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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
天文18年(1549年)

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第三百四話・節分

Side:土岐家家臣


 織田と斎藤は守護様を無視することを選んだらしい。


 織田は守護様のご下命に対して、事実と違い道理にそぐわぬと突っぱねた。さらには、なんと斎藤との婚礼を予定通り行うらしく国人衆に日取りを知らせておる。


 結局、守護様の陣触れに応えた国人衆は数えるほどしかおらぬ。大垣周辺の織田方はおろか西美濃の国人衆ですら言葉を濁されて終わりだ。


「なんだこれは!!」


「はっ、先日旅の行商人が領内に持ってきたものでございます」


 なんとか守護様をお止めしようとしておった時、深刻な事態が起きた。


 守護様は今にも乱心しそうなほど顔を真っ赤にしてお怒りになっておられる。長年仕えて、守護様が自制じせいとは無縁むえんなお方と知ってはおるが、それでも初めて見るほどのお顔だ。しかし、それも致し方ないことであろう。先ほど守護様の近習が持ち込んだ一枚の紙。これが原因だ。


 紙には守護様の昨年秋からの所業と謀が書かれておる。


 必死に働く幼子を着物が汚れたと家臣が殺そうとしたこと。またその家臣は幼子を庇った久遠家の奥方にまで刀を向けたこと。そんな家臣を連れて他国に行ったことを悪いとも思わないこと。


 逆に恥をかかされたと織田家と久遠家を逆恨みして織田家発行の手形を偽造したこと。事態が発覚すると手形を偽造させた職人を殺そうとしたこと。その職人に逃げられると忠臣に罪を着せて斬殺の上、一族郎党皆殺しにしたこと。


 謀の内容は、長井隼人佐と共に先の手形を偽造し織田から銭を奪うこと。その後、職人を殺して手形を偽造したのは斎藤家の仕業とし斎藤家、織田家の仲を険悪にする。そして織田家と斎藤家を争わせ共倒れにすると。結果は、はじめから失敗しておるが。


 わしも初めて聞く話があるが、守護様のご面相めんそうを見れば概ね事実なのだろうな。


 間に合わなかったか。守護様の隠居と引き換えに事態の収束を織田に嘆願するために、ようやく使者を送ろうとした矢先に。


何奴なにやつがこんなものを!!」


「わかりませぬ。すでに美濃国内に出回り流布されておるのは掴んでおりますが……。内容から織田か斎藤が出どころと思われまする」


 まるで鬼のような守護様が家臣を斬り捨て、織田と斎藤を謀で共倒れにしてやるわと笑っておる絵まで描かれておる。


 これでは誰が悪いか幼子でも一目瞭然だ。


「ぐぬぬぬ……。兵を集めろ! 国人衆にも従わねば滅ぼすと言え! 斎藤と織田を纏めて叩き潰してやるわ!!」


 挙兵していったい如何程いかほどの兵が集まるのだ? 名指しされた長井隼人佐はいかがする? 稲葉山城も大垣城も簡単には落ちんぞ。それに織田も斎藤も守護様のご性根を理解しておるはず。


 罠ではないのか? 言っても聞かぬのであろうな。




Side:久遠一馬


 二月になった。二月三日といえば節分だ! 旧暦の暦を使ってるこの時代では節分は十二月二十七日になるが、いろいろ忙しくてやれなかったしね。


 なので今日はオレの思い付きということで、時期は違うが孤児院のみんなと豆まきをすることになった。


 迷信といえば迷信だが、こういう機会にみんなの健康を祈るのも悪くない。


「なかなか似合うじゃないか。ところで、その虎の毛皮、いつ買ったの?」


 鬼の役は慶次だ。いや、この時代は割と真面目な行事なんで、鬼の役とかいないみたいだけどね。面白くないからオレが鬼の役やると言ったら、資清さんに止められて、ノリノリで志願した慶次に役を譲ることになった。


 姿は鬼の面を付けて虎の毛皮を羽織るように被っている。なんか本物の傾奇者みたいだ。


「いや、蔵にありましたぞ」


「あ~ぁ、あそこもそろそろ整理しないとなぁ」


 虎の毛皮なんてどうしたんだと思ったら、ウチの蔵の肥やしか。あちこちからいろいろ貰ったりすることはありがたいが、大半は蔵の肥やしなんだよね。


 ウチは本なら行商人からでも買うから、気の利く人は本をくれる。ただ骨董品とか由緒正しいなんとかとかはあんまり使い道がない。中には偽物も多いみたいだし。


 フリーマーケットでもあれば出したいんだが。まずいよね。刀なんかは家臣のみんなにあげてるんだけど。いや、蔵の収納にも限界がある。やっぱりウチ主催の蔵ざらえ廉売会でも開かにゃならんか? それとも良さげなのを見繕って、朝廷工作の一環で公家にでもばら撒くか?


「しかし面白いことを考えるのでございまするな」


「正直あんまり信じてないんだよね。鬼とか」


 ノリノリの慶次は鬼の役を設けることに面白そうに笑う。この時代だと穢れというものを嫌うから、鬼の役どころか豆をまく役も高貴な人たちは好かないらしい。


 ウチの豆まきは久遠家流ということで元の世界の豆まきにしてみた。大人も子供も一緒にみんなで豆をまくんだ。


「あっ。鬼だ!!」


 慶次の準備が整ったのでみんなのところに行くと、ますに炒った大豆を入れた子供たちや領民のみんなが待っていた。


「あっはっはっはっ!」


 慶次は一番楽しそうだ。高笑いすると虎の毛皮をなびかせて逃げていき、子供たちが夢中で追いかけていく。


 ああ、ロボとブランカも一緒に行っちゃった。豆は消化に悪いからあんまり食べさせられないんだよね。止めないと。


「鬼は外! 福は内!」


「鬼なんかに負けないぞ!」


 子供たちは元気だ。楽し気な笑い声があちこちから聞こえる。みんな元気に育ってほしいな。戦なんかで亡くならないようにしたい。


「鬼! 覚悟でござる!」


「やっつけるのです!!」


 ああ、子どもでないふたりも本気で追いかけてないかい? すずとチェリーは大人のはずなんだけどなぁ。


 それにさらりと超人的な動きをしないでほしい。というか慶次はなんで対応出来てるの?


「また、おかしなことをしておるな」


「豆まきですよ。以前は日ノ本でも行われていたようですがいつの間にか忘れられてしまったようで」


 途中で信長さんが暇なのか来たが、すずとチェリーと子供たちに追いかけられる慶次を不思議そうに見ていた。豆まきよりお祭りに見えるのかもしれない。だが今回のオレは一味違う、ちゃんと由来の辻褄も合わせた。


「そっちから回るでござる!」


「いくのです!」


「鬼は外! 福は内!」


 いつの間にかすずとチェリーと子供たちが連携しているよ。


 鬼役の慶次が孤児院の建屋から出ていくと豆まきは終了だ。みんなで豆を拾って食べる。ちゃんと豆まきの前に綺麗に掃除しているからそのままでも大丈夫だ。


 ロボとブランカには水で柔らかくしたものをあげよう。


「はーい、みんなお昼ですよ~」


 豆を拾い終えるとお昼の時間だ。今日はエルとリリーが巻き寿司を作ってくれたみたい。というかこれ恵方巻きだよね?


「みんな、恵方を向いてこのまま食べるのよ~」


 ニコニコと笑みを浮かべるリリーは、恵方巻と食べ方を久遠家の伝統と説明しているよ。今日から伝統になるんだろうな。ウチは伝統の偽造と改変の大安売りだ。


 みんなで同じ方向を向き無言で食べる。ルールは元の世界のと同じだ。でもさ。少しシュールな光景ですよ、リリーさん。


 大人も子供も信長さんとお付きの皆さんも、エルもリリーもすずとチェリーもみんなで同じ方向を見て食べてる。オレだって食べる。


 うん。太巻きは美味しい。海苔の風味はしっかりと生きてるし、程よい酢飯と具材のバランスは最高だ。


 ボリュームもあるし、玉子、椎茸、干ぴょう、ウナギ、さくらでんぷ、高野豆腐、きゅうりの漬物も入ってる。


 よくこの時代にこれだけ集めたなぁ。


 ロボとブランカにはのりとか犬が駄目な食材を抜いた特別な恵方巻きらしい。美味しいか? でも何で巻いたの? 薄焼き卵? 贅沢な一品だな、オレそっちも食べてみたいかも。


 春はもうすぐそこだ。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆

 久遠家の家伝である『久遠家記』には、天文十八年の節分の様子が書かれている。


 節分自体は古くからあり室町時代の記録もあるが、同時代の資料は多くなく当時の文化を知る貴重な資料となっている。


 もっとも、久遠家の伝統だと書かれている天文十八年の節分の風習は、同席した信長が驚いたとの記載があるため、当時の日本の節分の風習と異なるものであったと思われる。


 ただ節分に皆の健康長寿を祈ったことは確かなようで、節分に巻き寿司を食べる習慣の元祖だとも言われている。


 この久遠家の伝統を気に入った信長により織田にも取り入れられたようで、尾張から日本各地へ、そして日本圏全域に広がったと思われる。


 中には土地の風習や伝統と合わさり独自の進化をしたところもあるが、健康長寿を願う行事として現代では日本圏でおなじみのものとなっている。





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書籍版戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。

第十巻まで発売中です。

― 新着の感想 ―
[一言] 作品じたいにはまーーったく含みはありませんが、恵方巻きの風習、って言われると某コンビニ会社による強引な風習捏造を想起して、反射的に嫌悪を覚えてしまいます
[良い点] 時々欄外で解説を載せている所が、歴史ふぁんたじーでありながら説得力ある作品の一助になっていると思う。 特に好きなのは「日本圏」や「皇歴(だったかな?)」といった表現で、これは独創的であり楽…
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