐるみを渡しに行こうか。前に取り合いになって今度持ってくると言ったら、毎日持ってくるのを楽しみに待っているそうなんだよね。


 嘘つきおじさん扱いされても困るから、あげにいかないと。パンパンに膨らんだ包みを背負って、信秀さんの後を付いていく。すれ違う人たちは信秀さんに礼をして、その後オレから顔を背けて、プルプル震えるんだ。失礼だなぁ。おっ、居館の入り口に着いた。


 今日はみかんゼリーのおやつ付きだ。みんな喜んでくれるかな?





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