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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
永禄五年(1559年)

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第二千百五十六話・美濃訪問・その二

Side:斯波義信


 一馬が美濃に行くというので同行したが、挨拶やらなにやらと仰々しいの。一馬らは挨拶を済ませると、役目があると席を外してしまったというのに。


 なんというか逃げるのが上手い気がする。ここまで形を整えずとも良かったのだが。


 一馬ほど形が要らぬとは思わぬが、不要なほど仰々しくするのはいかがなものかと思うの。無論、支度をしてくれた山城守らを思うと口が裂けても言えぬが。


 そのまま日も暮れる頃になると、歓迎の宴となる。


「稚鮎がありますね。これ美味しいんですよね」


 山城守以外は少し固い様子だが、一馬らはいつもと変わらず、出された膳を喜んで食うておる。稚鮎か。確かに美味いが、珍しきものでないのじゃがの。


 どれ、わしも……。まずは焼き物からにしようか。うむ、確かに美味い。骨も身も柔らかく、鮎の風味も残っておる。尾張で造っておる澄み酒がよう合う。


 こちらは稚鮎の唐揚げか。


「ほう、これはいいの」


 まだ中は温かく外は程よく揚がっていて歯ごたえもよい。上物の塩を僅かにつけるだけでいい。


「美濃も変わったな。久々にくると驚いたわ」


「若殿にそう言うていただくと皆も喜びましょう」


 尾張介は酒をあまり飲まず、山城守と話をしつつ飯と料理を楽しんでおる。もともと酒はあまり好まぬのだとか。一時、飲めるようになろうと無理に飲んでおったらしいが、ケティが止めたと聞いたことがある。


 それもあってか、家中では飲まぬ者も見かける。昔は酒を飲めぬと軽んじられるものだと聞き及ぶが。今では左様なことはない。


 ふと思う。元守護である土岐のことなど誰も考えておるまいの。土岐家最後の守護である頼芸はあまり褒められた男ではなかったと聞き及ぶ。あやつは家臣に殺され土岐は守護家の地位を失った。今は六角で頼芸の子らの面倒を見ておるとか。


 父上が常に己とわしらを戒めておるのは、左様な没落を目の当たりにしたこともあろうな。


 縁ある者もおるというのに、善政を敷いてしまえばわずか数年で名を聞くことすらなくなる。


 一馬はいかに思うておるのであろうな? 久遠の本領とていつまでも安泰と言い切れまい? 子や孫や子孫らの地位や暮らしを守ってやりたいと思わぬのであろうか?


 あやつならば、まことに身分を捨ててしまいそうじゃの。捨てても生きられる国になれば。


 それがよいのか、悪いのか。わしには分からぬが。




Side:久遠一馬


 美濃滞在二日目、今日は井ノ口の町と紙職人、紙市の視察だ。


 紙市、以前は美濃上有知で行われていたが、今は井ノ口の町で行われている。生産した紙の主要取引先が尾張だということと、わら半紙の職人などを井ノ口の町に置いたことでこちらに移ったそうだ。


 通称、紙町と言われるほど、わら半紙製造をしている職人が多く住む一帯に足を運んだ。いくつもの工房で多くのわら半紙が作られていて活気がある。


 和紙のほうは美濃各地に生産地があるんだよね。各地の産業はそのまま育てることも大切なので、ひと昔前よりは紙作りが盛んになったと聞いている。今では植林を含めた持続的な紙作り体制を構築しつつある。


「へぇ。引き抜きか」


 現地の職人頭に話を聞くと、仕事の内容とか納期とかそっちは困っていないらしいが、引き抜きやら技術を盗もうとする産業スパイが横行しているそうだ。


 警備兵も常駐していて、自警団のように職人と町衆で見回りや警戒を行っているとのこと。どうやら工業村とか焼き物村のように、外から人を入れない形にしたいらしい。


 正直、わら半紙は外に作り方が漏れてもいいんだけど。みんなで守ろうとしてくれている様子を見ると言えないよなぁ。


「分かった。戻り次第、考えてみるよ」


「ありがとうございまする!」


 この時代の人って、秘匿する時はほんと徹底している。技術によっては見様見真似で真似されることもあるが、肝心のコツや量産技術が漏れず、量産するほどの資金もないことで、ほとんどが質の落ちる偽物しか作れていないんだよね。


 なんというか、ウチが教えてくれた技は絶対に余所者に漏らさないという鉄の掟のような感じだ。反応に困るが、褒めるしかない。


 自警団の規模も報告より大きい。ちなみに自警団にも織田家から予算が出ている。夜の警備の時の明かり代や夜食代がいるし、冬場は暖を取る燃料代もいる。


 報告が三か月に一度の確認であるため、随時人員が増えている自警団の規模と報告にずれがある。あと職人や商人が自分たちでお金を出して、必要に応じて用心棒のように人を雇っているのは報告になかった。


 批判はしないし、問題視もしないが、警備体制の把握はもっとしっかりする必要があるだろう。一緒にいるセレスもそこの辺りを現地の警備兵と確認している。


「各地にある職人たちの状況、少し再確認したほうがいいかもね」


 エルたちと顔を見合わせてひとつ課題をみつけた。


 織田領の職人たち、お金持っているからなぁ。全然かまわないんだけど、公儀としてより詳細に把握したほうがいい。あと理想はそこまでしなくても暮らせるほうがいいしね。


 さて、次はちょうど今日開催している紙市だ。今日に視察することしたのも定期開催している紙市が今日だからなんだよね。


 場所は……、井ノ口にある公民館だった。正しくは代官所分所なんだけど。大きな町には代官所、警備奉行所、武官所とかいろいろあって、公民館として建設したところは概ね代官預かりの庁舎扱いなんだ。


「寺社でやると、そこの者が勝手に座のように差配をするかもしれませぬので……」


 ここでやるようになった経緯を聞いたが、まあ、いろいろあったみたいだね。揉めたわけじゃないから、オレのところまで詳しい報告が上がらなかったみたいだ。


 ちなみに紙市、伝統的な形を踏襲しつつ、蟹江にある公設市場の仕組みを導入していて織田家による管理がされている。不当に高くしたり安くしないように市場原理を導入しつつ監視しているんだよね。


 当然、誰でも買えるわけではなく、身元がはっきりした商人でなくば買えない。まあ、堺の商人とか安房の商人じゃなければ参加費を払うと買えるけど。


 織田家では、ここの販売される標準価格と同じ値段で事前に買い上げている。ウチは尾張の紙商人から買っているけどね。多少手間賃が取られるものの、オレたちが尾張に来た頃から買っている商人だから信頼がある。


 直接買えば安いんだけど、輸送とか考えると大変だしね。領内の商人にお金を回さないといけないし。


 中は混んでいるなぁ。領国も広がったから、各地の商人が来ているようだ。


 需要が増えているからなぁ。少し商人の皆さんの話も聞きたいなぁ。





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