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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
永禄五年(1559年)

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第二千百三十五話・冬のこと

Side:久遠一馬


 この時期、季代子たちがいることで清洲城では奥羽に関する評定が多い。


 臣従に関する条件や待遇、また分国法違反の際の処分など、現状のすり合わせと意見交換などしなくてはいけないことが多い。


 前提として、斯波家と織田家では配慮疲れが起きている。配慮を仇で返されることが朝廷や寺社相手で相応にあったことから、どんどん条件や処分が厳しくなりつつある。


 まあ、奥羽の場合、半分ウチで統治しているようなものなので、裁量権が大きいんだけど。こちらからお願いして話し合いと意見のすり合わせを多めにしているんだ。


 今日は主に隣接する由利十二頭と葛西への対処を話しているが、関係者の様子はあまり芳しくない。


 葛西はともかく由利十二頭に関しては、個々の勢力が小さすぎて信秀さんの直臣にするレベルではない。小笠原一族を称する人が割といるので小笠原長時さんも同席しているが、面倒な親戚だと言いたげな顔を隠していないしね。


 見捨てるとも言えないが、庇うほどの繋がりもないのだろう。正直、小笠原家も一族関係はあんまり上手くいってないからなぁ。


 武田家に小笠原さんと争った一族がいて、形式として謝罪を受けて和解したものの、それ以降は交流などほぼないらしい。晴信さんが甲斐に置いているから会う機会がない形だ。


 すでに本家と争うのを諦めたらしく騒ぐこともないものの、あまり会わせないほうがいいと晴信さんが判断したのと、小笠原さん自身も一族を束ねるということにあまり重きを置いていないことが理由だ。


 ちなみに武田には諏訪家と争った分家の高遠もいるが、そちらも似た感じらしいね。形式として謝罪させて争いは終了したという形は整えた。


 武田と小笠原と今川、婚礼を今年中にという方向でだいぶ地ならしは終わったんだけどね。一番落ち着いているのは今川だろう。あそこは雪斎さんが残した功績が大きい。次点で武田だろうね。小笠原分家や高遠を抱えつつ上手くまとめている。


 小笠原さん、礼法指南の加減とかウチの価値観が混じった尾張流の教育は得意なんだけど。人を従えてまとめるということでは、やはり上手くない。本人も自覚しているっぽいけど。


「今以上の配慮は不要だ。あとは代官殿に一任する。わしも書状を書こう」


 由利十二頭の一部からは、昨年中に小笠原さんのところに使者が来たみたいなんだよね。事情の確認と挨拶の使者だ。小笠原さんとしては現状の説明と臣従するなら早いほうがいいと助言をしたみたい。


「そこまでおかしなことをする者はいないわ。ただ、小野寺と大宝寺とか縁ある寺社が臣従の邪魔をしたりしているのよね」


 季代子の言葉に、小笠原さんも同席する関係者も僅かに苦笑いを見せた。


 どこでもそうだけど、小さいと小さいなりにしがらみとかある。あと一族家臣、領内の寺社とかをまとめるのも簡単じゃない。まして前代未聞の所領放棄による臣従となればね。


 慣例から外れると、それだけで否定する人、元の世界でもいたしなぁ。


 今年は飢饉があるから、その規模次第ではまた一騒動あるだろう。それは話せないけどね。現状で出来る打ち合わせは入念にしておこう。


 葛西に関しては意志統一も出来てないし、内部の争いにこちらを利用しようとする人すらいる。まあ、普通のことなんだけど。こちらから関わるメリットも縁もあまりないんだよね。




Side:とある職人


 尾張の犬山は飛騨や美濃の材木が木曾川で運ばれ集まる地だ。ここで材木を乾かして、柱や板にするのがオレたちの役目になる。


「この木はまだ早いなぁ」


「こっちにするか」


 見渡す限りの丸太だ。木の匂いがするこの場で、必要な部材を揃えなきゃならねえ。冬のこの時期はとにかく寒い。火に当たりながら作業を進める。


 今でも材木は貴重だが、一昔前と違い、尾張では多くの材木が必要らしい。大工道具が昔より使いやすいものになったが、それでも大変なんだ。


「よし、飯にするか!」


 懸命に働いて午の刻になると昼飯だ。これも昔はなかったが、久遠様が飯を日に三度食うことを真似て、今では皆がそうなった。


 数年前に出来た食堂という母屋に入ると、味噌汁のいい匂いがする。ここじゃ一々銭を払わなくても飯を食わせてくれる。


「美味そうだなぁ」


 今日は水団汁らしい。魚や肉など具沢山の汁に麦の粉を練ったものが入っている。これに飯と菜物が付く。ここらの職人は皆、大食らいだからな。量は多い。


 早く食って少しでも休みたい奴は、飯椀に汁をかけて、飯をかきこむように食っている。この水団ってのも美味えんだけどなぁ。味わって食わねえのがもったいねえ。


「また新しい奴が増えたな」


 一緒に食ってる奴が食堂を見て呟くように声を掛けてきた。


 珍しいことじゃねえ。織田様の領地が広がるたびに新しい奴が増えるし、近頃だと西から来る奴も多い。それにここで慣れた古参の奴らは、織田様の下命で他の領国にある新しい働き場に行くからな。


「いいんじゃねえか。昔みてえにどこぞのお抱えだと威張る奴もいねえし」


 昔は面倒な奴も結構来ていたんだ。大工なんてのはどこぞの寺社のお抱えだった奴が多い。ただ、それだけだと食えねえこともあるからな。尾張に働きにくるんだ。


 己らの仕える寺よりいい暮らしをしているとか、己らのほうが上なのだからもっと銭を寄越せとか騒ぐ奴は近頃見かけなくなった。


 織田様に追放されたからなぁ。そんな奴らは。


「それもそうだな」


 古参だともう何年も故郷に戻ってねえ奴も珍しくねえ。特に親子で流れてきた奴らなんかは、親父が死ぬと故郷との縁も薄れる。世話になった寺社に頼まれて仕事で戻る奴はいるが、終わるとこっちに帰ってくるからな。


 ここだと無理なことを命じられることもないし、食い物も酒も変わらぬ値で安く手に入る。


 故郷も離れるまでは辛いが、一度出てしまうとむしろ戻るほうが辛くなる。


 それに……、坊様たちがいかに好き勝手に生きているか。尾張だとそこらの童だって知っているからな。従ったところで仏様が喜ぶとは思えねえ。


 まあ、故郷のことは身分のあるお方と寺社が考えるだろ。そう考える奴が多いんだよな。ここには。




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書籍版戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。

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いまのうちにたくさん杉の木を切ってほしいな!(願望)
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